本当のカール・バルトへ、そして本当のイエス・キリストの教会と教会教義学へ向かって

『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』「三十一節　神の自由の様々な完全性　　一　神の単一性と遍在」（その６−３）（３３−５３頁）

「三十一節　神の自由の様々な完全性　　一　神の単一性と遍在」（その６−３）−５
　「われわれが、神の単一性を、……実際に神の単一性として理解するためには、神の愛の単一性として終わりまで考え抜こうと努めなければならなかったように」、「神の愛と同一であるとして（≪すなわち、われわれのための神としての「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「失われない差異性」における三つの存在の仕方、父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事の完全性として≫）……理解するのでなければ終わりまで考え抜くことができないとしても」、「神の永遠性そのもの」は、「先ずそれとして」、「神の本質の中での現に特別な完全性として、（≪ご自身の中での神としての≫）神的な自由（≪神的な自存性≫）の規定である」。この「神の永遠性」は、「先ずそれとして」、ちょうど神の自由がご自身の中での神の自由・「自己自身である神の自由」としての「自存性の概念（≪自由の概念の積極的側面≫）」とわれわれのための神における「神とは違うもの（≪神とは異なるもの、人間の自由な内面の無限性、人間の自由な自己意識・理性・思惟の類的機能・類的活動≫）によって為されるすべての条件づけからの神の自由」としての「独立性の概念（≪自由の概念の消極的側面≫）」との総体性において定義しなければならないように、「父なる名の内三位一体的特殊性」・「三位相互内在性」・「内三位一体的父の名」におけるご自身の中での神として「内に向かっての」およびわれわれのための神として「外に向かっての」、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「失われない差異性」における三つの存在の仕方、父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事の完全性としての「神の神存在の行為の中で確証され、永遠な愛としての神の愛の中で力を発揮して働くところの神の絶対的な主権性および尊厳性そのものを言い表している」。「神の愛は、その神性の故に、その自由の故に、内に向かっても外に向かっても、永遠性を必要とし、また持っている」（『教会教義学　神の言葉�T／１・２』によれば、もしそうでないならば、「キリストの永遠のまことの神性の告白を信用しない」自然神学の段階あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教の段階に停滞している近代主義的プロテスタント主義的神学あるいは近代主義的プロテスタント主義的信仰・神学・教会の宣教がそうであったように、和解に関して言えば、「赦す神」が人間に内在しなければならないことになり、その認識自体が自然神学的な思弁でしかないものなのである。何故ならば、そのような思惟と語りにおいては、イエス・キリストは、「下からの半神」・「超人」・人間の「最深の本質」・「最高の理想」・キリスト教的実存の範型・社会的政治的奉仕活動の範型という単なる「空虚な概念」でしかなくなってしまうからである）。このことに「対応しつつ、……神の愛は、外に向かって、またわれわれが時間と呼ぶところのものを必要とし、造り出し、……持っている」（『教会教義学　神の言葉�T／１・２』によれば、アウグスティヌス――彼は『告白』で「過去、現在、未来は精神の中にあって、ほかのどこにあるのでもない」と述べていいる――およびハイデッガー――彼は「時間から対象性をはぎとって、時間を人間の現実存在の存在形式として理解」した。すなわち、自分の意志とは全く無関係に投げ出された不 可避な歴史的現存性（被企投性・現前性・被制作性）に投げ出された個が、「自分の最も固有なぬきん出た存在可能性に向かおうとする『先行的な決意性』」（企投性）によって時間化する時、自分自身の時間、自分自身の未来・過去・現在を創造し持つことができる、個が「自分自身を実現してゆく」現存性に意識的意志的自覚的に生きようとする時、時間を創造し持つことができる、自然時間でもなく、歴史的時間でもなく、内在的な個の現存性に固有な時間を創造し持つことができる。彼は時間を、「被造物的――人間的現実存在の規定」、「被造物である人間存在の自己規定として理解」した、すなわち人間的現実存在は時間性であること（時間化）、その時間性が存在を規定すること（存在了解）と理解した――は、「自分で時間を創造する」ことによって「時間」を持つと理解した。しかし、彼らの時間概念は、聖書においては「『失われた』時間」、「否定された時間」、「否定的判決の時間」であり、「実在の時間」である「イエス・キリストにおける啓示の時間」から「『攻撃』された時間」である。それに対して、イエス・キリストの時間、「時間の主の時間」は、問題に満ちた非本来的な失われた「われわれの時間」の中で、「実在の成就された時間」（キリストの復活、成就された時間）である。ここに、「まことの現在」まことの「過去と未来が存在する」し、「神の言葉」がある）。ここで、「時間」（自然時間、人間の個と類の時間性である歴史的現存性と現実的現存性）は、神の愛の「力によって創造が神的自由の行為（≪全き自由の神の愛の行為の出来事としての神の神存在≫）の舞台（≪啓示の時間、イエス・キリストの時間、キリストの死と復活・成就された時間、救済史、永遠≫）に定められるのに適したものとなる創造の形式である」。「まさに神が、（≪われわれのための神として≫）外に向かっても永遠なるものであり給い、そのようなものとして行動し給うために、創造の規定として時間が必要である」。何故ならば、「もしも創造が、時間的である代わりに永遠であるならば、神はまさに永遠的なるものとして、創造の中で、永遠的で、換言すれば自由で、主権的で、尊厳的なものであり給うとか、そのようなものとして行動し給うことはできないであろう」からである、「その時には神は、ご自身の永遠性に束縛されるのと同様、創造の永遠性に束縛されることになるであろう」からである。このような訳で、「神の永遠性は、神が（≪ご自身の中での神として≫）内に向かっても（≪われわれのための神として≫）外に向かっても、同じひとりの方であり、同じひとりの方であり続けようと欲し給う自由の中で、神の愛とも、また創造の一つの規定としての時間とも関連している」。
　「確かに神の遍在も（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「失われない差異性」における三つの存在の仕方、父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事も≫）、神の全能および栄光と同じように、神の自由の（≪神の自存性の≫）一つの性質である」が、ご自身の中での神としての「神の自由（≪神の自存性≫）そのものの一つの性質ではなく」、神の「愛の中で（≪ご自身の中での神として「先ず第一に内に向かって、それからまた（≪われわれのための神として≫）外に向かって」≫）働いている……神の自由の一つの性質である」。「神の自由」（神の自存性）は、神の側の真実としてある、神の「愛として」、また神の「愛の中で」、「自分を確認し実証することによって」（自己認識・自己理解・自己規定することによって、自己証明することによって）、「神の自由は、（≪ご自身の中での神として、すなわち「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「失われない差異性」における三つの存在の仕方、起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父、父が子として自分を自分から区別した子としてのイエス・キリスト自身、愛に基づく父と子の交わりである聖霊なる神として、「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」・「神の＜内＞三位一体的父の名」・「三位相互＜内在性＞」における神として≫）内に向かってと（≪われわれのための神として、すなわち「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「失われない差異性」における三つの存在の仕方、父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる全き自由の神の愛の行為の出来事としての神の存在として≫）外に向かって遍在を必要とし持つ」のである。このことに、「神の自由（≪神の自存性≫）が、外に向かって、われわれが空間と呼ぶところのものを必要とし・造り出し・持つということが対応する」。この「空間は、それの力によって創造された神とは異なる実在として、神の愛の対象であることができる創造の形式である」、「まさに神が、（≪ご自身の中での神として≫）ご自身の中でそうであるのと同じように、また（≪われわれのための神として≫）外に向かっても遍在されるがために、創造の規定として空間が必要である」。「もしも（≪神とは異なる≫）被造物が、それの側で、空間的である代わりに、自分自身に対して遍在するとするならば」、「創造の中で」、「神は遍在する方として、……遍在的でないことになる……。神は、そこでは、ご自身の遍在を通して（≪神とは異なる≫）被造物から押しのけられ、（≪神とは異なる≫）被造物は神の愛の対象であることはできない……」。このような訳で、「神の遍在」は、「その中で、神は内に向かっても外に向かっても、ただ単に同じひとりの方であるだけでなく、また第一に自分自身に、それからまたほかのものに出会うもの、身を向けるもの、現臨するものであり、そのようなものであり続け、繰り返しそのようなもになることを欲し給う神の愛の中で、神の自由とも、また創造の一つの規定としての空間とも関連している」のである、「確かに否定することのできない神の遍在と永遠性相互の関係と、それらと空間の問題および時間の問題との関連性に関して、事情はそのようであるので、われわれは、神の遍在と永遠性を理解するために」、「人間の意識に対象としてやって来るすべてのものは根源的には空間および時間に分割されるほかはない」から「空間との神の関係が問題」であるという思惟による「神の遍在」と「時間との神の関係が問題」であるという思惟による「神の永遠性」とを「平行的に並置」し、それを「神と出会う人間からして（≪人間の側から人間が先行する仕方で「自明的」に≫）立て」た「昔の教義学」の思惟と語りを首肯することはできないのである。言い換えれば、「空間の問題と時間の問題の人間論的な平行性」の「吟味をわれわれは喜んで、哲学的な論理学者、形而上学者、認識論者にまかせておいてよい」のであるが、しかし「もしもわれわれが（≪あの「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉、具体的には第二の形態の聖書的啓示証言に信頼し固執し連帯しなければならない第三の形態に属する全く人間的な教会の宣教が≫）、（≪人間論的人間学的な、総括的に言えば自然神学的な≫）空間の問題と時間の問題の平行性の故に」、「神の遍在と永遠性をあの平行法の図式に服させるとすれば、それは暴力行為を意味するであろう」から、その図式を首肯することはできないのである。
　さて、「人間の意識に対象としてやって来るすべてのものは根源的には空間および時間に分割されるほかはない」から「空間との神の関係が問題」であるという思惟による「神の遍在」と「時間との神の関係が問題」であるという思惟による「神の永遠性」とを「平行的に並置」し、それを「神と出会う人間からして（≪人間の側から人間が先行する仕方で「自明的」に≫）立て」た「昔の教義学」の思惟と語りの中で「まとめられた大概念は、無限性の概念であった」。この「『無限性は、ソレニヨッテ神ガ時間的ニモ場所的ニモソノホカドウイウ点ニオイテモ制限サレルコトガデキズ、実際ニゴ自身ノ本性ト本質ニシタガッテ単純ニゴ自身ヲ通シ、マタ絶対的ニ無限デアリ給ウ性質』（ヨハン・ゲルハルト）というように定義された」ように、それは、「人間との関係において、そもそも神と区別された実在との関係において」、「神の非有限性、非制限性、すなわち制限され得ないこと」を、それ故に「神の非時間性と非空間性」を意味していた。「人が、神の本質を、（≪それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉、具体的にはその第二の形態の聖書的啓示証言に信頼し固執し連帯して≫）神からして定義する代わりに、（≪「人間論的」に、人間学的に、哲学的に、論理学的形而上学的認識論的に、総括的に言えば自然神学的に、≫）人間からして定義しようとする時、そのことが何を意味しているかが、ここで明らかとなる」。人が、神の本質を、人間論的人間学的に、哲学的に、論理学的形而上学的認識論的に、総括的に言えば自然神学的に、「人間からして定義しようとする時」、その「無限性の概念は、それとしての被造物的現実存在の前提の内の……時間と空間という表象を遂行していくために避ける」ことができない概念であり、「また可能な、限界および起源の概念である」。被造物的現実存在の「われわれは有限である」、それ故にわれわれは、「無限ではない」、われわれはその「無限」に、「限界づけられ、規定されている」、しかしわれわれは、人間論的人間学的な、哲学的な、論理学的形而上学的認識論的な、総括的に言えば自然神学的な、「このような主張でもって」、「われわれが限界づけられ、規定されていることについて」語ったとしても、それでキリストにあっての「神に関して何かを語った」ことにはならないのである。何故ならば、この時、「人は、まさに神の本質ではなく」、「……ますますもって人間の本質を定義」しているからである、換言すれば例えば確かに自然としての自己身体や性としての他者身体あるいは環界としての自然は常に自然時空に規定され限界づけられ拘束されているとしても、その例えば東京に現存している自己身体を座とする人間の自由な自己意識・理性・思惟の類的機能・類的活動は、人間の自由な内面の無限性は、人間の感覚と知識を内容とした経験的普遍や尖端的な技術的成果を介し・利用して、北海道や沖縄やアメリカや中国や宇宙等にも行くことができるように、また人類史の起源・原型・母型・母胎にまで遡及することができるしあるいは現在を包括し止揚するという仕方で未来を構想することもできるように、またその類的機能・類的活動としての想像能力・思惟能力・表象能力の本質を対象化し客体化した「絶対的な本質」としての「存在者レベルでの神」を作り出すことができるように、またその神の名と呼びかけの下に恣意的独善的な救いや平和の企てを為すことができるように、また共同宗教としてのキリスト教の最後的形態である信教の自由を保障した政教分離の憲法規定を持った共同の観念的形態である政治的近代国家を第一義化・価値化する国家主義を宗教的対象とすることができるように、また戦争の元凶である民族国家の葬送の問題を明確に提起することなく観念の遊びとしての平和主義を宗教的対象とすることができるように、また自然史的成果を否定的にだけ捉えて一方通行的にエコロジーの極限に想定される天然自然主義を宗教的対象とすることができるように、また一方通行的に男性中心主義あるいは女性中心主義を宗教的対象とすることができるように、また戦争責任の取り方としてあの「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（具体的にはその第二の形態の聖書的啓示証言）を原理・規準・法廷・審判者・支配者として、戦争時において戦争に加担した自分のあるいは自分たちの敗北の在り方を的確に自己吟味し自己批判し自己検証していく作業を後景へと退けたまま、「特定の人種、民族、国民、国家の利益と折り合う」ことを第一義性・価値性として宗教的対象とすることができるように、また「国家的、政治的、経済的または道徳的な諸原理や理念や体制」によって「世界の救い（≪・平和≫）」を実現しようとすることを宗教的対象とすることができるように、人間の自由な自己意識・理性・思惟の類的機能・類的活動という人間の本質を、換言すれば人間の自由な内面の無限性という人間の本質を定義しているからである。この時、人は、キリストにあっての「神について何かを語った」のではなく、「ただ……われわれ自身（≪人間自身≫）について語った」だけなのである、換言すればその時、人は、キリストにあっての「神とは異なった（≪われわれ人間自身が対象化し客体化した≫）実在の概念の高めと深化」を為しただけなのである。何故ならば、「すべての有限なものと（有限なものから成り立っている）すべての総和は、事実ただ無限なるものの大海の中でのひと雫でしかないとしても、結局またこの大海も、その無限性全体の中で、有限なもののあの雫なしには現にあるところのものではないであろうから」である、その無限性の概念は、結局は対象化され客体化された人間の自由な自己意識・理性・思惟の類的本質でしかないからである。このような訳で、結局「その無限性の大海も、ただ有限なるもののそのような個々の雫の無限な充満から成り立つことができるだけである」。「シュライエルマッヘルが、あの昔から伝えられた大概念に対応しつつ神の永遠性と遍在を、すべての時間的なもの（すなわち空間的なもの）と共にまた時間（すなわち空間）そのものをも条件づけている徹頭徹尾無時間的な（すなわち無空間的な）神的原因性として定義した時、あるいはビーデルマンが神の永遠性と遍在を『世界の絶対的根拠の純粋に無空間的および無時間的な自己内在性』として定義している時」、あるいは「J・ヴィヘルハウス」が「永遠の存在」の「神ご自身が啓示されるところ、そこでは空間と時間は消え失せ、地の基は消滅する……」と言う時、「そのことは、（≪人間の自由な自己意識・理性・思惟の類的機能・類的活動、人間の自由な内面の無限性によって対象化され客体化された≫）神とは異なる実在そのものの……特徴表示（≪人間的理性や人間的欲求やによって規定された「存在者レベルでの神」、「人間の想像能力・思惟能力・表象能力の本質が、現実され対象化された……絶対的な本質（存在者）……と考えられ表象されたもの」≫）以上のものではない」のである。
　「空間と時間がそのように消え失せること、空間的――時間的なるものの根拠としての無空間的および無時間的な存在は、創造の内部においても存在する」。空間と時間が「限界づけられていることの中でこそ」、「神とは異なる実在の」「空間と時間は、……神によって創造された規定である」。したがって、「神とは異なる実在の」「空間と時間」の中で、「時間的な存在と無時間的な存在、空間的な存在と無空間的な存在が触れ・補充し・交差し合うのである」、ちょうどご自身の中での神がわれわれのための神としてわれわれのために、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方において、すなわちナザレのイエスという人間の歴史的形態（「イエス・キリストの名」）おいて、限界づけられたわれわれの時間の中に突入してきたように、ちょうどそのイエス・キリストがわれわれ人間のために、われわれ人間からは「何ら応答を期待せず・また実際に応答を見出さず」とも、「神であることを廃めず」に、「何ら価値や力や資格もない」「罪によって暗くなり・破れた姿」の「人間的存在を己の神的存在につけ加え、身内に取り入れ、それをご自分と分離出来ぬよう」に、「しかも（≪神と人間との無限の質的差異の下で≫）混淆されぬように（≪混合・協働・共働・折衷されぬように≫）、統一し給うた」というように。この「神とは異なる実在の」限界づけられた「空間と時間」は、「結局、地と天の、自然と精神の、直観と概念の、物理学と数学の世界である」、「人間の生活全体は、……時間と無時間性、空間と無空間性が、互いに共に相対して中に入り込み合って存在している中で遂行される」。しかし、このことと、神の側の真実としてある神の側からするキリストにあっての「神と人間が共に存在していることとは……混同されてはならない」のである。したがって、キリストにあっての「神は、（≪「人間の意識に対象としてやって来るすべてのものは根源的には空間および時間に分割されるほかはない」という人間の主観的様式に基づいて、≫）無時間性および無空間性の概念として定義されてはならない」のである。形而上学的一面的固定的に、唯物主義的に「自然的な物質世界は、それとして、有限な、そのようにして神と区別されるべき実在の総内容であろうか」（吉本は、『行動の内部構造』で、「人間の心的な過程が存在するためには、（≪自然としての≫）身体の存在は絶対的条件である」、すなわち第一次的に唯物的である。「それにもかかわらず、人間の心的な過程の内容は必ずしも（≪自然としての≫）身体の存在の反映ではない」、すなわちいったん疎外されたその心的過程はそれ自体の自己展開過程と自己増殖過程を持つと述べている。またマルクスは、『経済学批判』・『経済学批判序説』で、自然史の一部である人類史の自然史的過程における経済社会構成の拡大・高度化においてそれに見合った観念諸形態が疎外され生み出されるが、いったん疎外されたその観念諸形態はそれ自体の自体的展開過程と自己増殖過程を持つと述べている）、あるいは「精神的行為こそが、特徴的に無限なるものの中で有限なるものを見、無限なものに対して有限な形態を与えることから成り立っていることは全く顕著なこと」であるから、観念論的にわれわれ人間の「精神の生が、それとして、無限であり、無限なるものとして神的な生と一つなのであろうか」（バルトは、『教義学要綱』で、「聖書の主題であり、同時に哲学の要旨である」神と人間との無限の質差差異の自覚の下で、「聖霊は、人間精神と同一ではない」、「人間が聖霊を受けることを許され、持つことが許される場合、（中略）そのことによって、決して聖霊が人間精神の一形姿であるなどという誤解が、生じてはならない」、聖霊の注ぎによって更新された理性も聖霊ではない、と述べている）――否である。「人が、（≪総括的に言えば、自然神学の段階あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教の段階に停滞し≫）世界の根拠の無空間性および無時間性の中に神の本質を見て取ることをするならば、その時、そのことは、ほかならぬ神ご自身が今やあの（≪唯物主義か観念論かに依拠した≫）世界内部の対立の弁証法に編み込まれるということ以外の何ごとも意味していない」のである。「人間が神の中にあるよりはむしろ神が人間の中にあるのではないかという（≪神の人間化あるいは人間の神化であるのではないかという≫）あのフォイエルバッハ的な問いは、その時、何時でも問われるし、その時には、その問い」に対して、「決定的に答え」ることはできないのである――神と人間との無限の質的差異を揚棄してしまった、神と人間との混淆論・混合論・共働論・協働論（神学と人間論人間学との混合を志向し目指す混合神学、総括的に言えば自然神学あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教）において、われわれ人間の自己意識・理性・思惟によって対象化された「存在者レベルでの神」（その「神への信仰」、その神の名と呼びかけによる救いと平和の企てを含めて）は、「……独立的に現われ活動する神的実体として（中略）（≪それには≫）あらゆることが可能であり、（中略）（≪またそれは≫）、人を義とする……、……愛と善き業を生み出す…、罪や死にも打ち勝ち、人を救う。（≪その≫）信仰と神とは『一団』をなし、信仰は（心の信頼として！）神と偽神の両方を作り、ときには（ただ『われわれ自身の内部において』だけであるが）「神性の創造者」と呼ばれるということもあり得る。さらに重要なのは、……受肉説とそれに関連した事柄である。フォイエルバッハは、このキリスト教の教説を「神は人となり、人は神となる」という定式で簡明に表現し（≪たが、それは≫）……とくにルター的なキリスト論および聖餐論を前提とする場合には、まったく不可能とか無意味とかいうことはできない（≪妥当性のある根本的原理的な批判である≫）。……、神性を天上に求めず地上に求め人間の中に――人間イエスの中に求めることを教え、またかれにとっては聖餐式のパ ンは高く挙げられたイエスの栄光化されたからだであらねばならなかった（中略）。（中略）これらすべてのことは、……、……天と地・神と人間を?倒する可能性を意味しており、終末論的限界を忘れる可能性を意味している。（中略）ルターと初期ルター派の人々が、天を襲うようなキリスト論を説いて、その後継者たちを、たえず出現する思弁的・人間学的帰結に対しての一種の危険状態・無防備状態の中に置き去りにしたことは疑いない。（≪神と人間との無限の質的差異という≫）神に対する関係があらゆる点で、原理的に?倒不可能な関係だということ（≪それは「聖書の主題であり、同時に哲学の要旨である」ということ≫）――そのことについて、人々は、フォイエルバッハ（≪の根本的原理的なキリスト教批判≫）を有効に防御するためには確信を持っていなければならない……」、「市民的啓蒙という観念、（中略）……社会民主主義の無神性は、教会にとって、（中略）現在でも警告であって、（中略）教会がフォイエルバッハの問いの前に晏如となることができるのは、教会の倫理が古いまた新しい実体やイデオロギーに対する崇拝から根本的に分かたれるときである。そのときにこそ人々は、教会の告げる神も幻想ではないのだという教会の言葉を信ずるであろう。そのときまでは、そのようなことを決して信じはしないのである」、「……神と人間を同一視する神学（中略）『人間の中なる神について』の議論が根絶されない限り、フォイエルバッハを批判する理由は、われわれにはない」（バルト『ルートヴィッヒ・フォイエルバッハ』）、「人間は自分の本質を対象化し、そして次に再び自己を、このように対象化された主体や人格へ転化された存在者（本質）の対象とする。これが宗教の秘密である」、「（中略）神の意識は人間の自己意識であり、神の認識は人間の自己認識である」、「（中略）神の啓示の内容は、神としての神から発生したのではなくて、人間的理性や人間的欲求やによって規定された神から発生した……。（中略）こうして、この対象に即してもまた、『神学の秘密は人間学以外の何物でもない！』……」（ルートヴィッヒ・フォイエルバッハ『キリスト教の本質』）。イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現された神は、全き自由、全き自存性において、ご自身の中での神として、「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」・「神の＜内＞三位一体的父の名」・「三位相互＜内在性＞」における神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神（「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方、起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊なる三位一体の神）であり給う、またそのような方として、この神はわれわれのための神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方において、父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること（それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性）・救済主なる神という全き自由の神の愛の行為の出来事としての神の存在であり給う。
　われわれは、キリストにあっての神は「また無限でもあり、換言すれば神は、空間と時間の限界に、……そもそもその創造の規定としての空間と時間の形式に拘束されてい給わないということを否定しはしない……」が、しかしわれわれは、「直ちに」、キリストにあっての神はあくまでも「神ご自身からして」「ご自身の仕方で、神的な仕方で、無限であり給う」ということを「付け加えなければならない」。したがって、「無限性（≪「無空間性と無時間性」≫）と有限性（≪「空間性と時間性」≫）の間の……対立も、すなわちこの対立の排他性も、神にとっては何の制限でもあり得ず」、それ故に神は、「神がまさにあのスベテノ計量アルイハ限界ヲ欠キ、ソレカラ自由デアル」という概念規定を通して神を閉じ込めてしまういかなる人間の側からする「捕囚も形成することはできないという仕方で」、「無限であり給う」ということを「付け加えなければならない」。形而上学的一面的固定的に「有限性に概念的に対立させられている無限性こそ」が、「その限りそれとしての無限性の孤立させられた概念こそ」が、「神が空間および時間との関係の中であり給うことを表示するのに十分ではないのである」。したがって、「神の無限性……について語ろうと欲する時には、まさに神の無限性にとっては、そのようなものとして同時に有限性でもあるということが何の矛盾も意味し得ないであろうということの中でこそ、まことの無限性である」ということでなければならない。何故ならば、「神の完全性」は、「神の有限性も、神がまた無限であることを妨げないということ」、それ故に「有限性は限界として確かに神の創造の規定であるが、しかし神が拘束され、欠乏を持ち給うことを自分自身の中に含んでいないということ、しかしまた有限性は、神がそれをその創造の規定とされることによって、先ず第一に神ご自身の中に、神としてのその本質の中に、その根拠とその真理を持たないのでは決してないということを意味しなければならない」からである。「われわれが、神を無限であり、標準や限界がなく、無空間的、無時間的であると呼ぶ時」、「われわれは、そのことでもって、神が、その行為全体（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方、父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事全体≫）の中で初めと終わり、標準と限界、空間と時間を措定し給う方であることを排除したり・否定したり・あるいはまた問いに付そうとすることも許されないのである」。何故ならば、「もしもそのものが、昔の教義学のあの前提に従って絶対的な無限性であるとしたら」、「そのものは、神」ではないからである、「そのものは、自由の中で生きる愛」ではないからである、「そのものは、主、創造主、和解主、救済主」ではないからである。キリストにあっての「神は、（≪神の側の真実として神の側から≫）神の仕方で、ご自身の中で持ち・またご自身であり給わない何ごとも為し給わない」、ちょうど神の側の真実としてある神の側からする主格的属格として理解されたギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」（ローマ３・２２、ガラテヤ２・１６等）――「イエス・キリストが信じる信仰」による「神の義、神の子の義、神自身の義」（「律法の成就」・完了）が、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、全き自由の神の愛の行為の出来事としての神の存在であるように。『教会教義学　神の言葉�T／１・２』に引き寄せて言えば、次のように言うことができる――「旧約（≪「神の裁きの啓示」・律法≫）から新約（≪「神の恵みの啓示」・福音≫）へのキリストの十字架でもって終わる古い世」・「われわれ人間の失われた非本来的な」古い時空は、成就された時間としてのキリストの復活における「神の勝利の行為」により包括され止揚され克服されて「そこにある」、すなわちこのことは、「本来的な実在としてのイエス・キリストの新しい時間」・「新しい世」・新しい時空のはじまりである、「『神はご自身を啓示し給う』という命題」は、「『神はわれわれのための時間（≪時空≫）を持ち給う』という命題」と同じ意味である（「すべての以前と以後においても」 「同一の方であり給う」イエス・キリストにおいて、未来――すなわち復活したキリストの再臨、終末、救贖、完成を考えること・待望することは過去――キリストの復活を考えること・想起することであり、過去――すなわちキリストの復活を考えること・想起することは未来――すなわち復活したキリストの再臨、終末、救贖、完成を考えること・待望することであると同時に、「成就された時間」――すなわちキリストの復活の前の過去を考えることでもある）。このイエス・キリストにおける啓示の時間は、神の側の真実としてあるものとして、「啓示そのものによって教えられなければ」（啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて教えられなければ）、その一部分でさえ認識（信仰）することはできないのである、換言すれば単なる知識として持つことはできても、信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）として持つことはできないのである。このような訳で、われわれは、イエス・キリストの出来事を「神の啓示として理解」する時初めて、イエス・キリストの現臨の出来事、イエス・キリストにおける啓示の時間は、「われわれだけでわれわれの時間（≪われわれの時空≫）を持っていた時」に生起した「われわれのための神の時間」（われわれのための神の時空）であるというこを認識し承認し確認することができるのである。神の言葉は、「偶発的な同時性」――すなわち「特定のアノトコロデアノ時ニが、特定のココデイマ」となる。神の言葉は、「その都度、全く特定の一回的な、独一無比な」言葉である。しかしまた、神の言葉は、「神の口を通して語られて、同時的」である。このことは、神の言葉は一つ（それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉自身、「啓示の実在」そのもの）であること、すなわち「きょうも、きのうも、いつまでも変わることがない」イエス・キリストにおける連続性を意味している。この「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方であるイエス・キリストの連続性における「同時性」が、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて、「特定のアノトコロデアノ時ニが、特定のココデイマ」となる出来事の時間・空間のベクトル変容を可能とするのである。すなわち、そのイエス・キリストの「特定のアノトコロデアノ時ニ」において、バルトの「特定のココデイマ」は、預言者や使徒たちの特定の時空と交点を結び得るのである。「時の全くの厳格な相違性の中で、神の言葉は一つであり、同時的である（イエス・キリストは、きょうも、きのうも、いつまでも変わることがない）」。言い換えれば、そこにおいて、バルトの現存性は、神の言葉の第二の形態である聖書的啓示証言および神の言葉の第三の形態である教会の＜客観的＞な信仰告白および教義に連帯するのである、キリスト教に固有な類・歴史性に連帯するのである。キリストにあっての神は、人間の自由な自己意識・理性・思惟の類的機能・類的活動が対象化した「絶対的な無限性」であるために、「あの無限ナルモノであるために」、「そのみ業の中で、秩序の、……空間と時間の神であり給うのではない」、それ故に「全くの空しい高慢と、有限に対する無駄な反抗の中での」「この無限ナルモノとして、あの（≪人間の自由な自己意識・理性・思惟の類的機能・類的活動が対象化した≫）被造物的な無限なるもの、造られた精神は、（罪人の世界の中でそれにとって特有である）悪霊的な勝手気ままさの中で（≪恣意性独善性の中で≫）、振舞うのである」。このような訳で、われわれは、「この高慢な、反抗的な無限ナルモノの中に、神の本質を認識しようとするいかなる根拠も持ってはいない」のである、「われわれの神認識を、有限性と無限性の概念の対立の枠の中に固定すべきいかなる契機も持ってはいない」のである。「まさにそれだからこそ、無限性の概念は、それとして、神の本質を表示し、神の遍在と永遠性を表示する大概念であるのに適していない」のである。イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現された神は、「まさにその無限性の中でこそ」、「愛としてご自身、根拠、目標、標準、法則であることの中で」、「また有限であり給う」。「そのような仕方で」、前述した形而上学的一面的固定的な「あの抽象的な無限性の中でではなしに」、「神は永遠で、遍在であり給う」。すなわち、完全性・自由性・自存性におけるご自身の中での神として、完全性・自由性・自存性における「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」・「神の＜内＞三位一体的父の名」・「三位相互＜内在性＞」における神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「失われない差異性」における三つの存在の仕方、起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊（「愛は、神にとって、最高の法則であり、最後的な実在である」、聖霊はその交わりの中で「父は子の父」・「言葉の語り手」であり、「子は父の子」・「語り手の言葉である」）なる神であり給う、またわれわれのための神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方、父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事全体であり給う。