カール・バルト（その生涯と神学の総体像）

カール・バルト『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』吉永正義訳、新教出版社に基づく

『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』「三十一節　神の自由の様々な完全性　二　神の不変性と全能」２２−１４（１５２−１５９頁）

「六章　�~の現実（下）　三十一節　神の自由の様々な完全性」について、バルトは、次のような定式化を行っている。
　神の自由の神性は、神ご自身の中で、またそのすべてのみ業の中で、ひとりでいまし、不変であり、永遠であられるということ、まさにそれと共にまた遍在され、全能であり、栄光に満ちた方であり給うということ、から成り立っており、そのことの中で真であることが確証される（この定式の詳述については、２０１８年１２月２８日の記事で行っています）。（３頁）

註：客観的な対象として存在している、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性等々については、＜カール・バルトの『教会教義学　神の言葉』および著作全般を根本的包括的に原理的に理解するためのキーワードとその内容について――幾つかの註＞（２０１６年６月１３日作成）で論じています、参考にしてください。

「三十一節　神の自由の様々な完全性　二　神の不変性と全能」２２−１４
　キリストにあっての神が「生ける神」であるということは、神は、神の自由（下記の【注１】を参照）の様々な完全性としての「神の不変性と全能」という「単一性と区別」（区別を包括した単一性）において、ご自身の中での神として――すなわち聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方である父、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子、「父はこの父」・「言葉の語り手であり」（啓示者）であり、「子は父の子」・「語り手の言葉」（啓示）であるという愛に基づく父と子の交わり（「父なる神と子なる神の愛の霊」）としての聖霊として、換言すれば「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性として）――「不変的な仕方で現にあるところのものであり給う完全性」であり、それからわれわれのための神として――すなわち全き自由の神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体として、換言すればその全き自由の愛の行為の出来事としての起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父（啓示者・創造主）、その第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身（啓示・和解主）、その愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊（それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造、秩序性において啓示されてあること・救済主）なる神として――「神が欲することをなし給うことができる完全性」であり給うということである。キリストにあっての神は、ご自身の中での神であり・それからわれわれのための神という区別を包括した単一性において、「まさに自由なるものとして神は愛し給う」。われわれは、このことを、前節においては、神の単一性と遍在という区別を包括した単一性において、「まさにひとりの方（≪存在の本質≫）として神は遍在（≪三度別様な三つの存在の仕方、働き・業・行為≫）し給う」と「解釈」（下記の【注２】を参照）した。そして「われわれは今、引き続いて」、神の不変性と全能という区別を包括した単一性において、「まさに不変的なる方（≪存在の本質≫）として神は全能（≪三度別様な三つの存在の仕方、働き・業・行為≫）である」と「解釈する」。
　「最古の信仰告白」は、「神に対してこのひとつの性質を帰することでもって満足した」――「ワレハ父ナル全能ノ神ヲ信ズ、と」、「まさにこの性質の中に、すべてのそのほかの性質の総内容を、いわばすべてのそのほかの性質の摘要を見て取った」。「まさにこの概念こそが、全く特別な仕方で、神的自由の積極的な性格を……特徴づけている」。「生ける」、「力強くあり給」うキリストにあっての神は、「全能で」、換言すれば「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・創造主、父の子としての第二の存在の仕方であるイエス・キリスト自身――「啓示の実在」そのもの・和解主、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体で、「事実欲し給い、あるいは欲することができるであろうすべてのことをなし得給う」、「すべてのことをなすことができるし、またすべてのことをない得給う」、「神の本質の確証および実証としてまことの可能性であるところのすべての可能性を持ち給う」――この「生ける」・「力強くあり給」う「全能の神としての神」は、そのようにして「不変であり給う」、それ故に「それ自身で不動な、動きのない存在」から・「死を意味しなければならないであろう不変なるもの」から「区別され給う」、「ご自身をすべての側に向かって」、「その被造物が、そしてまた（≪その被造物としての人間が、恣意的独善的に「わがまま勝手に」対象化した≫）被造物の偽りの神々（≪「存在者レベルでの神」≫）がいるところで」、「ご自分を神として、まことの生ける神として、（≪死んだ・「全く……無力」な・「完全」に「無能力」なすべての偽りの神々から≫）区別し給う」。キリストにあっての神は、「その全能の中で、……神によって造られた実在（≪全宇宙、全自然、その一部としての人間≫）の上に主として立ち給い、ご自身を（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、ナザレのイエスという人間の歴史的形態――イエス・キリストの名、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて≫）啓示されることによって、それらの実在のただ中で、自らを際立たせ給う」。キリストにあっての神は、この「全能の中で、……そのようなものとして神の生命を通して・神の生命の中で生きるすべての造られた生命の源泉および保持であり、同時にまたそれらの造られた生命の死」、復活に包括されたキリストの死によって「神の中に、いかなる場所も持たず・既に否定としてただ神の足元にあることができるだけである死に対しても、絶対主権的であり給う」――このことは、『福音と律法』に即して言えば、「人間の人間的存在がわれわれの人間的存在である限りは、われわれは一切の人間的存在の終極として、老衰・病院・戦場・墓場・腐敗ないし塵灰以外には、何も眼前に見ないのであるが、しかしそれと同時に、人間的存在がイエス・キリストの人間的存在である限りは、われわれがそれと同様に確実に、否、それよりもはるかに確実に、甦りと永遠の生命以外の何ものも眼前にみないということ――これが神の恩寵である」ということである。キリストにあっての神は、その「全能の中で」、「永遠から永遠にわたって、その現実存在の故に」、「被造物が自分自身をそのような神々とみなす場合であれ、あるいは被造物がそのような神々を、自分たちの神ならぬ現実存在の何らかの映像の中で認識し敬うべきだと考える場合であれ、とにかく神ではないところの神々（≪フォイエルバッハやマルクスやハイデッガーが根本的包括的に原理的に批判したところの宗教としての神々、「存在者レベルでの神」としてのそれ、歴史＜主義＞・科学＜主義＞・経済＜主義＞・種族＜主義＞・民族＜主義＞・国家＜主義＞・平和＜主義＞等々としてのそれ≫）に関するすべての現実の、また可能な、幻想と誤謬の反駁であり給う」。キリストにあっての神は、神の不変性と全能という区別を包括した単一性において「全能であり給うが故に、（≪三度別様な三つの存在の仕方において≫）全能であり給うことによって」、神の単一性と遍在という区別を包括した単一性において「（≪存在の本質として≫）ひとりの・唯一の・単一な神であり給い、そのような方として遍在し給う」。「それと共に」、区別を包括した単一性における「神の恵みと神聖性、神のあわれみと義、神の忍耐と知恵」は、「同じあるいは似た名」の下での「被造物に対して……被造物の何らかの虚構な作り事に対して帰せられるであろう完全性」に対して、「徹頭徹尾際立って」存在している。区別を包括した単一性における「神の恵みと神聖性、神のあわれみと義、神の忍耐と知恵」は、神の不変性（≪存在の本質≫）と全能（≪三度別様な三つの存在の仕方≫）という区別を包括した単一性において「全能であるということ、それらすべてそれ自身（≪神の不変性と全能という区別を包括した単一性における≫）神の全能であるが故に」、「全能の恵み、全能の神聖性……であるということの中で」、「生ける」・「力強くあり給」う「まことの神の（≪自由の様々な≫）完全性である」、「それぞれのものが、まことの神ご自身である力と真理を持っている」。

　前述したことが、「昔の神学において普通であった神の全能の定義の本質的な内容」であった――「神ノ能力ハ神ノ（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質とする三位一体の神の≫）本質的ナ独自ナ性質（≪三度別様な三つの存在の仕方、性質・働き・業・行為・行動・活動≫）、スベテヲスベテノコトオヨビ個々ノコトノ中デナスコトガデキ、引キ起コストコロノ神ノ本質的ナ独自ナ性質である、とポラーヌスは書いている」。そして、このポラーヌスにとって、「神の能力は、神の本質と分離されることはできず、それは神の無限な本質と同一であるが故に、ソノ本性ニ従イ、ソレ自身ヲ通シテ全能として言い表されなければならず」、「それの領域は無限であるが故に、ソノ対象ヲ考慮シテ、全能として言い表されなければならず」、「それの効力は無限であるが故に、ソノ効果ヲ考慮シテ、全能として言い表されなければならず」、「それの働きがそれとして無限であるが故に、その活動ヲ考慮シテ、全能として言い表されなければならない」、バルトの表現に依拠すればそれは、「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三度別様な三つの存在の仕方、すなわち起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・創造主、父の子としての第二の存在の仕方であるイエス・キリスト自身――啓示・和解主、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体である。「Fr.トゥレティーニ」の「定式的な表現」――全き自由の、それ故に神として自存的な・また独立的な、それ故に神と人間との無限の質的の下における神として、すなわちご自身の中での神として自在な・それからわれわれのための神として他在な、「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三度別様なその三つの存在の仕方における「神的業ヲ遂行スル源デアル神ノ能力ハ、（≪ご自身の中での神としての神が、われわれのための神として≫）自分自身ノ外ヘト自分ヲアラワス神ノ本質ソノモノ」、すなわち「ソレヲ通シテ神ハ欲スルコトオヨビ欲スルコトガデキルスベテノコトヲナスコトガ出来ルトシテ理解サレル神ノ本質ソモノ以外ノ何モノデモナイ」。「クエンシュテット」の「定式的な表現」――「神ノ能力ハ、ソレヲ用イテ神ガ独立的ニソノ永遠的ナ本質ノ活動を通シテ宇宙ノ中デスベテノコトヲナスコトガデキル力デアル。シカモタダ単ニ神ガ欲シ給ウコトダケデナク、何ラカノ仕方デ可能デアルコト、マサニ矛盾ヲ含ンデナイスベテノコトヲナスコトガデキル力デアル」。われわれは、「これらの定式的な表現の中で、……まず取り組まなければならない主要問題を認識する」。それは、「無限性の概念は全能の定義として」、それ故に「神の存在と本質の定義として、何を意味することができ、何を意味することができないか」、神は「どのようなすべてのことをなすことができ、どのようなすべてのことが神のできるという能力の現実の。また可能な対象として主張されるべきであるのか」、神の能力は「どのような意味で制限されない能力であり、……またどのような意味でそれが神の能力であり」・それ故に「神にとって……不可能なことを除外しつつそれ自身可能なことの標準であるということを通して制限されているのか」、「簡単に言えば、神の力として」・それ故に「全能として、力は何を意味しているのか」、「また完全なあるいは部分的な無力と区別されて」、「また不可能なことをなすことができ、遂行することによって、ただ見かけだけの力であるに過ぎないすべての力と区別されて、実在の力として、力は何を意味しているのか」ということである。

　この問いを取り扱う時も、われわれは、最善最良の方法として、「何かある（≪一般的な≫）一つの力と取り組む」のではなく、何かある一般的な「力それ自身と取り組む」のでもなく、「それとしての一般的な意味での全能と取り組む」のでもなく、徹頭徹尾キリストにあっての「神の力と、そのようにして、その限り」、その「全能と実在の力と取り組まなければならないという確認でもってはじめる」。何故ならば、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を媒介・反復することを通した啓示の類比・信仰の類比・関係の類比を後景へと退けた存在の類比のように、「主辞を賓辞を通して規定しようとする忘れっぽさは、宿命的な結果を伴う」からである、ちょうど人間中心主義の近代主義的プロテスタント主義的キリスト教におけるシュライエルマッハー等々が人間の神化・神の人間化の原理を発見した「ヘーゲルの強力な痕跡を残す」という宿命的な結果をもたらしたように（『ヘーゲル』）、またちょうどトマス・アクィナスだけでなくアウグスティヌスも、その「すでに前もってわれわれの理性に内在している神概念の再想起としての神認識という」教説において、本源的な「宗教とは、すべての神崇拝の本質的なものが人間の道徳性にあるとするような信仰であるとしたカント……と一致する」という宿命的な結果をもたらしたように（『カント』）、またちょうど「啓示は歴史の賓辞ではない」・「歴史が啓示の賓辞である」であるにも拘らず、「特殊と普遍」・「救済史と普遍史」の混合・折衷を目指したモルトマンを含めて歴史＜主義＞が主辞と賓辞を転倒させて啓示は歴史の賓辞であるとして宿命的な結果をもたらしたように（『教会教義学　神の言葉�T／１・２』））、総括的に言えばそのような教会の宣教が・その一つの機能としての神学が、自然神学あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教の段階で停滞と循環を繰り返すという宿命的な結果をもたらしているように。このような恣意的独善的な「忘れっぽさ」は、「まさにここでこそ、特別にそれが全線にわたっていかに転倒したものであるかを明らかにするであろう」――「無限なるもの、単純なるもの、不動なるもの等々という≪人間的理性や人間的欲求やによって対象化された・規定された形而上学的一面的固定的な≫）抽象的な概念を通して神が規定される場合と比べてさらにもっとはっきりと力それ自体という≪人間的理性や人間的欲求やによって対象化された・規定された形而上学的一面的固定的な≫）抽象的な概念を通して神が規定されることは、ただ単に神概念の中立化（≪キリストにあっての神とは全く異なるある特定の人間を・人間自身が対象化したものを神化してしまうという、ある「国家的、政治的、経済的または道徳的な諸原理や理念や体制」を神化してしまうという、ある「特定の人種、民族」を神化してしまうという、「無拘束と圧迫、暴動と圧制」という「悪しきもの」≫）を結果として招くばかりでなく、神概念をその正反対のものに転倒させてしまうことを結果として招くであろう」。「もしも（≪そうした≫）力自身が神の全能であるとすれば、その時そのことは、神は悪しき者であり、神は特別に抜きん出た仕方で、（≪反革命としての悪しき≫）革命的な・暴君的な鬼神（デーモン）であることを意味するであろう」。このことからして、「また……（≪人間的理性や人間的欲求やによって対象化された・規定された形而上学的一面的固定的な≫）あの無限なるもの、単純なもの、不動なるものそれ自体は、……さらに強力な無力さとして理解されるべきである限り」、「無害な、中立的なものではないということが結果として生じてくる」。「このようなものについて語られるべき最後のことは、それは（≪キリストにあっての≫）神ではない」ということが、それ故に「それはただ単に（≪キリストにあっての≫）神と無縁であるばかりでなく、むしろ全く悪魔と関わりがあり、いずれにしても悪魔が現にあるし・持とうと欲していることと関りがあるということが言われなければならない」。

　しかし、三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事である・それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）における第二の形態の神の言葉（預言者および使徒たちの最初の直接的な第一の、イエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」、すなわち啓示の「概念の実在」）である「聖書および聖書を通して証された啓示は、われわれを」、前述したような「宿命的な軌道に導きはしない」のである。「聖書の中においては、（≪キリストにあっての≫）神が、ご自身を力強いもの」、それ故に「全能なものとして啓示されるのであって、決して（≪人間論的な自然的人間あるいは第三の形態の神の言葉に属する全く人間的な教会における教会論的なキリスト教的人間の人間的理性や人間的欲求やによって対象化され・規定された一般的な≫）ある一つの力があるいは全能それ自身が、神的なものとして自分を啓示するのではない」。「われわれは、（≪キリストにあっての≫）神の全能を、……あくまでも（≪第二の形態の神の言葉である≫）聖書に従って、それであるから（≪起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのものであるイエス・キリストにおける≫）神の自己啓示の標準に従って理解することに踏みとどまろうと欲するならば」、「あらゆる事情の下で」、「すべての逆転をさし控えつつ、あくまでもこの順序で理解しなければならないのである」。「人は、既に信条の中で、全能ナルを父ナル神から分離し・父ナル神を全能ナルから説明しようとせず、全能ナルをただ神からして説明しなければならないであろう」、「信条がここで語っている全能は、父なる神の全能である」、「しかもまさに、信条のそのほかの内容によれば、ご自身をそのようなものとして認識すべく与えられ」・それ故に「子および聖霊と同じひとつの本質（≪存在の本質≫）であり給う神にして父なる方（≪起源的な第一の存在の仕方≫）の全能である」、すなわち神の不変性と全能という区別を包括した単一性における全能を、われわれは、「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三度別様な三つの存在の仕方、すなわち起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・創造主、父が子として自分を自分から区別した父の子としての第二の存在の仕方であるイエス・キリスト自身――啓示・和解主、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体として説明しなければならない。言い換えれば、存在の類比的に、「われわれが、（≪先行的に≫）われわれからして既に全能ということが何であるかを知っており」、「それから神の啓示を通して……神が全能であるということを知るようになり」、われわれが神――すなわち「全能として定義された方をわれわれの父として認識しなければならないといった具合ではない」のである、ちょうど 「内被造世界（≪人間世界における対なる共同性としての家族、その時間性としての世代≫）での、……父という呼び名は確かに真実である」が、「非本来的なもの」であるから、われわれは、それを、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）に依拠した信仰の類比において、「神の内三位一体的父の名の力と威厳に依存」しているものとして理解しなければならないように（『教会教義学　神の言葉�T／１・２』）。したがって、存在の類比的に、「われわれが、われわれからして（≪先行して≫）、力および全能として知っていると考えることができるもの」は、「ただ、あの悪しき力それ自身でしかあり得ないであろう」、その「力を神に対して帰することは、冒涜的な企てであるであろう」、「また、人間から、彼らがそのように定義された神を『父』と呼ぶよう要求することは、感傷性……であるであろう」。イエス・キリストにおける「父なる神の啓示」は、「そうではなくて」、「われわれは原則的に、……力と全能が何であるかを（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、すなわち啓示認識・啓示信仰に依拠した信仰の類比において≫）学ばなければならない神的全能の啓示である」。人間的理性や人間的欲求やによって対象化された・規定された形而上学的一面的固定的な「抽象的ニ『全能なるもの』は、神と関りがあるというよりも、あの（≪反革命としての悪しき≫）革命的な・暴君的な鬼神と関りがあるであろう」。

　「人は、アブラハムに与えられた神の言葉（創世一七・一以下）、『わたしは全能の神である』の中で、『わたし』を見逃してはならない」。何故ならば、「そのすぐ後で……『あなたはわたしの前に歩み、全き者であれ。わたしはあなたと契約を結び、大いにあなたの子孫を増やすであろう』」と「解釈されている」からである。この「同じ『わたし』は、前に（創世一二・一以下）アブラハムに向かって」、「あなたは国を出て、親族に別れ、父の家を離れ、わたしが示す地に行きなさい。わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大きくしよう。あなたは祝福の基となるであろう」、「また（創世一五・一）『アブラハムよ恐れてはならない、わたしはあなたの盾である。あなたの受ける報いは、はなはだ大きいであろう』。また（創世一五・七）『わたしはこの地をあなたに与えて、これを継がせようと、あなたをカルデヤのウルから導き出した主です』。このもの、これらの意図をすべて告げ知らせ、部分的には既に実行に移されたところのわたし、このものが、今ご自分を（創世記の文章構成によれば、最後に、最高に、目に見える契約のしるしとしての割礼の制定のすぐ前のところで、またイサクの誕生の決定的な約束のすぐ前のところで）全能なる神と呼び給う」、全能なる神として語り給う。「その本質をこれらの命令と約束の中で証される方が、アブラハムに出会い給う」、ちょうどイエス・キリストにおける神の自己啓示は、ナザレのイエスという「人間の歴史的形態」――すなわち「イエス・キリストの名」（第二の存在の仕方）において、その「存在の本質」である「失われない単一性」・神性・永遠性の認識と信仰を要求する啓示であるように――「この方は、今まさに」、アブラハムの側からではなく、神の側から先行して、その「本質を全能として」、それ故にその「命令と約束を全能なる命令および約束として表示するところの方である」、それからそのことを通して、アブラハムに先行する「この方の前に今、（≪後続する≫）アブラハムはひれ伏す」、アブラハムに先行する「この方を、（≪後続する≫）アブラハムは信じた」、そしてアブラハムに先行する「この方は、（≪後続する≫）アブラハムが……（≪アブラハムに先行する≫）この方を信じたということを彼の義と認め給うた（創世記一五・六）」、先行的に神が語り給うが故に、その神が語り給うたことを、後続的にアブラハムは聞くのである、ちょうど「われわれは、（≪先行する≫）われわれの主としてのイエス・キリストに固執することにより」、換言すればわれわれに先行する主格的属格として理解されたギリシャ語原典「イエス・キリストの」――すなわち「イエス・キリストが信じる信仰」による「神の義、神の子の義、神自身の義」、「律法の成就」・完了、成就・完了された個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和そのものであるイエス・キリストにのみ感謝を持って信頼し固執し固着することにより、「またイエス・キリストがわれわれのかしらであるということに固執することにより（『福音と律法』）、（中略）この主とかしらのもとで、またこの主とかしらとともに、……これからは神の義、神の子の義、神自身の義をまとっている者として生きることを許される」ように（『ローマ書新解』）、またちょうど先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意ができているところの、「永遠の（神との人間の）和解」（神と人間との無限の質的差異の下で、それ故にあくまでも神の側の真実からする、神の人間との架橋）であり、神との間の「平和」（ローマ五・一）であり、それ故に神の認識可能性である聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の�~の「失われない差異性」における第二の存在の仕方である「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて、「神の用意の中に含まれて、人間にとって、神に向かっての、したがって神認識（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）に向かっての人間の用意が存在する」ように。
　「この同じアブラハムについて、われわれは、（マタイ三・九）洗礼者ヨハネが、神は、荒野にある石ころからでも、アブラハムの子を起こすことができると語るのを聞く」。「われわれの神は天にいらせられる（≪キリストにあっての神は、ご自身の中での神として、常に、全宇宙・全自然・その一部である人間の外・彼岸にい給う、それからわれわれのための神としてキリストにあって神はわれわれと共にい給う≫）。神はみこころにかなうすべての事を行われる」（詩篇一一五・三）、「この方は、サラについてアブラハムに語られた言葉によれば（創世一八・一四）、またエレミヤの言葉によれば（エレミヤ三二・一七）――そのエレミヤの言葉はそれから天使がマリアに語った言葉（ルカ一・三七）の中で取り上げられるのであるが――なんでもできないことはない方である」、「またイエスが、マタイ一九・二六によれば、『人にはそれはできないが、神には何でもできない事はない』と語り給う時、……この方のことが言われているのである」。「わたしは知ります、あなたはすべての事をなすことができ」――この「神の『全能』という賓辞が旧約聖書の中ではヨブ記におけるほど頻繁に出てくることはなく、新約聖書の中では�Uコリント六・一八のほかはただ黙示録の一連の箇所の中で現れているだけであるということは、……神の姿はまさにこれら二つの書物の中でこそ、特に具体的に主の姿として、ここでは選ばれた者の生涯の歴史の、あそこでは勝利に向かって急ぎ進んでいるイエス・キリストの教会の歴史の主の姿として、描かれているが故に、注目に値することである」。「神についてこのように賓辞されるようになる脈絡と関係を、エペソ三・二〇以下の頌栄が示している」――「どうか、わたしたちのうちに働く力によって、わたしたちが求めまた思うところのいっさいを、はるかに超えてかなえて下さることがおできになるかたに、教会により、また、キリスト・イエスによって、栄光が世々限りなくあるように」、また「ピリピ三・二一」では、「はっきりと言葉に出して、イエス・キリストについて、彼は『万物をご自身に従わせ得る力の働きによって、わたしたちの卑しいからだを、ご自身の栄光のからだと同じかたちに変えて下さるであろう』と言われている」。われわれが聖書的啓示証言に信頼し固執し連帯するならば、「主辞」は、常に、「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方である「父なる神」――すなわち「アブラハムとの契約の設立者および主、イエス・キリストの父なる神」に、「それと共にまたみ子とその聖霊」――すなわち父が子として自分を自分から区別した父なる神の子としての第二の存在の仕方であるイエス・キリスト自身に、また愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊にある、と言わなければならない。

【注１】
　聖書的啓示証言によれば、「神の自由」という概念は、「自己自身である神の自由」（ご自身の中での神の自由）としての「自存性の概念（≪自由の概念の積極的側面≫）」（全被造物、全宇宙、全自然、その一部としての人間とは全く異なるところの、ご自身の中での神として自在な・われわれのための神として他在な自由）と「神とは違うもの（≪具体的には神とは全く異なる被造物、人間、人間的理性や人間的欲求≫）によって為されるすべての条件づけからの神の自由」としての「独立性の概念（≪自由の概念の消極的側面≫）」との総体性（全体性）において定義しなければならないものである。このような訳で、われわれは、啓示には、啓示自身が持っている啓示の固有な証明能力が、キリストの霊である聖霊の証しの力が、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動が、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を与えることができる授与能力があると言わなければならないのである（『教会教義学　神の言葉�T／１・２』）、「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方であるその復活に包括された「十字架のイエス・キリストこそが、神の選ばれたお方である」、それ故に「予定説は、イエス・キリストにある救いの自由な表現である」（『神の恵みの選び』）等々と言わなければならない。

【注２】
　『教会教義学　神の言葉�T／１・２』に即して言えば、こうである――「存在するものそのもの」・「その純然たる造られた存在」に依拠したアウグスティヌスの「造ラレタモノヲトオシテ、知解サレタ創造主ヲ認識シテ、私タチハ三位一体ナル神ヲ知解スルヨウニシナケレバナラナイ、ソノ跡ハフサワシイカタチデ被造物ノウチニ顕レテイルノデアル」という思惟と語り方に対して、バルトは、根本的包括的な原理的な批判を加えている――そのような「三位一体の跡」は、「世界に対して超越する創造神の跡として理解することはできない」、それは人間的理性や人間的欲求やによって対象化されたただ単なる「人間自身の内在的に理解された宇宙の諸規定・人間的な現実存在の諸規定」・「宇宙論や人間論」でしかない、またそのような三位一体論は、「人間自身に基づく人間の世界理解の、最後的には人間の自己理解」・「神話」、総括的に言えば自然神学の段階にあるそれである。そのような自然神学の段階、そのような自然的な信仰・神学・教会の宣教の段階で停滞と循環を繰り返すのは、その思惟と語りが、「啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力に信頼しない」からである。それに対してバルトは、「神学をただ啓示の中にのみ基礎づけ」るために、あの「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）における起源的な第一の形態の神の言葉（「啓示の実在」そのもの、イエス・キリスト自身）に直接的に唯一回的特別に召され任命された預言者および使徒たちのイエス・キリストについての最初の直接的な第一の「言葉、証言、宣教、説教」（第二の形態の神の言葉、最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」）である聖書に信頼し固執し連帯し依拠したその第三の形態の神の言葉に属する全く人間的な教会の宣教（その一つの機能としての神学）は、「罪深い曲がった人間」の「究極的な限界性」を自覚した人間の言語を前提として（人間の言語を媒介して）、「三位一体を、世界から説明しようと欲しないで、むしろ逆に、世界を三位一体から説明せんと欲する」、と述べた。このアウグスティヌスとバルトとの根本的包括的な原理的な差異性は、前者においては存在の類比的に「被造物ノ中デノ三位一体ノ跡」というように語られ、後者においては信仰の類比として「三位一体ノ中デノ被造物ノ跡」というように語られる点にある。後者のバルトは、「啓示は例証されようとせず、解釈されることを欲する」、「解釈する」とは、「別の言葉で同一のことを言うことである」と述べている、換言すれば「解釈する」とは、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉を、それ故に具体的にはその最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」――すなわち第二の形態の神の言葉である聖書的啓示証言を自らの思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返しに、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、すなわちあの「神への愛」と・「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」という連関の中で、思惟し語ることである。