本当のカール・バルトへ、そして本当のイエス・キリストの教会と教会教義学へ向かって

カール・バルト『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』吉永正義訳、新教出版社に基づく

『教会教義学　神論�T／３　六章　�~の現実（下）』「三十一節　神の自由の様々な完全性　　一　神の単一性と遍在」（その６−１）−１（３−１６頁）

引用文中の（≪≫）書きは、私が加筆したものである。また、既出の引用については、その文献名を省略している場合がある。
（論述における様々な重複は、今後も含めまして、それは、あくまでも、理解し易くするためのものでもありますが、私自身のその存在・その思考・その実践において、私自身のものとするためでもありますし、また私自身のためでもありますので、ご了承ください。正直に言えば、もうひとつあって、それは、バルトを、単純にしかし根本的にそして包括的に理解することを目指した拙著だけで、バルトを、根本的包括的に理解することができるのかどうかという実証的実験を行うためでもありますので、ご了承ください。また、注意はしており、見つけた場合には速やかに訂正をしておりますが、引用上の不備、勘違いによる不備、誤字脱字等の不備について、もしそうしたことがありました場合にはご容赦ください）・（しかし、その論述内容については、少なくともカール・バルトに関しては、根本的包括的な原理的な誤謬は犯していないと考えます。したがって、そうした論述の積み重ねの中で、その内容についての表現の仕方の練り直しと的確化だけでなく、その内容の深化と豊富化が為されていると考えます。また、吉本隆明に関しても、まだ補充すべき点はいろいろあるとしても根本的包括的な原理的な誤謬は犯していないと考えます）・（最後に、indemについてだけは、２０１７年３月１２日以降、吉永正義訳の「……する間に」をすべて、井上良雄的に「……することによって」というように引用し直しています。なぜならば、その方がその文章内容をイメージし理解しやすいからです）

「六章　�~の現実（下）　三十一節　神の自由の様々な完全性　一神の単一性と遍在」
「六章　�~の現実（下）　三十一節　神の自由の様々な完全性」について、バルトは、次のような定式化を行っている。
　神の自由の神性は、神ご自身の中で、またそのすべてのみ業の中で、ひとりでいまし、不変であり、永遠であられるということ、まさにそれと共にまた遍在され、全能であり、栄光に満ちた方であり給うということ、から成り立っており、そのことの中で真であることが確証される。（３頁）

〔この定式の詳述〕
　神の自由（≪全き自存性≫）の神性は、（≪ご自身の中での神として≫）神ご自身の中で、また（≪われわれのための神として≫）そのすべてのみ業（≪全き自由・自存性の、「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」における「失われない差異性」の中でのイエス・キリストの父――「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方・啓示者・創造主、子としてのイエス・キリスト自身――父が子として自分を自分から区別した三位一体の神の第二の存在の仕方・啓示・和解主、「父ト子ヨリ出ズル御霊」・聖霊――愛に基づく父と子の交わりである三位一体の神の第三の存在の仕方・啓示されてあること（あの「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性）・救済主なる神の存在としての愛の行為の出来事≫）の中で、（≪ご自身の中での神として≫）ひとりでいまし、不変であり、永遠であられるということ、まさにそれと共にまた（≪われわれのための神として≫）遍在され、全能であり、栄光に満ちた方であり給うということ、（≪すなわち、これら神の本質の区別を包括した単一性、神の本質の単一性と区別、全体性、総体性≫）から成り立っており、そのことの中で真であることが確証される。（３頁）

註：「啓示の認識原理」であり「教会の宣教の批判と訂正」の規準・原理・法廷・審判者・支配者である＜三位一体論＞の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事である、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての客観的な対象として存在している「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性等々については、＜カール・バルトの『教会教義学　神の言葉』および著作全般を根本的包括的に原理的に理解するためのキーワードとその内容について――幾つかの註＞（２０１６年６月１３日作成）、を参照してください。

「三十一節　神の自由の様々な完全性　　一　神の単一性と遍在」（その６−１）−１
　「われわれは、（≪神の本質についての教説、≫）神的な愛について語った時、既に、神的な自由について語った」。神の側の真実としてある「神の愛」は、「それが神の義であるということの中で」、「（他のすべての愛とは異なる）神的な行為および存在である」、すなわち全き自由な、自存的な神の愛の行為の出来事としての神の存在である。「神の義」は、「神の愛」の、それ故に「神の恵み」の、それ故に「神のあわれみの規定である」。しかし、神の本質の区別を包括した単一性において、「神の愛、恵み、あわれみは、必然的に、ちょうどそれが神聖性の規定を持っているように、また義の規定も持っている」。したがって、「もしもそれが神聖でないとしたら、……義でないとしたら、それは神の愛ではない」のである。われわれは、聖書で「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて自己啓示されたところの、「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方において「三度別様」に父、子、聖霊なる神である、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の恵みと神聖性およびあわれみと義ならびに忍耐と知恵（神的愛の完全性）という区別を包括した単一性（「単一性と区別」）における全き自由（自存性）の神的な愛について、換言すれば全き自由（自存性）の父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在について語った、神の側の真実としてある神的愛の完全性について語った。「われわれは今」、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（イエス・キリスト、神の子、啓示・和解、「啓示の実在」そのもの）、具体的にはその第二の形態である預言者および使徒たちのイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」（その最初の直接的な第一の聖書的啓示証言、啓示の「概念の実在」）に信頼し固執し連帯することを通して「神的自由の完全性に注意を向ける」。何故ならば、「われわれが、（≪すなわち神とは異なるわれわれ人間が、存在の類比に基づいて≫）何かある一つの恵み、あわれみ、忍耐について語ったのではなく」、「まさに（≪われわれのための神における≫）神的な恵み、あわれみ、忍耐について語ったということを基礎づけ、確保し、説明するために」、「（≪ご自身の中での神としての≫）神の神聖性を（≪われわれのための神としての≫）神の恵みと並んで、（≪ご自身の中での神としての≫）神の義を（≪われわれのための神としての≫）神のあわれみと並んで、（≪ご自身の中での神としての≫）神の知恵を（≪われわれのための神としての≫）神の忍耐と並んで、特別に念頭に置くようにわれわれを強いたのは、まさに神的自由（≪神的自存性≫）を思い出す想起以外」の何物でもなかったからである。このような訳で、「神的愛の神性は、神がまさにその愛の中で自由（≪自存≫）であり」、それ故に「まさにその恵み、あわれみ、忍耐の中で神聖で、義しく、知恵に富み給うということから成り立っており、そのこと中で確証される」のである。したがって、これらの事柄について、われわれは、啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて、終末論的限界の下で、信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）として与えられるのである、換言すれば人間の「理性や力」の＜直接性＞によって、あるいは人間学的な哲学原理や認識論や世界観等々を媒介することによって与えられるのではないのである、総括的に言えば自然神学あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教によって与えられるのではないのである。
　この「神の本質の……単一性」（区別を包括した単一性あるいは「単一性と区別」における「単一性」）は、神的愛の完全性の側面からからだけでなく、神的自由の完全性の「側面からも考察されなければならない」。「神の自由（≪自存性≫）は、神の愛と比べていささかの遜色もなしに、神的である」、換言すれば神の自由（自存性）は、ご自身の中での神としての単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第三の存在の仕方（性質、働き、業、行為）である聖霊は、起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父と父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身との神的愛に基づく関係・交わりであり、キリストにあっての神にとっての最高の法則であり、われわれのための神としての神の側からする神と人間との交わりの根拠であるであるが、その「神の愛と比べていささかの遜色もなしに、神的である」。『教会教義学　神の言葉�T／１・２』に引き寄せて言えば、「創造された世界」における「神の愛」と「われわれの世界」における「イエス・キリストの事実の中における神の愛」との間には差異があるのであって、後者の神の愛は「まさしく神に対し罪を犯し、負い目を負うことになった人間の失われた世界に対する神の愛」であるから、その「和解ないし啓示」は、「創造の継続」や「創造の完成」ではない、すなわち「和解ないし啓示」は、神の三つの存在の仕方（「神的生の秩序」）の差異性における第二の存在の仕方であるイエス・キリストの「新しい神の業」であるということである、それは「神的な愛の力」・「和解の力」である、イエス・キリストは、和解主として、創造主のあとに続いて、神の第二の存在の仕方において第二の神的行為を遂行したのである、この神の存在の仕方の差異性における「創造と和解のこの順序」に、「キリスト論的に、父と子の順序、父（≪啓示者、言葉の語り手、創造主≫）と子（≪語り手の言葉、啓示、和解主≫）の順序」が対応しており、それ故に和解主としてのイエス・キリストは、創造主としての父に先行することはできないのである、しかしながら、父と子は、「失われない単一性」・神性・永遠性をその存在の本質としているから、その「神的生の秩序」における従属的な関係性は、その存在の本質の差異性を意味しているのではなく、あくまでもその存在の仕方（性質、働き、業、行為、行動）における差異性を意味しているのである、したがってその「神的生の秩序」における従属的な関係性は、上下的な「秩序」関係（上下的な差異性）を意味しているのではないのである。神とは全く異なる全自然（人間の自己身体・性としての他者身体、外界としての自然、天然自然）や人間の身体と精神を介した普遍的で実践的な全自然との相互規定的な対象的活動を通して人間化された自然である人間的自然とは無限の質的差異の下にあるところの、換言すれば「聖書の主題であり、同時に哲学の要旨である」神と人間との無限の質的差異の下にある（『ローマ書』）ところの、「神の自由（≪自存性≫）は、（≪自由・主権は「神ご自身においてのみ実在であり真理である」≫）それが神が愛し給う自由である、ということの中で神的である」、同時に「神の愛は、（≪神にとって最高の法則である愛は「神ご自身においてのみ実在であり真理である」≫）それが神の自由な愛である、ということの中で神的である」。このような訳で、われわれは、形而上学的一面的固定的に抽象された「それとしての神の自由そのものというようなものは存在しないことを知っている」のである。したがって、われわれは、「神の自由（≪神的自由の完全性≫）に向かう時、絶えず一緒に神の愛（≪神的愛の完全性≫）についても考えなければならない……」のである。このことが、われわれを、今度は「両方のことを……神の自由の方向に向けて考察を為すように強いる」のである。この考察は、われわれに対して、「神の自由が神の愛との間に持っている関連性と単一性を思い出させ、まさにそのことでもって、われわれは（≪形而上学的一面的固定的に抽象された≫）何かある一つの自由と取り組むのではなくて、神的な自由と取り組まなければならないことを基礎づけ、確保し、説明する」のである。「神の自由の神性」は、「神がまさにその自由（≪自存性≫）の中でこそ、まさに自由なる方としてこそ、（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする、起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・言葉の語り手・創造主なる神、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身――啓示・語り手の言葉・和解主なる神、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・「神の言葉の三形態」の関係と構造・救済主なる神として≫）愛する方であり給うということから成り立っており、そのことの中で確証される」。このキリストにあっての神は、ご自身の中での神として「ご自身の中で」、またわれわれのための神として「そのすべてのみ業の中で」、「ひとりの方であり、不変であり、永遠であり給う」。このことが、全き自存性としての「神ご自身においてのみ実在であり真理である」「神の自由である。それが、神の尊厳性であり、絶対主権性である」。このことは、「偶然的で、恣意的に規定された仕方ではなく」、「全く神ご自身によって規定された仕方で」、それ故にそれ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性である「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（神の子、啓示・和解、「顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリスト、「啓示の実在」そのもの）としての神の自己顕現という仕方で、それ故に啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）として授与されるのであるが、まさに「神は自由で、尊厳で、絶対主権的であり給う」。このような訳で、キリストにあっての「神は、（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする、「失われない差異性」の中での起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父――啓示者・言葉の語り手・創造主なる神、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である子としてのイエス・キリスト自身――啓示・語り手の言葉・和解主なる神、愛に基づく父と子の交わりとしての第三の存在の仕方である聖霊――啓示されてあること・「神の言葉の三形態」の関係と構造・救済主なる神という仕方で≫）遍在でありつつひとりの方であり、全能でありつつ不変であり、栄光に満ちつつ永遠であり給う」のである。したがって、「神の自由（≪自存性≫）は、……（≪父・子・聖霊なる≫）神の愛（≪神の愛の行為の出来事としての神の存在≫）の自由である」。「失われない単一性」・神性・永遠性を存在の本質とする三位一体の神の神的な自由の完全性および神的な愛の完全性は、「失われない差異性」における父・子・聖霊なる神という三つの存在の仕方（性質、働き、業、行為、行動）の神的な自由の完全性および神的な愛の完全性でもあるのである。「われわれは、神の遍在、全能、栄光について語ることによって、神の自由（≪自存性≫）から……新たに神の愛を、そしてこの関連性の中でそれと共に神の神性を見る」のである。キリストにあっての「神が、まさにその単一性の中で遍在し、まさにその不変性の中で全能であり、まさにその永遠性の中で栄光に満ち給うということから、神の自由の神性は確証される」のである。「事情がそのようであるということが、神の自由のすべての完全性が神的であることの標準である」。
　ここで、われわれは、前述した主張について、それは、「原則的に、（≪＜非＞自然神学の段階を志向し目指すところからする、あるいは＜非＞自然な信仰・神学・教会の宣教の段階を志向し目指すところからする≫）ただ試みおよび提案としての性格を持って」いるということを告白しなければならない。ただ、われわれは、ここで、「神の本質についての一般的な理念と直面しつつ問いうのではなく、（≪最初の直接的な第一のイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」、啓示の「概念の実在」――すなわち神の言葉の第二の形態である≫）聖書的な啓示証言と直面しつつ」、「どのような規定のもとで、ここで証されている神の愛は、神の自由（≪自存性≫）の中で出来事となって起こり現実となるのか、それ故にそれに基づいて、……その神の愛を、神の本質の規定として理解することがゆるされ理解しなければならないのか、と」「問う」のである。「単一性、不変性、永遠性という系列（≪三位一体の神の存在の本質、「失われない単一性」≫）は、この第一の問いに答えようとするのである」。それと同時に、「第二に、われわれは、……再び聖書的啓示証言と直面しつつ」、「われわれに証されている神の愛」は、「それが、神の自由の中で出来事となって起こり現実となる限り、それ故にわれわれがそれに基づいてこれらの愛の規定を神的本質として理解することがゆるされ理解しなければならない限り」、「どのような規定のもとに立っているのか、と」「問う」のである。「この問いに対しては、遍在、全能、栄光という第二の系列（≪三位一体の神の三つの存在の仕方、「失われない差異性」≫）が答えている」のである。「これらの問い」は、「われわれが、同一の源泉を堅くとりながら、ここでもあそこでも同じひとりの神、その自由（≪自存性≫）の中で愛し給う方について、それ故に神についての聖書的な証言の内容として、既に……われわれが取り組んだその同じ自由と同じ愛について語らなければならないことが確かである限り」、「別な問いではあり得ない」のである。このような訳で、「聖書的な神証言とその関係を通して」「提案されている（≪われわれの≫）選択と並べ方に異議を申し立てたいと思う者は、いずれにしても、それらの起こり得る欠点や隙間を改善する別な試みと提案を（≪聖書的な神証言とその関係を通して≫）為すことなしに、ただ異議の申し立てだけをすることはできない」のである。「ここで避けることのできない体系」化について言えば、それは、「ただ目的のための手段であることができるだけ」であるということである。何故ならば、「目的は、（≪いつも≫）ここでもあそこでも、『可能な限り具体的な、換言すれば神はどなたであり、何であるかという問いに対する可能な限り（≪あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて自己運動する≫）対象に従い、（≪あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて自己運動する≫）対象に対応している答え』」にあるからである。言い換えれば、目的は、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて自己運動する「対象」――すなわちイエス・キリストにおける神の自己啓示を通して（媒介して）為される「神はどなたであり、何であるか」という問いにある、すなわちそれ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（神の子、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリスト、「啓示の実在」そのもの）、具体的にはその第二の形態の預言者および使徒たちのイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」（聖書的啓示証言、最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」）を、われわれの思惟と語りの原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、純粋なキリストにあっての神を尋ね求める「神への愛」（この「神への愛」は、そのような「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」、純粋なキリストの福音を内容とする福音の形式としての律法を命令・要求・要請する）を志向し目指すという点にある、イエス・キリストをのみ主・頭とする「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を志向し目指すという点にある。そして、このような「神への愛」の志向性の源泉は、啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力であり、キリストの霊である聖霊の証しの力であり、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動であり、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）である。

　「われわれは、先ず神の単一性（≪「失われない単一性」≫）からはじめることにする」。「人は、神の自由のすべての完全性を、その限りその自由の中で実在であり実証される神の愛のすべての完全性を、その限りそもそもそれとしての神的本質のすべての完全性」を、「この一つのこと（≪「単一性」、「失われない単一性」≫）の中で総括することができるし、神が現にあり給うすべてのことを、（人がそのことを正しく理解するならば）まさに神はひとりの方であり給うということでもって言い表すことができる」。このキリストにあっての「神は、ひとりの方であるということ……の中で、ご自分とは違うすべてのもの（≪神とは全く異なる人間の自己身体・性としての他者身体、外界としての自然、天然自然や人間の身体と精神を介した普遍的で実践的な全自然との相互規定的な対象的活動を通して人間化された自然である人間的自然≫）からご自分を区別されるし、そのことの中でそのようなすべてのものを支配し、定め給い」、「またそのことの中で、神は、ご自身の中で現にあるところのものであり給う」。「失われない単一性」・「単一性という言葉」は、「独一無比性」と「単純性」という「二重の意味を持っている」。
　われわれが、「失われない単一性」、「単一性を……独一無比性として理解」し、それを「神にとって固有なことであると……言う時」、「ただ神だけが存在するということではない」。すなわち、われわれがそのように言う時には、「ただ（≪聖書的啓示証言の中でイエス・キリストにおいて自己啓示された≫）神だけが神であり給う」、キリストにあっての「神は、その性質において独一無比であり給う」、すなわち「別な神は存在しない。第二の神も、多くの神々も存在しない」ということを語っているのである。したがって、聖書的啓示証言の中でイエス・キリストにおいて自己啓示された神にのみ感謝をもって信頼し固執する自らの立場において、自然神学の段階あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教の段階を包括し止揚し克服して、＜非＞自然神学の段階あるいは＜非＞自然な信仰・神学・教会の宣教の段階へと移行したバルトが、「別な神」・「第二の神」・「多くの神々」と語っているのは、フォイエルバッハやマルクスやハイデッガーが原理的に根本的包括的に批判したところの宗教――すなわち人間の自己意識・理性・思惟の類的活動が対象化した信仰の対象としての、「存在者レベルでの神」、「人間の想像能力・思惟能力・表象能力の本質が現実化され対象化された……絶対的な本質（存在者）」、「人間的理性や人間的欲求やによって規定された神」であり、自然神学の段階あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教の段階にある共同宗教としてのキリスト教の最後的形態である信仰の対象としての法的政治的近代国家、近代の宗教的形態である人間にとって一部分にしか過ぎない科学や経済や等を全体化する宗教としての科学＜主義＞や経済決定論や歴史＜主義＞等のことを念頭に置いて語っていることは明らかである。バルトは、『教会教義学　神の言葉�T／１・２』で、次のように述べている――第三の形態における全く人間的な釈義神学による聖書的教えの認識や概念は、キリスト教的な神についての「語りの規準」（「先ず第一義的に優位に立つ原理」・法廷・審判者・支配者）であるイエス・キリスト自身（起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの）と同一ではない。したがって、教会の一つの機能である教義学は、「使徒や預言者たちが語ったことを問うのではない」。何故ならば、「使徒や預言者たちが語ったこと」は、啓示の「概念の実在」ではあっても「啓示の実在」そのものではないから、もしも彼らの語りをそれとして問うことをしたならば、それは、人間によって言語を介して対象化された彼らの語り、「存在者レベルでの神」を問うことになってしまうからである。したがって、教会の一つの機能である教義学は、絶えず繰り返し「『使徒と預言者たちに基づいて』（≪その人間性と共に神性を賦与され装備された預言者および使徒たちの起源的な第一の形態の神の言葉であるイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」、最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」、神の言葉の第二の形態を原理・規準・法廷・審判者・支配者として≫）何をわれわれ自身が語るべきかを問」わなければならない。その時だけ、「キリスト教的語りは今日何を語ることがゆるされ、語るべきかを問うよう自分が要請され・命じられていること」を知ることができる。神についての教会の語り、教会の一つの機能である教義学は、「信仰のない」人間の、「信仰にさからう理性（≪人間は「『自分の理性や力によっては』全く信じることができない」≫）を用いての語り」であるが、神についての教会の語り、教会の一つの機能である教義学が、「神についての語りをはかる規準を、イエス・キリスト（≪起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの、具体的にはその最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」、第二の形態の神の言葉である聖書的啓示証言≫）の中で、受けとる限り、（≪神についての教会の語り、教会の一つの機能である≫）教義学は真理の認識として可能」となる。その場合、神についての教会の語り、教会の一つの機能である教義学は、終末論的限界の下で、「人間的な問いの中で、人間的な問いと共に、人間的な問いのもとで、……神的な答えについて語る」ことができる。しかし、可能性としてそうであるから、それが、「キリスト教的語りの正しい内容の認識として祝福され、きよめられたものであるか、それとも怠惰な思弁でしかないかということは、神ご自身の決定事項」なのであって、われわれ人間自身、神学者自身、教会自身、牧師自身の決定事項では決してないのである。したがって、神についての教会の語り、教会の一つの機能である教義学の在り方は、「『主よ、私は信じます。私の不信仰を助けて下さい』（≪マルコ９・２４≫）というこの人間的態度に対し神が応じて下さるということに基づいて成立している」のである。また、バルトにとって、「聖書の中で物語られているもろもろの歴史」は、史実史や神話ではなく、「ただ、（一人、あるいは何人かの）物語者が物語られた歴史に対して、多かれ少なかれ（主観を交えて脚色しており、そういう意味で）干渉し、関与する」という「歴史物語あるいは古譚の要素を持ったもの」である。したがって、「中立的な観察者」として「聖書の中に証しされている啓示の『史実的な（historisch）』確かさを問う問い」は、「聖書にとっては全く縁遠いもの」であり、 「聖書の証言の対象にとって」異質なものである。しかし、その聖書的証言に対して、それを「聞くもの、見る者、信じる者」である「非中立的な観察者」にとっては、啓示（起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの、イエス・キリスト）、聖書（第二の形態の神の言葉、最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」、預言者および使徒たちのイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」）、教会の宣教（全く人間的な第三の形態の神の言葉、第一の形態および第二の形態を自らの思惟と語りの原理・規準・法廷・審判者・支配者として、絶えず繰り返しそれに聞き教えられることを通して教える教会の＜客観的＞な信仰告白および教義）の中に「同時に啓示の秘義があったし、あり続けた」。したがって、その「非中立的な観察者」だけが、聖書の中の歴史について、「史実的」には「全く何も確かめられない」ということ知らされたし、「啓示の出来事にとって重要でないものだけ」、「啓示とは別の何かだけ」しか確認できないということを知らされた。聖書の中の歴史は歴史物語あるいは古譚であって、そのような「神と人間との間に起こったもろもろの歴史」は、「神的な側面」からは、常に、人間が人間的に所有する人間の一般的な歴史認識や概念の彼岸・外にあるものである。すなわち、聖書証言の報知における歴史（Gschichte）、「特殊な歴史」（出来事史）については、いかなる「『史実的な（historisch）』判断」・認識・概念もあり得ないのである。しかし、歴史＜主義＞は、人間精神が生み出したものを問題とする限り、「啓示を問おうとしない」で「人間精神の自己理解を第一義として聖書の中でも神話を問う」ことをするのであるが、「啓示の証言としての聖書の理解」と、「神話の証言としての聖書の理解」は、相互排除の関係にある。したがって、聖書記事を歴史物語とみなし、聖書記事の「一般的な歴史性（Geschitlichkeit）を問題化すること」は、「証言としての聖書の実体を攻撃しない」が、聖書記事を「神話として受けとること」は、「証言としての聖書の実体を攻撃する」ことになるのである。何故ならば、神の側の真実としてあるイエス・キリストにおける神の自己啓示は、人間学的な「歴史の枠にはめ込まれてしまうような歴史的出来事ではない」からである。したがって、聖書の歴史認識の方法は、その歴史を、「一般的な歴史性」を含んではいるが史実史ではない歴史物語・古譚・原歴史として受けとる点にあるのである。このように『教会教義学　神の言葉�T／１・２』で述べたバルトは、『ルドルフ・ブルトマン』で、次のように述べている――ブルトマンは「神話的世界像と神話的人間像」は時代の経過とともに、「われわれの前から消え去ってしま」うし、私たちの眼前存在、現前性は「近代的な世界像、人間像」にあり、「神話形式のままでは、新約聖書の言表」、すなわち「語られた内容の表現」は理解できないから、それは「非神話化されなければならない」と語るのであるが、それに対してバルトは、イエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの教会における「聖書註解者」は、「だれに対して」、「誠実と真実をささげるべきなのか？」、「責任的応答をなすべき」なのか？　「同時代の人たちの思考の前提に対してか？」、「そこから形成された理解の規準に対してか？」、同時代の哲学原理・認識論・世界観に対してか？　政治的近代国家のその法的政策的言語に対してか、ある特定の人種に対してか、ある特定の文明や文化に対してか、ある特定の社会構成や支配構成に対してか、と問い、＜否＞を語るのである。われわれは、「十字架につけられ、復活したイエス・キリストにおけるわれわれの実存という場所」において、われわれの「信仰より以前にも、信仰なしでも、……不信仰に抗して」も、「われわれのために生きて、われわれを支配」し、「われわれを愛し給うイエス・キリスト」を、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて「認識し、持つことができることを示すということ以外の何が問題となるのだろうか？」、と語るのである。それ故にまた、バルトは、次のように語るのである――「世界の救いを何かある国家的、政治的、経済的または道徳的な諸原理や理念や体制の内に求め」ようとしないで、「私たちの主であり、救い主であるイエス・キリストを、いっさいのものにまさって恐れ、かつ、愛すること、神を、大きな問題においても、小さな問題においても、彼がかってあり、いまあり、やがてあり給う権威のままに肯定し、是認すること、私たちの個人的、社会的生活を敢えて律して、すべての善きものを神から、神からすべての善きものを期待」するべきである、戦争の元凶である民族国家を問わずに為される平和＜主義＞的運動や擬制民主主義でしかない議会制民主主義におけるその法的政策的言語を介して結局は政治的近代国家に包摂されてしまって同じ穴の狢となりさがる以外にはない平和＜主義＞的運動等々「不毛な反抗や反論を避けて」、「西でも東でも等しく通用し、西でも東でもひとしく稀であり、 人々に好まれぬ福音に、無償の恩寵によって、素直に止まる」べきである、「西の獅子に全力をあげて抵抗しないような人びとは、決して東の獅子にも抵抗しえないし、また事実、抵抗しない」（『共産主義世界における福音の宣教　ハーメルとバルト』）、フーコーが述べているように、権力は実体ではなく、「個人間に存在するひとつの個的なタイプ」――すなわち「ある価値基準」・「ある時ある場所」において、「聖なる者」と「俗なる者」、「教えるもの」と「教えられるもの」、「正常なもの」と「異常なもの」、「支配するもの」と「支配されるもの」等へと関係を規定する「政治的合理性の形態」であるが、「人間の公私の生活においては、絶えず新たな支配が行われるような仕組みになっている」、「国家は支配であり、文化は支配」である。したがって、「どのような国家形態にも、どのような文化傾向にも、無条件に『然り』とは言わぬ」（『啓示・教会・神学』）、「われわれは平和を維持するためにできる限りのことをしなければならない」。しかし、「このことは、われわれは平和主義者でなければならないということを意味しない。平和主義は一つの絶対主義だ（すべての主義のように）。われわれは神には服従するが、一つの原理や理念にはしない。したがって、われわれは最後の手段のために、（≪世界が経済の世界性と民族国家の一国性を単位として動いており、戦争の元凶である民族国家が存在する限りは≫）戦争の可能性はあけておかなければならない」（『バルトとの対話』）、「福音が純粋ニ教エラレ、聖礼典が正シク執行サレルということ」が為されないままに、礼拝改革・社会的政治的実践・キリスト教教育とか、教会と国家および社会との関係とか、国際間の教会的な相互理解というような領域で、「何か真剣なことを企て遂行してゆくことができると考える」べきではない。また、教会の宣教の規準を、聖書と同時に、「最上の仕方で基礎づけられ、熟慮に熟慮を重ねられた人間的な判断」あるいは「哲学、道徳、政治」等に置くべきではない。また、「特定の人種、民族、国民、国家の特性、利益と折り合」おうとするべきではない（『教会教義学　神の言葉�T／１・２』）。

　聖書で、イエス・キリストにおいて自己啓示された神は、「ひとりの方であるという命題が含みを持っている原理的な性格は、まさに、われわれが、この命題をこの最初の意味で理解するときにこそ、看過されることのできないことである」。すなわち、「唯一でないもの、この唯一のものでないものは、いずれも神ではないであろう」。したがって、そうでないものは、「ほかの神を自分の傍らに並んで持っているところのすべての推定上の、あるいは表向きのいわゆる神なるもの（≪人間自身が対象化した、人間的理性や人間的欲望によって規定された「存在者レベルでの神」・絶対者・偶像≫）は、すでにこの理由からして、ただ偽りの神、神ではないものでなければならないであろう」。「ただ（≪イエス・キリストにおいて自己啓示された≫）神だけが生き給う。ただ（≪イエス・キリストにおいて自己啓示された≫）神だけが愛し給う。ただ（≪イエス・キリストにおいて自己啓示された≫）神だけが、（≪神の恵みと神聖性、神のあわれみと義、神の忍耐と知恵という神の本質の区別を包括した単一性において≫）恵み深く、あわれみに富み、忍耐強くあり給う。ただ（≪イエス・キリストにおいて自己啓示された≫）神だけが、（≪神の恵みと神聖性、あわれみと義、忍耐と知恵という神の本質の区別を包括した単一性において≫）神聖にして、義しく、知恵に富み給う。ただ（≪イエス・キリストにおいて自己啓示された≫）神だけが、そのことが自分の中に含んでいるすべてのことと共に自由（≪自存≫）であり給う。ただ（≪イエス・キリストにおいて自己啓示された≫）神だけがひとりの方であり唯一であるということが、神にふさわしい意味で力を奮う」。何故ならば、「ただ（≪イエス・キリストにおいて自己啓示された≫）神の中でだけすべてのことは、また独一無比性は、本質的、起源的、本来的であり、それからこのことに基づいて創造的であり、それであるからそのことは、被造物的な、非独立的な、派生的な、非本来的な仕方で、そのほかの存在にも属することができるからである」、ちょうど単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方であるまことの神にしてまことの人間イエス・キリストが、われわれ人間のためにわれわれ人間に代わって、われわれ人間の「神の恩寵への嫌悪と回避」に対する神の答えである「刑罰（死）」を、「唯一回なし遂げ給うた」（律法の成就）ところのインマヌエルの出来事は、われわれ人間からは「何ら応答を期待せず・また実際に応答を見出さず」とも、「神であることを廃めず」に、「何ら価値や力や資格もない」「罪によって暗くなり・破れた姿」の「人間的存在を己の神的存在につけ加え、身内に取り入れ、それをご自分と分離出来ぬよう」に、「しかも混淆（≪混合・共働・協働≫）されぬように、統一し給うた」ように。神は、「すべてのほかのものに相対して、現にあるところの方、現にあるところの者として独一無比であり給う。他方（≪神とは異なる≫）すべてのそのほかのものは、ただ神を通して、それ故にただ非独立性、依存性、非本来性の中でだけ、それ故にまさに神と競合することなしに、現にあるところのものである。それは、そのほか何であれ、どのようなものであれ、とにかく神ではない」、神と人間との無限の質的差異の下で全く神ではない、ただの人間である。このような訳で、イエス・キリストにおける神の自己「啓示の中で、預言者および使徒たちによって証された神の認識（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）」は、キリストにあっての神とは異なる「ほかにあるすべての推定上の、表向きの、いわゆる神性および神的なもの」の「性格を失」わせ、「それらに向けられた信仰と礼拝……の真剣さを失」わせ、それらのものの「偶像」性を暴露し、それらのものを「無」化し、それらのものを「色褪せさせてしま」うということを、「自分の中に包含」している。このように、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰は、「その認識（≪信仰≫）にあずかる者を、有無を言わさぬ仕方で、神的なものに関する限り、……何ものによっても緩和されることのできない排他独占性の中に置く」、その一貫性をもって「聖書の主題であり、同時に哲学の要旨である」神の人間との無限の質的差異の下に置く。「まさにそのことの中で、（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰にあずかる≫）彼らは、神の愛を、（≪神の恵みと神聖性、あわれみと義、忍耐と知恵という神の本質の区別を包括した単一性において≫）恵み、あわれみ、忍耐として経験する」。「彼らは、神の愛を、その自由（≪自存性≫）の故に為される神の選択として、その中でただ単に神が彼らをご自分のために選び給うだけでなく、まさにそれと共にご自身を彼らのために選び給い、ひとりの実在の、それ故に独一無比の神として際立たせ給う選択、その中で誰が、何が、神的でありまた神的でないかが全線にわたって最後的に決定される選択、ただこの彼らを選ぶ神だけが神であり給」うということが「決定される選択として経験する」。「ただ（≪イエス・キリストにおいて自己啓示された≫）この神だけが神であり給う」。何故ならば、イエス・キリストにおいて自己啓示された「この神が、現にあり、為し給うすべてのことは、……比較を絶した、独一無比な仕方であり、また為し給うということ、それ故に神はご自分に等しいものをお持ちにならず、その際、神に対していかなる競い合いも、敵対的な競い合いも、友好的な競い合いも、対立しておらず、それ故に神の言葉はいかなる抗弁もおそれる必要がなく、神の業はいかなる抵抗もおそれる必要がないということ」、「また神の言葉も業も、（≪神とは異なる≫）別な側からのいかなる援助も、補充も、確認も必要としておらず（≪すなわち人間の側からする神との協働・共働・混合・折衷を必要としておらず≫）、あるいはそのようなことは初めからできないことであるということの中で、その意味と力を持っており、またそのことと共に立ちもすれば倒れもするからである」。

　「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（イエス・キリスト、「啓示の実在」そのもの）に信頼し固執し連帯した教会は、「神の独一無比性」を、「最高命題の形」で、「理解し……告白することでもって、預言者的・使徒的証言（≪第二の形態の神の言葉、最初の直接的な第一のイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」、最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」≫）に対して応答した」。「ヒトリノ神ガイマストイウコト、そのことはオリゲネスによれば、（≪神の言葉の第二の形態である≫）使徒タチノ教エノ中デ明瞭ニ伝エラレテイル最初の特別ナコトである」。「信仰ノ基準ハ全クタダ一ツデアリ、不動ニシテ改変デキナイモノデアル。スナワチ、唯一ノ……神ヲ信ジルコトデアル（テルトゥリアヌス）」。「ソノ方ノ上ニモ、ソノ方の後ニモ、何モ存在シナイ。マタソノ方ハゴ自分ノ自由ナ意志以外ノ何モノニヨッテモ影響サレズニ、万物ヲ造リ給ウタ。ナゼナラバソノ方ハ唯一ノ神デアリ、唯一ノ主デアリ、唯一ノ創造主デアリ、唯一ノ父デアリ、タダヒトリ万物ヲ保チ、自ラ命ジテ万物ヲ存在ヘト呼ビ入レ給ウカラデアル（イレナエウス）」。「新約聖書の使信の意味での神認識」――すなわち「神論の決定的に重要な構成要素」であり、「啓示の認識原理」である「三位一体の神認識」は、「最初の数世紀の宗教世界全体との対立」を、それ故に「最も徹底した神々の黄昏れということ、換言すればまさにシラーが『美しき世界』の神性剥奪として……嘆いたところのこと」を「意味したし、今日に至るまで意味している」。何故ならば、「現実に、唯一の方であり給う神についての使信が（≪あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて≫）聞かれ、信じられる時、オリュンポスとヴァルハラ〔戦死者の霊の住む天堂〕は住民が途絶えてしまうからである」、「すべての宗教的世界の登場人物は、その時、必然的に世的なものとなり、……単なる理念、象徴、幽霊、喜劇的人物としてその存在を引き延ばし、最後にはそのようなものとして忘却」されてしまうからである。このような訳で、「神は、（≪イエス・キリストにおいて自己啓示された神≫）ただひとりであり」、この「神のほかにはそれと等しいものはないという命題よりももっと危険な革命的な命題はほかにない」のである。この命題の下では、人間にとって部分でしかない科学を全体化し絶対化する（宗教として信仰する）近代の宗教的形態である科学＜主義＞も色褪せてしまう、またカトリックや日本基督教団における戦争の元凶である民族国家の葬送を明確に提起することなく、ただ観念の共同性を本質とする政治的近代国家の言語である法的政策的言語を介して為している宗教としての平和＜主義＞運動も色褪せてしまう。「キリスト者は、政治生活において神の正義が人間によって誤認され・蹂躙される場合にも、神の正義は、……天地の一切の力が与えられているイエスの苦しみのゆえに、優越しているということを確信している。悪しき矮小なピラトが、結局は無駄骨折をするというように、配慮がなされているのである。その場合、（≪イエス・キリストをのみ主・頭とする≫）キリスト者が、どうして、ピラト（≪一切の法的政治的権力≫）のともがらと成ることができようか」（『教義学要綱』）。「神はただひとりであるという命題の真理とぶつかって、アドルフ・ヒットラーの第三帝国は滅びてしまうであろう」。「この命題が、それが聞かれ理解されるように語られるならば、……直ちに四五〇人のバアルの祭司たちに肉迫して攻撃するであろう。その時、まさに近代が寛容と呼んでいることは（≪あるいは多元主義は≫）、もはやいかなる場所も持つことはできない」、神だけでなく人間も、人間の自主性・自己主張・自己義認の欲求もという在り方においては、すなわち「神と並んで」人間もという在り方においては、「まさに偽りの神々があるだけである。したがって、（≪あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられる≫）神を信じる信仰と並んで」人間的理性や人間的欲求やによって規定された信仰もという在り方においては、ただ迷信、邪信、……不信仰の宗教があるだけである」、人間的理性や人間的欲求によって規定された神（偶像）への信仰あるいは「存在者レベルでの神（≪偶像≫）への信仰」があるだけである。比較衡量して相対的に評価できる自由および直接民主制と武装永世中立の「スイスをナチズムからまもるために私は軍隊に参加」し、「両国を区分しているライン河にかかっている橋を護衛」するために、「もしもドイツのキリスト者の 友人の一人が、その橋を爆破しようとしたら、私は射殺しなければならなかったであろう」、「規準はただ方向を与えることしかできない。（中略）ある特定の瞬間になした決断はおそらく、もっとも重要なキリスト教の教義よりもっと重要であるかもしれない」（『バルトとの対話』）――わが日本には、主イエス・キリストにのみ感謝をもって信頼し固執し固着して、このように思惟し語り決断し行動した指導者が一人もいなかったのである、それだけでなく戦後過程においてもイエス・キリストをのみ主・頭とすべき教会の指導者たちは、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの、イエス・キリスト（具体的には聖書的啓示証言、最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」）にのみ聞き教えられることを通して教えるという仕方で、指導者としての自らの戦争体験の自省に基づいた未来に生きる戦争責任の告白を為すことはなかったし、それ故に指導者たちは、神の側の真実としてある・客観的現実性としてある・「永遠的実在として」あるイエス・キリストにあっての救済・平和という神の言葉の第三の形態に属する教会の言語（その一つの機能である神学の言語）を徹頭徹尾介し・徹頭徹尾引き寄せるのではなく、戦後過程においても戦争の元凶である民族国家の葬送の問題を全く念頭に置かないところで、すなわちその葬送の問題を明確に提起することなく、ただ結局は国家の言語に過ぎない法的政策的言語を介した表向きだけの平和＜主義＞を掲げただけだったし、今以って表向きだけの平和＜主義＞を掲げているだけなのである。その実姿が、あの「戦争責任の告白」であり最近のことでは「平和を求める祈り」等々だったのである。バルトを「反共主義の味方に引きずり込むか、さもなければ、実はひそかな容共派である」というような仕方でバルトの神学者としての「信用を失墜させようとした」「幼稚な反共主義」者であったラインホルド・ニーバー的状況を含めて、欧米の教会の戦後的状況を念頭に置きながら、バルトは次のように述べている――１９４８年に書かれたことであり、いまでも通用することであるが、「六〇〇万人のユダヤ人が殺され……ありとあらゆる恐怖と困窮が人間を襲い、しかもすべてはちょうど風が……花の上を吹くように来て、また去って行っ た。……草や花はしばらく身を曲げる。しかし風が静まれば、また身を起こす。……ある近代劇（≪神だけでなく人間も、人間の自主性・自己主張・自己義認の欲求もという神との混淆・混合・共働・協働・折衷、総括的に言えば自然神学あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教を志向する行動と歩み≫）」が『私たちはまた逃げおおせた』という言葉でこれを言い直しているように」と（『バルト神学入門』）、また第二次世界大戦後において書かれたことであるが、「私は教会のなかに、破滅に急ぎつつあった一九三三年当時と同じ構造、党派、支配的傾向を見出した」・「公然たる信条主義や教権主義、およびいろいろ賑やかな姿で現われている典礼主義への興味によってよびおこされた関心」を見出した・「私は、前よりももっと明瞭に人間――キリスト者もまた、そしてキリスト者こそ！――がもともと頑なであり、容易に悔改めに導かれえないということを認識したのである」と（『バルト自伝』）。「教会の存在と現状が、……（≪イエス・キリスト、「啓示の実在」そのもの、起源的な第一の形態の神の言葉、具体的には預言者および使徒たちのイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」、最初の直接的な第一の啓示の「概念の実在」、聖書的啓示証言に聞き教えられることを通して教えるという仕方におけるあの純粋なキリストの≫）福音から考え・行動し・処理されているということを語っていないならば、教会の説教も福音宣教も虚しいものとなるであろう。（≪神の言葉の第三の形態に属する全く人間的な≫）教会みずからが、……その行為と態度によって、（≪内在的にも外在的にも≫）自己の内なる政治をこの使信に合わせてゆくこと（≪あの神の自由、神の愛、あの神の側の真実としてある主格的属格として理解されたギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」――イエス・キリストが信じる信仰による「神の義、神の子の義、神自身の義」そのもの、このイエス・キリストにおいて完了・成就された神の側の真実としてある、それ故に客観的現実性としてある・「永遠的実在として」ある個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和、あの「神への愛」と「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」――あの純粋なキリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、神の命令・要請・要求、ここから規定されてくるこの世的な人間の観念の共同性を本質とする一切の政治的権力の無化、法的政治的国家の無化――何故ならばそのような国家を無化しなければ社会的な、すなわち現実的な個体的自己としての全人間の解放はあり得ないから≫）を全然考えないとしたならば、どうして世は、王とその御国の使信を信ずるであろうか」（『キリスト者共同体と市民共同体』）。

　「教会的な古代と中世は、神の独一無比性の認識を理論的に疑いもなく非常に明瞭に表現しようとして骨折った。しかし、異教主義とキリスト教との起源的な衝突にとって、……特にグノーシス主義の排除にとって、神の独一無比性の認識が含みをもった意味を度外視するならば」、「この認識の実際的な決断としての性格、危機的意味を、それが本来属している光にあてて明るみに出したのは、十六世紀の宗教改革であり、その中でも特にカルヴァン的な宗教改革であった」――「神ハ類ニ属スルモノデハアリエナイ。なぜならば事態的ニモ概念的ニモ、神ニ先ダツイカナルモノモアリエナイからである」。「宗教改革の諸傾向を顕著な仕方で先取り」して、「カンタベリーのアンセルムス」は、「神はタダ単ニ神デアリ給ウダケデナク、唯一ノ神コソガ口デ言イ表ワシ得ナイ仕方デ三ニシテ一デアル方――タダソノ方カラダケスベテノ幸福ヲ望ムコトガデキ、ソノ方ノモトデ災カラノ避難所ガ求メラレルコトガデキ、ソノ方ニスベテノ願イガ捧ゲラレナケレバナラナイ三ニシテ一ナル方である」と語った。「この認識の（≪「現実の堕落に対する」≫）実際的な、特に批判的な適用」は、「宗教改革の時になって」、「ただ単に外に向かってだけでなく」、「内に向かっても、教会および教会自身の中ででも可能」な「包括的な意味」を持つようになった。「宗教とは結びを意味する。……この結びは決定的に、神ノ神性ニ属スルイカナルモノヲモ、他ノモノニ移サナイということから成り立っている。もしもすべての神的なものが、ただひとりの神のみが持ち給う所有として認識され、尋ね求められ、敬われないならば、このひとりの神は、その栄光を奪われ、その時には見かけ上神に向かって捧げられている礼拝は汚名を着せられる（カルヴァン）」。「悪魔は、それが、イエスから（マタイ四・九）、ひれ伏して自分を拝むように要求することの中で、自分が悪魔であることを暴露する。他方、神の使いは（黙示一九・一〇）」は、キリストにあっての神をのみ「礼拝せよ」という「神にのみ捧げられるべき礼拝」を為すことによって、「自分が神の使いであることを明らかにする」。「ワレワレハ、ヒトリノ神ヲ持トウト願ウナラバ、コノコトヲ記憶シヨウ。神ノ栄光ヲイササカデモ傷ツケマイトスルナラバ、神ニ固有ナモノヲカタク保ツヨウニスルホカナイ、トイウコトヲ。……敬虔ノツトメノオヨソイカナルモノデモ、唯一ノ神以外ノモノニ移ストキ、神冒涜ニナル（カルヴァン）」。したがって、「一五六〇年のスコットランド信条は、『われらは、唯一なる神を告白し、かつ認め、その神にのみ頼り、仕え、その神のみを礼拝し、かつその神のみを信頼せねばならぬ』という簡潔な文章ではじまっている」。イエス・キリストにおいて自己啓示された「神が、ただ単に（≪あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて≫）唯一の方として認識されるだけでなく、唯一の方としての神にふさわしい仕方」で、「神との交わりがもたれるということ……にすべてがよってもってかかっている」、「神に向かっておそれ、信頼し、敬い、奉仕が捧げられなければならない」ということに「すべてがよってもってかかっている」。「人はよく注意せよ。まさに……唯一の神として神を認識するこの認識（≪あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰におけるそれ≫）の実践的、批判的適用を堅くとって離さないでいる者」は、「宗教改革者たちの聖書原理であり、義認論であり、特にその中に含まれている教えと生の……（宗教改革者たちの）キリスト論」を引き寄せると同時に、「その帰結において、宗教改革者たちが為したよりももっと実り多いものにしなければならない……」、ちょうど先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意ができているところの「人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一」（『ローマ書』）であり、「永遠の（神との人間の）和解」（神と人間との無限の質的差異の下で、それ故にあくまでも神の側の真実からする、神の人間との架橋）であり、神との間の「平和」（ローマ五・一）であり、それ故に神の認識可能性である聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の�~の第二の存在の仕方、起源的な第一の形態の神の言葉、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて、「神の用意の中に含まれて、人間にとって、神に向かっての、したがって神認識に向かっての人間の用意が存在する」と言わなければならないように、すなわち先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意という「人間の局面」は、「全くただキリスト論的局面だけである」と言わなければならないように、またちょうどわれわれの「義認」、「われわれの浄化・聖化・更新の原理」は、神の側の真実としてある主格的属格として理解されたギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」――イエス・キリストが信じる信仰による「神の義、神の子の義、神自身の義」そのものにのみ依っていると言わなければならないように、神だけでなく人間も、人間の自主性・自己主張・自己義認の欲求もという自然神学の段階あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教の段階に停滞し循環することは、結局は「人間の想像能力、思惟能力、表象能力が現実化され対象化された……絶対的な本質（存在者）」を、「存在者レベルでの神」を、宗教的対象として科学主義や共同宗教としてのキリスト教の最後的な形態である擬制民主主義としての議会制民主主義、政治的近代国家、戦争の元凶である民族国家を、様々な偶像を崇拝することを志向し目指すことでしかないと言わなければならないように。

　さて、神の単一性についてのもう一つの命題――すなわち「神は単純であり給うということ」は、イエス・キリストにおいて自己啓示された「神は、現にあり・為し給うことにおいて、全き、分割されない仕方で、ご自身であり給うということを意味している。この「第二の意味」においても、「神の単一性についての命題」を、「神の自由（≪自存性≫）についての教説の根本命題と呼ぶことができる」。「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「失われない差異性」の中でのイエス・キリストの父――神の起源的な第一の存在の仕方・言葉の語り手・創造主、子としてのイエス・キリスト自身――父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方・語り手の言葉・起源的な第一の形態の神の言葉・和解主、愛に基づく父と子の交わりとしての聖霊――「啓示の中での主観的側面」・人間的主観に実現された神の恵みの出来事（信仰の認識としての神認識、啓示認識、啓示信仰）に基づいて啓示されてあること・「神の言葉の三形態」の関係と構造・救済主という三つの存在の仕方、性質、働き、業、行為、行動、全き自由の神の愛の行為の出来事としての神の存在におけるこの神は、「父、子、聖霊の神的位格の相違性の中ででも、ひとりの方であり給う。神は、そのさまざまな完全性のリアルな富の中ででも、ひとりの方であり給う」。前述したように、「神は単純であり給うことによって、ほかと比べようのない仕方で、自由（≪自存≫）で、主権的で、尊厳であり給う」。「神は、不変で、永遠であり給うということ」、「また神は遍在され、全能で、栄光に満ち給うということ」は、「神が単純であり給うということの中」に「根ざしており」、「神が単純であり給うということの中で既に措定され含まれている」。したがって、「何ものも神に触れ、神を傷つけることはできない」、「何ものも神から遠く隔たっていることはできず、何ものも神に抗弁し、抵抗することはできない」。「何故ならば、神ご自身の中にはいかなる相違性、隔て、抗弁、抵抗も存在しないからである。神は、すべての点で主であり給う」。何故ならば、「神は、父、子、聖霊として、その本質のリアルな富全体の中で、ご自身の主であり給い、制限されない意味でひとりの方であり給うからである」、「神の（≪「失われない単一性」・神性・永遠性という≫）本質と（≪「失われない単一性」を本質とする「失われない差異性」の中でのその三つの存在の仕方の≫）働きのすべての区別は、ただひとつのことの繰り返しおよび確認であり、またそのひとつのことの中で、（≪「父なる名の内三位一体的特殊性」、「神の内三位一体的父の名」、「三位相互内在性」としてのご自身の中での≫）神が永遠からして、そのようにしてすべての時間の以前からしてあったし、永遠にわたって、そのようにしてすべての時間にわたってあるであろうすべてのことの繰り返しおよび確認でしかないからである」。
　「まさに、神の単純性の中にこそ」、「最後的に、その独一無比性が基礎づけられている」。キリストにあっての神の「神性の中には、いかなる横にあるいは前後に並んでの存在もないということ」、それ故に「神と並ぶいかなる神もないということ」、それ故に「神性であり、神的であるすべてのことは、常に神ご自身であり、……常にひとりの方であるということ」――このことが、「まさに、神の単純性を構成しているのである」。この「神の単純性から」、「先ずはあらかじめ……世界に対する神の関係は、いずれにしても（≪混淆的に・混合的に・協働的に・共働的に・折衷的に≫）神が世界と結合する・あるいは融合する・ましてや同一化することとして理解され解釈されてはならないということが結果として生じてくる」、「また神的なものが、世界の中へと出てゆく溢出、流出、注ぎ出し、突出……はない」。言い換えれば、そのことから、教会の思惟と語りは、その一つの機能である教義学は、自然神学あるいは自然的な信仰・神学・教会の宣教の段階で停滞し循環していてはならないということが結果として生じてくる、ちょうどヘーゲルにおける神の彼岸性（「聖書の主題であり、同時に哲学の要旨である」神と人間との無限の質的差異）を止揚し克服した「神の内なる人間、人間の内なる神という神人一体、神人和解の理念」（神の人間化あるいは人間の神化）における宗教とは、人間の自己意識・理性・思惟によって対象化された自由と理性の理念であるが、このヘーゲルの歴史は自由の概念の実現過程であるということに基づいて、律法・父の国・奴隷状態の歴史（≪世界史的段階で言えば、自然にまみれた原始未開の段階≫）、恩寵・子の国・神の子供状態（≪世界史的段階で言えば、農耕を経済的基盤とすることで自然から対象的になったけれでも、その対象的自然を自己意識・理性・思惟によって対象化して自然から完全に超出することができなかったアジア的段階≫）、自由・霊の国・神の友の状態（≪世界史的段階で言えば、人間の自己意識・理性・思惟によって自然から完全に超出し自由を獲得した西欧近代の段階≫）という神学的な三段階的進歩史観において救済史を構想したモルトマンの歴史形成論（人間学的神学）の段階に停滞し循環していてはならないということが結果として生じてくる、それ故にまたメルロ＝ポンティの身体論に依拠した喜多川信の人間学的神学の段階に停滞し循環していてはならないということが結果として生じてくる。「創造は、そのように理解され、解釈されるべきではない」。したがって、「イエス・キリストにあっての神の子の受肉」（言葉の受肉）も、「神が世界と混じり合ったり、同一化することとして、あるいは神が自分自身から出てゆく一種の出立として理解され、解釈されてはならない」のである。「神が世界（≪自己身体、性としての他者身体、外界としての自然、宇宙を含めた天然自然およびもっと言えば人間化された自然である人間的自然≫）を無から創造されたということは、まさに神は創造主としてのその栄誉をほかのいかなるものにも譲り渡さないし、与えないということを言っているのである」。「また、（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、神の子、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのものである≫）イエス・キリストは、まことの神でありまことの人間であり給うということ」は、「神は被造物とひとつであるこの単一性の中で、一瞬たりとも、いかなる点においても、まことの神であることをやめ給わないということを言っているのである」。「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、性質、働き、業、行為、行動、神の子、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、「啓示の実在」そのもの――まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおける「神の愛」は、「神ご自身の人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一である」（『ローマ書』）。「そして、……神は、これらの神の業の中ででも、決してご自身以下のものであり給わないということこそが、和解と啓示の業の力、祝福、慰めであると同様に、また神の創造の業の力、祝福、慰めである」。『教会教義学　神の言葉�T／１・２』によれば、「父なる名の内三位一体的特殊性」、「神の内三位一体的父の名」、「三位相互内在性」における神は、父が子として自分を自分から区別したイエス・キリスト――すなわち「子の中で、創造主として、われわれの父として自己啓示」する、このようにその本質から言えば、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である父だけが創造主なのではなく、「子」と愛に基づく父と子の交わりである聖霊・「霊も創造主である」、同様に「父も創造主であるばかりでなく、子に関わる和解主であり、聖霊に関わる救済主でもある」。