カール・バルト（その生涯と神学の総体像）

『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』「三十一節　神の自由の様々な完全性　二　神の不変性と全能」２２−１７

「三十一節　神の自由の様々な完全性　二　神の不変性と全能」２２−１７
　われわれは、「Fr.トゥレティーニ」の「定式的な表現」の中で、すなわちわれわれのための神としてのその三つの存在の仕方において「神的業ヲ遂行スル源デアル神ノ能力ハ」（神の全能の働きの力は）、ご自身の中での神としての神がわれわれのための神としてその存在の仕方において「自分自身ノ外ヘト自分ヲアラワス神ノ本質ソノモノ」、すなわち「ソレヲ通シテ神ハ欲スルコトオヨビ欲スルコトガデキルスベテノコトヲナスコトガ出来ルトシテ理解サレル神ノ本質ソモノ以外ノ何モノデモナイ」という「定式的な表現」の中で、「主要問題を認識した」。すなわち、われわれは、このトゥレティーニの定義の中に、「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」におけるご自身の中での神としての「神の全能と（≪それからまたわれわれのための神としてのその存在の仕方における≫）その全能の働きの間の平明な、その限り（≪徹頭徹尾「まさに避けられなければならない」≫）危険な同一視」という主要な問題に出会った――すなわち、そこにおいては、ご自身の中での神としての「神の全能」とそれからまたわれわれのための神としてのその存在の仕方における「神の全能の働き」との危険な同一視において、「神の力」は、われわれのための神としてのその存在の仕方において「神的ナ業ヲ働カス原理であり、しかもはっきりと言葉に出して、自分自身ノ外ヘト自分ヲアラワス神の本質のことであるというように表示されている」。「もしもこのことが、ここで言われなければならないすべてであるならば」、「神ゴ自身ノ内部デハ」、「外に向かってのその働キが度外視」され、それ故に「神に対していかなる力も帰せられず」、それ故にまた神に対して「無力サが帰せられなければならないことが含まれなければならない」ということになってしまう、また「神は、神とは違う実在（≪全被造物、自己身体としての自然、性としての他者身体としての自然、宇宙を含めた外界としての自然、もっと言えば人間の身体・肉体と精神・意識を介した普遍的で実践的な全自然との相互規定的な対象的活動によって生み出される人間化された自然、非有機的身体≫）……があることによって初めて全能である」ということになってしまう、換言すれば神とは異なる実在（≪全被造物、特に人間、特にイスラエル、特に教会≫）がなければ神は全能であることはできないということになってしまう。それ故にまた「この外に向かっての神の（≪その存在の仕方における≫）働きかけが、初めて全能ということ」になってしまう。「人は既に」、トゥレティーニだけでなく、「ポラーヌスのところ」においても、「神の全能は、（≪神とは異なる≫）ホカノモノノ中デ活動スル神ノ原理（≪すなわち、神の本質の区別を包括した単一性においてではなく、それ故にご自身の中での神としての神の全能を捨象し、われわれのための神としてのその存在の仕方における神の全能の働きを抽象した「神ノ原理」≫）であるという命題を見出す」。「ポラーヌスは、（≪神の本質の区別を包括した単一性においてではなく、それ故にご自身の中での神としての「神の全能」とわれわれのための神としてのその存在の仕方における「全能の働き」とを「同一視」しながら、すなわちわれわれのための神としてのその存在の仕方だけを抽象して二元論的に≫）神の（≪ご自身の中での神としての「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の≫）本質的ナ力と（≪われわれのための神としての「失われない差異性」における三つの存在の仕方における≫）位格的ナ力……とを区別しようとするのである」。すなわち、ポラーヌスは、「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」におけるご自身の中での神、すなわち聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である父の子としてのイエス・キリスト自身、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊なる神の全能ということと、それからその神の外に向かってのわれわれのための神としてのその三つの存在の仕方、すなわち起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・言葉の語り手・創造主――、第二の存在の仕方である父の子としてのイエス・キリスト自身――啓示・語り手の言葉・和解主――、第三の存在の仕方である愛に基づく父と子の交わりとしての聖霊――啓示されてあること・「神の言葉の三形態」の関係と構造、秩序性・救済主――なる神の全能の働きという、この神の本質の区別を包括した単一性ということを認識し自覚していなかったのである。このような訳で、ポラーヌスは、そのように「三位一体的な力をまさに度外視しようと欲した時、神に固有な力について何も知ることができず、ただ（≪彼自身の理性や欲求が対象化し客体化した≫）ホカノモノノ中で活動スル原理についてだけ」知ったに過ぎなかったのである。このように、人が、聖書的啓示証言に信頼し固執し連帯して神の本質の区別を包括した単一性において「神の力」を理解するのではなく、ご自身の中での神としての神の全能を捨象し、それからまたその神のわれわれのための神としてのその存在の仕方における神の全能の働きだけを抽象してあるいは部分を全体化して二元論的に、「一方は『ただ』内三位一体的な意味を持つだけであり、他方は『ただ』（≪神とは異なる≫）ホカノモノノ中デ活動スル原理でしかない二重の神の力について語る（≪恣意的独断的な≫）自由を持っているとしたら」、「三位一体論全体が何の意味を持っているのかを理解することができない」のである。「ここでもまた、どのように正統主義自身が、（≪あの「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性に信頼し固執し連帯した≫）三位一体論の中に含まれたキリスト教の根本認識の解体に対して」、「自分ではことさらそのことをしようとすることなしに、またそれらの根本認識そのものと取り組んでのすべての誠実な努力にもかかわらず」、「それが、それらの根本認識を少しも適用しようとせず」、「他方で神の性質を最高の世界原理」――すなわち「後でその神学的な性格をいとも容易にはぎとられ、哲学的な真理として解釈されることができ、（≪人間的理性や人間的欲求やが対象化し客体化したに過ぎない≫）その哲学的な真理（≪「存在者レベルでの神」、その神の名と呼びかけによる啓示≫）の中で人は神信仰に対する完全な代用品を見出し・持ったと考えた最高の世界原理の言い換えとして記述することでもって準備してしまったということは明らかである」。この危険な準備を、ポラーヌスは、「カルヴァンの死後五〇年経たないうちに準備」したのである。キリストにあっての「神は、三位一体の神として生き給うことによって、父、子、聖霊であるあの神の力の中で、すなわち同じ起源性、必然性、栄光の中で」、「換言すれば、神が（≪「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」におけるご自身の中での神としての≫）ご自身の中で、あの生むことと生まれること、生じさせることと出ずること（それの中で、神はご自身の中で、そのような神的生命の実在を、それ故にまたその可能性を持ち、そのような実在および可能性であるあの生むことと生まれること、生じさせることと出ずること）の中で生命を持つものである力の中で生き給うことによって、まさに神が三位一体の神であり給うことによって、神は全能なる方であり給う」、「詳しく言えば、まさにそのようなものとして、その（≪ご自身の中での神としての神のわれわれのための神としてのその存在の仕方における≫）全能の働きの中で初めて、ただその全能の働きの中でだけ」、「すべての他ノモノおよび他ノモノノ中デノ活動以前に、活動ノ上で、また高所においても、また（≪ご自身の中での神としての≫）ご自身の中ででも全能である」が故に、それ故にそれからわれわれのための神としてのその存在の仕方において「（≪神とは全く異なる≫）他ノモノノ中デ活動スルコトの中」でも「全能」であるところの「神の不変性と全能」という神の本質の区別を包括した単一性において「全能なる方であり給う」。

　「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」におけるご自身の中での神としての「神の全能」と、われわれのための神としてのその存在の仕方における「神の全能の働き（≪業・行為・活動≫）」との「本来的な、原則的で体系的な明瞭な同一視」は、「それによって（≪その存在の仕方における業・行為・活動・≫）「働きの主体としての（≪ご自身の中での神としての≫）神ご自身を見る」観点が「失われてしまう……同一視」は、「シュライエルマッヘル（下記の【注】を参照）とその学派がなした同一視である」、換言すれば「それによってそのような展望（≪観点≫）がそれとして最後的に否定されてしまわなければならない同一視」は、「シュライエルマッヘルとその学派がなした同一視である」。この場合、われわれのための神としてのその存在の仕方における「神の全能の働き」（・業・行為・活動）という観点だけが前景化されてしまう――「神的全能の概念の中には……すべての空間と時間を包括する自然の連関全体が、すべての有限の原因性に対し対置されている永遠的な普遍的なものとしての神的な原因性の中に基礎づけられているということが含まれているし」、また「われわれの絶対依存の感情が言い表しているような神的な原因性が、有限な存在の全体の中で完全に表現され、それ故に神の中に原因性があるすべてのことは現実となり・現実に生起するということが含まれている」（「シュライエルマッヘルの信仰論の五四節の題詞」）。この思惟と語りからわれわれは、『ヘーゲル』に即して言えば、ブルトマンやモルトマン等々もそうであるが、「シュライエルマッハー……の所でも」、「聖書の主題であり、同時に哲学の要旨である」神と人間との無限の質的差異を後景へと退けてしまった、すなわち人間中心主義的な神の人間化あるいは人間の神化の原理を発見した「ヘーゲルの強力な痕跡に遭遇する……」、またフォイエルバッハの『キリスト教の本質』に即して言えば、そのシュライエルマッハーの信仰論の題詞の思惟と語りにおけるキリスト教信仰は、「人間は自分の本質を対象化し、そして次に再び自己を、このように対象化された主体や人格へ転化された存在者（本質）の対象とする。これが宗教の秘密である」というキリスト教信仰でしかないだろう、「神の啓示の内容は、神としての神から発生したのではなくて、人間的理性や人間的欲求やによって規定された神から発生した……」というキリスト教信仰でしかないだろう、それ故にその「対象に即してもまた、『神学の秘密は人間学以外の何物でもない！』」だろう、それ故にまた「神の意識は人間の自己意識であり、神の認識は人間の自己認識である」だろう、それ故にまた人間の自己意識・理性・思惟あるいは人間的欲求の「自己運動を神のそれと取り違えるという混淆」・混合、「神の自由（上述した【注】を参照）を認識し（≪自覚し≫）ていない事態」であるだろう。「人は、既にこの題詞からして……シュライエルマッヘルが全能の主体としての神に対してもはや全く興味を持ってはおらず」、「神の全能そのものの概念に対して」、「すべての有限の原因性に対し対置されている永遠的な普遍的なものとしての（≪彼自身の自己意識・理性・思惟や欲求やが対象化し客体化した「存在者レベルでの神」としての≫）神的な原因性の中に基礎づけられている」「自然の関連に……興味を持っているということを見て取る」だろう。「各々のものは、すべてを通して成り立っている。そしてすべては、全く（≪そのような≫）神的な全能を通して成り立っている」――「この成り立つことは、命題の後半によれば」、「有限なる存在全体がそれの側で、（≪そのような≫）神的原因性の完全な一切を尽くした記述であり」、それ故に「有限なる存在全体の内部で、現実の生成と出来事が対応しないような（≪そのような≫）神的な原因性もなければ、（≪そのような≫）神的な全能もないという仕方で生起する」。この思惟と語りは、「宗教とは、すべての神崇拝の本質的なものが人間の道徳性にあるとするような信仰である」とした「カントは、本源的であるゆえに、すでに前もってわれわれの理性に内在している神概念の再想起としての神認識という点で、アウグスティヌスの教説と一致する」（『カント』）というその教説を近代主義的プロテスタント主義的キリスト教神学の中で焼き直したそれであるだろう。「ただそれに基づいてだけこの主張をなすことができる絶対依存の感情は、……それ自身、世界の連関と関わ」り、「ただ世界の連関の中でだけ、われわれは神的な原因性を感じる」（この思惟と語りは、吉本に即して言えば、次のように言うことができる――自己関係づけを個体の内部構造・意識構造においてではなく、個体と対象との関係でいえば、自己関係づけとは、「心的規範」意識であり、それは「対象にたいする関係つけの意識」、対象の受け入れの意識、対象の空間化の意識である。言い換えれば、心的規範とは、自己関係つけの意識の空間化とその度合のことである。また、自己抽象づけを個体の内部構造・意識構造においてではなく、個体と対象との関係でいえば、自己抽象つけとは、「心的概念」を構成する意識、了解作用の意識、時間化の意識である。言い換えれば、心的概念は、自己抽象つけの意識の了解作用・時間化とその度合のことである。そして、その個体と対象とのあいだを介在するのは「言語」である。この「言語というものを基本的に成りたたせているのは、心的な規範および概念」である。個体の内部構造・意識構造における心的規範は、外化・表現されて対象化された心的「規範」・「言語における文法構造」、すなわち言語的規範、文法的規範・音韻の規範・韻律の規範等の外在的な共同的規範となる。また、心的概念は、外化（表現）されて言語表現の水準を決定する対象化された「心的概念」・「言語における実体」となる。このような仕方で、言語は、その個と現存性・類と歴史性の交点で、世界を分節化する。その場合、言語・概念によって分節化された世界は、客観的な世界そのものではなく、人間が人間的に所有する人間の言語によって抽象された世界・人間化された世界・人間の非有機的身体化された世界であり、ある抽象度やある意味づけやある物語性を付与された世界である――１０月２２日論述分の「カール・バルトの主要著作に即して考量した、福嶋揚『カール・バルト　未来学としての神学』の水準について」を参照）。この時、「もし君が無限者を思惟するならば、そのとき君は思惟能力の無限性を思惟し且つ確証しているのである。そして、もし君が無限者を情感するならば、そのとき君は感情能力の無限性を情感し且つ確証しているのである。理性の対象とは自己自身にとって対象的な理性であり、感情の対象とは自己自身にとって対象的な感情である」、何故ならば「人間の内的生活は、自分の類・自分の本質に対する関係における生活である。人間は思惟する、すなわち人間は会話をする、人間は自分自身と話をする。動物は自分以外の他の個体がいなければ類の機能をひとつもはたすことはできない、しかし人間は他人がいなくとも考えるとか話すとかという類的機能……を果たすことができる」からである（『キリスト教の本質』）。「したがって、『われわれにとって、（≪われわれのための神としてのその存在の仕方における≫）神的な原因性に対して、（まさにあの感情が心に抱くところの）自然の関連を超えてゆくためのどのような結びつき点も欠けている』」。その「敬虔な自己意識」は、「もしもそれがそのようなことをすれば、（≪人間自身の自己意識・理性・思惟や欲求やによって対象化され客体化された「存在者レベルでの神」としての≫）神的全能の自己制限を、それと共にその前提全体を、最後的には自分自身を放棄することになるであろうという理由」で（≪近代主義的な人間の対自的で対他的な自由や自己運動・自己展開を擁護するために≫）、神とは全く異なる「実在するもの全体の外部で可能なるものの思想（≪神と人間との無限の質的差異の下での「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」におけるご自身の中での神としての全き自由の神の全能、その神のわれわれのための神としてのその存在の仕方における全き自由の神の全能の働き≫）へとわれわれを導くことはない」、すなわち総括的に言えばわれわれを自然神学の外部へと、自然的な信仰・神学教会の宣教の外部へと導きことはできない、換言すれば三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事である・それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）に信頼し固執し連帯したキリスト教信仰・神学・教会の宣教へと導くことはできない。「創造主に対して、ただ単にこの一つの世界に対応する創造の力だけでなく、形作ラレタモノニ対シテノ（無限に多くのもろもろの世界に対しての）力（≪人間は精神・意識――身体・肉体を介した宇宙を含めた全自然との普遍的で実践的な相互規定的な対象的活動を行うことができる、そうした力≫）も帰せられている（≪という時代的制約性を持った≫）バシリウスの言葉を引用」したシュライエルマッハーには、前述したように神とは全く異なる人間化された自然を含めた宇宙等全自然・「実在するもの全体の外での……神ご自身の可能なるものを問う問い」が、「存在しなかった」のである。しかし、「意志することとできること、意志することとなすこと、できることとなすことは、（≪イエス・キリストにおいて自己啓示されたキリストにあったの≫）神の中では切り離せないが故に、（≪全き自由の、「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」におけるご自身の中での神として神の、それからまたその神のわれわれのための神としてのその存在の仕方における、神的な≫）『全き全能は分割できない・欠陥のない仕方で、すべてのことをなす全能である』」。したがって、このことを後景へと退けては、「神の全能について何も語られることはできない」のである。このような訳で、「既に正統主義のところで明らかであった誤謬」は、シュライエルマッハーにおいては「さらに凌駕され、決定的となった」のである。何故ならば、「神の不変性と全能」という神の本質の区別を包括した単一性におけるキリストにあっての神の「全能を、原則的に、他ノモノノ中デ働ク（≪われわれのための神としてのその存在の仕方における≫）神の力として定義することで満足した時」、キリストにあっての「神は、事実、なそうと意志され・なすところのこと以上をなすことができるということを認めた」のであるが、しかしそこでは、ご自身の中での神としての「神ができるということは、（≪われわれのための神としてのその存在の仕方における≫）神の事実上の意志することとなすことの中でそのまま消滅し・消失してしまったからである」。

【注】
　シュライエルマッハーによれば、「われわれが神（その方の本質は、彼によれば、原因性の中で尽されてしまう……神）に帰するすべての性質（≪「差異性」・「相違性」としての「多数性」と「個別性」≫）は、神の中での特別なものを言い表しておらず、……ただ宗教的な自己意識の様々な段階において、絶対依存の感情を神に関連づける際の関連の付け方における特別なことを言い表している」とされる。このように、シュライエルマッハーの言明は、内在的な「失われない単一性」と「失われない差異性」との全体性として存在している「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方である「父なる名の内三位一体的特殊性」、「神の内三位一体的父の名」、「三位相互内在性」の「否定」性にある。この人間中心主義的な神の人間化あるいは人間の神化（思惟に思惟を重ねて具体的普遍の頂へと高次化した思惟は、自然から超出した精神であるから、その頂を極めた「精神は、また精神自体としては神と全く同一である」という有限と無限との統一としての究極的同一性）の原理を発見したヘーゲル（人類史の尖端的段階において世界普遍性を獲得していた人間中心主義的な近代主義的思想）を宗教（その尖端的段階にある近代主義的プロテスタント主義的キリスト教）に適用した「シュライエルマッヘルは、宗教意識あるいは感情の……時間的および事柄的な段階」において、神と人間との無限の質的差異を後継へと退けて、「罪と恵みの対立を度外視して」、人間自身の「敬虔な意識それ自身から」、「神の永遠性、遍在、全能、全知が生じてくる」、また人間自身の「敬虔な意識(罪の意識)から」、「神の神聖性と義が生じてくる」、また「対立が除去される中での(≪人間自身の≫)敬虔な意識(恵みの意識)から神の愛と知恵が生じてくる」と考えたのである（今まで述べてきた『教会教義学　神論』による）。このような思惟と語りをする近代主義的プロテスタント主義的キリスト教を目指したシュライエルマッハーに対して、フォイエルバッハは、「もし君が無限者を思惟するならば、そのとき君は思惟能力の無限性を思惟し且つ確証しているのである。そして、もし君が無限者を情感するならば、そのとき君は感情能力の無限性を情感し且つ確証しているのである。理性の対象とは自己自身にとって対象的な理性であり、感情の対象とは自己自身にとって対象的な感情である」等（『キリスト教の本質』）という言葉で根本的包括的に原理的に批判したのである。

　ここで、「唯名論的な属性論（【注】――今回の論述３０−４を参照）」は「どのような結果をもたらすかということ」が、すなわちそれは、「神的性質（≪ご自身の中での神としての、それからわれわれのための神としての、その「失われない差異性」における三つの存在の仕方≫）の一致がただリアルな単純サ（≪聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない単一性」≫）として理解されるだけであって」、「リアルな多種多様性（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方――父・子・聖霊なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の多種多様な愛の行為の出来事全体≫）として理解されない」という結果をもたらすことが、「その憂慮すべき姿の中で……明らかとなる」。言い換えれば、ここでは、「人間の自己運動を神のそれと取り違えるという混淆」、「神の自由（上述した【注】を参照）を認識していないという事態」を惹き起こし、キリストにあっての神は、人間の自己意識が「捕らえた捕囚」でしかなくなってしまう（『ヘーゲル』）、換言すれば神は人間の自己意識が対象化し客体化した「世界の捕らわれ人となる」。「R・A・リブジウス」も、「神の全能は、『神の自分自身の中で（≪ご自身の中での神としての「失われない単一性」の中で≫）秩序づけられた全能の働き（≪その神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方、性質、業、働き、行為≫）……として表示されるべきである』として、それ故にその区別を包括した単一性において神の全能とその全能の働きを主張するのではなく、「神の全能と全能の働きの間の絶対的な一致を……熱心に主張した」（第二の形態の神の言葉である聖書またその聖書に信頼し固執し連帯した第三の形態の神の言葉である教会の宣教において神は、すなわちイエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現されたキリストにあっての神は、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方――すなわち起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊であり、このような三位一体の神として自己啓示・自己顕現された、それ故にこのご自身の中での神としての「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神は、われわれのための神として外に向かってのその存在の仕方において、「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質とする起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・創造主、子としてのイエス・キリスト自身――啓示・和解主、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の全き自由の愛の行為の出来事全体としての全き自由の神の存在である。したがって、この啓示が、教会の宣教の＜客観的＞な信仰告白および教義である三位一体論の根拠である。したがってまた、この三位一体論は、「神論の決定的に重要な構成要素であり、啓示の認識原理」である。このような訳で、「教会の宣教の批判と訂正」は、常にこの三位一体論に即して行わなければならないのである。何故ならば、この三位一体論を啓示認識の原理にしない場合、すぐに神性否定のキリスト論や半神・半人キリスト論や三神論に、総括的に言えば自然神学に、自然的な信仰・神学・教会の宣教に埋没していく以外にないからである）。シュライエルマッハーは言う――「神的全能についての教義の宗教的内容」は、「人間は自然的および道徳的な生においてと同じように、また救いの生においても、終始、（≪彼自身の自己意識・理性・思惟や欲求やが対象化し客体化した「存在者レベルでの神」としての≫）神的な原因に依存しており、それ故決してどこにおいても、（≪そうした≫）神的な秩序から身を引くことができず、むしろ（≪そうした≫）神的な意志に謙遜に服従する中でいつでも（≪そうした≫）神の助けに満ちた近さを確信することができるという敬虔な意識の事実的な言明である」（ここで、自然的世界での「自然法則」は「神の全能の啓示」であり、道徳的世界での「同時的な世界秩序」は「神の全能の啓示」であり、このことは、「救いの世界の中で力を奮う救いの秩序についても妥当する」。しかし、例えば恣意的独善的に、三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事である・それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）を後景へと退けてしまった、近代主義的プロテスタント主義的キリスト教における自由な彼自身の自己意識・理性・思惟や欲求やが対象化し客体化した「存在者レベルでの神」としての神的な原因に依存した人間の恣意的独善的な「救いの秩序」は、現存するこの世界における価値意識の多様化とそのことによる関係意識の衰退・解体の中で、百人百様の様相を呈してしまうだろう。「信者の自己意識の中で啓示される」「救いの生活の経験」の中で、われわれが「よきことを意志し・遂行することすべて」の中で働く「神の力」は、「信仰にとって、すべてを基礎づける力」、すなわち「その中で自然の世界と道徳的な世界」を「存在」させ「存続」させ「基礎づける力と同一である」。「人は、ここでは、まさに語られてはならないこと」が語られているということを認識する、すなわちご自身の中での神としての・それからまたわれわれのための神としての外に向かってのその存在の仕方における「神の全能ということで、最後的には結局ただ、……自然的な力および道徳的な力と同一視された宗教的意識の（≪シュライエルマッハーの自己意識・理性・思惟や欲求やが対象化し客体化した宗教意識の≫）神の力のことだけが言おうとされているということ」を認識する。また、ここでは、キリストにあっての神は、われわれのための神としてのその存在の仕方において「われわれの中で、また何らかの世界の中で、すべての活動以前に、活動の上に、それらの世界の中で力を奮う『秩序』以前に、『秩序』の上で、生ける主として（≪ご自身の中での神としての≫）ご自身の中で力強くいまし給うということ」が語られていないことを認識する。「R・ゼーベルク」も、ご自身の中での神としての「失われない単一性」における「神の全能」が、「直接全能の働き（≪その神のわれわれのための神としての外に向かっての「失われない差異性」におけその存在の仕方の全能の働き≫）として表示されるのを見たいと望んだ」。そうした神学的状況に対して、「シュライエルマッヘル的な時期の終りのところで、H・シュテファン」は、「神の全能と全能の働きの間の関係と区別を問う問いと直面して、『神を現実の中で経験することに（≪バルトに即して言えば、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造、すなわち秩序性に基づいて≫）習熟しようとせず、それ故に、神を理性の希薄な形成物（≪人間的理性や人間的欲求やによって対象化され客体化された「存在者レベルでの神」≫）の中で把握しようとする敬虔性、僧侶、あるいは抽象的思惟の中に生きている人間の敬虔性』について、ただ肩をすくめながらいぶかることができた」。
　「正統主義の中ではじまり、シュライエルマッヘルの学派の中で完成されたこの見方の悪」は、「そのような見方」が、ご自身の中での神としての神の全能と、それからまたわれわれのための神としての外に向かってのその存在の仕方における神の全能の働き、「神ができることと神がなし給うことの間の区別を除去すると共に、まさにまた神の行為（≪神の存在の仕方、全き自由の神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体≫）の中での神の自由に対する理解を破壊し、それと共に（≪神のそれとは全く異なる≫）すべてのそのほかの出来事と区別された神が（≪われわれのための神として外に向かってのその存在の仕方において≫）なし給うこととしての神の行為の讃美」を「不可能にする」という点に、「神の恵みと神聖性」・「神のあわれみと義」・「神の忍耐と知恵」という神の本質の区別を包括した単一性における「自由な愛の中で恵み深く、あわれみ深く、忍耐強く働かれ、われわれに向けられた行為としての神の行為の讃美を、不可能にする」という点にある。また、「この見方の悪」は、「間接的には、この見方が必然的に、神の力を、……世界の中で働いている力そのものと同じだとして見る宿命的な同一視にまで遡ること」ができるという点にある。したがって、その場合、「現実の中で神を体験する体験を指し示す勝利に満ちた指し示しでもって、何も語られていないか、あるいはひどく無神的な何かが語られている」ということになる。したがってまた、ハイデッガーに言わせれば、「それよりは、『むしろ無神論という安っぽい非難を受け入れた方がよい』」、何故ならば、そういう「いわゆる（≪それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性に信頼し固執し連帯することを後景へと退けた、人間自身の自己意識・理性・思惟や欲求やによって対象化され客体化された≫）存在者レベルでの神への信仰は、結局のところ（≪キリストにあっての≫）神を見失う」ことになるからである。自然的世界での「自然法則」は「神の全能の啓示」であり、道徳的世界での「同時的な世界秩序」は「神の全能の啓示」であり、このことは、「救いの世界の中で力を奮う救いの秩序についても妥当する」という「シュライエルマッハーの『すべての空間と時間を包括する自然の関連全体』」――「それらすべては、われわれに対して、それらが神の全能の一つであるということの中で、直ちにまた神の全能との出会いにわれわれがあずかるためには、ただそれらが経験され・体験されさえすればよいというように」、「あらかじめ与えられてはいない」のである。信仰の認識と神認識（啓示認識・啓示信仰）において、ご自身の中での神としての「失われない単一性」における「神の全能」とそれからまたその神のわれわれのための神としての外に向かっての「失われない差異性」におけるその存在の仕方の多種多様な「神の全能の働き」（父・子・聖霊なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体）は、啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の自己運動、全き自由な神のその都度の全き自由の恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」、その出来事を根拠とした「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）を必要とするのである、換言すれば先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意ができているところの、「人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一」（『ローマ書』）であり、「永遠の（神との人間の）和解」（神と人間との無限の質的差異の下で、それ故にあくまでも神の側の真実からする、神の人間との架橋）であり、神との間の「平和」（ローマ五・一）であり、それ故に神の認識可能性である聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の�~の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、父なる神の子、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて、「神の用意の中に含まれて、（≪人間論的な自然的人間、教会論的なキリスト教的人間、誰であれ、われわれ≫）人間にとって、神に向かっての、したがって神認識（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）に向かっての人間の用意が存在する」と言わなければならないのである。神の本質の区別を包括した単一性において、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とするご自身の中での神としての「神の全能」は、「神の自由な愛の全能」である、それ故に「そのようなものとして、いかなる意味においても決して神の業（≪その神のわれわれのための神としての外に向かっての「失われない差異性」におけるその三つの存在の仕方≫）の関連とも秩序ともそのまま一致せず」、それ故にまた「人が真剣に（≪神の側の真実としてある≫）神の業の関連および秩序（下記の【注】を参照）について語ろうと思うならば」、「決して抽象されてはならない神の自由な愛の全能である」、換言すれば形而上学的に一面だけを抽象し固定化してはならないし、一面だけを拡大鏡にかけて全体化してはならない「神の自由な愛の全能である」。キリストにあっての「神が働き給うこと」が、それ故にご自身の中での神としての「神ご自身が……そのみ業（≪その神のわれわれのための神としてのその存在の仕方≫）の中ででも問題である」。このことを、『教会教義学　神の言葉�T／１・２』に即して言えば、イエス・キリストにおけるキリストにあっての神の自己啓示は、ナザレのイエスという「人間の歴史的形態」――すなわちまことの神にしてまことの人間である「イエス・キリストの名」（その性質・働き・業・行為・行動・活動、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、すなわちご自身の中での神としての神のわれわれのための神としてのその第二の存在の仕方、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」）において、その「存在の本質」である「失われない単一性」・神性・永遠性の認識と信仰（信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰）を要求する啓示である。キリストにあっての「神に固有な、その全能の働きの中で決して尽くされてしまわない父、子、聖霊なる神の（≪イエス・キリストにおける≫）特別な全能の啓示なしには」、「われわれは、（≪人間的理性や人間的欲求やによって対象され客体化された≫）名目上の現実の中で・名目上の（いわゆる神的な世界秩序を含めての）神的な世界秩序の中で」、「神の全能の働きを経験するのではなく」、「ただ非現実で無力さのあの力の啓示（≪第三の形態の神の言葉に属する全く人間的な教会、その指導層、その成員の、その人間的理性や人間的欲求やによって対象化され客体化された偶像神の名と呼びかけによる、「善意」に基づく「最も洗練された」「神と人間についての独断的な観念に基づく独断的に考え出された救い」と平和の企て・「計画」および「方法が支配する」啓示――『啓示・教会・神学』≫）、鬼神たち」、それ故に「あらゆる種類の不可能性の海を経験し・体験する」だけであるだろう。「われわれに出会うすべての現実の力、われわれによって（≪われわれの自己意識・理性・思惟によって対象化され客体化されたところの≫）現実であるとみなされる力が、そのまま神の力」ではない。神と人間との無限の質的差異の認識と自覚が重要である。したがって、もしも「そのように受け取るとしたら、それは、自然、歴史、運命、そして最後的には人間自身の・盲目的な神化の命題であるであろう」。ご自身の中での神としての「失われない単一性」における「神の全能」を、それからまたその神のわれわれのための神としての外に向かっての存在の仕方における「神の全能の働き」とを「同一視することは、この神化に向かって……迫ることである。それは、この神化を、多かれ少なかれ自分の中に含み入れている」（このことを『ルートヴィッヒ・フォイエルバッハ』に即して言えば、三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事である・それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）のその最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」としての預言者および使徒たちのイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」（第二の形態の神の言葉）を、自らの思惟・語り・行動における原理・規準・法廷・審判者・支配者として、それ故に絶えず繰り返しそれに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、イエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの教会を目指すところの教会の一つの機能としての神学（教会教義学）として、教会の宣教の課題である聖書的啓示証言におけるイエス・キリストの出来事を目指すことのない神学（教会教義学）は、それ故にまたそうした教会の一つの機能としての神学（教会教義学）は「方法論的には、ほかの学問のもとで何も学ぶことがない」（『バルトとの対話』）のであるから、人間学的な哲学原理・認識論・世界観との混淆・混合を目指す神学（教会教義学）は、またそういう仕方で「何らかの抽象を以て始められ何らかの空論に終わるところの」「すべての大学社会の神学」は、意識的にか無意識的にか「この神化を、多かれ少なかれ自分の中に含み入れている」のである、それ故にそれらは、教会の一つの機能としての神学（教会教義学）としては「非学問的」（『教会教義学　神の言葉�T／１・２』）なのである）。このような訳であるから、「そのような同一視は、拒否されなければならない」。「すべての真の現実は、唯一のまことの可能性としての神の全能の中に基礎づけられている。しかし、そのような真の現実がなんであるかということを、われわれは決して（≪われわれから先行して≫）あらかじめ知ることはできない」。すなわち、「何が真の現実であり、そのようなものとして、われわれが実際に神の全能を讃美する契機および対象であることができ、讃美する契機および対象でなければならないかということは、（≪イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現されたキリストにあっての≫）神の啓示を通して、神の啓示の中で、（≪それ故に全き自由の神のその都度の全き自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて≫）はじめて決定される」、ちょうど神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を通して、われわれは、「実在の成就された時間」（「キリストの復活の四十日」（使徒行伝１・３）である「イエス・キリストの時間」・「時間の主の時間」が、われわれのそのような「問題に満ちた非本来的な失われた」われわれの世界・時間を「攻撃」していることを認識することができるように、またちょうど「われわれ人間の失われた非本来的な古い時間」・世は、「本来的な実在としてのイエス・キリストの新しい時間」・世によって、キリストの復活における「神の勝利の行為」によって包括され・止揚され・克服されて「そこにある」ことを認識することができるように（それ故に、その勝利の行為は、復活したキリストの再臨・終末・完成に包括された、「敗北者も依然としてそこにいるところの勝利の行為」である）、またちょうど神の側の真実としてある「啓示・和解」そのものであるイエス・キリストにおける「平和の概念は包括的な救済概念と同じ」であるから、それは、われわれ人間によって「初めて完成されねばならない」ようなそれではない、すなわち「イエス・キリストにおいては神と人間が、また人間とその隣人が平和的なのであり、敵としてではなく忠実な同伴者、仲間として、共にあるのである」、このようにイエス・キリストにおいて「平和は、神ご自身が世界史のまっただ中に創造し見えるものとして下さった現実性である」、神の側の真実としてある「現実性」、「成就と執行」・「永遠的実在」としてある「現実性」である、この「贈り物はただわれわれがこれを受け取ることを待っている」、それ故にわれわれが「この事実に向かって、目と耳を閉ざしていることが悲惨なのである」ということを認識することができるように。したがって、「もしもわれわれが（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて≫）その区別」（前述したその区別）を、それ故に「神の固有な全能を知らないならば」、「その時には、どうしてわれわれはわれわれを脅かしてくる誘惑」、すなわち「神の全能を讃美するわれわれの讃美、神の全能に当然向けられるべき恐れと信頼をただ不可能さとして・ただ無力さとしてだけ」理解させようとする「虚偽と堕落の力」の方に、「あるいはそのような不可能さの総内容」の方に、「悪魔の力の方へ」「向けて行こうとする誘惑から守られていることができるであろうか」。

【注】
　「創造された世界」における「神の愛」と「われわれの世界」における「イエス・キリストの事実の中における神の愛との間には差異」がある。すなわち、後者の神の愛は、「まさしく神に対し罪を犯し、負い目を負うことになった人間の失われた世界に対する神の愛」である。すなわち、「和解ないし啓示」は、「創造の継続」や「創造の完成」ではない。この意味は、「和解ないし啓示」は、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神のその存在の仕方の差異性における第二の存在の仕方である「イエス・キリストの新しい神の業」である、ということである。それは、「神的な愛の力」・「和解の力」である。イエス・キリストは、和解主として、創造主のあとに続いて、神の「第二の存在の仕方」において「第二の神的行為（≪性質、働き、業、行動、活動≫）を遂行した」のである。この神の「存在の仕方」の差異性における「創造と和解のこの順序」に、「キリスト論的に、父と子の順序、父（≪啓示者・創造主≫）と言葉（≪父なる神の子としての啓示・和解主≫）の順序」が対応しており、「和解主としてのイエス・キリスト」は、創造主である父に先行することはできないのである。しかし、父と子は共に「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質としているから、この従属的な関係は、その「存在の本質」の差異性を意味しているのではなく、その神のわれわれのための神としての外に向かってのその「存在の仕方」にける差異性を意味しているのである。言い換えれば、このことは、父なる神の存在の仕方の中での一人の神（存在の本質）、子なる神の存在の仕方の中での一人の神（存在の本質）、聖霊なる神の存在の仕方の中での一人の神（存在の本質）、という神の「存在の本質」とその神のわれわれ人間へと向かう外に向かっての「存在の仕方」（性質・働き・業・行為・行動・活動）における自己還帰する対自的であって対他的・自在であって他在である神の全き自由を意味している。