本当のカール・バルトへ、そして本当のイエス・キリストの教会と教会教義学へ向かって

『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』「三十一節　神の自由の様々な完全性　　一　神の単一性と遍在」（その６−２）（１６−３３頁）

「三十一節　神の自由の様々な完全性　　一　神の単一性と遍在」（その６−２）−４
　さて、「『ユダヤ的一神教』はどうであろうか」。「ユダヤ教的一神教」が「存在しはじめた時」、換言すれば表向きだけ「多神教が……過去の歴史となり、偶像が……軽蔑された異教徒たちの偶像としてだけ知られ、あるいは不従順な父祖たちの恐ろしい出来事の記憶としてだけ知られるようになった時、まさにそのような時に」、その「一神教の支配の下で、イスラエルのメシヤがイスラエルによって異教徒たちの手に引き渡され、これらの異教徒たちによってイスラエルの同意の下で十字架につけられたのである」。したがって、「この『一神教』は、……その選ばれた民と関わり給う唯一の神の歴史の人間的な側面を形作っていた不服従が強化され」純化されてきた「最後的な完成であったことの……証明」であると言うことができる。この「宗教的な発展の高所において、……神の独一無比性が、ユダヤ教のすべての党派の……尊重される教義となった時」、「イスラエルの歴史全体の成就は見損なわれ、独一無比な神の独一無比なみ子は、換言すればモーセとすべての預言者たちが証ししていた肉となった神の言葉（≪その神性の受肉ではなく、第二の存在の仕方としての言葉の受肉≫）は、イスラエルによって拒否され、それと共にイスラエルの歴史全体が、まさに独一無比な神に対する人間的な不服従の歴史として」、「最後的に確証されることができたし、確証されなければならなかった」のである。言い換えれば、神の側の真実としてある・永遠的実在としてある「神の独一無比性」は、「その方の、神の独一無比性であり、神の啓示の、神の語りと行動の、神の最も固有な本質の事柄であり、その（≪われわれのための神としての≫）恵みと（≪ご自身の中での神としての）神聖性から切り離されることができず」、それ故に「そのような神についての人間的な理念の事柄ではないということ」、「ちょうど（≪神の本質の区別を包括した単一性における≫）その恵みと神聖性、神のすべてのそのほかの完全性と同じように、いかなる人間の心にも思い浮かばなかったということ」、「それは、（≪神の側の真実としてある、永遠的実在としてある≫）神的な現実として、すべての最高の人間的な予感と空想力を含めて被造物的な現実に真正面から対立しており、ただ神が人間的な認識の事柄となり給うような仕方でだけ（≪ただイエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現の出来事、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいてだけ≫）、人間的な認識となることができるということ」の「証明」である。したがって、復活に包括された「キリストの十字架と直面した」われわれの「独一無比な神の認識は、（≪われわれ人間の側においては≫）常に功績なくして、常に理解を絶する仕方で、人間が霊によって（≪神のその都度の自由な恵みの決断による聖霊の注ぎによって≫）新しく生まれること」、「人間が自分の生をもはや自分自身の中に持たず」、「神の言葉の中に」、それ故に「神の言葉を信じる信仰を通しての神認識の中に」、すなわち啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）において「持つことがゆるされるということから成り立っている」。したがってまた、「キリストの十字架と直面して、神の独一無比性を『自然的な』認識の対象（≪神学と人間学とのあるいは人間学と神学との混淆・混合神学、人間の側からする神と人間とのあるいは人間と神との混淆・混合・協働・共働を志向し目指す自然神学、自然的な信仰・神学・教会の宣教の対象≫）として言い表すことは法外なこと」なのである。「その新しく生まれること」を可能とするのは、すなわち神だけでなく人間も、人間の側からする人間の自主性・自己主張・自己義認の欲求もという不信仰・無神性・真実の罪（『福音と律法』）のただ中を生きるわれわれ人間が「新しく生まれること」を可能とするのは、「今日に至るまで罪人の手に渡され・十字架につけられ・死んで甦られ給うた」イエス・キリスト、神の本質の区別を包括した単一性における「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、神の子、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの、まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにある「復活の力」だけであるのだが、この事柄において、「キリスト教的一神教が、……ユダヤ教的一神教から、またすべてのそのほかの一神教から分かたれ」るのである。
　さて、「神はひとりの方、独一無比な方であるということ」を、「（マタイ一九・一七、ガラテヤ三・二〇、�Tコリント八・四以下、�Tテモテ二・五）新約聖書も語っている」。しかし、新約聖書は、「決して単に言葉だけ語っている」のではなく、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、その「神の言葉と業の証しの中でそのことを……語っている」。人は、「パウロ」が、「（……旧約聖書を支配している『単一神教』と一致しつつ）�Tコリント八・五で」、「多くの神、多くの主があるようであるがと言って」、「天上および地上にある多くのいわゆる神々および主の存在をただ単に否定しないばかりでなく、まさに主張したという事実に注意せよ」。「神の独一無比性についての新約聖書の教え」は、「人間の心に抱かれた（≪人間の側からの先行する≫）理論に基づいているのではない」のであって、「イエス・キリストの名」における「あの出来事についての見方に基づいている」のである。神の本質の区別を包括した単一性において「神はひとりである」ということは、「失われた羊および失われた銀貨についてのたとえの中で、ちょうど鏡に映すように、罪びとが一人でも悔い改めるなら、悔改めを必要としない九十九人の正しい人のためにもまさる大きな喜びが、天にあるであろう（ルカ一五・七、一〇）と言われていることの中で明らかとなる」。このように、神の側の真実としては、「神ご自身はそのようであり、（≪神の本質の区別を包括した単一性における≫）神のあわれみと義にとって、人間は、まさにその救いを必要としている姿・救い出されることの中でこそ、一人一人神がみ心をとめ給う大切な相手であるといった具合」なのである。また、「神は、独一無比なる方として、ちょうど鏡に映すように、あの（≪姉妹の≫）マルタが、多くのことに心を配って思い煩った」のに対して、イエスは、「無くてはならぬものは多くはない。いや、一つだけである。（≪姉妹の≫）マリヤはその良い方を選んだのだ。そしてそれは、彼女から取り去ってはならないものである」（ルカ一〇・四一以下）と言われた。神の本質の区別を包括した単一性における「神のあわれみと義にとって、神が人間から欲し給うことは、まさにただ一つだけであるといった事情である」、それは「ちょうどガラテヤ五・一四によれば、律法全体が一つの言葉」――すなわちあの「神への愛」と「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」との連関において「『自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ』という言葉の中で尽くされているのと同様である」（この時、その律法は、ルターのように福音と対立関係にあるのではなく、「律法の成就」・完成そのものであるイエス・キリストにおける福音を内容とする福音の形式である、その福音に包括された律法である、「もろもろの誡命中の誡命、われわれの浄化・聖化・更新の原理、教会が＜教会自身＞と＜世＞に対して語らねばならぬ一切事中の唯一のこと」である）。「パウロにとっては、神の独一無比性についてのそのような……間接的な見方の対象は、二つあったように見える」。第一には、「パウロの使信にとっては、……ユダヤ人と異邦人を、＜罪＞の中で、また＜神のあわれみ＞の中で、換言すれば＜信仰＞の中で一つにまとめているということである」――「神はユダヤ人だけの神であろうか。また、異邦人の神であるのではないか。確かに、異邦人の神でもある。まことに、神は唯一であって、割礼のある者を信仰によって義とし、また、無割礼の者をも信仰のゆえに義とされるのである（ローマ三・二九以下）」・「ユダヤ人とギリシャ人との差別はない。同一の主が万民の主であって、彼を呼び求めるすべての人を豊かに恵んでくださるからである（ローマ一〇・一二）」・「（直接的な見方と結びついて語られながら）『キリストはわたしたちの平和であって、二つのものを一つにし、敵意という隔ての中垣を取り除き、ご自分の肉によって、数々の規定から成っている戒めの律法を廃棄したのである。それは、彼にあって、二つのものをひとりの新しい人に造りかえて平和をきたらせ、十字架によって、二つのものを一つのからだとして神と和解させ、敵意を十字架にかけて滅ぼしてしまったのである（エペソ二・一四−一六）』」、「この脈絡にまたヨハネ一〇・一六の（≪「一つの群れ」・「一人の羊飼」という≫）言葉も属している」。第二には、「一つの体としての教会の見方である（ローマ一二・四以下、�Tコリント一〇・一七、一二・一二以下）」。「主は一つ、信仰は一つ、バプテスマは一つ。すべてのものの上にあり、すべてのものを貫き、すべてのものの内にいます、すべてのものの父なる神は一つである（エペソ四・四以下）」。「人は、まさにこのところでこそ」、「パウロが、神の独一無比性の真理を、いかに単純にそのまま、（≪「神的な現実を代表している」≫）神の言葉と業を通して造り出された神の民の生（≪教会の生≫）の現実から読み取っているかを……明らかに見ることができる」――言わば、現存するわれわれからすれば、パウロは、それを、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性から引き寄せていることを見ることができる。そして、「そのような現実」の「原因」について、「エペソ四・四において、それからまた繰り返し（�Tコリント一二・一一以下、�Uコリント一二・一八、エペソ二・一八において）一つの聖霊の現実にまで……遡られ……示される」。「まさにそれだからこそ、（≪一つである≫）啓示と和解の賜物」は、「教会の生の中で、……今やまた課題として記述され、使徒の警告の対象とされることができるし、対象とされなければならない」のである。したがって、現存する神の言葉の第三の形態に属する全く人間的な教会の宣教、その思惟と語りと行動は、徹頭徹尾全面的に、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性における「先ず第一義的に優位に立つ原理」としての起源的な第一の形態の神の言葉（「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間「イエス・キリスト」、「啓示の実在」そのもの）、具体的には第二の形態の神の言葉としての聖書（イエス・キリストによって直接的に唯一回的特別に召され任命された預言者および使徒たちの直接的な最初の第一のイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」、その人間性と共に神性を賦与され装備された聖書的啓示証言、直接的な最初の第一の啓示の「概念の実在」）を原理・規準・法廷・審判者・支配者として為されなければならないのである。したがって、その現存する全く人間的な教会の宣教、その思惟と語りと行動、その指導層の神学者や牧師・神父たちは、ただの人間にしか過ぎないのであるから、その＜客観的＞な原理・規準・法廷・審判者・支配者である起源的な第一の形態の神の言葉（具体的にはその第二の形態の聖書的啓示証言）を後景へと退けてしまってならないし、それ故にそれとは独立した仕方で、そしてそれに先行する仕方で、質の悪い人間論や人間学の傘の下に入って、「わがまま勝手に」恣意的独善的に、自分の人間的理性や人間的欲求やによった教会としての身体表現や言語表現を為してはならないのである。何故ならば、われわれは、「心を頑固にし福音を認めない人間」や「異教徒」に対して、「恵みから語り、恵みについて語るという以外のこと」を為すことはできない、すなわちわれわれがそうした人々に呼びかけることができるのは、（１）「私がその人をその中に置くことによってではなく」、（２）神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰によれば、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」におけるその第二の存在の仕方であるまことの神にしてまことの人間イエス・キリストが、すでにその人をその中に（≪神の側の真実としてある、客観的現実性としてある、成就と執行としてある、永遠的実在としてある、完了・成就された個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和の中に≫）置いてい給うことによってである」、したがってわれわれは、「キリストにあるものとしての人間のために、努力し得るにすぎない」（『証人としてのキリスト者』）からである。神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰によれば、「平和の概念は包括的な救済概念と同じ」である、その救済概念は、「この世の神との和解」、「人間相互間の和解を直接その内に包含している和解」である、「神ご自身によって、イエス・キリストの歴史において、その生涯と死において」、すでに完了・成就され、「死人からの復活においてすでに啓示されているような、和解」である、したがってわれわれ人間によって初めて「完成されねばならないような和解」ではなく、神の側の真実としてある、客観的現実性としてある、成就と執行としてある、永遠的実在としてある、「神ご自身によって確立された和解」である、「イエス・キリストにおいては、神と人間が、しかしまた人間とその隣人が平和的」なのであり、「敵としてではなく、忠実な同伴者、仲間として、共にある」のである、イエス・キリストにおいて平和は、「神ご自身が世界史のまっただ中に創造し見えるものとして下さった現実性」である、それ故に「この贈り物は、ただわれわれがこれを受けとることを待っている」。したがって、われわれが「この事実に向かって、眼と耳を閉ざして生きているということが、悲惨」なのである（『平和に関するバルトの書簡』）。したがってまた、この「イエス・キリストの名」にのみ感謝を持って信頼し固執し固着することを後景へと退けた、特に、日本基督教団の「戦争責任の告白」や「戦後７０年にあたって平和を求める祈り」やカトリックの「抗議声明」等、また過渡的――究極的課題を明確に提起しない表向きだけの教会の社会的政治的実践の強調等が「悲惨」なのである。われわれは、復活したキリストの再臨、終末、完成を待ち望む信仰に生きることが求められている。イエス・キリストが「聖霊の特別な働きとして約束」したものは、「慰め主としての霊」と「真理の御霊」であるが、聖霊は、聖書の中の「キリスト教原理を、覆いをとって明らかにする」・「キリストについて語ることができる能力」（ヨハネ一四・二六）であり、「上から」の「よき賜物」（聖霊の注ぎ、聖霊の注ぎによる人間的主観に実現された神の恵みの出来事）である。この聖霊の注ぎにより「聖霊を持つ」ということは、「キリストにおいて起こった和解にあずかること」であり、「キリストと共に、死から生命への方向転換におかれること」である。この二つの方向転換において「イエス・キリストにあっての神の啓示の要素としての霊の本質」は、「キリストにある自由」を意味している。この「キリストにある自由」とは、「キリストの奴隷」となることである。「イエス・キリストの名」にのみ感謝を持って信頼し固執し固着することである。聖書的啓示証言によれば、キリストの復活とその復活したキリストの再臨・終末までの聖霊の時代における「父ト子ヨリ出ズル御霊」・聖霊は、われわれ人間の「救済主」である。しかし、聖霊は、ただ「救済主」であるだけでなく、「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質とする三位一体の神の「失われない差異性」におけるその第三の存在の仕方として、「子とともに、子の霊として、また和解者」でもあり、また「父および子とともに創造主なる神」でもある。新約聖書の「イエスは主である」という「証言」は、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」におけるその第二の存在の仕方であるイエス・キリストを、「事実の承認」として・「思惟の初め」として語っている。したがって、この「イエスは主である」・「子を通しての父を、父を通しての子を信じるこの信仰」、「神との出会いであるイエスとの出会い」――この「信仰の出来事」は、聖霊の注ぎによるのである。この神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づく信仰の出来事は、新約聖書においては、「啓示の出来事の中での主観的側面」・「聖霊の注ぎ」による「人間的主観に実現された神の恵みの出来事」のことである、換言すれば人間的主観に与えられた信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）の出来事のことである。われわれが、「救済」を「信仰の中で持つ」ことは、「約束として持つ」ことである。「われわれはわれわれの未来の存在を信じる。われわれは死の谷のさ中にあって、永遠の生命を信じる」。「この未来性の中で、われわれは永遠の生命を持ち所有する」。この「信仰の確実性」は、「希望の確実性」である。新約聖書によれば、神の恵みの賜物である「聖霊を受け」・「満たされた人」は、「召されていること、和解されていること、義とされ、聖とされ、救われていることについて語る時」、「すでに」と「いまだ」という＜啓示の弁証法＞において「終末論的に語る」のである。ここで、「終末論的」とは、「われわれの経験と感性」（われわれ人間の感覚と知識を内容とする経験的普遍）にとっての＜いまだ＞であり、神の側の真実として、「成就と執行」として、「永遠的実在」として＜すでに＞ということである（『教会教義学　神の言葉�T／１・２』）、その＜完成＞は、復活のキリストの再臨、終末を待たなければならない。「ガラテヤ三・二八で（�Tコリント一二・一三を参照せよ）ただ単にユダヤ人とギリシャ人の区別だけでなく、また奴隷と自由人の区別も、また男と女の区別も、『あなたがたは皆、キリスト・イエスにあって一つである』という確認によって＜相対化＞されている時、そのことは、神の独一無比性の宣べ伝えである」。ここでは、男尊女卑、男性中心＜主義＞も、フェミニズムとそれの極限に想定される女性中心＜主義＞も相対化されるのである。人類史（世界史）の「アジア的」段階における江戸期（地域日本）の離婚制度には男女平等性というべきものがあった。その江戸期（地域日本）の離婚制度における男性の側の三行半と、女性の側の衣類や家具や持参金に対する財産権的な対抗措置という男女の平等性の在り方は、「アジア的」段階の前、すなわち血縁の氏族共同体を基礎とする「原始的」段階（人類史・世界史のアフリカ的縄文的段階）における、所有権や管理権はなかったとしても女性から女性への財産等の相続・継承という、また家族においては妻の自主性や自由の度合が大きかった「母系制」（祖父江孝男『文化人類学入門』中央公論社）の遺制として、人類史（世界史）のアフリカ的縄文的段階における世界普遍性の中に位置づけることができる。したがって、その江戸期の男女平等性は、個人原理に基づき明確に法制化された西欧近代の萌芽では決してなく、逆にプレ・アジア的段階（人類史・世界史のアフリカ的縄文的的段階）の遺制として位置づけ得るのであって、その意味ではそれは新しいことでも進歩的でも革新的でもないものである。いずれにしても、「また、キリスト者が、ピリピ一・二七において『一つ心となって福音の信仰のために力を合わせて戦いつつ』、一つの霊によって堅く立つようにと呼び召されている時、同じ愛の心を持ち、共に召されたものとしてただ一つ思いになるようにと呼び召されている時、あるいはローマ一五・五以下で、『心を一つにし、声を合わせて』わたしたちの主イエス・キリストの父なる神を崇めるようにと呼び召されている時、あるいはエルサレムの教会について使徒行伝四・三二で、事実信じる者の群れが『心を一つに思いを一つにして』と言われることができる時、そのことは神の独一無比性の宣べ伝えである」。
　前述したことは、「結局ただひとりの神を告白する告白が基づいている間接的な見方である」。「そのような間接的な見方は、本来的な、……直接的な見方に立ってはじめて理解されることができる……」。「この直接的な見方と共に、新約聖書の中での神の独一無比性の認識は、立ちもすれば倒れもする」のである。「この直接的な見方」は、「まさに、一神教的なユダヤ教によって拒否されたメシヤ、イエスの見方である」。「この直接的な見方」は、「エペソ二章および四章において、教会が一つであることについて語られていることの本質を規定する中心として全く明瞭に現れている」、また「その見方」は、「主要な箇所、�Tコリント八・六および�Tテモテ二・五を支配している」。先ず「�Tコリント八・六において、『父なる唯一の神』が、それから『唯一の主イエス・キリスト』が名指しで呼ばれており、�Tテモテ二・五において、『神は唯一である』ということが、それから『神と人との間の仲保者もただ一人であって、それは（「すべての人のあがないとしてご自分をささげられた」）人なるキリスト・イエスである』と言われている時」、「一人の主あるいは仲保者を名指しで呼ぶことは、まさに」「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方――すなわち啓示者・創造主であるイエス・キリストの「父なる神は、われわれの主、神と人間の間のそのような方（≪父が子として自分を自分から区別した「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」における第二の存在の仕方――すなわち啓示・和解主である子としてのイエス・キリスト自身≫）として一人の方であり、独一無比な方であることの中で、またそのことと共に、一人の方、独一無比なる方である。主、仲保者がそのような方として、一人の方、独一無比なる方であるということは、……まさにこの二重の〔一人〕（≪この〔一人〕はギリシャ語で表記されている、邦訳３０頁≫）でもって、モーセと預言者たちの一神教が、そのみ言葉と業の中で現実であり（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」におけるその存在の仕方の中で現実であり≫）、啓示され、そのみ言葉と業の中で（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」におけるその存在の仕方、性質、働き、業、行為の中で≫）その本質（≪聖性・秘義性・隠蔽性において存在する、その「失われない単一性」・神性・永遠性の本質≫）をも知らせ給う神の一神教が、この神を具体的な名をもって呼ぶことでもって、確認されている」。「キリスト教的な一神教は、イエス・キリストが、ご自身を、その天にいます父の子（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」におけるその起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身≫）として証しし、啓示され、ご自身を主、支配する主としてのこの世のもろもろの力や権力から区別し、際立たせ、ご自身をそれらの力や権力を克服する者として、またそれらの主として明らかにし給うことから起こってくるのであり、またそのことから成り立っているのである」。キリストにあっての「神は、この独一無比なる方である。まさにこの独立無比なる方として、神は独一無比なる方である」。このような訳で、「新約聖書の意味で、神の独一無比性の啓示と認識が問題である時には、すべてのことは、この独一無比なる方の啓示（≪イエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現≫）と認識（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられるその信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）によってもってかかっている」。