『教会教義学 神論Ⅰ／３ 六章 神の現実（下）』「三十一節 神の自由の様々な完全性 一 神の単一性と遍在」（その６－６）－１
カール・バルト『教会教義学 神論Ⅰ／３ 六章 神の現実（下）』吉永正義訳、新教出版社に基づく
『教会教義学 神論Ⅰ／３ 六章 神の現実（下）』「三十一節 神の自由の様々な完全性 一 神の単一性と遍在」（その６－６）（８０－９３頁）
「六章 神の現実（下） 三十一節 神の自由の様々な完全性」について、バルトは、次のような定式化を行っている。
神の自由の神性は、神ご自身の中で、またそのすべてのみ業の中で、ひとりでいまし、不変であり、永遠であられるということ、まさにそれと共にまた遍在され、全能であり、栄光に満ちた方であり給うということ、から成り立っており、そのことの中で真であることが確証される（この定式の詳述については、２０１８年１２月２８日の記事で行っています）。（３頁）
註：客観的な対象として存在している、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性等々については、＜カール・バルトの『教会教義学 神の言葉』および著作全般を根本的包括的に原理的に理解するためのキーワードとその内容について――幾つかの註＞（２０１６年６月１３日作成）で論じています、参考にしてください。
「三十一節 神の自由の様々な完全性 一 神の単一性と遍在」（その６－６）－１
前回の論述との間に時間経過があるので、前回のことについて少し整理しておこう。
あくまでも神の側の真実としてある、神のその都度の自由な恵みの決断による、先行する神の側からする「神が住み給うことの自由」が、それ故に「相対性が問題である」、ちょうどわれわれ教会の宣教、その思惟と語りと行動が、「キリスト教的語り（≪キリスト教的思惟と語りと行動≫）の正しい内容の認識として祝福され、きよめられたものであるか、それとも怠惰な思弁でしかないかということは、神ご自身の決定事項」であって、「われわれ人間の決定事項」ではないように。したがって、「神に対して、この神の自由を拒否する者、神を単なる山の神あるいは荒野の神とみなす者、あるいは逆に（もろもろの民の神々とひそかに混同しながら）カナンの血と土地につながりがあるとみなす者、神をエルサレムの神殿の建物に縛られているとみなす者、最後に神をはるかかなたの天の神にしてしまおうと欲する者」――これらすべての者は、神を、「イスラエルの中での神の啓示の中で認識してはいなかったのである」、「イスラエルの中での神の啓示の中で認識してはいな」いのである。何故ならば、「神が住み給うことはすべて、確かに（≪ご自身の中での神として≫）神がみ心のままに処理なさる」行為であるが、われわれのための神としても神は、神とは異なる「他から処理されることはない行為として神が住み給う際の（≪神の側の≫）自由の法則の下に立っている」からである。「新約聖書は、神がイスラエルの中で住み給う『幕屋』は、『手で造った聖所』として、天にあるもの（≪原型≫）、ほんとうのもの（≪原型≫）の、ひな型と模型である（へブル九・二三）とあからさまに語る時、ただ全体をまとめているのである」。しかし、「それがそのようなものであって、（≪先行する神ご自身の決定事項において≫）ただ天にある原型と対象からして威厳と力を持ったということ」は、「新約聖書によっても否定されておらず、むしろ（≪そのように≫）確認されている」。したがって、この場合も、「それが、ただ指し示しと予示の威厳と力を持つだけであって、ただ相対的な現実性の中でだけ神の住まわれること（≪場所≫）であったことが確認されている」。したがってまた、「今や、ソロモンおよびエレミヤと一致しつつ」、「この世界と、その中にある万物とを造った神は、天地の主であるのだから、手で造った宮などにはお住みにならない。また、人の手によって仕えられる必要もない（使徒行伝一七・二四以下）」ということが、「認識され、告白される」のである。イエスの、「神が住まわれることについての異教的な理解に捕らわれ」たサマリヤの女に対する語り（「ヨハネ四・二〇－二六」）――「しかし、まことの礼拝をする者たちが、霊と真理（≪神のその都度の自由な恵みの決断による聖霊の注ぎと啓示――啓示者である父なる神の子としての啓示、啓示の真理≫）をもって父（≪啓示者≫）を礼拝する時が来る。今がその時である（≪「啓示の実在」そのものとしてのイエス・キリストは、啓示者である父なる神の子、起源的な第一の形態の神の言葉、啓示・和解そのものである≫）。なぜなら、父（≪イエス・キリストの父、啓示者≫）はこのように礼拝する者を求めておられるからだ。神は霊である。だから、神を礼拝する者は、霊と真理をもって礼拝しなければならない」、換言すれば三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事であるそれ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性に信頼し固執し連帯して神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰をもって礼拝しなければならない。「女が言った。『わたしは、キリストと呼ばれるメシアが来られることは知っています。その方が来られるとき、わたしたちに一切のことを知らせてくださいます』。イエスは言われた。『それは、あなたと話しているこの私（≪「啓示の実在」そのものとしてのイエス・キリスト、啓示者である父なる神の子、起源的な第一の形態の神の言葉、啓示・和解そのもの≫）である』」。「エルサレム、ゲリジム山と対立するもの、手で造られた宮と対立するもの」、「ローマ、ウイッテンベルク、ジュネーヴ、カンタベリーと対立するもの」――それは、「世界全体ではなく」、「まさにイエス（≪啓示者である父の子としての啓示、神の子、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの≫）である」。「また、霊と真理（≪「霊とまこと」というように、吉永は旧来訳聖書を引用している≫）をもって父（≪イエス・キリストの父、啓示者≫）を礼拝するということは、……われわれにすべてを知らせ給う方としてのイエス（≪啓示者である父なる神の子としての啓示、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの≫）によって仲立ちされて神を崇拝することである」、ちょうど先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意ができているところの、仲保者、「人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一」（『ローマ書』）であり、「永遠の（神との人間の）和解」（神と人間との無限の質的差異の下で、それ故にあくまでも神の側の真実からする、神の人間との架橋）であり、神との間の「平和」（ローマ五・一）であり、それ故に神の認識可能性である聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、父なる神の子、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示に実在」そのもの、「まさに顕ワサレタ神こそが隠された神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて、「神の用意の中に含まれて、人間にとって、神に向かっての、したがって神認識（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）に向かっての人間の用意が存在する」と言わなければならないように。イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現された三位一体の神、キリストにあっての神は、「新約聖書の証言に従っても、具体的に、それぞれ違った仕方で、世界の中に住むことを、換言すればその遍在を損なうことなしに」、それ故に「まさに遍在し給う方として、ここにあるいはあそこに（≪ここあるいはあそこの時空に≫）まことにいますことをやめ給わないのである」。「……初めに（≪ご自身の中での神として、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方において存在する≫）神と共にあったあの言葉、それ自身神であった言葉、それによってすべてのものができ、できたもののうち一つとしてこれによらないものはなかったあの言葉」は、「肉体（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、ナザレのイエスという人間の歴史的形態、イエス・キリストの名――このことは、言葉の受肉であって神性の受肉ではないが故に、「神が人間となる」、「僕の姿」、「自分を空しくすること、受難、卑下」は、「神性の放棄」や「神性の減少」を意味するのではなく、「神的姿の隠蔽、覆い隠し」を意味している≫）となり、わたしたちのうちに宿った。わたしたちはその栄光（≪聖、全能、永遠、力、善、あわれみ、義、遍在、知恵等≫）を見た」（ヨハネ一・一四）――このことを、「……ベテルとシナイが、シロとエルサレムが言おうとしていた」、それ故に「そこのところにまことのひな型と模型があるのである」。「救いは、確かにユダヤ人から来る」が、「しかし……ユダヤ人から来、ユダヤ人によって……拒否された後」、「もはや単にユダヤ人に対してだけでなく、ユダヤ人から」、啓示者である「父が求めておられるような礼拝をする者、すなわち（≪前述したように≫）霊と真理をもって礼拝する者」、そうした「すべての者たちのところに来る」、換言すれば「救い」は、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を通してやって来る。このような訳で、「旧約聖書の中で為されている神が住み給うことについての預言を除去することが問題ではなく」、「そのような預言の＜成就＞が問題」なのである。「何故ならば、人が見ることができた（神の肉となった言葉の）栄光は何であるか。今、イエス・キリストの甦りおよび再臨と直面して、み座からの大きな声は何と叫んでいるか。今やまさに、今こそまさしくもって、具体的に、区別しつつ、『見よ、（≪神の側の真実として、先行する神の側から≫）神の幕屋が人と共にあり、神が人と共に住み、人は神の民となり、神自ら人と共にいます』（黙示二一・三）」。『教会教義学 神の言葉』によれば、「福音書の中ではすべてのことが受難の歴史に向かって進んでおり、しかもまた同様にすべてのことは受難の歴史を超えて甦り・復活の歴史に向かって進んでいる」、すなわち、「旧約（≪「神の裁きの啓示」・律法≫）から新約（≪「神の恵みの啓示」・福音≫）へのキリストの十字架でもって終わる古い世」・時間は、復活へと向かっている、このキリストの復活（成就された時間）は、「新しい世」・時間のはじまりである。このような訳で、「神が、具体的に、区別された仕方で地上に住み給うことについての証言に対して」、「出エジプト二九・四五の言葉でもって、……決定的な、すべてを総括し、確認する然りが語られる」（詩篇五〇・二、詩篇九九・二、詩篇八四・八、イザヤ二・三）。そして、「今や、メシヤの隠れが過ぎ去ったことによって（≪何故ならば、イエス・キリストは「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」から≫）」、それ故に「契約の担い手としてのこの民の孤立が過ぎ去ったことによって」、「あれらの特別な場所……に神が住み給うことも過ぎ去った」、「イスラエルの犠牲と律法全体も過ぎ去った……（≪何故ならば、『福音と律法』および『ローマ書新解』によれば、イエス・キリストは、「律法の成就」・完了そのものであるから、主格的属格として理解されたギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」――イエス・キリストご自身が信ずる信仰による「神の義、神の子の義、神自身の義」そのものであるから、神の側の真実としてある完了・成就された個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和そのものであるから≫）」。したがって、あのような「意味での特別な場所はもはやあり得ない」。したがってまた、「キリスト教が、自分の側で再びこの意味で聖なる場所をして力を奮わせ、そのようなものとして受け取ろうと欲するならば、そのことは、常に……正確に言うならば、自分自身を異教的に理解しているユダヤ教への逆戻り、……ソロモンとエレミヤのまことのユダヤ教に対する反逆」である。
前述したように、「イスラエルのメシヤが現われ、イスラエルによって拒否され、ユダヤ人と異邦人……の信者の救い主として啓示された後」は、「もはや（人がそのようなものとして地図の上でしるしづけることができるであろう）いかなる聖なる山、聖なる町、聖なる国も存在しない」。このことは、「神の場所的神聖性が、今や突然、神にふさわしくないものとなってしまったとか聖なる到るところに変えられてしまったからではない」。そのことは、「今や、イエスにあって成就されたからであり、神の場所的な神性性は、神の神聖性全体と同じように、ナザレのイエスと称し、ナザレのイエスであり」、それ故に「確かに造られた場所の中にあるが」、「この場所の中で、常にただ、……（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、啓示・和解――全き自由の神の愛の行為の出来事としての神の存在である≫）イエスご自身が（天に入られた後）天からして」、それ故に「神のみ座からして、世界の中で、イエスがそのみ言葉と霊を通して（≪啓示自身が持っている啓示の固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて≫）人間を彼を信じる信仰（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）へと、それと共に父が求める霊とまこと（≪「霊と真理」、神のその都度の自由な恵みの決断による聖霊の注ぎと啓示――啓示者である父なる神の子としての啓示、啓示の真理≫）をもっての（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰をもっての≫）礼拝へと呼び招き、目覚ましめ給う仕方で、現臨されるところでだけ、出会われることができるからである」。「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方である「イエスの中に、シナイ山とシオンの山、ベテル、エルサレムはある。しかし、イエスの中では、それらすべては、神的な場所、天にあるエルサレム（黙示二一・二）……としてある」、この「神的な場所」、「天にあるエルサレム」は、常に、地・天、諸天の、彼岸・外にある、あり続ける。神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を通して「信者たちは、今（≪時間≫）・ここ（≪空間≫）で、既に」、「天にあるエルサレム」としての「彼らの故郷を持っていることによって」、それは「彼らに用意されているが」、「この世にあっては、（≪終末論的信仰を生きる彼らは≫）宿り人および異国人として」、「それを尋ね求めなければなら」ない、何故ならば彼らは、「それに対応する故郷をこの世で対置する」ものを持たないからである、それ故に彼らは「それに対応する故郷をこの世で対置することができない」からである。「イエスの言葉と霊の存在によって基礎づけられたこれらの寄留者および異国人の存在」は、すなわち啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰に依拠して「イエスを信じる者の存在としての彼らの存在」は、恵みの出来事、イエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現と「全く同じ事柄」・「啓示の出来事の中での客観的側面」としての「キリストにあっての彼らの存在として」、あるいは「啓示の出来事の中での主観的側面」としての、すなわち「聖霊の注ぎ」による人間的主観に実現された神の恵みの出来事としての「彼らの中でのキリストの存在として記述される」。このような仕方で、啓示者であるイエス・キリストの「父が（ヨハネ一四・一〇）、いや『満ちみちているいっさいの神の徳が』（コロサイ一・一九、二・九）、（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方である≫）キリストの中に宿っているように」、終末論的限界の下で「今やまた神の言葉は豊かに信者たちのうちに宿り（コロサイ三・一六）、そのように神の力は宿り（Ⅱコリント一二・九）、霊は宿り（ローマ八・九、Ⅱテモテ一・一四、ヤコブ四・五）、キリストご自身が（エペソ三・一七）彼らの中に宿り、そのようにして信者たちは、彼らの地上的なひとりびとりの現実存在の中で」、「また（≪その類としての≫）全体としてキリスト教会」は、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（「啓示の実在」そのもの）、具体的にはその第二の形態であるその人間性と共に神性を賦与され装備された預言者および使徒たちのイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」としての聖書的啓示証言（最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」）に信頼し固執し連帯する「神の『宮』として理解される（Ⅰコリント三・一六以下、六・一九、Ⅱコリント六・一六、エペソ二・二一、Ⅰペテロ二・四以下）」。ここで組織・制度・建造物としての教会ではないイエス・キリストを主・頭とするイエス・キリストの教会は、「ただキリストの言葉と霊を通して（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰に依拠して≫）だけ認識されることができる」「＜キリスト＞のからだ」であるが、そのようなものとして可視的な輪郭を持っており、「一般的な場所の中で一つの特別な場所を満たす」「キリストのからだ」である。このような訳で、「教会と世界、教会と国家、教会と異教世界は、たとえそれらがどんなにしばしば互いに相手の中で消滅してしまうように見えようとも、結局また繰り返し区別され、出会い、互いに引き合いあるいはまた反発し合うことができる」――それ故に、『共産主義世界における福音の宣教 ハーメルとバルト』に即して言えば、組織・制度・建造物としての教会（Kirche）ではないイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの教会（die lebendige Gemeinde、生ける共同体）は、「世界の救いを何かある国家的、政治的、経済的または道徳的な諸原理や理念や体制の内に求めようとしないで、私たちの主であり、救い主であるイエス・キリストを、いっさいのものにまさって恐れ、かつ、愛すること、神を、大きな問題においても、小さな問題においても、彼がかってあり、いまあり、やがてあり給う権威のままに肯定し、是認すること、私たちの個人的、社会的生活を敢えて律して、すべての善きものを神から、神からすべての善きものを期待するべき」なのである（『バルトとの対話』によれば、「個々人と共同体の対立は近代的な対立であって、新約聖書のものではない。……新約聖書の「体」の概念はこの対立を超えたもの」であり、それ故に教会は、あの「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性に信頼し固執し連帯して「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を志向し目指すものである、Ⅰコリント１・１０以下）。「神のみ座の終末論的な場所、（≪啓示、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉である≫）『キリストが神の右（≪神のみ座は、常に、地・天、諸天の場所の、彼岸・外にある、あり続ける≫）に座し給う』場所が、教会の本来的な（≪起源的な≫）場所であり」、それ故にそれとは異なる「そのほかの場所に対する教会の向かい合いの意味である」が、「しかし（≪神の言葉の第三の形態に属する全く人間的な≫）教会は、あのところにご自身の場所を持ち給う方の教会（≪イエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの教会≫）として、その方の現実存在の副次的な形式」であり、「それに基づいて教会ノ外と教会ノ中があり、その区別の中で、教会の天にいます主が罪の赦しと断罪、すべての人間の将来としての生命と死について決定を下される場所的な存在形式と機能を持っている」、それ故に『福音と律法』によれば、あの「神への愛」と「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」（純粋なキリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、神の命令・要求・要請）の関連性の中での純粋なキリストの福音の告白・証し・宣べ伝えは、「もろもろの誡命中の誡命、われわれの浄化・聖化・更新の原理」であり、組織・制度・建造物としての教会ではないイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの「教会が＜教会自身＞と＜世＞に対して語らねばならぬ一切事中の唯一のこと」なのである、それ故にまたバルトは、一貫性をもって、このすぐ前で引用した『共産主義世界における福音の宣教 ハーメルとバルト』におけるような思惟と語りと行動を為すのである。
「天は、その栄光（≪聖、全能、永遠、力、善、あわれみ、義、遍在、知恵等≫）ある多様性全体の中で、『天において』は、確かに（≪神と人間との間にある、神と神とは異なるすべてのいかなるほかのものとの間にある、無限の質的差異の下で≫）『天を超えて』（≪すなわち地・天、諸天の外・彼岸≫）として理解されなければならない」。したがって、地・天、諸天の外・彼岸にある神の本来的な起源的な場所ではない「天」は、「神によって造られた実在（≪被造物≫）のより高い側面であるが故に」（「『天』は、神によって造られた実在のうちの上なる、不可視的な、精神的な」「その限りより高い側面」であるが故に、それは、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰の場所として、「その限りより高い側面」であるが故に）、「神は、いずれにしてもいと高き方であり」、それ故に「上において尋ね求められなければならないが故に、この『上において』は、神の被造物としてのわれわれにとっていずれにしても今・ここ（≪時間・空間≫）においては、天（≪という概念≫）によってある程度表示され・代表されるが故に」、「その限り、神の厳粛な名は、今・ここ（≪時間・空間≫）において、われわれにとって、『天にいます父』（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「失われない差異性」における三位一体の神の＜起源的＞な第一の存在の仕方――この父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方であるイエス・キリストの父≫）という名であることができるし、またそのような名でなければならない」。