本当のカール・バルトへ、そして本当のイエス・キリストの教会と教会教義学へ向かって

『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』「三十一節　神の自由の様々な完全性　　一　神の単一性と遍在」（その６−３）（３３−５３頁）

「三十一節　神の自由の様々な完全性　　一　神の単一性と遍在」（その６−３）−３
　キリストにあっての神は、様々な預言者および使徒たちの中で、様々な説教・聖礼典（教会の宣教）の中で、聖書的啓示証言の中で、聖書に信頼し固執し連帯した教会の教父たちの＜客観的＞な教義の中で、聖書に信頼し固執し連帯した教会の＜客観的＞な信仰告白の中で、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて「それぞれ違った仕方で行動し、語り給い、また昨日と今日と明日とではそれぞれ違った仕方で行動し、語り給う」。神は、「申命七・九で『真実の神』としてその特徴が示されており、申命三二・四のモーセの歌の中で『真実なる神』として特徴が言い表されている時」――このことは、「いわば分析的判断である」。「何故ならば、そのことは、『彼を愛し、その命令を守る者には、契約を守り、恵みを施して千代に及ぼす』神について語られているからである」。「また、パウロが、この『神は真実な方である』という命題を取り上げている時、彼は、『その方によってあなた方が召され、御子、わたしたちの主イエス・キリストとの交わりに、はいらせていただいた』（�Tコリント一・九）神、『あなたがたを強め、悪しき者から守って下されるであろう』（�Uテサロニケ三・三）神を念頭に置いて、そのように述べているのである」。言い換えれば、それは、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）の言葉として、神の側の真実の方からやって来る言葉である、ちょうど教会論的なキリスト教的人間および人間論的な自然的人間を含めて、われわれ人間の「『理性や力によっては』全く信じることができないことを認識し、それを告白」（『福音主義神学入門』）した、またわれわれ人間が「神に敵対し神に服従しない」ところのまさに「肉でって、それ故に神ではなく、そのままでは神に接するための器官や能力を全く持っていない」（『教会教義学　神の言葉�T／１・２』）ということを認識し告白したバルトが、ローマ３・２２およびガラテヤ２・１６等のギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」を、あくまでも神の側の真実として、それ故に客観的現実性として、成就と執行として、永遠的実在として、主格的属格として理解しイエス・キリストが信ずる信仰による「神の義、神の子の義、神自身の義」（律法の成就・完了）と認識し承認し確認したように（『福音と律法』および『ローマ書新解』）。キリストにあっての「神は、�Tヨハネ一・九によれば、（≪神だけでなく人間も、人間の自主性・自己主張・自己義認の欲求もという人間の不信仰・無神性・真実の罪――この「自分の罪を公に言い表すなら」≫）『その罪をゆるし、すべての不義からわたしたちをきよめて下さる』ことの中で真実で正しい方であり給う」、「詩篇三一・六では、その方は、『わたしをあがなわれました』故に、『まことの神よ』と呼びかけられている」。「よく注意せよ」、このことが、「いかにしばしば……人間的な不実の確認と対立させつつ語られているかということに」――「申命三二・五（≪「主は真実なる神であって、偽りなく、義であって、正である」が、個としても・類としても・その時間性もわれわれ人間は「主に向かって悪を行い、……よこしまで、曲がったやからである」≫）、ローマ三・三（≪われわれ人間の側の「不誠実」によって、神の側の真実としてある「神の誠実」は無にされることはない、何故ならば神は神であり、そのキリストにあっての神は人間との無限の質的差異にあるからである≫）、�Uテモテ二・一三（≪われわれ人間は真実・「誠実でなくても、キリストは常に真実である。彼は自分を偽ることができない」からである≫）」。「この真実な神が、そのような方としてご自身を啓示され、結びつけ給う相手の者が、『あなたがしもべに施されたすべての恵みとまことをわたしは受けるに足りない者です』（創世三二・一〇）と告白しなければならないということ」――このことは、「同様にこの分析的な判断に属している」。「詩篇三三・四で、『直く真実である』という類似した概念を用いながら、『主のみことばは直く、そのすべてのみわざは真実である』と言われている時」、「ローマ三・四」の「あらゆる人を偽り者としても」、「神は真実な方であるとすべきである」を並置させなければならない、「ヨハネ一・九」で「神の言葉が……世に来たまことの光と呼ばれている時、その続きの一〇節」・「彼は世にいた。そして、世は彼によってできたのであるが、世は彼を知らずにいた」が「注意されなければならない」。「まさに神のまことと真実こそ」が、それ故に神の「単純性こそが、明らかにまた神の愛を、すなわち神の自由な・主権的な、われわれからしては値しなかった決断の事柄としての（≪神の恵みと神聖性、神のあわれみと義、神の忍耐と知恵という神の本質の区別を包括した単一性における≫）神の恵み、あわれみ、忍耐を特徴づけている」。「まさに神のまことと真実こそ」が、それ故に神の「単純性こそが、特別な仕方」、換言すればこのような信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を、啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えるという特別な仕方で、「ご自身を通して自分を認識すべく与え、ご自身の故に、人間の神であるよう自分を与え、贈り与え給う方（≪ご自身の中での神とわれわれのための神≫）としての神ご自身を特徴づけている」。「黙示三・七によれば、『ダビデのかぎを持つ者、開けばだれにも閉じられることがなく、閉じればだれにも開かれることのない者』が、聖なる者、まことなる者であり給う。『忠実で真実なる者』というのが、黙示一九・一一によれば白馬にまたがった騎士の名である。黙示一・五の『忠実な証人』（黙示三・一四の『忠実な、まことの証人』と同一の方であるが）は、『死人の中から最初に生まれた者、地上の諸王の支配者であり』、また『神のみまえにあわれみ深い忠実な大祭司』（へブル二・一七）であるイエス・キリストである（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、神の子、起源的な第一の形態の神の言葉、啓示・和解、個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和、「啓示の実在」そのものであるイエス・キリストである≫）。その方の証言を（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて≫）受け入れる者は、神はまことであると確認する（ヨハネ三・三三）。（≪啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰を与え給う≫）彼は来て、『真実な方を知る知力を私たちに授けて下さり……、そして、わたしたちは、真実な方におり、御子イエス・キリストにおるのである』（�Tヨハネ五・二〇）。「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉（言葉の語り手としての父の「言葉」自身）、イエス・キリスト（起源的な第一の存在の仕方である父が、子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリストご自身）がルカ二四・三四によれば、『まことによみがえられた』が故に、「まことによみがえられたことによって」、神はまことであり給う」。このような訳で、われわれは、「神の単純性に関して」、「最後にちょうど神の独一無比性に関しておよびすべてのそのほかの神的な完全性に関してと同様なところに立っている」。「パウロが、『真実な神』を、……真実な言葉であり、したがって単純な言葉であるということの証人として呼び求めている」時、「パウロ自身」は、その「使徒的な言葉」を、「なぜなら、わたしたち、すなわち、わたしとシルワノとテモテとが、あなたがたに宣べ伝えた神の子キリスト・イエスは、『しかり』となると同時に『否』となったのではない。そうではなく、『しかり』がイエスにおいて実現されたのである。なぜなら、神の約束はことごとく、彼において『しかり』となったからである。だからわたしたちは、彼によって『アァメン』と唱えて、神に栄光を帰するのである（�Uコリント一・一八−二〇）」という点に「基礎づけている」。「神の単一性」は、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する、それ故に神の不把握性において存在する、それ故にあくまでも啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいてのみ終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）において存在する、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質する三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方（性質、働き、業、行為、行動）、全き自由の神の愛の行為の出来事としての神の存在――起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父（啓示者、言葉の語り手、創造主なる神）、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身（語り手の言葉、啓示、和解主なる神）、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊（人間的主観に神の恵みの出来事、信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰を実現させる霊・啓示されてあること・救済主なる神）における「その語りと行為の中で常に新たにご自身を確認し（≪自己認識・自己理解・自己規定し≫）、常に新たにご自身との真実関係を公にし、そのようにしてその同一性の中で（≪区別を包括した同一性の中で≫）ご自分を証しする（≪自己証明する≫）こと」から成り立っている。言い換えれば、「その約束の繰り返しを通して」、「また……いよいよもって約束となるそれの成就……を通して」、「その約束がその命令と、福音が律法と一つである」、「それであるから福音は律法の成就であり、……律法は福音の形態である」、換言すれば律法はキリストの福音を内容とする福音の形式である（律法は、福音――すなわち神の側の真実としてある、それ故に客観的現実性、成就と執行、永遠的実在としてある、主格的属格として理解されたギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」、「イエス・キリストが信ずる信仰」による「神の義、神の子の義、神自身の義」そのもの、「律法の成就」・完了そのもの、完了・成就された個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和そのもの、の形式である。それ故にここで律法は、神の命令・要求・要請は、あの「神への愛」と「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」、すなわちすべての人々が＜純粋＞なキリストの福音を現実的に所有することができるために為す＜純粋＞なキリストの福音の告白・証し・宣べ伝えである）。「その福音が律法と一つである」「単一性（≪区別を包括した単一性、区別を包括した同一性≫）を通して、罪深い民イスラエルの選びと召命とが、ユダヤ人および異邦人から選ばれ恵みを通して聖化された教会の選びと召命が一つである単一性を通して」、神の恵みと神聖性、神のあわれみと義、神の忍耐と知恵という神の本質の区別を包括した単一性（同一性）における「恵みと神聖性、あわれみと義、忍耐と知恵が、神の愛の業全体（≪全き自由の父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主なる神の愛の行為の出来事としての神の存在全体≫）の中で一つである単一性を通して」、「神がそのようにご自分を確認し、その同一性（≪その区別を包括した同一性≫）の中でご自分を証し（≪自己証明≫）されることの中で啓示され、またそのことの中で成り立っている」。「失われない単一性」と「失われない差異性」という区別を包括した単一性（同一性）の下で「神の単純性のこの証言が出来事となって起こる名」は、「あれらのすべての新約聖書の箇所の中で表現されているように、『イエス・キリストの名』である」。「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、神の子、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの、「神自身の人間に対する神の愛と（≪常に先行する≫）神に対する人間の愛の同一」そのものである「イエス・キリストの中で、あれらすべての線、約束と成就、福音と律法、イスラエルと教会、神の愛と自由は、すれ違ってしまわず」、「イエス・キリストの中で出会い・結び合される。イエス・キリストの中に、事実、聖書全体の預言者的・使徒的宣教全体の然りとアーメンがあるのである。何故ならば、イエス・キリストの中に、ほかならぬひとりの神ご自身の然りとアーメンがあるからである。まさにそれだからこそ、神のまことと真実は、（≪区別を包括した≫）神の単純性の本来的な意味および根拠として特徴づけられ理解されなければならない」。「また、それだからこそ、神の単純性の認識の意味と根拠」は、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）の中で、「人間が神のまことと真実に対し、人間の側で、それにふさわしい栄誉を帰し、その正当性を認め、その限り自らまことで真実となり、その限り自ら単純となる信仰である」。したがって、「神に敵対し神に服従しない」われわれ人間は、「肉であって、それゆえ神ではなく、そのままでは神に接するための器官や能力」を全く持っていないと告白するであろう、それ故に信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰は、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいてのみ「われわれのところに来」ると告白するであろう。それ故に、「信じる者は、自分が――つまり『自分の理性や力によっては』――全く信じることができないことを知っており、それを告白する」だろう、「聖霊によって召され、光を受け、それゆえ自分で自分を理解せず（中略）頭をもたげて来る不信仰に直面しつつ（中略）『わたくしは信じる』とかれが言うのは、『主よ、わたくしの不信仰をお助け下さい』という願いの中でのみ〔マルコ九・二四〕、その願いと共にのみ」であると言うであろう。神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいてのみ与えられる「信仰」は、「神の真実に寄せられる信頼である」、「神の真実に対する誠実さである」。神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいてのみ与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）は、徹頭徹尾、「神の真実」にのみ、感謝をもって信頼し固執し固着することである。キリストにあっての「神は、その言葉の受肉の中で、同時に（≪われわれのための神としての≫）その愛と（≪ご自身の中での神としてのその≫）自由を、そしてそれら二つのものの中でご自身を証しし給うたところの神である」。「信頼に値する神は、み子と聖霊の中でひとりである父、父と聖霊の中でひとりである子であり給う」。それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における神の言葉の第二の形態の「聖書によれば、（≪神の言葉の第三の形態に属する全く人間的な≫）教会の中には、まさにこの信仰すべき（≪神の言葉の起源的な第一の形態における≫）神を信じる信仰の単純な心以外に、他の単純な心はない」のである、すなわち「言葉の受肉と神的三位一体性の啓示された秘義（≪出来事≫）の力を誠実に信頼する単純な心以外に、他の単純な心はない」のである。すなわち、「キリスト信者」は、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられる、「神の真実」に対する「誠実な信頼の単純の心」を持つ者である、すなわち神の側の真実に対して「眼と耳を閉ざして」はいない者である、すなわちあの「神への愛」と「神への愛」に根拠づけられた「神の賛美」としての「隣人愛」（神の命令・要請・要求、純粋なキリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、純粋なキリストの福音をすべての人々が現実的に所有することができるために為す純粋なキリストの福音の告白・証し・宣べ伝え）を志向し目指すもの者である、すなわちそういう仕方で「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を志向し目指す者である。
　神の本質の「失われない差異性」（われわれのための神としての父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主という三つの存在の仕方、性質、働き、業、行為、行動）を包括した「失われない単一性」（存在の本質、ご自身の中での神としての「父なる名の内三位一体的特殊性」・「三位相互内在性」・「内三位一体的父の名」、＜起源的＞な＜第一の存在の仕方＞であるイエス・キリストの＜父＞、この＜父＞が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身、愛に基づく＜父＞と＜子＞の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊なる三位一体の神であって、「三神」・「三つの対象」・「三つの神的我」ではない）における三位一体の「神は、ひとりの方で、すなわち独一無比で単純であり給う故に、あり給うことによって、（≪われわれのための神として、すなわち父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主という神の存在としての全き自由な神の愛の行為の出来事において≫）遍在し給う」（キリストにあっての神は、形而上学的一面的固定的相対的抽象的な一神教でも多神教でもない）。遍在は、疑いもなく、（≪ご自身の中での≫）神の自由の一つの規定である」（「自由」・「主権」は、「神ご自身においてのみ実在であり真理である」）。この神の「遍在」は、神とは異なる・「神とは違っているすべてのものに相対して」、「神が現にあるところのものとして、その本質に対応する仕方で存在し、行動しつつ、……現臨される主権性である」。この神の「遍在」は、その「主権性に基づいて存在するすべてのものが、神なしにではなく、ただ神と共に存在することができ、それに基づいて存在するすべてのものが、自分自身の現在（≪現存≫）を、ただ神の……現臨……を前提」としてだけ「持つ」という「主権性である」。この「神の現臨は、それ自身の中に神の支配を含んでいる」。「また、神の支配は、それ自身の中に、神の栄光を含んでいる」。「そして、何ものも神なしに存在しない時、そのことは、すべてのものは、神に服させられているということを意味している」。「また、すべてのものが、神に服させられているということは、すべてのものは、神の栄光に奉仕することがゆるされ、奉仕しなければならないということを意味している」。「すべての神的主権性の前提は、（≪父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主という全き自由の神の愛の行為の出来事としての神の存在における≫）神的遍在の前提である」。キリストにあっての「神にとって、それが遠くにある間にまた近くあるのでもないところのものは存在しないということ」、それ故に「神と並んで、神の外に、（神の近さなしの遠さであるような）遠さは存在しないということに、神的主権性全体は基礎づけられている」、「創造は、神の創造であるが故に」「神的な遠さと近さがある」、「神ご自身の中においては、遠さと近さは一つである」、ちょうど「福音と律法の真理性」における「福音の内容」は、神の全き自由な愛によって、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方であるまことの神にしてまことの人間イエス・キリスト自身が、われわれ人間のためにわれわれ人間に代わって、われわれ人間の「神の恩寵への嫌悪と回避」に対する神の答えである刑罰（死）を、「唯一回なし遂げ給うた」（律法の「成就」・完了）というところにあるのであるが、この神の側の真実としてあるインマヌエルの出来事は、われわれ人間からは「何ら応答を期待せず・また実際に応答を見出さず」とも、キリストにあっての神が、「神であることを廃めず」に、「何ら価値や力や資格もない」「罪によって暗くなり・破れた姿」のわれわれ「人間的存在を己の神的存在につけ加え、身内に取り入れ、それをご自分と分離出来ぬよう」に、「しかも（≪われわれ人間の側から≫）混淆（≪混合・共働・協働・折衷≫）されぬように、（≪神の側の真実においてのみ≫）統一し給うた」ということを内容としているように。このような訳で、「神の創造の中には」、一方での「神の被造物にとっては、（≪宇宙を含めた全自然を超越した神は神であり、地にいる人間はその被造物としての・自然の一部としての人間であるという神と人間との無限の質的差異における≫）近さなしの遠さがあり得（≪それ故に、神、啓示の真理、啓示の時間、救済史、永遠は、人間、世俗の真理、人間の時間、歴史、有限の、＜「常に」＞＜「外」＞・＜「彼岸」＞にある・あり続ける≫）、……（≪神の側の真実においてのみ≫）遠さなしの近さがあり得る」のである。このように、「神的な近さと遠さは、神的な完全性の（≪多種多様な≫）富に基づいている。そして神は、……その富の中でひとりであり給う」（換言すれば「父なる名の内三位一体的特殊性」・「三位相互内在性」・「内三位一体的父の名」におけるご自身の中での神として、そのような方としてわれわれのための神として、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主という神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事――すなわち神的な完全性の富の中でひとりであり給う）。したがって、キリストにあっての「神は、創造主として、ちょうど創造の中で互いに並存する存在の多様性と相違性の創始者」であり、それ故に「それらすべてのものに神の側としては拘束され給わない」のである。その創造の中には、その神的な「完全性の富と単一性の中での神の現臨、すなわち……その中で……神が、（≪ご自身の中での≫）神自身であり給う……独一無比性と単純性の中での……（≪われわれのための≫）神の現臨（≪父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊―啓示されてあること・救済主という神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事≫）なしの現在（≪われわれの現在、現存≫）はない」。何故ならば、神の側の真実としてのみある、「本来的な実在としてのイエス・キリストの新しい時間」・新しい世・新しい時空、すなわち成就された時間であるキリストの復活における「神の勝利の行為」・業・働きによってしか、「われわれ人間の失われた非本来的な古い時間」・古い世・古い時空は包括され止揚され克服されてそこにあることはできないからである（『教会教義学　神の言葉�T／１・２』）。この包括的な救済概念は、平和の概念と同じである。したがって、神の言葉の第三の形態に属する全く人間的な教会の宣教、その思惟と語りを含めて、われわれ人間が、神の側の真実としてある「この事実に向かって、眼と耳を閉ざしているということが、悲惨」なのである（『平和に関するバルトの書簡』）、現存する教会の問題に引き寄せて言えば、戦争の元凶が民族国家にあるということを理解しないまま・理解でき得ていないまま、それ故に戦争の元凶である民族国家の葬送の問題を明確に提起しないまま・提起でき得ていないまま、表向きだけ平和の標語や平和＜主義＞を掲げている教会の宣教、その思惟と語りと行動が「悲惨」なのである、したがって、その場合、起源的な第一の形態の神の言葉、具体的には第二の形態の聖書的啓示証言に信頼し固執し連帯しようとしない、人間的な余りに人間的な教会の宣教、その思惟と語りと行動は、あの「神への愛」と「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」における＜純粋＞なキリストの福音の宣教への志向性はもちろんのこと、平和への志向性――すなわち民族国家の葬送による戦争の廃棄への志向性も、少しも持っていないのと同じなのである。下張って、その場合は、時流や時勢に対象的になって距離を取るのではなく、まさしく時流や時勢に流されたまま「絵に描いた餅」をめぐって観念の遊びに興じているだけなのである。
　われわれは、「直ちに、……神の主権性全体を基礎づけている」「存在するすべてのものの上にあり、存在するすべてのものの中にある」、換言すれば神と人間との無限の質的差異の下において、神の側の真実としてある、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における三つの存在の仕方である父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主という全き自由の神の愛の行為の出来事としての「神の存在の自由こそが、神は愛であり給うということを（≪あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて≫）思い出す（≪想起する≫）ようわれわれを強いるということを認識する」のである。われわれは、「神の単一性の概念を、……聖書の中に証されている神の単一性の概念として」、「神の単一性の概念を先ず言い表している」「完全性」としての「神の自由」から、「われわれに対して神の自由を神の自由として明らかにし理解できるものとすることができる神の愛（≪父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主という全き自由な神の愛の行為の出来事としての神の存在、神と人間との無限の質的差異の下における神の側の真実としてある神の遍在≫）へと視線を向けることなしには、終わりまで考え抜き明らかにすることはできないということを見た」。ただこのように聖書的啓示証言に信頼し固執し連帯して「解釈された神の単一性だけ」が、「今さらに進んで立てた」「神は、（≪区別を包括した単一性において≫）ひとりの方であり給うが故に、遍在し給うという命題」を「主張する……われわれに正当な権利を与える」。この区別を包括した単一性における「神の遍在は、神の完全性のうちのいずれとも同じように、その被造物（≪自然の一部である身体・肉体を座とする精神・意識を持った人間を含めた全自然≫）との関係の記述の中で解消されてし給わない」、「神が現にあり給うすべてのことは、そのようにしてまた神の遍在は、被造物とのその関係の中で、ただ神がそのような関係なしにも」、それ故に「神の被造物なしにも、前もって（≪自由、自存性におけるご自身の中での神としての≫）ご自身の中であり給うことの外的な実証および実現化（≪われわれのための神の愛の行為の出来事としての全き自由の神の存在、業、働き、行為≫）でしかない」。ご自身の中での神としての「解消されることのない単一性（≪「失われない単一性」≫）の中での近さと遠さ」は、それ故に「その被造物との関係の中での神の遍在（≪「失われない差異性」における父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主という全き自由の神の愛の行為の出来事としての神の存在≫）の中で、外的に実証され実現されることの根拠」は、「たとえその被造物が存在しないとしても」、それ故にその被造物との「関係が存在しないとしても、神の完全性である……」。キリストにあっての「神は、愛であり給う。この神の（≪われわれのための神としての≫）永遠的な愛の外的実証と実現の中で、神はそれからまた創造者であり給う」。このような「実証と実現の中で創造があるのであり、その中で被造物的な……遠さなしの近さと近さなしの遠さがあり、被造物との関係の中で、被造物によって拘束されることなしに（≪全き自由、自存性において≫）」、「被造物に対して主権的に自由に処理しつつ、しかし被造物との現実の関係の中で、……神とは異なった万物の現実存在を前提とする概念の意味での（≪すなわち神と人間との無限の質的差異の下における神の側の真実としてある≫）神の遍在があるのである」。したがって、「神の単一性の概念そのものは、まだ神の存在について、それが神の存在を愛として説明するような仕方で語っていない」のである――このことを、「神的遍在の概念は語っている」、「まさに神的遍在の概念と一緒に総括されて、それからまた神的単一性の概念もそのことを語っている」。われわれは、「失われない単一性」を本質とする「独一無比の、単純な神」は、「愛し給う方であるということ」から、「失われない差異性」における父――啓示者・創造主、子――啓示・和解主、聖霊――啓示されてあること・救済主という神の愛の行為の出来事としての全き自由の神の存在としての「神の遍在が神の尊厳性と主権性の性質であることを理解するために、今考えはじめなければならない」。