カール・バルト（その生涯と神学の総体像）

カール・バルト『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』吉永正義訳、新教出版社に基づく

『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』「三十一節　神の自由の様々な完全性　二　神の不変性と全能」２２−４（１０９−１２０頁）

「六章　�~の現実（下）　三十一節　神の自由の様々な完全性」について、バルトは、次のような定式化を行っている。
　神の自由の神性は、神ご自身の中で、またそのすべてのみ業の中で、ひとりでいまし、不変であり、永遠であられるということ、まさにそれと共にまた遍在され、全能であり、栄光に満ちた方であり給うということ、から成り立っており、そのことの中で真であることが確証される（この定式の詳述については、２０１８年１２月２８日の記事で行っています）。（３頁）

註：客観的な対象として存在している、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性等々については、＜カール・バルトの『教会教義学　神の言葉』および著作全般を根本的包括的に原理的に理解するためのキーワードとその内容について――幾つかの註＞（２０１６年６月１３日作成）で論じています、参考にしてください。

「三十一節　神の自由の様々な完全性　二　神の不変性と全能」２２−４
　ご自身の中での神としての、それからわれわれのための神としての、「神的愛の完全性」における「神の恵みと神聖性」、「神のあわれみと義」、「神の忍耐と知恵」という、また「神の自由の様々な完全性」における「神の単一性と遍在」、「神の不変性と全能」、「神の永遠性と栄光」という神の本質全体の区別を包括した単一性の認識と自覚が重要である――「自由の中で愛する」「生ける方、その自由と愛の中での」キリストにあっての「神ご自身が、不変的であり給う」。この完全に自存的な神は、「常に、いたるところ、不断に、自分に等しくありつつ、現にあるところのものであり給う」、すなわちご自身の中での神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方として「自分自身が根源である」イエス・キリストの父は、「子として自分を自分から区別する」し、それ故にその区別された子としてのイエス・キリスト自身は父が根源であり、愛に基づく父と子の交わりである聖霊は父と子が根源であるという「父なる名の＜内＞三位一的特殊性」、「神の＜内＞三位一体的父の名」、「三位一体相互＜内在性＞」において「常に、いたるところ、不断に、自分に等しくありつつ、現にあるところのものであり給う」、と同時に、われわれのための神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方（性質、働き、業、行為、行動）、すなわちその起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・言葉の語り手・創造主、その第二の存在の仕方である父なる神の子としてのイエス・キリスト自身――啓示（「啓示の実在」そのもの）・語り手の言葉（起源的な第一の形態の神の言葉）・和解主、愛に基づく父と子の交わりとしてのその第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事であるそれ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）・救済主なる神としての全き自由の神の愛の行為の出来事全体としての神の存在において「常に、いたるところ、不断に、自分に等しくありつつ、現にあるところのものであり給う」。このようにして、キリストにあっての「神の愛は、神の愛であることをやめることはあり得ず」、またキリストにあっての「神の自由は、神の自由であることをやめることはあり得ない」のである。この「神がその自由の故に、その愛の故に為し給うことは、神の自由と愛の放棄ではなく」、あくまでも神の側の真実としてある「それとして常に、いたるところ、神の自由と愛の新しい自己主張であり、神の生の新しい自己証言である……」、神の生の新しい自己認識・自己理解・自己規定である、「まさにこのことの中で、神は『不変なる神』であり給う」。キリストにあっての「神の不変性の正しい理解」は、「その不変性の中で、不変性の故に、神は（≪ご自身の中での神として≫）ご自身の中で、（≪それからまたわれわれのための神として≫）そのすべてのみ業（≪父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事全体≫）の中で、生けるものであり給う」。この「神は、もともと自己同一性と恒常性を持ち給うということ」――「このことこそが、神をして、現にあるところの生けるものとし」、「神の力の根拠および意味であり」、聖、全能、永遠、力、善、あわれみ、義、遍在、知恵等という「栄光に満ち給う」「運動そのものと豊かさそのものの神的な秘義（≪生、出来事全体、自己認識・自己理解・自己規定≫）である」。キリストにあっての神は、「確かに不変なものであるが、そのようなものとして神はあくまでも生ける神であり、神にとって動きのある姿、弾力性」は、ちょうど「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方において、神は、われわれのための神として、イエス・キリストの父――啓示者・創造主、子としてのイエス・キリスト自身――啓示・和解主、愛に基づく父とこの交わりである聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事全体であるように、「聖書的思惟にとって……固有なもの」である。

　「主からエレミヤに臨んだ言葉。（中略）……陶器師の……彼は、ろくろで仕事をしていたが、粘土で造っていた器が、その人の手の中で仕損じたので、彼は自分の意のままに、それをもってほかの器を造った。その時、主の言葉がわたしに臨んだ、『主は仰せられる、イスラエルの家よ、陶器師の手に粘土があるように、あなたがたはわたしの手のうちにある。ある時には、わたしが民また国を抜く、破る、滅ぼすということがあるが、もしもわたしの言った国がその悪を離れるならば、わたしはこれに災を下そうとしたことを思いかえす（≪「神の第一の思い返し」、成就された時間であるキリストの復活に包括され克服された死のように、神の「本来的な思い返し」≫）。またある時には、わたしが民また国を建てる、植えるということがあるが、もしその国がわたしの目に悪と見えることを行い、わたしの声に聞き従わないなら、わたしはこれに幸を与えようとしたことを思いかえす（≪神の本来的な第一の思い返しに包括された神の第二の思い返し≫）』」（「エレミヤ一八・一−一〇」）。ここで、われわれは、「神の第二の思い返し」を、神の「本来的な思い返し」である「神の恵み深い」「神の第一の思い返し」に包括されたそれとして認識することが重要である。「それが神の行動に基づいている限り」、「まさに常にいたるところ、人間に対する……神の関係であり」、「常に自由の中で愛する方の存在と本質であるという点で」、換言すれば「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方、起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・言葉の語り手・創造主、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身――啓示・語り手の言葉・和解主、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事全体という点で、「不変な関係である」。したがって、「神の意向と行為が変化することによっても、神ご自身は変わることはあり給わない（詩篇一〇二・二七以下）」。これらすべてのことは、「被造物および人間に対する関係の中で、決定的にイスラエルおよび教会に対するその関係の中で、……（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で≫）啓示される」。ご自身の中での「神にとっては、まさに不変な仕方で生ける者であるということがふさわしい」、それ故に被造物および人間の「可変性と変化」は、自由と愛の中での神の不変性に包括された神の可変性（≪神の本質全体の区別を包括した単一性、神の本質全体の区別と単一性における区別・差異性≫）に、「その根拠を持っている」。したがって、「それらにとってふさわしいもの、それは、それがそれらに対し神によって割り当てられたが故に」、それ故に「それがまず第一に、起源的に、神ご自身の創造的な存在と本質（≪神の本質の区別を包括した単一性≫）の中に基礎づけられているが故に、ふさわしいのである」。

　このような訳であるから、イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現されたキリストにあっての神は、「創造主としての神が、その意志を通して、ご自分とは違う（≪神とは異なる≫）実在（≪全被造物、宇宙を含めた全自然≫）を措定し、保たれるということ」を、「ご自分が不変な仕方で生き給う」ところの「行動で実証し、確認しつつ為し給う」、換言すれば神の完全な自由――すなわちご自身の中での神としての「神の自由」という自存性（積極的な意味における「神の自由」の概念）およびわれわれのための神としての「神とは違うものによって為される（≪神とは異なる被造物としての人間、その人間的理性や人間的欲求やによって規定される≫）すべての条件づけからの神の自由」という「独立性」（消極的な意味における「神の自由」の概念）との総体性の中での神的な愛を「実証し、確認しつつ為し給う」。したがって、イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現されたキリストにあっての神は、「ご自分の本質の中で、自分自身の外に」、「協働者あるいは遊び仲間として……（≪神とは異なる≫）世界を持たなければならない必然性」は全くないのである、また「神的知と意志の全能」は、「それ自身とは異なった対象を、あるいはそれ自身の外にある場を（それの実証の場を）必要」とは全くしていないのである。したがってまた、神は、「ご自分の本質の中」に、「協働者あるいは遊び仲間として……（≪神とは異なる≫）世界を持たなければならない必然性」があるとか、「神的知と意志の全能」とは異なった「対象」や「実証の場」を必要」とするとかという「すべての理解の仕方に対して、まさに（≪ご自身の中での神としての≫）神的本質の不変性は抵抗する」のである。言い換えれば、「神は、世界の創造主および主として、神ご自身の中であり給う以上のものでも以下のものでのあり給わない」から、すなわち「神が世界の創造主および主となり給うことによって、神は以前になかったところのものとなり給うわけでは決してない」から、自由の中での神の愛は、「それが為すところのことを為さなければならないということはない」のである。したがって、神とは異なる「成長し、減退し、変化する生命を持った被造物」は、その神の「存在と本質」に対して、「何らの増大も、減少も、変化ももたら」すことはできない。「被造物がそのことを為し得ないのは、被造物はまさに……神の自由な愛の被造物であるからであり、被造物は、その存在と具体的存在を、神を通して持っているからである」。「神ご自身の中には……以前から別様性（≪神の本質の区別を包括した単一性における別様性、「失われない単一性」を存在の本質とする「失われない差異性」における三つの存在の仕方における別様性≫）がある」が、それは、神とは異なる被造物としての「世界の別様性ではなく、神ご自身の別様性である」。また、「神ご自身の中には……生命と運動がある」が、それは、神とは異なる被造物としての「世界の生命と運動ではなく、神ご自身の生命と運動である」。したがって、「世界の存在のすべての新しさの根拠は、結局神ご自身の中にあり、たとえ世界が存在しないとしてもそのような根拠は、何ら劣ることなく神ご自身の中にあるのであるから、世界は（≪神との協働という人間的理性や人間的な欲求を介して≫）神に対して……新しいことを提供し、貸し与え」ることはできないのであり、またそのような人間的理性や人間的な欲求による成果が「神に対して新しいことであること」もできないのである。「世界の存在のすべての新しさの根拠」は、あくまでも神の側の真実として神の側からやってくるのである。「神を通して、神とは違う実在（≪神とは異なる全被造物、宇宙を含めた全自然≫）の新しい出来事があるのであり、神を通してこの現実の中に、すべての新しい出来事があるのである」、ちょうど主格的属格として理解されたギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」――「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、父なる神の子、「啓示の実在」そのもの、起源的な第一の形態の神の言葉、啓示・和解、神の側の真実としてある完了・成就された個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和そのものであるまことの神にしてまことの人間イエス・キリストが信ずる信仰による「神の義、神の子の義、神自身の義」（「律法の成就」・完了）に「新しい出来事がある」ように、またちょうど先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意ができているところの、「人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一」（『ローマ書』）であり、「永遠の（神との人間の）和解」（神と人間との無限の質的差異の下で、それ故にあくまでも神の側の真実としての、神の側からする、神の人間との架橋）であり、神との間の「平和」（ローマ五・一）であり、それ故に神の認識可能性である聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の�~の「失われない差異性」における第二の存在の仕方であるまことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて、「神の用意の中に含まれて、人間にとって、神に向かっての、したがって神認識（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）に向かっての人間の用意が存在する」ように、またちょうど「福音書の中ではすべてのことが受難の歴史に向かって進んでおり、しかもまた同様にすべてのことは受難の歴史を超えて甦り・復活の歴史に向かって進んで」おり、「旧約（≪「神の裁きの啓示」・律法≫）から新約（≪「神の恵みの啓示」・福音≫）へのキリストの十字架でもって終わる古い世」は、キリストの復活（≪「成就された時間」≫）へと向かっており、このキリストの復活（「成就された時間」）は、「新しい世」・新しい時間のはじまりであるように。これらの「新しい出来事」は、「神ご自身の中にその根拠を持っており、神が永遠に新しい方であることの中で」、すなわち神が「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方、起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・創造主、第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身――啓示・和解主、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事全体の中で、「神ご自身が不変であり、神はまさにこの不変性の中で世界の創造主および主となり、自由の中でその愛を実証しようと欲し給うが故に、神を通して存在することができ、また神を通して存在するのである」。「神の愛」は、徹頭徹尾神的な愛であり続けるが故に、「世界の存在と非存在の間で選ぶことができたということの中で自由である」。そして、その「神の愛は、それが事実、……（≪あの自存性と独立性の総体性における≫）自由でなくなってしまうことなしに、世界の存在を選んだということの中で愛である」。このようにして、神とは異なる世界は、神を通して、「神と並んで、神の外に、存在している」、「神を通して、神の中に、存在することによって、（≪総括的に言えば、徹頭徹尾「聖書の主題であり、同時に哲学の要旨である」神と人間との無限の質的差異の下で≫）その存在と具体的存在を持っている」、ちょうど純粋なキリストの「福音の歴史の正しい考察」の仕方は、「啓示（≪神の時間、三位一体の神の時間性≫）は歴史（≪人間の時間、人間の類の時間性≫）の賓辞ではない」、「歴史が啓示の賓辞である」という点にあるように。

　「人は、直ちにここで、二つの限界設定が為されているのを見る」。
（１）第一の限界設定は、次のような「すべての一元論的な思弁」に対して為されている。すなわち、神とは異なる「世界は、それ自身永遠に神の中に存在していた」のであり、それ故にその「神的本質の流出あるいは分割の形で時間的な実在となり」、「神と並んで、神の外に存在するようになったが」、「神との……同一性を保ちつつ存在し」ており、それ故に「結局最後に再び神の中での純粋な存在へと戻ってゆく」という思弁的な思惟と語りに対して為されている、換言すれば「神と並んでの、神の外にある世界の動きのある現実存在は、一つには単なる一時的な外観として、いわば神の自己誤解あるいは悪い夢として把握され（≪「一種の神の自己離脱」≫）、それから神に復帰することによってもう一度もとに回復されるところの神の自己離脱として把握される」思惟と語りに対して為されている。第二には、神とは異なる「世界の現実存在がその変化および可変性全体の中で、神ご自身の本質の中へと運びこまれ、神の本質が世界の現実存在と、あるいは世界の現実存在が神の本質と……同一視されるという仕方で……受け取られる」という思惟と語りに対して為されている。例えば、先ず以てはヘーゲルの歴史哲学（自由を原理とする西欧近代を頂点とする進歩史観）に依拠して、それ故に神と人間との無限の質的差異を揚棄した「イエス・キリストの出来事（神の国の先取り）」および「終末論的」な「将来的なものの力」としての「御霊」の概念によって神学的な三段階的進歩史観において救済史（事実的にも、現実的にも、現在的にも、将来的にも、ここのどこにも救済はない）を構想したモルトマンのそれ（宗教、自然神学としての混合神学あるいは人間学的神学）は、「すべての一元論的な思弁」の一つに過ぎないと言える。ヘーゲルにおける神と人間との無限の質的差異を揚棄し神の彼岸性を克服した「神の内なる人間、人間の内なる神という神人一体、神人和解の理念」に依拠したモルトマンのそれは、人間の自己意識・理性・思惟によって対象化された自由と理性の理念であり、その人間の類の時間性である歴史は、その自由の概念の実現過程である。「これら両者の把握の仕方にとって共通のことは、神的な愛の自由な措定としての創造について知らないということ、それであるから創造主と被造物の間の区別……を知らないという」という点にある。このような「すべての一元論的な思弁」に対する限界設定は、「世界は確かに神の中に存在している」けれども、その世界は「ただ神を通してだけ存在しているという単純な事実が看過されている」という点に置くことができる。このような「すべての一元論的な思弁」に対して、「神の不変性についての命題」は、次のように語られなければならない――「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現されたキリストにあっての「神は、世界の創造と前と後ろで、（≪ご自身の中での神として≫）世界なしであり給う時も、（≪われわれのための神として≫）世界と共にあり給う時も、いずれの場合でも、同一の方であり給うということ」、「神は、世界の現実存在を通して外観においても、事実的にも、夢見つつも、目を覚ましつつも、世界と同一であるよう定めておらず」、神の側の真実として、神の側から、神の全き自由な愛の行為の出来事全体において、「ご自身を世界と結びつけている」。また、神の不変性（ご自身の中での神としてのそれ）と全能（われわれのための神としてのそれ）等という神の本質全体の区別を包括した単一性におけるご自身の中での「神の不変性についての命題にとって」は、「神を世界から区別している関係」は、「世界を、（≪われわれのための神としての≫）その方の自由な愛を通して現実に創造され、現実に創造され保持され」、そして「まさにこの創造的な保持する愛の中で、世界に相対して（≪われわれのための神としての≫）ご自身の現実存在を持ち、主張し給う」「創造主および主……の関係である」ということが語られなければならない。
（２）第二の限界設定は、次のような「創造主と被造物を区別する区別」の仕方の「二元論的な思弁」に対して為されている。すなわち、「創造主に対しては抽象的に不変性が、……被造物に対しては……抽象的に可変性が帰せられ」、それ故に「創造主が被造物の動きのある存在および具体的存在にあずかる現実の参与が否定され、……また被造物が創造主の不変性にあずかる参与が否定される」という思弁的な思惟と語りに対して為されている。このような二元論的な思弁に対する限界設定は、「世界は確かに神を通して存在する」けれども、まさにそれ故にその世界は「神の中に存在しているという単純な事実が看過されている」という点に置くことができる。何故この二元論的な思弁に対する限界設定が必要かと言えば、第一に、神の本質全体の区別を包括した単一性ということを全く後景に退けてしまって、「強調点が神の不変性に置かれる」が故に、「その可変性の中での被造物の存在と具体的存在は、それとして神の参与を欠かなければならず」、「あるいは神の参与を、ただ両方の側にとって最後的には意味のない向かい合いの中で享受することがゆるされるだけであるということに強調点が置かれる」からである。ここでは、人は、「不変なる神自身から、最後的に何の慰めも何の希望も受け取ることはできない」、すなわち「この世界の可変性の苦悩のただ中に立っている」。何故ならば、「創造主は、（≪われわれのための神として立っておらず、≫）あちら側に立っている」からである、換言すれば「被造物の可変性に対立する不変性の中に立っている」からである。この場合、「死が神である。あるいは神は死んでいる……」。「この把握の仕方」は、イエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現を「人がそれとして認識していなかったり」、「拒んでいたりするところで……実際のことであるし、実際のことでなければならないように」、「生ける神をそれとしてまだ認めていなかったところでだけ形成され、貫徹されることができる」ところのそれである。何故この二元論的な思弁に対する限界設定が必要かと言えば、第二に、「強調点が（≪神とは異なる≫）被造物の可変性に置かれる」が故に、その時には創造主は「閉め出されて」おり、「創造主は、根本的には何の意味も持たなければ、何も語るべく持っておらず」、可変性における「変化に対して、……何の影響も及ぼさないということの上に強調点が置かれている」からである。この時、この神とは異なる「被造物によって肯定され、享受される」二元論的「分離」は、神とは異なる被造物に「独立した威厳および有効性へと高められた世界に固有な法則性」をもたらすことになる。この時、「神がこの変化する世界の中にいまさないという」「神の不変性を利用している」のは、「今や……それ自身の中で憩い、自分自身を確認し、保証している世俗性である」、「今や……（≪表向きは≫）必然的な……畏敬に満ちた創造主と被造物の間の区別（≪二元論的分離≫）に基づいて自分の勝利を祝っているのは、それ自身で動いている世界の自己満足である」。したがって、「この把握の仕方」は、「ただ、……被造物が自分自身の可変性にいわば心酔することができ、既に心酔してしまったところでだけ、換言すれば少なくとも死の形態の中で不変なるものが、すべての被造物にとって可能な変化の限界を意味しているという事実に対して被造物が気づかなくなる」ところでだけ、「形成され、貫徹される」ところにある。しかし、人は、「死について、そして死のこちら側で動いている生の謎について」、イエス・キリストの死と復活の出来事において自己啓示・自己顕現されたキリストにあっての「生ける神を知る時にだけ知るであろう」。また、その「生ける神について知るためには、人は（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて≫）神の啓示を知らなければならないであろう」。

　前述したように、両者の思弁は、「一方は否定的な調子」・「悲観主義的な局面」を、「他方は肯定的な調子」・「楽観主義的な局面を展開させているだけであって」、その「前提と決定的な帰結においては一致している」のである。すなわち、「これら両方の把握の仕方にとって共通のことは、神的愛の自由な措定としての創造について何も知らないということである。それであるから、創造主と被造物の間の関係……について何も知らないのである」、ちょうど自主性・自己主張・自己義認の欲求（不信仰・無神性・真実の罪）のただ中にあるわれわれ人間（人間論的な自然的人間であれ、教会論的なキリスト教的人間であれ、誰であれ）は、神の恩寵を嫌悪し回避する存在であり、このわれわれ人間に対して、キリストにあっての神は、神の恩寵を嫌悪し回避する人間が生きるためにのみ、その死を欲し給うのであるが、われわれ人間はその神の要求（律法）に対してさえも聞き従おうとはしないのであり、それ故に徹頭徹尾神の側の真実としてある、そのわれわれ人間のために・われわれ人間に代って、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、まことの神にしてまことの人間イエス・キリストご自身が、その神の要求に対して然りと言い、われわれ人間の「神の恩寵への嫌悪と回避」に対する神の答えである刑罰（死）を、「唯一回なし遂げ給うた」（「律法の成就」・完了）インマヌエルの出来事は、われわれ人間からは「何ら応答を期待せず・また実際に応答を見出さず」とも、「神であることを廃めず」に、「何ら価値や力や資格もない」「罪によって暗くなり・破れた姿」のわれわれ「人間的存在を己の神的存在につけ加え、身内に取り入れ、それをご自分と分離出来ぬよう」に、「しかも混淆（≪徹頭徹尾神と人間との無限の質的差異の下で、混淆・混合・協働・共働・折衷≫）されぬように、統一し給うた」ということを内容（『福音と律法』）としていることについて何も知らないように。このキリストにあっての「神は、世界の創造の前でも後ろでも、（≪ご自身の中での神として≫）世界なしにも（≪われわれのための神として≫）世界と共にあっても、同じひとりの方であり」、「まさに可変性の中での世界に対してこそ、（≪われわれのための神として≫）決して遠くにいまさず、近くい給い、神はそのような世界に対して」、ご自身の中の神としての「不変なる本質は、世界の生命が、世界の中に生命が存在した以前に、この生命なしにも、この生命の根拠として、自分自身の中で生命であるが故に」、「まさにその不変なる本質の中で……結びつけられてい給う」という点に、神の不変性と全能等という神の本質全体の区別を包括した単一性における「神の不変性についての命題」がある。「まさにそれだからこそ、……世界の生命は、決して自分だけで生きることはできない」。言い換えれば、「神ご自身が不変なる仕方で生命であり給うが故に」、「世界のすべての生命」は、「確かに神を通して」、「それ故にこそ神の中で」、「神の生命と……無限に区別されて」、「まさにこの区別された姿の中でこそ、神からして、神に向かって、生きる」のである。このような訳で、「世界のすべての生命は、神の生命にあずかる参与をまさに欠かすことはできないのであり、また神の生命に相対して自主独立性へと高められることはでき」ないのであり、それ故に「世界のすべての生命に相対して、悲観主義にも、楽観主義にも導かれる契機はなく」、それ故にまた「悲観主義も楽観主義も、ただ神の不変性の故に生起している関係を忘れてしまうことから生じ」、またそう「説明する」ことができるのである。神の不変性と全能等という神の本質全体の区別を包括した単一性をいう認識と自覚を持たないところで、「単なる弁証法的な対立」において「神と世界の間の、いつわりの単一性を主張する」あるいは「いつわりの分離を主張する」両者の思弁は、「世界は神的な愛の自由な措定であるという真理を見損なうことから」、それ故に神の不変性と全能等という神の本質全体の区別を包括した単一性における「不変なるもの、自由の中で愛するものであるものとしての神の本質を見損なうことから……生じてくる」のである。