カール・バルト（その生涯と神学の総体像）

カール・バルト『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』吉永正義訳、新教出版社に基づく

『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』「三十一節　神の自由の様々な完全性　二　神の不変性と全能」２２−３（１０２−１０９頁）

「六章　�~の現実（下）　三十一節　神の自由の様々な完全性」について、バルトは、次のような定式化を行っている。
　神の自由の神性は、神ご自身の中で、またそのすべてのみ業の中で、ひとりでいまし、不変であり、永遠であられるということ、まさにそれと共にまた遍在され、全能であり、栄光に満ちた方であり給うということ、から成り立っており、そのことの中で真であることが確証される（この定式の詳述については、２０１８年１２月２８日の記事で行っています）。（３頁）

註：客観的な対象として存在している、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性等々については、＜カール・バルトの『教会教義学　神の言葉』および著作全般を根本的包括的に原理的に理解するためのキーワードとその内容について――幾つかの註＞（２０１６年６月１３日作成）で論じています、参考にしてください。

「三十一節　神の自由の様々な完全性　二　神の不変性と全能」２２−３
　まさに「不変的なものそれ自体が神であるといった事情では……ない」という認識が重要である。すなわち、ご自身の中での神としての、それからわれわれのための神としての、「神的愛の完全性」における「神の恵みと神聖性」、「神のあわれみと義」、「神の忍耐と知恵」という、また「神の自由の様々な完全性」における「神の単一性と遍在」、「神の不変性と全能」、「神の永遠性と栄光」という神の本質全体の区別を包括した単一性の認識と自覚が重要である――この神の本質全体の区別を包括した単一性においてキリストにあっての「神は『不変的』であり給う」。「生ける方、その自由と愛の中での」キリストにあっての「神ご自身が、不変的であり給う」。この神は、「永遠的な現実の中で、現にあるところのものであり給う」。この完全に自存的な神は、「どこにおいても」、「決して……ただ部分的に……潜在可能的に」、「間欠的に、現にあるところのものであり給う」というのではなくて、「常に、いたるところ、不断に、自分に等しくありつつ、現にあるところのものであり給う」、すなわちご自身の中での神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方として「自分自身が根源である」イエス・キリストの父は、「子として自分を自分から区別する」し、それ故にその区別された子としてのイエス・キリスト自身は父が根源であり、愛に基づく父と子の交わりである聖霊は父と子が根源である（下記の【注】を参照）という「父なる名の＜内＞三位一的特殊性」、「神の＜内＞三位一体的父の名」、「三位一体相互＜内在性＞」において「常に、いたるところ、不断に、自分に等しくありつつ、現にあるところのものであり給う」と同時に、われわれのための神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方（性質、働き、業、行為、行動）、すなわちその起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・言葉の語り手・創造主、その第二の存在の仕方である父の子としてのイエス・キリスト自身――啓示・語り手の言葉（起源的な第一の形態の神の言葉）・和解主、愛に基づく父と子の交わりとしてのその第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造、すなわち秩序性・救済主なる神としての全き自由の神の愛の行為の出来事全体としての神の存在において「常に、いたるところ、不断に、自分に等しくありつつ、現にあるところのものであり給う」。このように、キリストにあっての「神の愛は神の愛であることをやめることはあり得ず」、またキリストにあっての「神の自由は神の自由であることをやめることはあり得ない」のである。この「神がその自由の故に、その愛の故に為し給うことは、神の自由と愛の放棄ではなく」、あくまでも神の側の真実としてある「それとして常に、いたるところ、神の自由と愛の新しい自己主張であり、神の生の新しい自己証言である……」、「まさにこのことの中で、神は『不変なる神』であり給う」。したがって、このキリストにあっての「神の自己主張は、いかなる時にも、決して聖なる利己主義の行為ではなく」、「常に、いたるところ義……の行為」である、ちょうどローマ３・２２およびガラテヤ２・１６等の「イエス・キリストの信仰」の属格（の）が、主格的属格として理解されたギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」――「イエス・キリストが信ずる信仰」による「神の義、神の子の義、神自身の義」（「律法の成就」・完了）であるように（『福音と律法』）、またちょうど「福音書の中ではすべてのことが受難の歴史に向かって進んでおり、しかもまた同様にすべてのことは受難の歴史を超えて甦り・復活の歴史に向かって進んでいる」・すなわち「旧約（≪「神の裁きの啓示」・律法≫）から新約（≪「神の恵みの啓示」・福音≫）へのキリストの十字架でもって終わる古い世」は、キリストの復活（成就された時間。神の側の真実としてある、それ故に「成就と執行」、「永遠的実在」としてある、成就・完了された個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和そのもの）へと向かっているように、またちょうど先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意ができているところの、「人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一」（『ローマ書』）であり、「永遠の（神との人間の）和解」（神の側の真実としてある、神の側からする神の人間との架橋）であり、神との間の「平和」（ローマ五・一）であり、それ故に神の認識可能性である聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の�~の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、啓示者である父なる神の子としての啓示、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて、「神の用意の中に含まれて、人間にとって、神に向かっての、したがって神認識（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）に向かっての人間の用意が存在する」ように（『教会教義学　神の言葉』）。このような訳で、われわれは、「何が不変的なものであるのかという問いに対して、その自己主張の中でのこの生ける神が不変なるものであり給うと答えなければならない」、このキリストにあっての「神が、現にあるところのものとしてあり給うということ、神が恵み深く、聖で、あわれみ深く、義しく、忍耐強く、知恵に富み給うということ」――このことが「不変なるものである」。この「不変なるものは、（≪自体的に≫）生である」から、「造られた世界の動きのある状態を、ましてやわれわれの敬虔な感情の興奮」等々を必要とはしないのである。このような訳で、「この不変なるもの」は、「ただ単に……死の婉曲的な別名でしかあり得ないような異教的な不動ナモノ……と何の関りもないだけでなく、むしろそのようなものに対する直接的な反駁である」、また「それは、（≪組織・制度・建造物としての教会のそれを含めた現存する様々な状況からする≫）その恐るべき現実の姿を欺瞞的に変装し美化する感傷性をも必要」とはしない。キリストにあっての「神の不変性」は、「神の知、意志、行為の」、それ故にご自身の中での神としての「三位一体相互＜内在性＞」における「神の人格の不変性である」。このキリストにあっての「神の不変性」は、「その中で神が自分自身であると共にまたご自分の業を行い給い、ご自分の業をそれとして保持し、繰り返しご自分の業とされるところの恒常性、不惑性、疲れないことである」。それは、「（≪ご自身の中での神として≫）ご自身の中で、また（≪それからわれわれのための神として≫）そのすべてのみ業の中で運動され、（≪ご自身の中での神として≫）ご自身の中で、また（≪それからわれわれのための神として≫）そのすべてのみ業の中で、豊かであり給う自己確信（≪確信をもった自己認識・自己理解・自己規定≫）である」。したがって、それは、「神の生の限界や制限」を意味しない。キリストにあっての「神の不変性の正しい理解」は、「その不変性の中で、不変性の故に、神は（≪ご自身の中での神として≫）ご自身の中で、（≪またそれからわれわれのための神として≫）そのすべてのみ業（≪父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事全体≫）の中で、生けるものであり給う」。この「神は、もともと自己同一性と恒常性を持ち給うということ」――「このことこそが、神をして、現にあるところの生けるものとし」、「神の力の根拠および意味であり」、聖、全能、永遠、力、善、あわれみ、義、遍在、知恵等という「栄光に満ち給う」「運動そのものと豊かさそのものの神的な秘義（≪生、出来事全体≫）である」。

【注】『教会教義学　神の言葉』によれば、聖霊は、その「交わり」の中で、父は「子の父」・「言葉の語り手」であり、子は「父の子」・「語り手の言葉」である。ここに、神は愛・愛は神であることの根拠がある。「愛は神にとって、最高の法則であり、最後的な実在」である。「愛」は、「自由」（自存性、厳密には消極的な意味での「独立性」を包括した積極的な意味での「自存性」）がそうであったように、「神ご自身においてのみ実在であり真理」である。この聖霊は、「父なる名の＜内＞三位一的特殊性」、「神の＜内＞三位一体的父の名」、「三位一体相互＜内在性＞」における三度目の最後的な第三の存在の仕方として、神にとって最高の法則、すなわち愛であって、その愛に基づく起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父と父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身との交わり・関係であり、神と人間との交わり・関係の根拠である。

　前述したような訳で、「出エジプト三・一四……の中で語られている神的な自己主張」が、「あたかも……モーセとイスラエルに近づかれ、極めて明確な仕方で、それらに対し行動し給う」「『わたしは、有って有る者』」としての「神の神的な自己主張であるということから切り離して、生起し、理解されることができるかのように」「運動のない本体ソレ自身を抽出すること」はできないのである。キリストにあっての神には、「神の聖なる可変性がある。神はすべての時代の上に立ち給う……それらの時代の上にその主として、世々の支配者（�Tテモテ一・一七）として立ち給う」。したがって、この神は、神の本質全体の区別を包括した単一性において、「主にふさわしい仕方で、ご自分の仕方で」、「すべての時代の変化に参与される者として、……すべての時代の上に立ち給う」。このように、「神がすべての変化の中で同一の方であり、あり続け給うということ」――このことが、「神の不変性である」。このような「神の不変性と対立するもの、それによって排除されているもの、それは、神の聖なる可変性ではなくて」、「聖からざる人間の可変性」――「例えばイザヤ一・二一以下で『かつては忠信であった町、どうして遊女となったのか。昔は公平で満ち、正義がそのうちにやどっていたのに、今は人を殺す者ばかりとなってしまった。あなたの銀はかすとなり、あなたのぶどう酒は水をまじえ、あなたのつかさたちはそむいて、盗びとの仲間となり……』と記されているような人間の可変性である」、「あるいはローマ一・二三で『彼らは不朽の神の栄光を変えて、朽ちる人間……の像に似せたのである』と記されているような人間の可変性である」、「あるいはガラテヤ三・一で『ああ、物わかりのわるいガラテヤ人よ、十字架につけられたイエス・キリストが、あなたがたの目の前に描き出されたのに、いったい、だれがあなたがたを惑わしたのか』と記されているような人間の可変性、また三・三で『あなたがたは……、御霊で始めたのに、今になって肉で仕上げるのか』、また五・七で『あなたがたはよく走り続けてきたのに、だれが邪魔をして、真理にそむかせたのか』と記されているような人間の可変性である」。「人はいかにマラキ三・六以下で神の不変性が対照的に比べられているかに注意せよ」――「主なるわたしは変わることがない。それゆえ、ヤコブの子らよ、あなたがたは滅ぼされない。あなたがたは、その先祖の日から、わが定めを離れて、これを守らなかった」。このような訳で、キリストにあっての神は、「すべてのプラトン主義者」がその「根本において生命なし……言葉なし…行為なしである」「存在者レベルでの神」において「神についてそのように考えたし、今もそのように考えている」ように、「ひとりの同じ方として、終始ただひとつの同じものであり、ひとつの同じことを語り、為すべき拘束されており、神の存在、語り、行為のすべての区別はただ外観であり、ただひとつの永遠に同じ光線のさまざまな屈折であるだけであるといった具合ではない」のである。この「神についての聖書的な思惟は、すべての神否定のうちのこの最も高貴な神否定と混同されることに、ほかの何にもまして耐えられないのであって」、それ故に「それくらいならばむしろ最も質の悪い擬人的類推と混同される方がましであるであろう」となる。キリストにあっての神は、「確かに不変なものであるが、そのようなものとして神はあくまでも生ける神であり、神にとって動きのある姿、弾力性」は、「聖書的思惟にとって……固有なもの」なのである、ちょうど「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方において、神は、われわれのための神として、父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事全体であるように。

　このような訳で、「詩篇一八・二五以下で、『あなたはいつくしみある者には、いつくしみある者となり、欠けたところのない者には、欠けたところのない者となり、清い者には清い者となり、ひがんだ者には、ひがんだ者となられます。あなたは苦しんでいる民を救われますが、高ぶる目をひくくされるのです』と言われているとき、そのことは非本来的な語りではなく、本来的な語りであり」、「それは、神の不変性と衝突せず、……神の不変性を証ししている」のである――このようにして、「……不変なる神、……生ける神は、行動し給う」。したがって、「民数記二三・一九」の「神は人のように偽ることはなく、また人の子のように悔いることもない。言ったことで、行わないことがあろうか、語ったことで、しとげないことがあろうか」という「言葉」、「創世一・二六に記されている……神の決心とその行動」、「創世八・二一」で「主が心に言われたこと」、「創世九章で……ノアと結んだ契約」において神がその「決心を実行に移されること」は、徹頭徹尾神の側の真実としてある全き自由の神の愛の行為の出来事全体としての神の存在である。したがって、「創世一八・二〇以下」における「ソドムとゴモラの町に下されようとした神の裁き」に対するアブラハムの「とりなしの祈り」による神の「譲歩」は、「神が人間によって（≪人間の側からする働きによって≫）影響される」ということではなくて、神の側の真実としてある神の側からするアブラハムの「選び」（一七節および一九節）の「確認」である。神の側の真実としてある「まさに（≪神的な自由と愛における≫）主ご自身の道が、明らかにあのアブラハムのとりなしの祈りの中で、またあれら神が為し給うた譲歩の中で、『守られ』ているのである」。このことは、このことと対応すること「金の小牛の像が造られた後、ヤハウェとモーセの間で交わされた」「出エジプト三二・七−一四」の「対話についても言われなければならない」。またこのことは、「民数記一一章」および「アモス七・一−六についても言われなければならない……」。「ここで理解されなければならない決定的なこと」は、このこと（「エレミヤ一八・一−一〇」）である――「主からエレミヤに臨んだ言葉。（中略）……陶器師の……彼は、ろくろで仕事をしていたが、粘土で造っていた器が、その人の手の中で仕損じたので、彼は自分の意のままに、それをもってほかの器を造った。その時、主の言葉がわたしに臨んだ、『主は仰せられる、イスラエルの家よ、この陶器師がしたように、わたしもあなたがたにできないのだろうか。イスラエルの家よ、陶器師の手に粘土があるように、あなたがたはわたしの手のうちにある。ある時には、わたしが民また国を抜く、破る、滅ぼすということがあるが、もしもわたしの言った国がその悪を離れるならば、わたしはこれに災を下そうとしたことを思いかえす（≪「神の第一の思い返し」、神の「本来的な思い返し」≫）。またある時には、わたしが民また国を建てる、植えるということがあるが、もしその国がわたしの目に悪と見えることを行い、わたしの声に聞き従わないなら、わたしはこれに幸を与えようとしたことを思いかえす（≪キリストの復活に包括され克服された死のように、神の本来的な第一の思い返しに包括された神の第二の思い返し≫）』」（また「アモス七・七−九」）。ここで、われわれは、「神の第二の思い返し」を、先ず以て神の「本来的な思い返し」である「神の恵み深い」「神の第一の思い返し」に包括されたそれとして認識しなければならない（それ故に、「アモスの箇所においても、エレミヤ書の箇所においても」、「ローマ九・二一以下」においても、神の思い返しの記述の順序は、「偶然」ではない）。したがって、われわれは、神が、「その預言者たちを遣わされ、（≪それ故にその預言者たちの言葉を聞き、それに教えられることを通して≫）民が彼らの側でも立ち帰って、この約束と善意をつかみ、神の恵み深い第一の思い返しを確認し、正とするようになる（エレミヤ二六・二−三、一九、三六・三、四二・一〇）そのような思い返しの方（≪「神の恵み深い」「神の第一の思い返し」の方≫）が本来的な思い返しであるということ」を「学ば」なければならない。キリストにあっての「神は、『災を思いかえされる方であるということ』――このことは、「ヨエル二・一三、ヨナ四・二で、（≪神の本質全体の区別を包括した単一性における≫）その恵み、あわれみ、忍耐、いつくしみと並んで、まさにその神としての性質のひとつとしてあらわれている」。この神は、「その怒りの中ででも……、イスラエルの神であり給う。そのような方として神は……怒りを含んで語り給う時でも」、それぞれの世代・それぞれの世紀・それぞれの時代に「神の言葉を……先へと語り伝える」「アブラハム、モーセ、アモス、エレミヤに向かって語り給う」、それ故に彼らは「そのような方として……神が語り給うのを聞き、神に向かって呼び求める」のである。「まさにそれだからこそ、（≪キリストにあっての神は、≫）ご自分が（≪民に≫）助けを与えられたことを悔いられる時でも、依然としてイスラエルの助け主であり給う」――このことは、神が、「人を造ったことを悔いられる時でも、（≪全宇宙を含めた≫）天と地の創造主、人間（≪人間も自然の一部であるという意味で全自然の≫）の創造主および主であり、あくまで（≪その中で人間的な過程を与えられた≫）人間の創造主および主であり続け給うのと同じである」。「まさにそれ故にこそ、神の思い返しについての顕著な宣べ伝えの中で、災を思い返される思い返し（≪「神の恵み深い」「神の第一の思い返し」、神の「本来的な思い返し」≫）は、ひそかにか公にか、とにかく内容的には必然的にいたるところ」、「あの別な思い返し（≪「神の第二の思い返し」≫）に相対して優越性、優位性を持っている」のである。このような訳で、「神の賜物」と「神の召しについての最初にして最後の言葉は、ローマ一一・二九によれば、それらは変えられることがない（≪取り消されないもの≫）ということでなければならない」。また、「この優位性」は、徹頭徹尾真実の方である「神は、怒る時、全く真剣に怒り給わないということを意味しない」のであるから、「あのもう一つの別の思い返し（≪「神の第二の思い返し」≫）の現実性を減少させ」ることはないのである。このことは、「自由の中で実証される神の愛のひとつの機能であるということを示している」。

　前述した関係は、「それが神の行動に基づいている限り」、「まさに常にいたるところ、人間に対する……神の関係であり」、「常に自由の中で愛する方の存在と本質であるという点で」、換言すれば「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方、起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・言葉の語り手・創造主、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身――啓示・語り手の言葉・和解主、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・「神の言葉の三形態」の関係と構造・救済主なる全き自由の神の愛の行為の出来事全体としての神の存在であるという点で、「不変な関係である」。したがって、「神の意向と行為が変化することによっても、神ご自身は変わることはあり給わない（詩篇一〇二・二七以下）」。この神は、「神の不変性を通してまた、現実に」、それ故に神の側からする「神の意向と行為」の変化の中で、「生き、それであるから前進し、また退いて撤回し、喜び、悲しみ、笑い、不平をもらし、嘉納し、また怒りを燃やされ、ご自身を隠し、ご自身を啓示し、いずれの時も、そのすべてにおいて、全くご自身であり」、それ故に「真剣に、……またその本質の秩序の中に」、それ故に「特定の秩序と段階の中にあることを妨げられ給わない」。これらすべてのことは、「被造物および人間に対する関係の中で、決定的にイスラエルおよび教会に対するその関係の中で、……（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で≫）啓示される」。ご自身の中での「神にとっては、まさに不変な仕方で生ける者であるということがふさわしい」、それ故に被造物および人間の「可変性と変化」は、自由と愛の中での神の不変性に包括された神の可変性（≪神の本質全体の区別を包括した単一性、神の本質全体の区別と単一性≫）に、「その根拠を持っている」。したがって、「それらにとってふさわしいもの、それは、それがそれらに対し神によって割り当てられたが故に」、それ故に「それがまず第一に、起源的に、神ご自身の創造的な存在と本質（≪神の本質の区別を包括した単一性≫）の中に基礎づけられているが故に、ふさわしいのである」。