カール・バルト（その生涯と神学の総体像）

『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』「三十一節　神の自由の様々な完全性　二　神の不変性と全能」２２−１８

「三十一節　神の自由の様々な完全性　二　神の不変性と全能」２２−１８
【注】

　この【注】は、今まで述べてきた『教会教義学　神論』によるものである。
　「十九世紀におけるドイツの神学者の内のある者たち（≪Ｆ・Ｈ・Ｒ・フランク、Ｇ・トマジウス、Ｊ・Ａ・ドルナー≫）」は、「＜全面的な唯名論＞と原則的に手を切っただけでなく」、「＜トマス的およびプロテスタント的――正統主義的な伝承の半唯名論＞とも原則的に手を切った」――「Ｆ・Ｈ・Ｒ・フランク」は、キリスト教「信仰は、もしも神に対して永遠性と全能と神聖性の属性を神にとって＜客観的＞に固有なものとして帰さないとしたら、神を全く、現実のもの、絶対的なもの、一つのものとして承認していないことになろう」、と述べている、すなわち「これらの性質についての教義学的な把握」は、一方での、「失われない差異性」における三つの存在の仕方における「多種多様な性質、そしてその概念によれば一つのものに帰せられてしまうことのない性質（≪総括的に言えば、「失われない差異性」の中で「三度別様」にイエス・キリストの父――「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である啓示者・創造主、この父の子としての「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方であるイエス・キリスト自身――啓示・和解主、愛に基づく父と子の交わりとしての「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体≫）としての属性の＜客観的＞な現実性」と、他方での、「それへと性質が遡っている、否、それらの性質をまさにその多種多様性の中で現にあるところのものにするところの神の破壊されることのない単一性（≪総括的に言えば、全き自由の、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神のその「失われない単一性」≫）」が、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で、「認識にとって姿を現わし、互いに矛盾することなしに結び合わされる時にだけ、信仰の意識（≪信仰の認識としての神認識の意識、すなわち啓示認識・啓示信仰の意識≫）に対応する」ことができる、と述べている。
　聖書的啓示証言「�Tコリント二・八、ヤコブ二・一によれば、イエス・キリスト」は、「＜栄光＞（≪聖、全能、永遠、力、善、あわれみ、義、遍在、知恵等≫）の＜主＞であり給う」――「そのような方として、認識され承認され」ている。しかし、このことは、人間の自己意識・理性・思惟にとって「自明的ではない」。すなわち、このことは、人間の自己意識・理性・思惟にとっては、「常に」、主と栄光とを切り離して認識する、換言すれば一面だけを抽象してあるいは一面だけを拡大鏡にかけて全体化する形而上学的な「切り離し」の「危険」性に曝されている、一方だけを抽象して固定化する「危険」性に曝されている、すなわち一方だけを拡大鏡にかけて全体化する「危険」性に曝されている――すなわち、先ず第一に、キリストにあっての神は、その＜栄光＞を後景へと退けられた仕方で、「＜主＞として、点的にあるいは線的に見られ理解される……」という「危険」性に曝されている、換言すれば神は、先行するわれわれ人間の「定義に従って、過度に愛し、過度に自由な仕方で存在」し、「そのようなものとして……集約的な……また無限に狭い本質」、すなわちそのようなものが、「多種多様の動きを持った世を、特に人間」を、「相対して持つようになり、それとの関係の中で（≪神は後続的に≫）自分自身動きを受け取ることでもって初めて生きたものとなり、そこで初めてわれわれにとって、内容充実、具象性、明瞭性、それと共に実在性を得て来る本質として見られ理解される」という「危険」性に曝されている。この危険性に晒されたところでの「神的対処の仕方」は、「神の性質の中に基礎づけられ」た常に先行する神の「本来的な」「神的対処の仕方」ではなくて、換言すれば経綸――徹頭徹尾、常に先行する、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父、すなわち啓示者・創造主、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身、すなわち啓示（起源的な第一の形態の神の言葉）・和解主、愛に基づく父と子の交わりである第三の存在の仕方である聖霊、すなわち啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体としての常に先行する神の「本来的な」「神的対処の仕方」ではなくて、われわれ人間「自身の性質の中に基礎づけられているところの一種の神的対処の仕方」（自然神学的な人間的理性や人間的欲求やによって対象化され客体化された「存在者レベルでの神」の対処の仕方、「対策的な経綸」、その神の名と呼びかけによる救い・平和・幸福の企て）である、それ故に常に先行する全き自由の神の「本来的な」「神的対処の仕方」（「動き」、働き、業、行為、活動）を後景へと退け捨象したそれである。このように、「もしも（≪キリストにあっての≫）神が栄光の主であり給わないならば」、またキリストにあっての神がわれわれ人間の「言葉のすべての比喩的な性質にもかかわらず、（≪神の側の真実として、それ故に客観的現実性として、「成就と執行」・「永遠的実在」として≫）何の留保もなしに事実います」というのでないならば、またキリストにあっての神が「ただ単に（≪われわれのための神としてのその三つの存在の仕方において≫）われわれにとってだけでなく、また（≪徹頭徹尾先ず以てご自身の中での神として≫）自分自身の中ででもいます」というのでないならば、換言すればキリストにあっての神が、存在的にも認識的にも、内在的にも外在的にも、その全き自由において「います」と言うのでないならば、「そのことは、神を信じる信仰にとって危険なことであり、最後的な根底において致命的なこと」なのである。したがって、聖書的啓示証言・「聖書は、われわれに対して」、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方であるイエス・キリストを、「＜栄光＞の＜主＞であり給う」というように、その「全体性」・総体性の中で証ししているのである、すなわち聖書は、われわれに対して、「神の栄光を証しすることによって、まさに（≪イエス・キリストご自身が≫）栄光に満ちた方……として本来的なまことの神である（≪旧約聖書における「ヤハウェ」、新約聖書における神・「テオス」あるいは主・「キュリオス」、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」、まことの神（不可視性としての、それ故にわれわれ人間は神の不把握性の下に置かれているのであるが、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する神性を本質とする神）にしてまことの人間（可視性としての、それ故に先行する神の認識可能性であるイエス・キリストにおいて、「神の用意の中に含まれて、人間にとって、神に向かっての、したがって神認識（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）に向かっての人間の用意が存在する」のであるが、神的な自然としての人間性）である≫）ことを証ししている」のである。このようにして、「聖書は、われわれを、（≪あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて≫）神ご自身を信じる真剣な、本来的な信仰へと呼び出す」のである。このような訳で、「＜主＞がその＜栄光＞と一つであるというこの聖書的な単一性（≪イエス・キリストは、「＜栄光＞の＜主＞であり給う」という全体性、総体性≫）を証しし記述することが、神的完全性についての教説の課題である」。
　また第二に、「神の＜栄光＞（≪聖、全能、永遠、力、善、あわれみ、義、遍在、知恵等≫）は、（≪神だけでなくわれわれ人間もというわれわれ人間の自主性・自己主張・自己義認の欲求によって≫）分散され、解消され、（≪その一面だけを抽象され、その一面だけを拡大鏡にかけて全体化され、≫）＜主＞のない仕方で、見られ理解される」という「危険」性に曝されている、換言すれば「神の栄光」は、キリストにあっての「神自身と関わり」のない、その「神性と関わり」のない、「表向き」だけの「神の栄光」、すなわち「実際には」、「人間的な願望と恐れの客体化された投影としての世的な世」、「結局はそのほかの世および人間自身と比べて何ら遜色のない仕方での……世的な世」、人間自身による「理念の力、支配、支配の力、権力の世」という「危険」性に曝されている。したがって、そのような「危険」性に曝された神は、人間の身体・肉体と精神・意識を介した普遍的で実践的な全自然との相互規定的な対象的活動による人間的成果あるいは人類史的成果を「主人」・主とする、それ故に主なしにも、「神なしにも、神的なものである」ところの、人間的理性や人間的欲求やによって対象化され客体化された「あらゆる種類の表向き最高のもの、最後的なもの」（様々な「存在者レベルでの神」、偶像）でしかないものである。このような栄光が「神の栄光である」としたならば、それ故にその「名目上の礼拝、名目上の敬虔性」は、「奴隷的束縛を意味している……」のである、そのような場合、そのように「われわれの服従」は、その「背後に……（≪キリストにあっての神への≫）反逆」を潜ませているのである。したがって、「ここでもまた、もしも（≪キリストにあっての≫）神が栄光の主であり給わないならば」、また「天上においても、地上においても、まことに栄光であり給わないならば」、それ故に「力、善、義、知恵等であることができるすべてが神ご自身とは違っておらず、ほかならぬ神ご自身であるということに対する保証を持っていない」ならば、「そのことは（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方――「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間「イエス・キリストの名」にのみ感謝をもって信頼し固執する≫）信仰にとって危険なことであり、最後的には致命的なこと」なのである。したがってまた、聖書的啓示証言・「聖書は、われわれに対して、神の栄光を証しすることによって」、キリストにあっての「神のすべての栄光は、栄光の主としての（≪ご自身の中での神としての≫）神ご自身の中に集中され、集約され、統一されている」ということを証ししているのである、換言すれば聖書は、人間の書かれた歴史に登場する「あらゆる種類の主権者」・「主人たち」、指導者たち、ヘーゲルの「世界史的個人」、さまざまな「神の代理者および奉仕者」を証ししているのではないのである（�Tコリント３・２１−２３――「ですから、だれも人間を誇ってはなりません。すべては、あなたがたのものです。パウロもアポロもケファも、世界も生も死も、今起こっていることも将来起こることも、一切はあなたがたのもの、あなたがたはキリストのもの、キリストは神のものなのです」および３・１１――「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方（起源的な第一の存在の仕方である父なる神の子の啓示、啓示・和解、「啓示の実在」そのもの、起源的な第一の形態の神の言葉）である「イエス・キリストという既に据えられている土台を無視して、だれもほかの土台を据えることはできません」、栄光の主としての＜純粋＞な「イエス・キリストの名」、その＜純粋＞なキリストの福音、その＜純粋＞なキリストにあっての神を証ししているのである）。このような訳で、われわれは、「聖書の中で、……神が全く特定の性質、完全性の満ち溢れを持ち給うことによって」、その信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）の秩序性において、「決してそれとしての（≪ご自身の中での神としての≫）それらの性質あるいは完全性そのもの（≪内在的な、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方である「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」・「神の＜内＞三位一体的父の名」・「三位相互＜内在性＞」におけるご自身の中での神≫）と関わるのではなく」、その神のわれわれのための神としての外に向かってのその存在の仕方における「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父（啓示者・創造主）、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身（啓示・和解主）、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊（啓示されてあること・救済主）なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体――この聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神のわれわれのための神としての外に向かってのその存在の仕方における「神の性質（≪存在の仕方≫）あるいは完全性（≪その存在の仕方の完全性≫）としてのそれらのものと」、そしてそれから「そのようにして常に直接（≪終末論的制約の下で、終末論的限界の下で、ご自身の中での神としての≫）神ご自身と関わらなければならない」のである。このような訳で、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方である「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおける神の自己啓示は、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて、そのキリストにあっての神のわれわれのための神としての外に向かっての第二の存在の仕方におけるナザレのイエスという「人間の歴史的形態」――すなわち「イエス・キリストの名」において、その存在の本質である「失われない単一性」・神性・永遠性の認識と信仰を要求する啓示である、そのような信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を要求する啓示なのである。したがって、聖書的啓示証言・「聖書は、……（≪人間的理性や人間的欲求やによって対象化され客体化された≫）あらゆる種類の最高のものおよび最後的なものを肯定することからは成り立って」いないのである。そうではなくて、聖書的啓示証言・聖書は、われわれを、ただ神の言葉自身の出来事の自己運動・自己展開、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて、「唯一の、まことの、われわれに対して立てられた（≪「神ご自身においてのみ実在であり真理である」自由・≫）主権の肯定（≪それ故に「奴隷的な屈従とは何らかかわりのない、いかなる恐れをも、……また反逆のいかなる萌芽をも、自分の中に含んでいない肯定」≫）から成り立っている信仰へと呼び覚ますことができる」のである。したがってまた、「この主に対する反逆」は、「ただ奴隷状態、名目だけの礼拝、（神の栄光でないところの拡散した栄光にわれわれが捧げるべきだと考える）名目だけの敬虔性」に、総括的に言えば自然神学に、自然的な信仰・神学・教会の宣教に退行する形でだけ・「逆戻りする形でだけ存在する」のである。このような訳、「すべての栄光がそれの主と一つであるという聖書的な単一性（≪イエス・キリストは、「＜栄光＞の＜主＞であり給う」という全体性・総体性≫）を記述してゆくこと」――このことが、「別な側面から見て、神の完全性についての教説の課題である」。
　「よく注意せよ」――「栄光の主」は、「三つの存在の仕方の中での一人の神」（換言すれば「三神」・「三つの神性」・「三つの対象」・「三つの神的我」では決してないところの、「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方において「三度別様」に父、子、聖霊なる神であって、「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質とする三位一体の神）と「対応している」ということに、「よく注意せよ」。したがってまた、「三つの存在の仕方を、ただ単に様態論の意味で経綸的に理解」したら誤謬に陥るのであって、あくまでも「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父（啓示者・創造主）、第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身（啓示・和解主）、愛の基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊（啓示されてあること・救済主）なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体、「まさにそのみ業の経綸の中での神的現臨と働きの真剣さに対応しつつ、（≪「失われない単一性」を本質とする≫）一人の永遠的な神ご自身の（≪「失われない差異性」における父、子、聖霊という三つの≫）存在の仕方として理解することが決定的に重要である」ということに、「よく注意せよ」。このような訳で、キリストにあっての神のその栄光・その完全性は、「神に固有な」三つの「存在の仕方」のそれであるということを、また同時的に、その総体性・全体性において、「神に固有な」「存在の本質」の、すなわち「永遠の」それであるということを「認識することが決定的に重要」なことなのである。それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）に信頼し固執し連帯した第三の形態の神の言葉に属する全く人間的なイエス・キリストをのみ主・頭とする教会にとっては、「神の栄光とその完全性を、ただ単にそれだけでそれとして理解する」だけでなく、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方である「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリスト「（その方だけがその栄光とそれらの完全性をまことの栄光として構成させ、啓示し、確認することができる主の）栄光として理解することが決定的に重要」なことなのである。その教会にとっては、「神の性質あるいは完全性は、言わば神的な言葉の文字である。ただ（≪あの「啓示と信仰の出来事」に基づいた≫）それらの文字のつながりと統一を通してだけ」、「それらのつながりと統一の中でだけ」、「それらの文字は（≪神の言葉自身の出来事の自己運動・自己展開における≫）言葉（≪起源的な第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身、「啓示の実在」そのもの、それ故に具体的にはその最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」である第二の形態の神の言葉、聖書的啓示証言、それに信頼し固執し連帯したところの第三の形態の神の言葉に属する全く人間的な教会の＜客観的＞な信仰告白および教義≫）であることができる」。このような訳で、「神の完全性についての教説は、一歩ごとに、ただ神の本質についての教説の展開と確認から成り立っている……」。「われわれは、事実、ただ神は（≪全き≫）自由の中で愛する方であると続けて言うことができるだけである……。しかし、神の完全性についての教説の中では、まさに神の本質についての教説の、この展開と確認にまで、……来なければならないのである」。

　「神ノ単純サ」についての「正統主義の教義学」は、「神論全体の、それであるから……キリスト教的教説全体の根本的前提」を、「聖書的根拠に探し出す」・尋ね求めることをしないで、「論理的および数学的な取り組みにふけ」ることをしたのである。それは、「後では、神について、聖書の教示にしたがって神について語らなければならないすべてのことをまた語った」し、「自余のキリスト教の教説全体を、忠実に、聖書の教示にしたがって表現し展開しようと試みた」のであるが、「神の完全性」の「多数性についての言明」については、「われわれ（≪われわれ人間の自己意識・理性・思惟の自由な類的活動を為す認識主体≫）の神認識についての言明である……ということの方に、強調点を置く」＜半唯名論＞的教義学の可能性を後の時代に残したのである。すなわち、それは、聖書的啓示証言における「三位一体論とキリスト論の神からして考え……議論」せずに、人間的理性や人間的欲求やに対象化され客体化された「マコトナル唯一ノ実体という＜一般的＞な概念から、考え……議論」したのである、また「そのように把握された神論の神概念から」、「属性論を基礎づけるに当たって、（≪神の単純性の認識の非聖書的な、それ故に「非キリスト教的な基礎づけの宿命的な帰結である」≫）半唯名論的属性論を展開したのである。言い換えれば、正統主義の教義学は、「あたかも神の単純さは、（≪神の側からする≫）神ご自身を指し示す指示を通してよりも」、「それとして一般に、合成されず、分割されないものそのものの概念についての（≪人間の側からする、人間の自己意識・理性・思惟による、人間的理性や人間的欲求による≫）あらゆる種類の思弁を通して、もっと単純な仕方で証しされ表示されることができるかのように」思惟し語ったのである、それ故にそれは、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）における起源的な第一の形態の神の言葉（「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリスト自身、「啓示の実在」そのもの）を、それ故に具体的には第二の形態の神の言葉（預言者および使徒たちの最初の直接的な第一のイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」、啓示の「概念の実在」）を、自らの思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者として認識し自覚することをしないで、「あたかもまさにその対象（≪人間的理性や人間的欲求によって対象化され客体化された対象、「存在者レベルでの神」、その神の名と呼びかけによる啓示≫）の記述の（≪人間学的神学あるいは哲学的神学としての、総括的に言えば自然神学的な≫）学問的な正確さ」について思惟し語ったのである。しかし、キリストにあっての「神ご自身は（≪ご自身の中での神としての神のわれわれのための神としてのその存在の仕方ににおいて、すなわち「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・創造主、第二の存在の仕方である父の子としてのイエス・キリスト自身――啓示・和解主、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体において≫）最も身近なものであり給う――事実、徹頭徹尾全く単純なものがそうでなければならないように」である、「また、同時に」キリストにあっての神は、ご自身の中での神として、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない差異性」における三つの存在の仕方を持つ「失われない単一性」を本質とする三位一体の神として、「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」・「神の＜内＞三位一体的父の名」・「三位相互＜内在性＞」において「失われない単一性」を本質とする三位一体の神として、神と人間との無限の質的差異の下で、「最も遠いものであり給う――事実、徹頭徹尾全く単純なものがそうでなければならないように」である。言い換えれば、「神ご自身は、何ら他者を必要としないその対自存在としての一者である」（ご自身の中での神として一者であり給う）、と同時に、自己還帰する対他的存在として「一切の他者が成り・一切の他者があるところの一者であり給う」（ご自身の中での神としての神のわれわれのための神としてのその存在の仕方において一者であり給う）、「神ご自身においてのみ実在であり真理である」全き「自由」・「主権」な存在として、自己還帰する対自的であって対他的な存在であり給う。

唯名論的な命題と半唯名論的な命題について――
　ご自身の中での神としての、それからまた外に向かってのその存在の仕方においてわれわれのための神としての、「失われない単一性」（神の存在の本質のそれ）と「失われない差異性」（その本質の性質としての神の存在の仕方のそれ）との全体性において存在するイエス・キリストにおいて自己啓示された三位一体の神という認識と信仰を後継へと退け捨象した「極端な対立」の主張は、「古代においては、エウノミオスによって、中世においてはウィルヘルム・v・オッカムおよびカブリエル・ビエルによって代表された厳格な＜唯名論＞的命題」に見ることができる。エウノミオスによれば、「神は事実ただ裸ノ本質（≪神の本質は、概念的に、第一義的、最後的、本来的に「単純なものである」という事柄の不可避性から、「そのほかのすべての言明は、認容、単に副次的な意味でだけ有効な真理の性格以外の性格を持つことができない固有ナコトである神の裸の本質」、神の本質そのもの≫）として言い表される」、また「教皇ヨハネス二二世に非教会的な教えとして断罪された」「マイステル・エックハルト」によれば、「神ゴ自身ノ中デハイカナル区別モアリ得ナイシ、イカナル区別モ認識サレ得ナイ」と言い表された、また同じようにシュライエルマッヘルによれば、「われわれが神（その方の本質は、彼によれば、原因性の中で尽されてしまう……神）に帰するすべての性質（≪「差異性」・「相違性」としての「多数性」と「個別性」≫）は、神の中での特別なものを言い表しておらず、……ただ宗教的な自己意識の様々な段階において、絶対依存の感情を神に関連づける際の関連の付け方における特別なことを言い表している」とされる、またＲ・ゼーベルクによれば、「神の絶対的な単一性に対応しつつ、われわれは、性質（≪「差異性」・「相違性」としての「多数性」と「個別性」≫）の中に、それ自身徹底的に単一的な神性の（われわれの思惟にとって避けることのできない）表現以外の何ものも見て取ることないであろう」、と言い表される。このように、彼らの言明は、ご自身の中での神としての内在的な「失われない単一性」と「失われない差異性」との全体性として存在している「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である「父なる名の内三位一体的特殊性」、「神の内三位一体的父の名」、「三位相互内在性」の「否定」性にある。
　しかし、「神学的伝統の主な流れ」は、「厳格な唯名論とは違って」、「神の完全性」の「多数性についての言明」における「われわれ（≪人間の自己意識・理性・思惟の自由な類的活動における＜認識主体＞≫）の神認識についての言明である……ということの方に、強調点が置かれている」（＜半唯名論＞的命題）。「ポラーヌスは、……神ノ本質的ナ性質ハ、（実際ニ区別サレルノデハナイヨウニ）事物の本性カラシテ区別サレルノデハナク、……（≪人間の自己意識・理性・思惟の自由な類的活動における＜認識主体＞の≫）理性ニヨッテ区別サレル。更ニモットヨイ言イ方ヲスレバ、ワレワレノ概念ト理解デモッテ、アルイハワレワレノ認識ノ仕方ニシタガッテ、区別サレル」、と述べている。また、「クエンシュテットは、ワレワレノ有限ナ理解ハ、神ノ無限ナ、最モ単純ナ本質ヲ、ヒトツノ全キ概念ヲ用イテ全キ仕方デ心ニ思イ浮カベルコトガデキナイノデ、ソコデワレワレノ理解ハ、ソレヲ不完全ナ仕方デ表示シテイル様々ナ、（≪人間的理性や人間的欲求やによって対象化された≫）不十分ナ概念ヲ用イテ神ノ本質ヲ把握スル。、（≪人間的理性や人間的欲求やによって対象化された≫）ソレラノ不十分ナ概念ハ、神ノ性質オヨビ属性ト呼バレル」、と述べている。「ヴェークシャイダー」は、これらの不完全な仕方での、不十分な認識、概念構成について、人間的「精神ノ虚弱サ」に根拠づけている。これらの言明の「強調点は、……神ご自身が、その性質のあの多様性の中で認識されることによって、身を落としてわれわれに合わせ、われわれの認識能力に適合し給うたということの上に置かれた。これらの言明は、人間の自己意識・理性・思惟の自由な類的活動における＜認識主体＞の神認識についての強調である。このことを、「ダマスコのヨハネは、……神は名を持ち給わない、『しかし、善意からして、われわれに対応させつつ、ご自分を呼ばしめ給う』」、と述べている。このような訳で、「カルヴァンは、……神の性質は、『神ガ神自身トシテ何デアルカ』デハナク、『ワレワレニ対シテ何デアルカ』を語っている」、「ソノタメ、神ニツイテノコノヨウナ認識ハ、空虚デ見掛ケ倒シノ思弁ヨリモ、ムシロ生キ生キシタ感動ノウチニアル」、と述べている。このような訳で、「ヴォレプは、……神的ナ属性ハ……ソレニヨッテゴ自身ヲ虚弱ナワレワレニ対シテ認識スベク提示シ、マタ被造物カラ区別サレル神ノ性質ノコトデアル」、と述べている。また、「Ｃ・Ｉ・ニッチ」は、「神の性質は、自己意識および世界意識の運動および変化を契機に、性質として開示される」、と述べた。このように「それとしての神の性質そのものを……主張しようと望んだ」「これらすべての命題の背後」には、「唯名論的な背景および意味」が隠れているのである（＜半唯名論＞命題）。「トマス・アクィナス」はもちろんのこと、「シュライエルマッヘルもそのことをしているのであり」、その「地盤の上に身を置いたプロテスタント正統主義はなおさらそうなのである」。これらの言明はすべて、イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現されたところの、キリストにあってのご自身の中での神としての内在的な「失われない単一性」と「失われない差異性」との全体性（単純性と区別という神の本質の区別を包括した単一性、神の本質の単一性と区別）として存在している、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」・「神の＜内＞三位一体的父の名」・「三位相互＜内在性＞」を後景へと退けたそれである。したがって、それらの言明においては、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする聖性・秘義性・隠蔽性において存在する神の不把握性ということに対する、それ故にそのことに基づく終末論的限界ということに対する認識と自覚が欠けているのである。したがってまた、客観的な啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、復活したキリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動・自己展開、その時間性としてのキリスト教に固有な類の歴史性（それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造、すなわち秩序性）、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいてのみ終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）ということに対する認識と自覚が欠けているのである。こうした中で、クエンシュテットは、「神ノ属性ハワレワレノスベテノ知的活動以前ニ、神ノ中デマコトデアリ、固有ナモノデアルという命題……でもって唯名論的な根本的な見方」を「見かけ上だけ破砕」したのである。ここで「見かけ上だけ破砕」という意味は、その命題の主張には一貫性がなかったからである。すなわち、クエンシュテットは、この命題を「翻して、……モシモワレワレガ、本来的ニ、正確ニ語ロウト欲スルナラバ、神ハイカナル固有性モオモチニナラズ、……事実的ナ区別モ、イカナル（事柄ニシロ流儀ニシロ）合成モユルサナイ純粋ナ、最モ単純ナ本質……デアリ給ウ。何故ナラバ、ワレワレハマコトニ最モ単純ナ神ノ本質ヲヒトツノ全キ概念ヲ用シテ完全ナ仕方デ心ニ思イ浮カベルコトハデキナイカラデアル。ソレ故ニ、不十分ナ仕方デ神ノ本質ヲ表示シテイル不十分ナ、様々ナ（……属性ト呼バレル）概念ヲ用イテ不十分ナ仕方デ神ノ本質ヲ理解スル。ソノヨウニワレワレノ理解ハ、事柄ノ側カラハ区別サレテイナイコトヲ区別スル」、と述べているからである。何故こうなってしまうかと言えば、彼らは、人間の側からする、神と人間との混淆・混合、神学と人間学との混淆・混合（人間学的神学）を志向し目指しているからである、総括的に言えば自然神学あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教を志向し目指しているからである。ポラーヌスも、クエンシュテットと同じ轍を踏んでいる。ポラーヌスは、「神ノ本質的ナ性質ハ永遠カラ永遠ニワタッテ神ノ中ニアル……神ノ本質ヨリモ後デアルトイウコトハナイ。何故ナラバ、ソレラハソレ自体デ同一ダカラデアル……。神ノ本質的ナ固有性ナシニハ、神ハ（ゴ自身ナシニ存在サレナイヨウニ）存在スルコトガデキナイ」と述べながら、「その後直ちに（≪この命題を翻して≫）、……本来的ニ言ウナラバ、神ノ中ニハ多クノ性質ガアルノデナク、タダヒトツノ性質ガアルダケデアル。ソレハ、神ノ本質ソノモノ以外ノ何モノデモナイ。……シカシワレワレノコトヲ顧慮シテ、アタカモ多クノ性質ガアルカノヨウニ言ワレル。ソレハ、ワレワレノ中ニ多クノ性質ガアルカラデアル」、と述べている。このような訳で、「ペトロス・v・マストリヒトも、……ワレワレガマズ第一ニ神ノ本質ヲ……ソコカラ属性ガ出テクル根ノヨウニ理解スル限リ、属性ハ神トアタカモ言ワバ第二ノ本質ニオイテ合致スルヨウニ、神ニ合致スル。何故ナラバ、ワレワレハ、神ハアワレミアリ、智恵ニ富ミ、正シイ方デアルト理解スルコトガデキル前ニ、神ハ存在スルト理解スルカラデアル」、と述べている。「この認識ノ方法は、＜事柄ノ中ニ含マレルスベテノ基礎＞（≪このことは、「トマスの後に続いたカトリックの教義の中でも……多くのことが語られた」≫）ヲ欠イテイナイ」・「ただ単に人間の情に合わせてだけでなく、マコトニ、固有ナ仕方デ、神の性質について語るべき権利と必然性を基礎づけた」が、「しかしながらこの基礎ということで何が理解されるべきであるかについて、人は、立ち入って説明しようとしなかった」し、「そのことを立ち入って説明することはできなかった」。何故ならば、「神の本質ということで……それとしての神の本質essentiaそのものが、換言すれば根本においては結局……それが単純なものであるということが概念的に見て第一のこと、最後的なこと、本来的なことであり、この事柄において語られなければならず、それに相対してすべてのそのほかの言明は、認容、単に副次的な意味でだけ有効な真理の性格以外の性格を持つことができない固有ナコトである神の裸ノ本質が理解されなければならないという前提が確立されていたからである」。「ポラーヌス、クエンシュテット、v・マストリヒト」たちは、「聖書が性質的に規定された神の本質について語った際の重要な意味づけに対して公正であろうと努力した」のであるが、すなわち「神ノ独自ナ性質は神の本質の属性アルイハ偶性ではなく、この本質そのものであるという命題は、まさに昔の属性論の中心命題として言い表わ」すことができるのであるが、「この命題の解釈は、……全線にわたって独自ナ性質に不利な仕方で為された」のである。言い換えれば、「独自ナ性質がその本来性（≪「失われない差異性」≫）を、最後的には本質（≪「失われない単一性」≫）を有利にする仕方で」喪失させてしまったのである。したがって、その「命題の解釈」は、「それに対するわれわれの関係の中に基礎づけられているとして説明されたのである」。「人が、神の本質を、あの純然たる存在の中に見出すと考えたということは、人が、彼の神概念を（≪「神論の決定的に重要な構成要素」であり「啓示の認識原理」である聖書的啓示証言における≫）三位一体論から定義せずに、……一般的な神概念（人間的理性や人間的欲求やによって規定された神、すなわち「偶像」としての「古代ストアおよび新プラトン主義の神概念」、すなわち人間的理性や人間的欲求やによって対象化され客体化された「存在者レベルでの神」）からして定義したということ」であり、それ故に「そのことが、……悪い報いを受けたのである」。それは、＜悪しき＞成果でしかなかったということを自己暴露したのである。「アウグスティヌス」も、ご自身の中での神としての神のわれわれのための神としての外に向かってのその存在の仕方における「多様（≪「＜主的＞であること」、父、子、聖霊という「失われない差異性」の中での「三度別様」な「存在の仕方」――すなわちその「失われない差異性」における父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事全体としての神の存在≫）ノ単純性（≪「＜主＞」、「本質」、ご自身の中での神としての「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」における「失われない単一性」≫）あるいは単純ナ多様性についてのその言葉でもって、……＜主＞と＜主的＞であること、＜主的＞であることと＜主＞との間の神の中にあり勝利を収める単一性を実り豊かなものとすることはできなかった」。このように、「神的な性質」を、すなわち「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方である「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」というご自身の中での神の側に内在的に根拠づけられずに、「非本来的ニ解釈」したが故に、「Ｄ・Ｆ・シュトラウスがあざけったように、『不幸な真中』に身を置いたということは、……否定されるべきもないことなのである」、ちょうどキリスト教信仰・神学・教会の宣教は、「哲学的用語をつかうという事実にもかかわらず、……哲学的試みが終わるところから始まる」のであり、「方法論的には、ほかの学問のもとで何も学ぶことはない」にも拘わらず、「新約聖書の釈義に役立つ新しい鍵」を前期ハイデッガーの哲学原理に見出しバルトの前で歓喜したブルトマンに対して、当然にもハイデッガー自身が、「『今日まさにこのマールブルクでは、無理やり模造された敬虔さと結びついて、弁証法の見せかけがとくに肥大している』が、それよりは『むしろ無神論という安っぽい非難を受け入れた方がよい』」、何故ならば人間的理性や人間的欲求やが対象化し客体化した「『いわゆる存在者レベルでの神への信仰は、結局のところ（≪聖書的啓示証言におけるキリストにあって≫）神を見失う……』」ことになるからと根本的包括的に原理的に「揶揄」・批判したように。

　このような訳で、「十九世紀におけるドイツの神学者の内のある者たち（≪Ｆ・Ｈ・Ｒ・フランク、Ｇ・トマジウス、Ｊ・Ａ・ドルナー≫）」が、前述したような「＜全面的な唯名論＞と原則的に手を切っただけでなく」、「＜トマス的およびプロテスタント的――正統主義的な伝承の半唯名論＞とも原則的に手を切ったということは、彼らの名誉となることである」――「Ｆ・Ｈ・Ｒ・フランク」は、キリスト教「信仰は、もしも神に対して永遠性と全能と神聖性の属性を神にとって＜客観的＞に固有なものとして帰さないとしたら、神を全く、現実のもの、絶対的なもの、一つのものとして承認していないことになろう」、「これらの性質についての教義学的な把握」は、一方での、「多種多様な性質、そしてその概念によれば一つのものに帰せられてしまうことのない性質（≪総括的に言えば、ご自身の中での神としての神のわれわれのための神としての外に向かっての「失われない差異性」における三つの存在の仕方、すなわちイエス・キリストの父――すなわち「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方・啓示者・創造主、子としてのイエス・キリスト自身――父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方・啓示・和解主、聖霊――愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方・啓示されてあること・それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・救済主なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体≫）としての属性の＜客観的＞な現実性」と、他方での、「それへと性質が遡っている、否、それらの性質をまさにその多種多様性の中で現にあるところのものにするところの神の破壊されることのない単一性（≪総括的に言えば、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない単一性」、ご自身の中での神としての「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」における「失われない単一性」≫）」が、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で、「認識にとって姿を現わし、互いに矛盾することなしに結び合わされる時にだけ、信仰の意識に対応する」ことができる、と述べている。また、「Ｇ・トマジウス」は、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の「神の性質は、神の本質以外の何ものでもないという命題は正しい」、「またそれらの性質（≪全き自由の神の存在としての全き自由の神の多種多様な全き自由の愛の行為の出来事全体≫）の中で他者に対する神の関係が知らされるというもう一つ別な命題も正しい」、「しかし、これら二つの命題は互いに『あたかも他者に対する神の関係がそれらの性質の中で告げ知らされるが故に、それらの性質はそれだけ僅かに神的本質であるとかあるいは全く神的本質でないとか』」と、「『二つの命題を（≪分離させ、二元論的に≫）対置させることは正しくない』」と述べているし、「『あたかもそれらの属性が事実神的本質であり、また神的本質を表現しているということによって』」、全き自由の神の対自的で自在な「失われない単一性」という命題と全き自由の神の対他的で他在な「他者に対する神の関係」性としての「失われない差異性」（多種多様性）という命題――これら『二つの命題を、（≪分離させ、二元論的に≫）対置させることは正しくない』」、「『何故ならば、もしもそれらの属性がそもそも神的性質であり、神的であるすべてのものが神にとって、神自身ではないほかのものから成長してくるものでないならば、それらの属性は、どうしても神的本質に属しており、神的本質を構成し、表示していなければならないからである』、『もしも神がただ（≪われわれのための神として外に向かってのその存在の仕方において≫）世との関係の中に立ち給うだけであれば、また神の性質はすべてただ外に向かっての関係、啓示、活動の仕方でしかない』からである、「このような見方は、神が世に依存し給わない神の独立性（≪キリストにあっての神の自己還帰する対自的であって対他的・自在であって他在という全き自由≫）を危うくする、何故ならばその時、神は（≪われわれのための神として外に向かってのその存在の仕方においてだけ≫）世との関係を通して初めて現にあるところのものとなるからである」、しかし、聖書的啓示証言におけるキリストにあっての神は、先ず以てご自身の中での神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である「父なる名の内三位一体的特殊性」、「神の内三位一体的父の名」、「三位相互内在性」における「ご自身に対する神の関係があるのである』」、それ故にわれわれは、「『まさに、そのことの上に、神の内在的なあるいは本質的な性質を確認』」していく作業をしていかなければならない、と述べている。これと「同じ正しい線上で、Ｊ・Ａ・ドルナーも、……『もしも神がわれわれに対して、そのご自身の中での存在（≪ご自身の中での神としての、自己還帰する対自的であって対他的・自在であって他在である全き自由の「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である「父なる名の内三位一体的特殊性」、「神の内三位一体的父の名」、「三位相互内在性」としての神ご自身の中での存在≫）についての知識を与えることができず、あるいは与えようと欲せられず、ただ（≪ご自身の中での神としての神の存在を後景へと退け捨象した、われわれのための神としてのその存在の仕方において≫）世界の中での神の存在についての知識だけを与えることができ、与えようと欲せられるならば、神は、世界の中で――（≪その場合、神は、≫）ご自身を啓示されないのであるから――必然的にご自身以外のほかのものを啓示』」することになってしまう、しかしキリストにあっての「『神は現にあるのと違った仕方に見えることを欲し給うことができず、また二元論的な力が彼の啓示意志を妨げることもないので、ただ……神ご自身の啓示の中で、（神が現にないところのもの、そのようではないところのものについてではなく）神が現にあり給うこと、現にどのようであり給うかについての啓示を見てとることしか残っていない』。……（≪このことが、≫）われわれがこれからさらに思惟をすすめてゆかなければならない線である」。言い換えれば、第三の形態の神の言葉に属する全く人間的な教会のわれわれは、あくまでも神の側の真実としてある、それ故に客観的な現実性としてある・「成就と執行」、「永遠的実在」としてある、成就・完了された個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和・幸福そのものであるイエス・キリストにおける客観的な啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動・その自己展開・その時間累積、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を授与する力等を自ら保持しているところの、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおける神の自己啓示（それ故に、具体的には、その最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」、すなわちイエス・キリスト自身によって直接的に唯一回的特別に召され任命されたその人間性と共に神性を賦与され装備された預言者および使徒たちのイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」、神の言葉の第二の形態である聖書的啓示証言）をわれわれの思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者として、それに絶えず繰り返し聞き教えられことを通して教えるということしか残っていないのである。

　「完全に穏当で……完全に開いている神の属性論」について言えば、その第二の存在の仕方（啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの、インマヌエルの出来事）であるイエス・キリストにおいて自己啓示された聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の「神は、われわれにとって、その啓示の中で、完全に顕わされている（≪神の顕現・顕われ≫）と同時に、……完全に隠されているということ（≪神の隠蔽・隠れ≫）から出発しなければならない……」、換言すればイエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現された神について、われわれは、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方――「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間「イエス・キリストの名」から出発しなければならない、それ故にわれわれは、「神の顕われと神の隠れについて証言し、弁明しなければならない……」。このような訳で、「人は、ここで、部分的に顕わされ、部分的に隠されていると言うことはできない」のであって、「まことに、完全に顕わされ、完全に隠されていると言わなければならない……」のである。したがって、単一性・神性・永遠性を本質とする「自分を覆い隠す」・隠蔽性・秘義性・「聖性」としての三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である父が子として「自分を自分から区別」したところの、その第二の存在の仕方であるイエス・キリストにおける神の自己啓示は、ナザレのイエスという「人間の歴史的形態」――すなわち「イエス・キリストの名」、その「失われない差異性」の中での第二の存在の仕方（全き自由の神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉）において、その存在の本質である「失われない単一性」・神性・永遠性の認識と信仰を要求する啓示なのである、換言すれば神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」（イエス・キリストにおける啓示・和解の出来事、具体的には神の言葉の第二の形態の聖書的啓示証言のそれと聖霊の注ぎによる信仰の出来事、すなわち聖霊の注ぎによる人間的主観に実現された神の恵みの出来事）、「啓示と信仰の奇蹟」に基づいて信仰の認識としての神認識を、すなわち啓示認識・啓示信仰を要求する啓示なのである。このような訳で、「われわれの人間的な直観と概念」が、「神の啓示の恵みを通して」、換言すれば神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」（「啓示と信仰の奇蹟」）に基づいて、イエス・キリストにおける神の自己啓示としての「神の真理（≪啓示の真理、それ故に具体的には聖書的啓示証言≫）にあずかるように要求され、高められ」、終末論的限界の下で「われわれのためのその存在（≪ご自身の中での神としての神のわれわれのための神としての外に向かってのその存在の仕方におけるその存在≫）の中での、またご自身（≪自己還帰する対自的であって対他的・自在であって他在の全き自由の「ご自身の中での神」）≫）の中での」「神の実際の認識（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）の手段に、奇跡的にさせられている限り、完全に顕わされている」と言うことができるのである。何故ならば、神の側の真実として客観的に存在している啓示自身は、その啓示に固有な証明能力を、キリストの霊である聖霊の証しの力を、神の言葉自身の出来事の自己運動・その自己展開・その時間累積を、あの「啓示と信仰の出来事」を、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造（秩序性）を持っているからである、先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意ができているところの、「人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一」（『ローマ書』）であり、「永遠の（神との人間の）和解」であり、神との間の「平和」（ローマ五・一）であり、それ故に神の認識可能性である聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の�~の「失われない差異性」の中での第二の存在の仕方、啓示者である父なる神の子としての啓示、「啓示の実在」そのもの、起源的な第一の形態の神の言葉、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて、「神の用意の中に含まれて、人間にとって、神に向かっての、したがって神認識（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）に向かっての人間の用意が存在する」からである。そのことと同時に、「われわれの人間的な直観と概念（……神認識のための……唯一の手段……）それ自身は、それとして神を把握する能力を持っておらず、些少なりとも持っていない限り、（≪聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神に対して≫）完全に隠されている」のである。何故ならば、われわれ人間は、人間論的な自然的人間であれ、教会論的なキリスト教的人間であれ、誰であれ、「『自分の理性や力（≪感情、悟性、意志、自然を内面の原理とした禅的修行等≫）によっては』全く信じることができない」（『福音主義神学入門』）からである・「肉であって、それ故に神ではなく、そのままでは神に接するための器官や能力を一切持っていない」（『教会教義学　神の言葉�T／１・２』）からである。このような訳で、キリストにあっての「神認識」には、「認識の服従」――すなわち起源的な第一の形態の神の言葉を、教会の宣教、われわれの思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者として、絶えず繰り返しそれ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）におけるその起源的な第一の形態の神の言葉（それ故に具体的には第二の形態の神の言葉としてのその最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」である聖書的啓示証言）へと遡るという仕方で、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる人間が人間的に所有する人間の信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰を志向し目指していくというそれ、あの「神への愛」と「神への愛」を根拠とした「神の讃美」としての「隣人愛」という連関の中で＜純粋＞なキリストにあっての神、＜純粋＞なキリストの福音を尋ね求める「神への愛」を志向し目指していくというそれと、「非認識の謙遜」――すなわちキリストにあっての神の聖性・隠蔽性・秘義性、そのことから必然的に規定されてくるわれわれ人間の側の神の不把握性に対する認識と自覚」という「両方のことが課せられている」。そして、キリストにあっての「神の啓示は、神の真理であるが故に」、「両方のことが神ご自身」であり、「神の最も固有な実在である」。したがって、キリストにあっての「神は、その啓示の中で、われわれに対して、ご自身を全くわれわれの認識の対象とし給うた」ところの「その顕われとその隠れの中で、……両方のことの中で認識しなければならない」のである、「それ故にこそ、（≪われわれ人間は、≫）確かに（≪神の隠れの中で≫）いたる所で沈黙しなければならない」し、神の顕われの中で「いたる所で（≪あの「神の言葉の三形態」の関係と構造の中で、絶えず繰り返しそれに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、神語り給う故に、神語り給うことを≫）語らなければならない」のである。したがって、われわれは、前述したような仕方で「神を認識することが許され、認識すべきであることによって」、「われわれは、神についてのその思惟と語りでもって、神の主人となることはなく、あくまでも徹頭徹尾神の僕で、しかも徹頭徹尾無益な僕であり続け、繰り返しそのような無益な僕とならなければならないということに対して、十分」に認識し自覚しているのである。われわれは、「神の属性論に対して、二重のこと」、すなわち前述した、神の顕われと神の隠れ、「われわれのための神」・「われわれのためのその存在」（ご自身の中での神としての神のわれわれのための神としての外に向かってのその存在の仕方）と「ご自身の中での神」（「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」・「三位相互＜内在性＞」におけるご自身の中での神）を「語ることが課せられている」のであるが、このことは、「時間的な同時性の中で……告白することはできない」。何故ならば、キリストにあっての神は、「まさにそのように……イエス・キリストにあってご自身を啓示し給うたからである」。したがって、われわれは、一方を抽象して、すなわち一方を拡大鏡にかけて全体化して、「われわれの認識」（≪われわれ人間の神認識の可能性≫）を、「表向きは本来的」なものとしつつも、「最後的には非認識（≪われわれ人間の神認識の不可能性≫）の中に解消させてしまったり」、「それと反対に、われわれの非認識（≪われわれ人間の神認識の不可能性≫）を、表向きは本来的」なものとしつつも、「最後的には認識（≪われわれ人間の神認識の可能性≫）の中に解消させてしまうことはできないし、そのようにすべきではないのである」。何故ならば、イエス・キリストにおける「神の啓示の中には、したがって神の実在の中には、……永遠的な同時（≪「失われない単一性」≫）と非同時（≪「失われない差異性」≫）があるということが、神の現実だからである」。このような訳であるから、「ここでも、神の属性論の中には両方のこと」――すなわち「神の顕われと神の隠れ」が「並んで、……相前後して、……特別に力を奮うようにならなければならないとわれわれが言う時、われわれは（≪一面を抽象し固定して、あるいは一面を拡大鏡にかけて全体化して≫）われわれの認識の限界に立ち戻るように強いられてはおらず」、「われわれはただ対象そのものの現実（≪「神の顕われと神の隠れ」の総体性・全体性≫）を念頭に置いて語っているのである」、それ故にわれわれは、起源的な第一の形態の神の言葉（それ故に具体的には第二の形態の神の言葉としてのその最初の直接的な第一の聖書的啓示証言のそれ）を、現存する教会の宣教における、現存するわれわれの思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、純粋なキリストの福音を、純粋なキリストにあっての神を尋ね求める「神への愛」（このような「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」――キリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、この総体性）を志向し目指すのである。