本当のカール・バルトへ、そして本当のイエス・キリストの教会と教会教義学へ向かって

『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』「三十一節　神の自由の様々な完全性　　一　神の単一性と遍在」（その６−２）（１６−３３頁）

「三十一節　神の自由の様々な完全性　　一　神の単一性と遍在」（その６−２）−５
　ここで、「人は、……�Tコリント八章（≪「わたしたちにとっては、唯一の神」、すなわち「失われない単一性」・神性・永遠性をその存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方、性質、働き、業、行為、行動、啓示者・創造主である、イエス・キリストの「父である神がおられ、万物はこの神から出、わたしたちはこの神へ帰っていくのです。また、「唯一の主」、すなわち「失われない単一性」・神性・永遠性をその存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、性質、働き、業、行為、行動、啓示・和解主である、父が子として自分を自分から区別した子としての「イエス・キリストがおられ、万物はこの主によって存在し、わたしたちもこの主によって存在しているのです」≫）や�Tテモテ二章（≪「失われない単一性」・神性・永遠性をその存在の本質とする三位一体の「神は唯一であり、神と人との間の仲介者も」、「失われない単一性」・神性・永遠性をその存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、性質、働き、業、行為、行動、啓示・和解主としての「人であるキリスト・イエスただおひとりなのです。この方はすべての人の贖いとして御自身を献げられました。これは定められた時になされた証です」≫）のように、唯一の神と唯一のキリストがはっきりと言葉に出して並置されているだけでなく、まさにイエス・キリストの中で起こった神の言葉と業の独一無比性がそれとして言い表され、強調されている聖書の箇所に注意を向けなければならない」。「まさにこれらの聖句こそが、新約聖書的一神教の理解にとって、決定的であると言ってよい」。何故ならば、われわれは、「これらの聖句の中で、……あの並置の中で遂行された主張を超えて、どの程度までイエス・キリストに独一無比性が、しかも神的な独一無比性が、事実属しているかを知るからである」。「その独一無比性は、マタイ二三・八−一〇によれば、イエス・キリストご自身が……その弟子たちに語り給うた通りの仕方で、イエス・キリストに属している」――すなわち「あなたがたの師は（≪「失われない差異性」における父、子、聖霊という三つの存在の仕方の、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質とする「一人の同一なる神」、三位一体の神≫）一人だけ」、「あなたがたの父は天の父おひとりだけ（≪このことに関連して言えば、バルトは、『教会教義学　神の言葉�T／１・２』で、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰に依拠した信仰の類比・関係の類比において、「内被造世界での、……父という呼び名は確かに真実である」が、「非本来的なもの」であり、「神の内三位一体的父の名の力と威厳に依存」しているものとして理解されなければならない、と述べている≫）、「あなたがたの教師はキリスト一人だけ（≪それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における「先ず第一義的に優位に立つ原理」・規準・法廷・審判者・支配者である起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの、「失われない単一性」・神性・永遠性をその存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、性質、働き、業、行為、行動、神の子、啓示・和解主としてのイエス・キリストだけ≫）」である。「人はよく注意せよ」、「まさにここで、……イエスのメシヤ的な自己証言に、新約聖書的な一神教は基づいているのである」、このことは、「旧約聖書的な一神教が、イスラエルに働きかけ給うヤハウェの自己証言に基づいているのと全く同様である」、「人は、新約聖書の中で、ひとりの神と呼ばれているものを、この自己証言を聞くことなしに聞くことはできない」のである。また、「当然のことながら、人は、この自己証言を拒否することもできる」。しかし、「その時には、人は、ここで『ひとりの神』と呼ばれているものと共にこの神ご自身をも拒否する」ことになるのである。「旧約および新約聖書の神は、ただ単にその本質において独一無比であるというだけでなく、ご自身この独一無比なる方（≪三位一体の神の第二の存在の仕方であるイエス・キリストは、「失われない単一性」・神性・永遠性をその存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父が、子として自分を自分から区別した子としてのイエス・キリスト自身であり、三位一体の神の第三の存在の仕方である聖霊は、愛に基づく父と子の交わりにおける「父ト子ヨリ出ズル御霊」である≫）であり給う」。メディア的なキリスト教的著述家・佐藤優は、『はじめての宗教論』で、ただその当時の時勢に乗っかかり（佐藤はそのことに気づいておらず、自分は優秀だと思い込んでいる、自分で優等生やエリートだと思い込んでいる）、メディア的な普遍性や組織性の後光の下で、それ故に自分の神学的な知的水準をわきまえずに（それだけでなく、佐藤は、池上彰とマルクスの『資本論』をめぐって語り合いながらも、マルクスの立場である『資本論』「第１版の序文」を全く理解していなかったということをも、その語り合いの中で自己暴露したのであるが――私のホームページ「池上彰×佐藤優『希望の資本論』（朝日新聞出版）から垣間見ることのできるメディア的知識人およびメディア的著述家の知識の位相について」参照）、「神学がなくても信仰は成立しますが、高等教育を受け、『天にいる神』をもはや素朴に信じることができなくなったわれわれには、神学が必須です」（先ず、佐藤は、高等教育を受けていなくても、誰であれ、われわれ人間は、人間の感覚と知識を内容とする経験的普遍からすれば信じることはできないということを、人間の想像能力・思惟能力・表象能力・想像能力・意志力・自然を内面の原理とした修行等によっても信じることはできないということを全く分かっていないのである。また、教会の宣教にとっての課題の一つ、その一つの機能である教会教義学にとっての課題の一つは、人間学的神学における非神話化の操作等々にあるのではなく、信と不信の架橋の問題を、聖書的啓示証言に信頼し固執し連帯して扱うという点にあるということが全く分かっていないのである）。「われわれは『天にいる神』をほんとうに信じていませんがほんとに信じていないことを口にしてはいけないというのがキリスト教信仰の第一の前提です」（佐藤は、バルトを読んでいると公言しながら、ただ流し読みだけしかしていないことがよく分かる。何故ならば、バルトにとって、聖書的啓示証言における三位一体の神は、またそれに信頼し固執し連帯した教会の三位一体論は、「神論の決定的に重要な構成要素」であり、「啓示の認識原理」であるからである。また、佐藤とは全く違って、バルトは、『福音主義神学入門』で、正直に素直に次のように告白している。すなわち、「『もちろん福音をわたしは聞く、だがわたくしには信仰が欠けている』その通り――一体信仰が欠けていない人があるであろうか。一体誰が信じることができるであろうか。自分は信仰を『持っている』、自分には信仰は欠けていない。自分は信じることが『できる』と主張しようとするなら、その人が信じていないことは確かであろう。（中略）信じる者は、自分が――つまり『自分の理性や力によっては』――全く信じることができないことを知っており、それを告白する。聖霊（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づき、聖霊の注ぎによる人間的主観に実現された神の恵みの出来事≫）によって召され、光を受け、それゆえ自分で自分を理解せず（中略）頭をもたげて来る不信仰に直面しつつ（中略）『わたくしは信じる』とかれが言うのは、『主よ、わたくしの不信仰をお助け下さい』という願いの中でのみ〔マルコ九・二四〕、その願いと共にのみであろう」。このような訳で、キリスト教信仰の第一の前提は、佐藤が言うのとは全く違って、私自身の信仰体験を介して思惟し語るとしても、バルトの『福音主義神学入門』における思惟と語りあることは明確なことなのである）。「だからこそ神学（≪正直に言えば、このようなズバリ自然神学の段階にある恣意的独善的な佐藤＜教＞に過ぎない神学が蔓延することは御免蒙りたいものである≫）が不可欠なのです。神学的な操作（≪人間学の前期ハイデッガーの哲学原理に依拠して、われわれの「眼前存在」・現前性は「近代的な世界像、人間像」にあるから、「神話形式のままでは、新約聖書の言表」、すなわち「語られた内容の表現」は理解できないから、それは 「非神話化されなければならない」としたブルトマン的な非神話化等の操作あるいは人間精神が牛出したものを問題とする限り、「啓示を問おうとしない」で人間精神の自己理解を第一義として「聖書の中でも神話を問うことをする」歴史主義的な操作≫）を経ない限り、われわれは古代の世界像をもっているキリスト教を信じることはできないということです」――こういう思惟と語りに対してハイデッガー自身は、根本的包括的な批判を加えている。すなわち、ハイデッガーはブルトマン（その学派）に対して、「『今日まさにこのマールブルクでは、無理やり模造された敬虔さと結びついて、弁証法の見せかけがとくに肥大している』が、それよりは『むしろ無神論という安っぽい非難を受け入れた方がよい』、『いわゆる存在者レベルでの神（≪対象化され客体化された人間・ブルトマンの自己意識・理性・思惟の類的本質に過ぎない神、人間自身が造り出した偶像≫）への信仰（≪人間・ブルトマン＜教＞≫）は、結局のところ神を見失うことではなかろうか』」、と。
　さて、ここで、論述を先の論述に戻せば、「イエス・キリストがそのようなものとしてご自身を啓示し給う自己証言、『わたしと父とは一つである（ヨハネ一〇・三〇）』」――「この自己証言を通して証しされた独一無比なるものでないすべてのものは、それなりの仕方で独一無比であるかもしれないが、しかしそのものは（≪イエス・キリストにおいて自己啓示された≫）この神ではない」、「ただここにだけ、預言者および使徒たちの、ひとりの神へと通じるまことに狭い道、まことに狭い門があるのである」、「また、パウロのところで（≪それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性において≫）神と教会が一つであることについて書かれているすべてのことも、実際にはこの自己証言を背景に持っているのである」、「わたしに賜った御名によって彼らを守って下さい。それはわたしたちが一つであるように、彼らも一つになるためであります（ヨハネ一七・一一）」。「ローマ五・一二−二一……（�Tコリント一五・二一以下参照）」で、パウロは、「神の独一無比性について、見たところ一言も語ら」ず、「ただイエス・キリストを通して起こった……罪の支配から」、すなわち罪が死によって支配していた「罪と死の法則」の律法の支配から、「義の支配へと」、すなわち『福音と律法』（≪ここで律法は、ルターとは違って、二元論的あるいは二元主義的に福音に対立する律法はなく、キリストの福音を内容とする福音の形式である、あの「神への愛」と、その「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」という連関におけるそれである≫）によれば、「神は、神なき者がその状態から立ち返って生きるために、ただそのためにのみ彼の死を欲し給う」という「この救いの答えを、われわれに代わって答え・人間の自主性と無神性を放棄し・人間は喪われたものであると告白し・己に逆らって神を正しとし、かくして神の恩寵を受け入れるということを、神の永遠の御言葉が（肉となり給うことによって、肉において服従を確証し給うことによって、またこの服従において刑罰を受け、かくて死に給うことによって）引き受けた」ところの「一人の人イエス・キリストの恵みの賜物」、「律法の成就」・完了、主格的属格として理解されたギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」――イエス・キリストが信ずる信仰による「神の義、神の子の義、神自身の義」によって支配しつつ、わたしたちのイエス・キリストを通して永遠の命に導く、「生命の御霊の法則」の約束、それ故に「われわれが己の解放を与えられるためには、彼に固着し得るだけ」である、その義の支配へと、換言すれば「死の運命から生命の賜物へと変えられた人間的状況の変化について語」っている。「『一人の人』である」「アダム」に対して、「もう一人の『一人の人』は、イエス・キリストであり、まさに彼こそが、その立ちまさった姿の中で、神的なものとして自分を自己証明している」「死に対して勝利を収める生命の……恵みと義の担い手であり給う。この出来事が、イエスのメシヤ的な自己証明である。それはまたここでも、同時に、そのようなものとして、神の独一無比性の証言である。あるいは逆に、神の独一無比性についての証言は、またここでも、……一人のアダムの中でまとめられた人類の罪と死の証言を、勝利に満ちた……決定の中で徹頭徹尾凌駕するイエスのメシヤ的な自己証明である」。「人間的な祭司」が、日ごとに行な」い、「たびたび繰り返されなければならない……『決して罪を除き去ることができない』犠牲」という「自分の性格を証明した時」、「イエス・キリストは、『多くの罪のために一つの永遠のいけにえをささげた後、神の右に座し、それから（≪その後は≫）、敵をその足台とするときまでは（≪「敵どもが御自分の足台となってしまうまで」≫）、待っておられる（≪「待ち続けておられる」≫）。彼は一つの献げものによって、きよめられた者たちを永遠に全うされた（≪「永遠に完全な者となさった」≫）のである』（へブル一〇・一一−一四）。……これこそ、神の独一無比性についての独一無比な新約聖書の証明である……」。
　「……以上のべたことこそが、宗教改革の義認論の中で、人間はただ信仰によってのみ義とされ、救われるという主張でもって再び認識され承認されたことである……」。この「信仰ノミは、……福音主義教会の父祖たち……の告白」、すなわち「神ニノミ栄光アレ」がただ信仰ノミの反射であるのと同じように、……『神ニノミ栄光アレ』の反射」である。「これら両方のノミ」、「それに加えて第三の……聖書ノミも同じ一つのことを語っている」。「失われない単一性」・神性・永遠性をその存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父が、子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身、「唯一ノ大祭司、弁護者、仲保者であるが故に唯一ノ神」――これこそ、「両方のノミが、三つのノミすべてが、映し出している原型」・母型・母胎である。このような訳で、「信仰の独一無比性は、その対象の独一無比性の中に基礎づけられている」、「それだからこそ、神ニノミ栄光アレ」。「この独一無比性の力は、神がその本質を啓示され、そのものを（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいた≫）信仰が信じることがゆるされる名（≪「イエス・キリストの名」のみ≫）の力である」。

　ここまで論じてきて感じたこと・考えたことを書くことで、今回の記事を終えたいと思う。私は、私自身を含めた個体的自己としての全人間の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和を切望する者である。したがって、復活したキリストの再臨、終末、完成を待ち望む者である。この時、私にとっては、自然神学の段階あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教の段階は包括し止揚し克服すべき対象である。私の知る限り、本当の処女作『ローマ書』（第二版）以降において、聖書的啓示証言に信頼し固執し連帯して＜非＞自然神学の段階あるいは＜非＞自然的な信仰・神学・教会の宣教の段階へとベクトルを変容させ、最善最良の信仰・神学・教会の宣教の段階を構成したのは、バルトただ一人である――このことは、確信をもって言うことができる。バルトは、『ルドルフ・ブルトマン』で、次のように述べている――「聖書註解者」は、「だれに対して」、「誠実と真実をささげるべきなのか？」・「責任的応答をなすべき」なのか？　「同時代の人たちの思考の前提に対してか？」・前期ハイゲッガーの哲学原理に対してか、人間学的な哲学原理・認識論・世界観や人間論やコミュニケーション論に対してか？　科学＜主義＞や歴史＜主義＞に対してか？　「そこから形成された理解の規準に対してか？」、　科学主義や歴史主義に対してか？　法的政策的な国家の言語に対してか？　時流や時勢に対してか？――否である。われわれは、十字架につけられ・復活したイエス・キリストにおけるわれわれの「実存という場所」において、われわれの「信仰より以前にも、信仰なしでも、……不信仰に抗して」も、われわれのために「生きて、われわれを支配」し、われわれを「愛し給うイエス・キリスト」を、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて「認識し、持つことができることを示すということ以外の何が問題となるのだろうか？」、と。もしもわれわれが、「イエス・キリストの名」にだけしか救済・平和はないということを、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を通して承認し確認したならば、前述したような自然神学あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教における神学と人間学（宗教学を含む）との混合を志向し目指す大学神学者・牧師・神父たち等の恣意的独善的な思惟と語りにおける救済・平和を信じ承認することは決してできないのである、国家論（国家の止揚を包括した革命論）を、その過渡的課題と究極的課題との往還構造において明確に提起しないで主張される教会と社会・政治との関りおよび社会的政治的実践における救済・平和を信じ承認することは決してできないのである。例えば、神学大学や大学神学部を含めて大学社会の神学が必然的に志向し目指す神学、すなわち自然神学の典型は、次のようなものである（『現代思想１１　一九七五年』「＜新約思想をどうとらえるか＞吉本隆明／八木誠一」）――（吉本）「信仰することによって信仰していない者には見えない何か新しい地平線が見える」と「思うけれども、……そこをうまく開陳してみてくれませんか」、（八木）「かつての自分には見えなかったものが見えてきた」ことが「二つある」。第一には、「観念的なものに重点を置いて、そっちが真実だと思っていた」が、それは「ほんとは虚しいものなんだ」と述べている。（豊田）おそらくこのことは、八木が観念のリアリティの獲得の問題を、科学主義的にか歴史主義的にかその実証可能性においていることを意味しているだろう。（八木）第二には、「エゴイズム」に依拠して「自分を確かめて自分を知り、たしかめ、また立てようとしていた」ことが「明らかになった」と述べている。（豊田）このことはおそらく、誰であれ人は、不可避的な人間の類・歴史性と個・現存性の交点で生きることを自覚したことを意味しているだろう。すなわち、その不可避的な被企投性としての類・歴史的現存性の概念を自覚した時に、そこにおいて企投性としての個・現存性の概念を見出したということだろう。あるいは、人間の存在様式が均質ではないということ（人間の三つの存在様式）に気づいたということだろう。この八木の答え方に対して、吉本は、「だけど今の八木さんの説明では、……あらゆる認識が、もし自分自身の体験、それから自分自身の資質というか、そういうものを全部根こそぎ動員して、認識と言うものを追究していくと出てくる問題と、あまり違わない」と疑義を呈し、「それ宗教（≪信仰≫）と関係あるかな、ということですね。やはり納得できるように思いません」と述べたのである。この八木は、当然にも、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性におけるキリスト教ではなく、人間の自己意識・理性・思惟の類的活動における成果としての、人間学と神学との混合神学、人間学的神学、人間学的な信仰・神学・教会の宣教、すなわち八木＜教＞を志向し目指しているのである。したがって、八木は、『イエス』で、「イエスは別段自分を超人間的存在として自覚していたわけではなく、『人の子』語句でもって人間存在の根底を語り続けた」「ただの人であり、ただの人として自らを自覚し、ただの人の真実のあり方を告げた」と述べ、それ故に聖書的啓示証言におけるそのイエス・キリストの「存在の本質」も「存在の仕方」も捨象してしまって、ただイエスに本来的な人間存在の在り方・範型を見る八木におけるイエスは、まさに対象化され客体化された八木自身の自己意識・理性・思惟の類的本質の過ぎず、新たな人間的な八木＜教＞を作ったのである、ちょうど滝沢克己が「もはやいかなるキリスト者も、『聖書』や『イエス・キリスト』という名を記憶している人たちさえも、もはやこの地上のどこにも残っていないとしても、それでもなお、『神われらとともに』という事実（Faktum）にわたしたちが堅く結びつけられているということそのことは、神において永遠に決定されていることなのだ」（『カール・バルト研究』）と述べて、新たな人間学的神学、人間学的信仰・神学・教会の宣教、滝沢＜教＞を作ったように。このような様々な宗教としての人間＜教＞は、現存する教会の宣教、その思惟と語りにおいて、あの「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性を誠実に真剣に認識し自覚しない限りは、現存する高度消費資本主義下、高度情報社会下において増産が加速させられ、大学神学者・教会牧師・神父たちによって彼らの分だけ増産し続けられることになるのである、ただの人間に過ぎないある人間の人間＜教＞、ある人間の大学神学者＜教＞、ある人間の教会牧師＜教＞、ある人間の神父＜教＞が、その人数分だけ増産し続けられることになるのである。�Tコリント１・１０以下にはこうある――「あなたがたはめいめい、『わたしはパウロにつく』『わたしはアポロに』『わたしはケファに』『わたしはキリストに』などと言い合っているとのことです。キリストは幾つにも分けられてしまったのですか。パウロがあなたがたのために十字架につけられたのですか。あなたがたはパウロの名によって洗礼を受けたのですか。（中略）キリストがわたしを遣わされたのは、洗礼を授けるためではなく、（≪「失われない単一性」・神性・永遠性をその存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、神の子、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのものである、まことの神にしてまことの人間イエス・キリストの≫）福音を告げ知らせるためであり、しかも、（≪その復活に包括された≫）キリストの十字架がむなしいものになってしまわぬように、言葉の知恵によらないで（≪換言すれば啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉を原理・規準・法廷・審判者・支配者とするという仕方で、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰によって≫）告げ知らせるためだからである」。滝沢克己と違って、聖書的啓示証言に信頼し固執したバルトのインマヌエル理解は、次のようなものである――「神がそこでわれわれに出会い給うその恵みの御言葉は、イエス・キリストと呼ばれる。すなわち、神の子にして人の子、真の神にして真の人、インマヌエル、この一つなる方におけるわれらと共なる神である」と、答えうるにすぎない。キリスト教信仰は、この「インマヌエル」との出会いである。イエス・キリストとの出会いであり、イエス・キリストにおける神の活ける御言葉との出会いである。われわれが聖書を神の御言葉と呼ぶ場合……、われわれは、それによって、聖書を、この神の唯一の御言葉についての（イエス・キリストについての、神のキリストであり永遠にわれわれの主にして王なるイスラエルから出たこの人についての）預言者・使徒の証しとして、考えているのである。そして、われわれがそのことを告白する場合、われわれが教会の宣べ伝えを神の御言葉と敢て呼ぶ場合、それによってイエス・キリストの宣べ伝えが理解されていなくてはならない」（『教義学要綱』）――この思惟と語りからだけでも、インマヌエルについて、バルトが、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性に基づいて論じていることをよく理解できるであろう。
　さて、日々の新聞やヤフー・ニュースによって、われわれは、自分が小中高から二十歳前後の時代を生きた経験則が全く通用しなくなっている、軽薄に明るすぎる高度消費資本主義段階における高度情報社会下において、際限なき人間の欲望、人間の情念や生理的欲望、それぞれの個人の資質、家庭・学校・職場等様々なそれぞれの社会の領域で様々なそれぞれの場面で利己主義的な爆発寸前の憤懣遣る方無い感情が、様々なそれぞれの理不尽で悲惨で残酷・残虐な諍いや事件や殺人を惹き起こしているのを、日常的に知らされている。このような時代状況下において、自然神学の段階あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教の段階におけるその指導層やそれに同調する神学者・牧師・神父たちの思惟と語りと行動は、観念の共同性（共同幻想、幻想的な共同的形態）を本質とする国家の無化を伴う究極的総体的永続的な人間の社会的・現実的な解放（救済）という還相的な問題を明確に提起しないままに、また経済の世界性と民族国家の一国性を単位として動いている世界の中で、戦争の元凶である一部国家支配上層の意思によって強大な軍事組織を動員することができる民族国家の葬送の問題を明確に提起しないままに、それ故に結局は法的政策的な国家の言語の中に完全に包摂されてしまうという仕方で、社会的行動や表向きだけの平和＜主義＞という政治的行動を主張し行っているのである。また、現実的な社会よりも、宗教（権力）から解放され自由となった信教の自由を保障する政教分離の公序良俗に反しない限りは経済的社会的政治的に自由な自由主義国家を第一義性・価値性として持つ、また現実的な社会よりも、あたかも利己主義的な私的他者との対立・争いの生活および利害共同性との対立・争いの生活のない法的政治的な共同観念によって統一された公的共同性の一員（公民としての生活）が強いられる政治的近代国家を第一義性・価値性として持つ、資本主義を経済的基盤とするところの私意・私利を精神とする近代市民社会において、人間は利己主義的な私的他者との対立・争いの生活および利害共同性との対立・争いの生活が強いられるにも拘わらず、それらのことを全く後景へと退け捨象してしまって、人間は絆を持ったし・持っている、助け合いを持ったし・持っている、恩返しを持ったし・持っている、感謝を持ったし・持っている、平和憲法を持ったし・持っている、国連機関を持ったし・持っている、また人間は理性的な存在である、人間は理性的に話し合えば分かり合える存在である、人間は理性的に相互認識・相互了解・相互承認ができる存在であるあるいは助け合うことができる存在であるあるいは平和を求め合うことができる存在であるというように、人間のあるいは人類の一面だけを抽象した（人間あるいは人類の一面だけを拡大鏡にかけて全体化した）形而上学的固定的相対的な彼らの思惟と語りと行動は、観念の遊びでしかないものとして、必然的にその背後に嘘と虚構性を持っている。このような訳で、第三の形態に属するイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの教会を志向し目指す全く人間的なわれわれの教会は、本当は、徹頭徹尾、常に＜先行＞するイエス・キリストにおける神の愛の下で、あくまでもそれに＜後続＞して、起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には、その第二の形態の聖書的啓示証言）を、その宣教、その思惟と語りと行動における＜客観的＞な原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、＜純粋＞なキリストの福音、＜純粋＞なキリストにあっての神を尋ね求める「神への愛」と、そのような「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」（＜純粋＞なキリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、神の命令・要求・要請）――すなわち、すべての人々が＜純粋＞なキリストの福音を現実的に所有することができるために為すキリストの福音の告白・証し・宣べ伝えを志向し目指していかなければならないのである、「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を志向し目指していかなければならないのである。何故ならば、聖書的啓示証言によれば、バルトが述べているように、本当は、われわれ人間の、その類・歴史性（歴史的現存性）と個・現存性（現実的現存性）の生誕から死までのすべてを見渡せ、また「この世の偽り、通俗の偽りを偽りと呼び、世俗的真理をも正直に受け取ることができる」場所は、「失われない単一性」・神性・永遠性をその存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方である、神の子、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストのほかにはないからである。したがって、当然のことながら、バルトは、「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な霊・歴史性）の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの、「イエス・キリストの名」を認識させられ自覚させられた時（具体的には、その第二の形態の聖書的啓示証言のそれ、啓示の「概念の実在」を認識させられ自覚させられた時）、最終的に離脱せざるを得なかった宗教的社会主義における「そこでの人間の困窮と人間に対する助けとが、聖書が理解しているほどには、真剣に理解されておらず、深く理解されて」いないということを痛感し・認識し・自覚したのである。このように、バルトもそうであったように、われわれキリスト者は、そのような体験を通して、そのような体験の思想化を通して、前述したこと（「イエス・キリストの名」のみということ）を、聖書的啓示証言から認識させられ自覚させられるのである。このバルトは、バルト神学者を含めて神学者や日本基督教団の指導層やそれに同調する牧師等々が、表向きだけの「戦争責任の告白」や「戦後７０年にあたって平和を求める祈り」や社会的政治的実践を為す必要があると考えそのことを声高に強調するのとは全く違って、またカトリックの指導層やそれに同調する神父等々が二元主義的に宣教Aと宣教Bに分けた宣教や「抗議声明」や社会的政治的実践を為す必要があると考えそのことを声高に強調するのとは全く違って、『共産主義世界における福音の宣教　ハーメルとバルト』で、「世界の救い（≪平和≫）を何かある国家的、政治的、経済的または道徳的な諸原理や理念や体制の内に求めようとしないで、私たちの主であり、救い主であるイエス・キリストを、いっさいのものにまさって恐れ、かつ、愛すること、神を、大きな問題においても、小さな問題においても、彼がかってあり、いまあり、やがてあり給う権威のままに肯定し、是認すること、私たちの個人的、社会的生活を敢えて律して、すべての善きものを神から、神からすべての善きものを期待するべきである」・「不毛な反抗や反論を避けて」、「西でも東でも等しく通用し、西でも東でもひとしく稀であり、人々に好まれぬ福音に、無償の恩寵によって、素直に止まるべきである」と述べて、それが社会的な事柄であれ政治的な事柄であれ、社会的政治的実践が必要であると声高に主張し叫ぶことなく、ただ「かつて語った説教の一貫した繰り返しが、（ある状況下において、その状況に抗するそれとして）おのずから実践に、決断に、行動になって行った」（『バルトの生涯』）と思惟し語るのである。また、このバルトが、「われわれは平和を維持するためにできる限りのことをしなければならない」・しかし、「このことは、われわれは平和主義者でなければならないということを意味しない。（≪科学主義や歴史主義がそうであるように、一つの人間的な宗教的形態に過ぎない≫）平和主義は一つの絶対主義だ（すべての主義のように）。われわれは神には服従するが、一つの原理や理念にはしない。したがって、われわれは最後の手段のために、（≪戦争の元凶である民族国家が存在する限り≫）戦争の可能性はあけておかなければならない」と述べて、そして実際的に事実的に、自由および直接民主制と武装永世中立を標榜する「スイス（≪を過渡的相対的な観点から評価し、そのスイス≫）をナチズムからまもるために私は軍隊に参加」し、その行動において、「両国を区分しているライン河にかかっている橋を護衛」するために、「もしもドイツのキリスト者の友人の一人が、その橋を爆破しようとしたら、私は射殺しなければならなかったであろう」と述べているのである（『バルトとの対話』）。戦前――敗戦――戦後におけるその戦後過程において前回述べたような「＜構造＞的な変容」が何も為されないままに現存している日本基督教団やカトリック教会等々のキリスト教団・教会は、その指導層は、特に軽薄な明るさをもって景気のいいことばかり言っている牧師や神学者やキリスト教的著述家たちは、もしも戦前のような事態が現出した場合には、再び戦前の先人たちと同じ轍を踏んでしまうのではないだろうか。