本当のカール・バルトへ、そして本当のイエス・キリストの教会と教会教義学へ向かって

『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』「三十一節　神の自由の様々な完全性　　一　神の単一性と遍在」（その６−４）（５３−６８頁）

「三十一節　神の自由の様々な完全性　　一　神の単一性と遍在」（その６−４）−２
　われわれは、神の場所性・空間性と時間性における神の場所性・空間性について、「先ず一般的な定義を試みることにする」――その「神の場所性は、それが神の……神的な本質の場所性であること」、「それが、すべての神の完全性と同様に、この神の本質と同一であるということを通して、（≪神の場所性とは異なる≫）すべてのそのほかの本質の場所性と区別される」。キリストにあっての「神は、自由（≪自存性≫）の中で愛する方であることによって」、それ故に「神があくまでも（≪ご自身の中での神として≫）神ご自身であり」、それ故に「決してどこにおいてもそれと違った仕方ではなく」、またそれ故に「どこにおいても神の場所性は≪神の場所性・空間性と時間性における神の場所性・空間性は≫）、（≪ちょうど神の側の真実としてあるナザレのイエスという「人間の歴史的形態」――すなわち「イエス・キリストの名」、キリストにおける受肉、「神が人間となる」、「僕の姿」、「自分を空しくすること、受難、卑下」が、「神性の放棄」や「神性の減少」を意味するのではなく、あくまでの「神的姿の隠蔽」・「神的姿の覆い隠し」を意味しているように≫）神の神性の制限や減少を意味することはなく、常にいたるところ神の神性の実証と確証を意味していることによって、神は場所的であり給う」。キリストにあっての神は、神の場所性とは異なる「すべてのそのほかの本質の場所性と区別される」、換言すれば神の場所性とは異なる人間の自己身体、性としての他者身体、外界としての自然、宇宙を含めた全自然、それが良きものであれ悪しきものであれ人間の身体と精神を介した普遍的で実践的な全自然との相互規定的な対象的活動による成果である人間化された自然である人間的自然の場所・空間、延長、拡がりと区別されるところの、「ご自分の場所を持ち、一つの場所としてのご自身の中にい給う」、完全性・自由性・自存性における「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」・「神の＜内＞三位一体的父の名」・「三位相互＜内在性＞」における神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「失われない差異性」における三つの存在の仕方、起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊（「愛は、神にとって、最高の法則であり、最後的な実在である」、聖霊はその交わりの中で「父は子の父」・「言葉の語り手」であり、「子は父の子」・「語り手の言葉である」）なる神であり給う。それからまた、キリストにあっての「神は、神ご自身の場所性の故に」、「この造られた場所の中で神ご自身であるために、（≪われわれのための神として≫）場所を造り出し給う」、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方、父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての神の全き自由の愛の行為の出来事全体の場所を造り出し給う。このように、キリストにあっての「神は、徹頭徹尾、現臨されるひとりの方として、そのことでもって神に固有な場所性の中で、（≪ご自身の中での神として≫）ご自身の中に場所を持ち、また（≪われわれのための神として、神の場所とは異なる≫）すべてのそのほかの場所の中で場所を持ち給う」。キリストにあっての「神は、その本質において」、それ故に「自明的にその認識においても、またその力においても、どこにおいても」、前述したように「神の愛の自由の故に、繰り返し違った仕方で、そしてまた特別な仕方においてであるが」、「いたるところ全き・分けられない仕方で、現にあり、あり続けるところのひとりの方であり給う」。このことが、「神の遍在の一般的なことである」。
　さて、総括的に言えば自然神学の段階において、ヒラリウスは、神の遍在について、「全キ神ゴ自身ガゴ自分ノ内ト外デ万物ヲ保チ給ウ。ゴ自身無限デアリツツ神ハ万物ノ中ニイマシ、無限デアリ給ウ神ノ中ニ万物ハ含マレテイル」、と述べている。「存在するものそのもの」・「その純然たる造られた存在」に依拠して「造ラレタモノヲトオシテ、知解サレタ創造主ヲ認識シテ、私タチハ三位一体ナル神ヲ知解スルヨウニシナケレバナラナイ、ソノ跡ハフサワシイカタチデ被造物ノウチニ顕レテイルノデアル」とし、「被造物ノ中デノ三位一体ノ跡」を語り、「三位一体の痕跡」である「想起（記憶）、知解、愛」としての「人間の中での神の像」を、「最も身近な最も高貴な認識根拠」としたアウグスティヌスも（「宗教とは、すべての神崇拝の本質的なものが人間の道徳性にあるとするような信仰である」としたカントのように、「すでに前もってわれわれの理性に内在している神概念の再想起としての神認識」という教説を展開したアウグスティヌスも）、自然神学の段階において、「三位一体を、（≪個々の世代、個体的自己としての成果の世代的総和、その人間の類としての≫）世界（≪この時間性が人間の類の歴史、世界史、人類史である。われわれ人間は、誰であれ、自分の意志とは無関係に、すなわち不可避的に、この歴史的現存性の中に生誕する。その中で、個としての生とその時間性である現存性を生き刻んでいく≫）から説明しようと欲した」（この場合、「啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力に信頼しない」ことになり、それ故にこの場合、フォイエルバッハが根本的原理的に批判したように、「（中略）神の啓示の内容は、神としての神から発生したのではなくて、人間的理性や人間的欲求やによって規定された神から発生した」のであり、それ故にその「対象（≪人間の自由な自己意識・理性・思惟の類的機能・類的活動によって対象化された「存在者レベルでの神」≫）に即してもまた、『神学の秘密は人間学以外の何物でもない！』」ものとなる）。また、アウグスティヌスは、『告白』では、自然神学の段階に依拠して、「過去、現在、未来は、精神の中にあるのであって、ほかのどこにあるのでもない」と述べた。『教会教義学　神の言葉�T／１・２』によれば、この時間概念は、聖書においては、非本来的な「『失われた』時間」・「否定された時間」・「否定的判決の時間」であり、本来的な「実在の時間」、すなわち「イエス・キリストにおける啓示の時間」から「『攻撃』された時間」である。それに対して、本来的な「イエス・キリストの時間」、すなわち「時間の主の時間」は、「非本来的な失われたわれわれの時間」の中で、「実在の成就された時間」・「キリスト復活の四〇日」である――ここに、「まことの現在」、「まことの過去と未来が存在するし、神の言葉がある」。このような「アウグスティヌス」は、次のように述べている――「ソレ自身ニオイテ、神ハイタルトコロ広ガリ給ウト言ワレテイルガ、肉ノ思惟ニ対シテ抵抗ガナサレ、精神ハカラダノ感覚カラ呼ビ戻サレナケレバナラナイ。……例エバアノ大地、湿気、空気、光ガ広ガッテイルト同ジヨウニ広ガッテイルト想像スルコトガナイタメデアル（ナゼナラバ、ソノヨウナモノノ大キサハスベテ、部分ニオイテハ全体ニオケルヨリモ小サイカラデアル）。ソウデハナイ。ムシロソコデノ事情ハ、ソノカラダガ小サイ人間ニモ大キナ知恵ガアルヨウナモノデアル。……神ハ、世界ノ一ツノ属性トシテデハナク、世界ヲ創造スル実体トシテ、何ノ苦労モナシニ世界を支配し、何ノ労苦モナシニ世界ヲ包ミツツ、スベテノモノヲ通シテ貫イテ、広ガリ、給ウ。シカシ、場所ノ広ガリヲ通シテ、アタカモ量的ニ広ガッテイテ、世界ノ半分ノ物体ノ中ニハ半分ガ、ホカノ半分ノ中ニハマタホカノ半分ガアリ、ソノヨウニシテ全体デハジメテ全体ガアルトイッタ具合デハナイ。……ムシロご自身ノ中デイタルトコロ全体的ニ存在シ給ウ。……ソレ故、イタルトコロ存在シ給ウト言ワレルノデアル。ナゼナラバ、事物ノドノ部分ニ対シテモ不在デアリ給ウコトガナイカラデアル。マタ、全体的ニ存在シ給ウ。ナゼナラバ、……タダ単に被造物ノ普遍ニ対シテダケデナク、マコトニソノ各部分ニ対シテ、同時ニ全体的ニ存在シ給ウカラデアル。……シカシマタ、ゴ自身ノ中デ全体的に存在シ給ウ。ナゼナラバ、存在シ給ウ相手ノモノニヨッテ、（アタカモソレラナシニ存在スルコトガデキナイカノヨウニ）制約サレ給ウコトガナイカラデアル。ナゼナラバ、タトエ現在シ給ウ相手ノモノニヨッテ捕エラレルヨウナコトガアルトシテモ、ゴ自身決シテヨリ小サクナリ給ウコトハナイカラデアル」。「ポラーヌスは、以下のように総括している」――「神ハ、イタルトコロソノ全キ、分ケラレナイ本質デアリ給ウ。……神ノ本質ハ、多種多様デハナク、神は、ソレゾレノトコロデ違ッタモノトシテ存在サレルノデハナイ。……チョウドゴ自身ノ中デ一ツノ全キ方デアリ給ウヨウニ、スベテノ一ツ一ツノ場所ト事物ノ中デ、一ツノ全キ方デアリ給ウ。シカモスベテノモノノ内トスベテノモノノ外デ、全キ方デアリ給ウ。……スベテヲメグリ囲ミ、何モノニヨッテモ拘束サレ給ウコトハナイ。ソノタメ事物トマゼ合ワサレタリ、事物ノ不潔サニヨッテケガサレルコトモナイ。神ハイタルトコロソノ本質デアリ給ウ。……普遍的ナ原理オヨビ原因トシテ、神ガ生ジサセ給ウ事物ニ対シテ、生ジサセ、保持シツツ、存在シ給ウ」。ここでは、「場所についてのそれ自身無場所的な原理（≪無空間性の原理≫）」が、それ故に「一つの被造物的実在」（人間自身の自己認識、人間自身の「内在的に理解された」「宇宙の諸規定・人間的な現実存在の諸規定」としての「単なる宇宙論や人間論」）が、「記述され」ているということができる。したがって、「一般的な規定は、必然的に形式的であり」、それ故に「全面にわたって曖昧さから脱却」でき得ていないのである。キリストにあっての「神は、確かに万物の創造主として、また場所の原理でもあり給う。しかし、神は、まさにご自分のそれ自身無場所的な原理（≪無空間性の原理≫）ではあり給わず」、「神は、神ご自身、（≪神の場所性とは異なるすべてのそのほかの本質の場所性と区別される≫）神に固有な仕方で場所的である場所の原理（≪空間性の原理≫）であり給う」。
　このような訳で、「人は、場所に対する神の関係に関して、……到ルトコロおよびドコニモ……ナイでもって（≪観念的に≫）遊ぶことができ、『神は到るところにいます』と言うことができると同時に、……『神はどこにもいまさない』と言うことができるといった事情ではない」、そのように観念の遊びをすることができといった事情ではない。何故ならば、「われわれに対する神の存在と行為に関して、……聖書の中で証されているすべては、確かに場所に対する神の関係は、徹頭徹尾自由な、立ちまった関係であるということを語っている」からである。キリストにあっての「神は、神ご自身、（≪神の場所性とは異なるすべてのそのほかの本質の場所性とは区別される≫）神に固有な仕方で場所的である場所の原理（≪空間性の原理≫）であり給う」――このところから「人間を尋ね求め、そのところで人間によって尋ね求められるべく、そのところでその遠さの中で、まさにそのところからして近づきつつ、このところでまさにあのところにいます方として現臨されつつ」、全き自由において「生ける、愛し給う」「神は、常にどこかにい給う」。キリストにあっての神は、神とは異なる「その被造物の中で、被造物と共に、ご自身の中でいますのと同じ方であるならば、神がわれわれに対してその啓示（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、神の子、起源的な第一の形態の神の言葉、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現≫）の中でご自身以下のもの・ご自身以外のものではなく、まさしくご自身を啓示し給うのであるならば、その時、神は（≪われわれのための神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「失われない差異性」における三つの存在、父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事全体において≫）あのところとこのところといたるところにいますということ（≪遍在し給うということ≫）」、それ故に「常にどこかにいまし、決してどこにもいまさないのではないということ、神は（≪ご自身の中での神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「失われない差異性」における三つの存在の仕方、起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊なる神という≫）その神的な本質の中で場所的であるということが、神ご自身に属している」のである。キリストにあっての神は、 完全性・自由性・自存性におけるご自身の中での神として、完全性・自由性・自存性における「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」・「神の＜内＞三位一体的父の名」・「三位相互＜内在性＞」における神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「失われない差異性」における三つの存在の仕方、起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊（「愛は、神にとって、最高の法則であり、最後的な実在である」、聖霊はその交わりの中で「父は子の父」・「言葉の語り手」であり、「子は父の子」・「語り手の言葉である」）なる神であり給う、またわれわれのための神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方、父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事全体であり給う。「人は、（≪木を見て森を見ないように、形而上学的に一面を抽象して全体化・固定化して≫）イタルトコロとドコニモイマサナイと関わっての（≪観念の≫）遊び」に「既に教会の教父たちは何回もふけったのであるが」、現存するそのような観念の遊びに「遊んでいる者たち」は、「われわれにご自身を現にあるところのものとして与え・啓示された神の代わりに、（すべての異教主義の最後的な秘義である）人間の考え出した（≪人間自身の自己意識・理性・思惟の類的機能・類的活動によって対象化された≫）生命のない、愛のない神（≪「存在者レベルでの神」≫）に身を向けようとしているということの、あるいは既に身を向けようと決心したということの確実な間接的証明と見做すことができるし、見做さなければならない」。このような訳で、「人は、その時、そのような者たち（≪総括的に言えば、自然神学の段階あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教の段階に停滞し循環する者たち≫）のさらに引き続いてのすべての言明（≪「存在者レベルでの神」の名と呼びかけによる救いと平和の企て、その救いと平和についての思惟と語りと行動≫）に、ある種の不信感を持って、あるいはいずれにしてもただ非常な用心深さを持って」関わらなければならない、換言すれば常に、彼らのその思惟と語りと行動に対して、対象的になって距離を取りつつ彼らに関係していかなければならない。何故ならば、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性に感謝を持って信頼し固執し連帯する「人は、（≪イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現されたまことの神と人間的理性や人間的欲求やによって対象化された「存在者レベルでの神」・「被造物的実在」との≫）ふたりの神に同時に身を向けることはできない」からである。したがって、「人が、神をいわばあの生命のない、また愛のない神の解釈として理解しようとする時」には、あるいは「その生命のない・愛のない神」を「生ける・愛する神の解釈として理解しようとする時」には、イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現されたまことの「生ける、愛する神を、常に、既に、捨ててしまった」ことになるのである。「人が、（≪イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現されたまことの≫）『生ける、愛する神』についてではなく、（≪神の場所性とは異なるそのほかの≫）すべての場所の無場所的な原理について語る時」には、「人は、イタルトコロをドコニモイマサナイによって、またドコニモイマサナイをイタルトコロによって説明しようと欲する」のであり、この観念の「遊びとこの説明こそが、すべての神秘主義的な神論の特徴である……」――それら観念の遊びと説明は、「いわゆるキリスト教的神秘主義の形態においても、実際のキリスト教的神認識（≪啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）に対しての攻撃あるいは逃避運動として特徴づけ」られるところのものである。