本当のカール・バルトへ、そして本当のイエス・キリストの教会と教会教義学へ向かって

カール・バルト『教会教義学　神論�T／２　六章　�~の現実（上）』吉永正義訳、新教出版社に基づく

『教会教義学　神論�T／２　六章　�~の現実（上）』「三十節　神的愛の完全性　二神のあわれみと義」（その５−５）−１（２７３−２８８頁）

引用文中の（≪≫）書きは、私が加筆したものである。また、既出の引用については、その文献名を省略している場合がある。
（論述における様々な重複は、今後も含めまして、それは、あくまでも、理解し易くするためのものでもありますが、私自身のその存在・その思考・その実践において、私自身のものとするためでもありますし、また私自身のためでもありますので、ご了承ください。正直に言えば、もうひとつあって、それは、バルトを、単純にしかし根本的にそして包括的に理解することを目指した拙著だけで、バルトを、根本的包括的に理解することができるのかどうかという実証的実験を行うためでもありますので、ご了承ください。また、注意はしており、見つけた場合には速やかに訂正をしておりますが、引用上の不備、勘違いによる不備、誤字脱字等の不備について、もしそうしたことがありました場合にはご容赦ください）・（しかし、その論述内容については、少なくともカール・バルトに関しては、根本的包括的な原理的な誤謬は犯していないと考えます。したがって、そうした論述の積み重ねの中で、その内容についての表現の仕方の練り直しと的確化だけでなく、その内容の深化と豊富化が為されていると考えます。また、吉本隆明に関しても、まだ補充すべき点はいろいろあるとしても根本的包括的な原理的な誤謬は犯していないと考えます）・（最後に、indemについてだけは、２０１７年３月１２日以降、吉永正義訳の「……する間に」をすべて、井上良雄的に「……することによって」というように引用し直しています。なぜならば、その方がその文章内容をイメージし理解しやすいからです）

「六章　�~の現実　三十節　神的愛の完全性　一神の恵みと神聖性」
「六章　�~の現実　三十節　神的愛の完全性　一神の恵みと神聖性」について、バルトは、次のような定式化を行っている。
　神の愛の神性は、神がご自身の中で、またそのすべての業の中で、恵み深く、あわれみに富み、忍耐強くあり給うこと、まさにそれと共にまた神聖で、義しく、知恵に富み給うことから成り立っているし、またそのことの中で確証される。（１２９頁）

〔この定式の詳述〕
　この定式の詳述については、『教会教義学　神論�T／２　六章　�~の現実（上）』「三十節　神的愛の完全性　一神の恵みと神聖性」（その２−１）−１で行っていますので、参照してください（２０１８年５月２１日論述分）。

註：「啓示の認識原理」であり「教会の宣教の批判と訂正」の規準・原理・法廷・審判者・支配者である＜三位一体論＞の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事である、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての客観的な対象として存在している「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性等々については、＜カール・バルトの『教会教義学　神の言葉』および著作全般を根本的包括的に原理的に理解するためのキーワードとその内容について――幾つかの註＞（２０１６年６月１３日作成）、を参照してください。

「三十節　神的愛の完全性　二神のあわれみと義」（その５−５）−１
　前回、次のようなことが述べられていた。「イエス・キリストの死の意味」は、単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、神の子（単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である父が、子として自分を自分から区別したそれ）、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、まことの神にしてまことの人間イエス・キリストが、「イスラエルのために、われわれのために」、不信仰・無神性・真実の罪であるところの、神だけでなくわれわれ人間も、われわれ人間の自主性・自己主張・自己義認の欲求もというイスラエルの、われわれの「神の恩寵への嫌悪と回避」に対する神の答えである刑罰（死）を「唯一回なし遂げ給うた」（「律法の成就」・完了）というところにある。言い換えれば、それは、イスラエルやわれわれからは「何ら応答を期待せず・また実際に応答を見出さず」とも、「神であることを廃めず」に、「何ら価値や力や資格もない」「罪によって暗くなり・破れた姿」の「人間的存在を己の神的存在につけ加え、身内に取り入れ、それをご自分と分離出来ぬよう」に、「しかも混淆（≪混合、共働、協働≫）されぬように、統一し給うた」ということを内容としている。それは、「そのところで、神の断罪し、処罰する義が容赦なくほとばしり出、人間の罪、罪人としての人間、罪深いイスラエルを実際に打ちたたき、それに突き当たったということである」。したがって、「そこのところで」、「イスラエルやわれわれの身にではなく」、単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、神の子（起源的な第一の存在の仕方である父が、子として自分を自分から区別した神の子）、まことの神にしてまことの人間「イエス・キリストの身に起こったことを通して」、「イスラエルやわれわれによって傷つけられた神の義が実際に啓示されたのであり、その神の義の要求が実際に満たされたのであり」、「しかもそのことは」、「イスラエルの身やわれわれの身に起こったのではなく」、「イスラエルの＜ために＞、われわれの＜ために＞、起こったのであり」、それ故に「そこでイスラエルやわれわれの故に苦しまれたことは、イスラエルの＜ために＞、われわれの＜ために＞苦しまれたのである」。「すなわち、神の怒りは、われわれが受けるに値した者であり、それによってわれわれは滅び失せなければならなかったし、とっくの昔に滅び失せていたであろうが」、「その神の怒り」を、イエス・キリスト自らが、「われわれの代わりに、……担われ苦しまれたのである」。「何故ならば、十字架上で神の怒りを身に受け・苦しまれた方が、神ご自身のみ子以外の方ではなく」、「そのようにして、その方が、（≪聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、神の子、まことの神にしてまことの人間として、その全き≫）自由なあわれみの中で取り上げられた（ご自身と人間的な性質との）単一性の中で永遠の神ご自身であられたが故に、聖金曜日に語られた否はあれほど恐ろしいものであり、まさにそれ故にこそ、（≪神の本質の区別を包括した単一性において、≫）その＜否＞の中に……また既に神の義の復活日の＜然り＞が隠されているからである」。「この事柄について」、「新約聖書」は、「特に（≪イエス・キリストの死と復活の出来事における「聖金曜日」・「ゴルゴタの十字架」・「十字架の死」・≫）受難の出来事」に向かっている「福音書」は、また「キリストの十字架あるいは血あるいは犠牲へのすべてのその言及を持った書簡」は、また「あれほど中心的な仕方で支配している『屠られた小羊』の姿を持った黙示録も、……語っている」のである。キリストにあっての「神は、神なき者がその状態から立ち返って生きるために、ただそのためにのみ彼の死を欲し給うのである……しかし誰がこのような答えを聞くであろうか。……承認するであろうか。……誰がこのような答えに屈服するであろうか。われわれのうち誰一人として、そのようなことはしない！　神の恩寵は、ここですでに、恩寵に対するわれわれの憎悪に出会う。しかるに、この救いの答えをわれわれに代わって答え・人間の自主性と無神性を放棄し・人間は喪われたものであると告白し・己に逆らって神を正しとし、かくして神の恩寵を受け入れるということを、神の永遠の御言葉が（肉となり給うことによって、肉において服従を確証し給うことによって、またこの服従において刑罰を受け、かくて死に給うことによって）引き受けたということ――これが恩寵本来の業である。これこそ、イエス・キリストがその地上における全生涯にわたって、ことにその最後（≪「聖金曜日」・「ゴルゴタの十字架」・「十字架の死」≫）に当たって、我々のためになし給うたことである。彼は全く端的に、信じ給うたのである（ローマ三・二二、ガラテヤ二・一六等の（≪ギリシャ語原典の≫）「イエス・キリスト＜の＞信仰」（≪の属格≫）は、（≪人間的契機の直接性を温存させた目的格的属格としてではなく、すなわちイエス・キリストを信じる信仰としてではなく、≫）明らかに（≪神の側の真実としてある≫）主格的属格（≪イエス・キリストが信ずる信仰≫）として理解されるべきものである）」・「『私がいま肉にあって生きているのは、私を愛し、私のために御自身をささげられた神の御子の信じる信仰によって、生きているのである。（これを言葉通り理解すれば、＜（≪人間的契機の直接性を温存させた目的格的属格として≫）私は決して神の子に対する私の信仰に由って生きるのではなく、（≪神の側の真実としてある主格的属格として≫）神の子が信じ給うことに由って生きるのだ＞ということである）』（ガラテヤ二・一九以下）。（中略）自分が聖徒の交わりの中に居る……罪の赦しを受けた（中略）肉の甦りと永久の生命を目指しているということ――そのことを（≪その現にあるがままの人間存在の≫）彼は信じてはいる。しかしそのことは、現実ではない。……部分的にも現実ではない。そのことが現実であるのは、ただ、われわれのために人として生まれ・われわれのために死に・われわれのために甦り給う主イエス・キリストが、彼にとってもその主であり、その避け所でありその城であり、その神であるということにおいてのみである（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示の出来事と信仰の出来事」――すなわちまことの神にしてまことの人間イエス・キリストの死と復活の出来事、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、具体的には第二の形態の聖書的啓示証言のそれ、啓示の出来事、と、信仰の出来事、キリストの霊である聖霊の注ぎによる人間的主観に実現された信仰の出来事に基づいて与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰においてのみ、このことを認識させられ自覚させられるのである≫）」（『福音と律法』）、「われわれは、われわれの主としてのイエス・キリストに固執することにより、またイエス・キリストがわれわれのかしらであるということに固執することにより、（中略）この主とかしらのもとで、またこの主とかしらとともに、……これからは神の義（≪何故ならば、イエス・キリストは、単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方であるから≫）、神の子の義（≪何故ならば、神の子は、単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である父が、子として自分を自分から区別した神の子であるから≫）、神自身の義（≪何故ならば、イエス・キリストの存在は、単一性・神性・永遠性を本質としているから≫）をまとっている者として生きることを許される（『ローマ書新解』）。『神の人間性』に引き寄せて言えば、「神の神性において、また神の神性と共に、ただちにまた神の人間性もわれわれに出会う」のである（何故ならば、イエス・キリストは、単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方として、まことの神にしてまことの人間であるからである、それ故に「聖書の主題であり、同時に哲学の要旨である」神と人間との無限の質的差異の下で、キリストにあっての「神が神であるということがいまだに決定的となっていないような人は、今神の人間性について真実な言葉としてさらに何か言われようとも、決してそれを理解しないであろう」）。このような訳で、人間論的な自然的人間であれ、教会論的なキリスト教的人間であれ、誰であれ、「肉であって、それ故に神ではなく、そのままでは神に接するための器官や能力を一切持っていない」、「『自分の理性や力によっては』全く信じることができない」われわれ人間が、「イエス・キリストを信じる」ということは、全くもって「信仰のないわたし」・「不信仰なわたし」を正直に告白し、「主よ、わたしの不信仰をお助け下さい」と願いつつ、啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、起源的な第一の形態の神の言葉の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて、神の側の真実としてある＜主格的属格＞として理解されたギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」（すなわち「イエス・キリストが信ずる信仰」）による「神の義、神の子の義、神自身の義」そのものであるイエス・キリストにのみ感謝を持って信頼し固執（「固着」）するということである。

（１）ご自身の中の神がわれわれのための神として、「われわれのために味方となって割って入られ」たということ、すなわち単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方である「イエス・キリストがその地上における全生涯にわたって、ことにその最後（≪「聖金曜日」・「ゴルゴタの十字架」・「十字架の死」≫）に当たって、我々のためになし給うた」ということ、そのことでもってわれわれを「神の怒りと裁きから放免」し給うたということ――そのことを為し給うた方が、「神のみ子（≪単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉、まことの神にしてまことの人間≫）であり、（≪単一性・神性・永遠性を本質とする≫）神ご自身であられたということから」、「第一に……明らかになる」ことは、「神の怒り」・「神の処罰し断罪する義」が、「どのようなものであるのか、どういう……罪に対して（≪「焼き尽くす火が」≫）燃えるのか、……罪そのものはどういうものであるのか、神に逆らうということ、神の敵であるということは何を意味するのか、われわれの人間的な現実存在の負目を持った定めとはどういうものであるのか」、ということである。これらのことが「何を意味するのかということ」を、「それ自体として」は、「最悪……大きな有限な不服従を指し示す……と共に結局……単に有限な処罰とその償いの可能性を指し示す」に過ぎない「われわれの最善の意志と行為に対しても優越している旧約聖書あるいは新約聖書の命令そのものも、それとして明らかにすることはできない」。そのことを、また「神の裁きの脅かしと裁きの行為そのものも、それとして明らかにすることはできない」、また「われわれが為す罪認識も、われわれが感じる罪の痛みも、それとして明らかにすることはできない」、また「われわれの身に下されるであろうあの大きなあるいは小さな裁きのどれも、それとして明らかにすることはできない」、また「いかなる悔いも、われわれも体験するかも知れない……いかなる絶望（≪「しかしわれわれはいつ本当に絶望したであろうか」≫）も、それとして明らかにすることはできない」。言い換えれば、「それらすべて」は、「それ自体として」は、「われわれを神の前での悔い改めへと呼び覚ます力を持っていない」のである、われわれを「神の前で無限に罪の負い目を負っている者として、それと共に、無限に失われ滅びに陥った罪人として、換言すれば永遠の死の手に陥った罪人として認識し告白しなければならない神の前での悔い改めへと呼び覚ます力を持っていない」のである。すなわち、その場合には、人間的な思惟の仕方、「人間的な言い方」、「人間の論法」に依拠して、「『怒りを下す神は、不義ではないであろうか』（ローマ三・五）。……われわれは、本当に神の怒りを身に受けなければならないほど、罪深い者なのであろうか」というような「つぶやき……ヨブの問い」はやむことはないのである。このような訳で、単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方であるイエス・キリストの死と復活の出来事における十字架の死という仕方で、キリストにあっての「神が、世（≪われわれ人間を、人間の世を≫）を裁き給うたことをわれわれが念頭に置く時」にのみ、あのような「つぶやき……ヨブの問い」は、やむのである、ちょうど先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意ができているところの、「人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一」（『ローマ書』）であり、「永遠の（神との人間の）和解」であり、神との間の「平和」（ローマ五・一）であり、それ故に神の認識可能性である聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の�~の第二の存在の仕方、神の子（単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の�~の起源的な第一の存在の仕方である父が、子として、自分を自分から区別した神の子）、起源的な第一の形態の神の言葉、主格的属格として理解されたギリシャ語原典の「イエス・キリストの信仰」による「神の義、神の子の義、神自身の義」そのもの、完了・成就された個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和そのもの、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいてのみ、「神の用意の中に含まれて、人間にとって、神に向かっての、したがって神認識（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）に向かっての人間の用意が存在する」ように、「それであるから、神のこの現実存在」が、「人間も属している……実在（≪天然自然、自然の一部である人間の自己身体および性としての他者身体――この身体は身体を座とする自己意識・理性・思惟を持っている、人間化された自然である人間的自然・非有機的身体≫）の中で、またその実在と異なるその全くの相違性の中で（≪「聖書の主題であり、同時に哲学の要旨である」神と人間との無限の質的差異の下で≫）」、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて「人間によって認識されることができる」ように。したがって、そのようにして、そのことが認識させられ自覚させられ、認識し自覚する時には、神だけでなく人間も、人間の自主性・自己主張・自己義認の欲求も、人間的契機の＜直接性＞も、近代的な人間の感覚と知識を内容とする経験的普遍も、人間学も、キリストの啓示だけでなくその現にあるがままの人間の人間性・理性・意志性・応答責任性・決断能力も温存させ、神と人間との混淆・混合・共働・協働を志向し目指す近代主義的プロテスタント主義的キリスト教的な信仰・神学・教会の宣教はやむのである、換言すれば総括的に言えば新正統主義（バルト自身は、その信仰・神学・教会の宣教におけるその原理・その方法と概念構成から言って、決して新正統主義の＜段階＞に属してはいない。すなわち、バルト自身は、その＜段階＞を、原理的に根本的包括的に止揚し克服した＜非＞自然神学、＜非＞自然的な信仰・神学・教会の宣教の＜段階＞に超出している）等々も含めた自然神学が、自然的な信仰・神学・教会の宣教がやむのである、それ故に近代主義的プロテスタント主義的キリスト教的な信仰・神学・教会の宣教における人間の恣意性独善性からする神との「混淆」・「共働」・「混合」・「協働」を志向し目指すところの、また「神の要求」を「人間の要求」の変えるところの、また往相過程（過渡的一面的部分的相対的緊急的観点、最低綱領）と還相過程（究極的総体的永続的観点、最高綱領）の往還思想を持たないところの思慮なき実践――すなわち「その時代の人間中の様々な敗残者に対して、熱心に博愛的配慮……教育的配慮を行う」こと、「大規模な世界改良の偉大な計画」に邁進すること、「大衆や時代の傾向と手をたずさえて、ある種の正義」に邁進すること等々という人間的な「自分で満足させ得る要求」に変えた、人間によって恣意的独善的に曲解された「十誡・預言者の言葉・ソロモンの処世上の知恵・山上の垂訓また使徒の報告」に変えた、「無数の儀文」を生み、「罪」に「勝利を収め」させる「不従順」・「虚偽」、「偶像崇拝」・「神冒?」がやむように、すなわち「神的な『汝は斯くなすであろう』を変じて」、「人間的な余りに人間的な『汝は斯くなすべし』」をつくり上げるところの、神に対する「熱心さの無知」がやむように。
　さて、キリストにあっての神は、神の本質の区別を包括した単一性において、「まさにわれわれを愛してくださるその愛の中でこそ」、「われわれ（≪世≫）に敵対」し、「世（≪われわれ≫）を裁き給う」ということを「実証し給う」。したがって、われわれは、「まさにこのところでこそ」、「神の義が何であり、われわれの不義が何であるかということを尋ねなければならない」、「ここで啓示される神の義の徴として、それからわれわれはその他のすべてのことを、すなわち旧約聖書の中でと世界史全体の中でと、われわれ自身の生活の中での律法と脅かしと裁きを、それらの正しさにおいて評価し理解しなければならない」。ここにおいて、われわれは、「われわれが何について告訴され、どのように負い目を負い、われわれの違反が何であり、何を意味しているかを知るのである」。イエス・キリストの死と復活の出来事における十字架の死に即して思惟し語るとすれば、「われわれの違反」は、「われわれが完全に滅び失せなければならないような仕方（≪「永遠の死という仕方」≫）で罰せられなければならないはずの、……神からの離反であり、神に対する反抗である」、それ故にそれは、「このように（≪現存する≫）われわれが滅び失せないとすれば、まさにただ（≪ご自身の中での≫）神ご自身が（≪われわれのための神として≫）われわれのために味方となって代理してくださり、神ご自身がご自分のみ子の中で罰を引き受け、担い、耐え忍んでくださるという仕方でだけ、罰せられることができる」という「そういう意味を持った」ところの「神からの違反であり、神に対する反抗である」。「神に対するわれわれの対立（≪離反、敵対≫）はそれほどまでに大きいので、それは神からしてだけ、しかも神ご自身がこの対立の中に赴き、この対立の故に身に受けるべきこと（≪刑罰、死≫）を代わって身に受けて下さるという仕方でだけ、克服され、われわれにとって無害なものとされることができるのである」。このことが、「われわれに明らかであるならば、神的な裁きとして旧約聖書の中で、世界史の中で、またわれわれ自身の生の中で、われわれに出会うかもしれないことが、当然われわれの身に及ぶべきものであることに対して、われわれは、何ら抗議すべきものを持たない」のである。

（２）われわれ人間のために・われわれ人間に代わって、われわれ人間の「神の恩寵への嫌悪と回避」に対する神の答えである刑罰（死）を、イエス・キリストが「唯一回なし遂げ給うた」（「律法の成就」・完了）、換言すれば神の本質の区別を包括した単一性（イエス・キリストの死と復活の出来事における十字架の死）において、「神の永遠の御言葉が（肉となり給うことによって、肉において服従を確証し給うことによって、またこの服従において刑罰を受け、かくて死に給うことによって）引き受けた」、換言すれば「明らかに主格的属格として理解されるべき」、それ故に明らかに神の側の真実としてある「イエス・キリストが信ずる信仰」として理解されるべき、それ故に「イエス・キリストが信ずる信仰」による「神の義、神の子の義、神自身の義」そのものとして理解されるべき、「ローマ３・２２、ガラテヤ２・１６等の（≪ギリシャ語原典の≫）『イエス・キリスト＜の＞信仰』」――このようなわれわれのための神としての、全き自由の神の存在としての神の愛の行為の出来事としての、「ゴルゴタの十字架」・「十字架の死」・「聖金曜日において、われわれのために味方となって割って入られたのが（≪単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方である≫）神のみ子（≪単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である父が、子として、自分を自分から区別した神の子≫）であり、神ご自身であられたが故に、神が義であられるがために起こらなければならないことが、そこで起こることができたのである」。このことを、『教会教義学　神の言葉�T／１・２』に引き寄せて言えば、最も単純な形において「神の啓示の実在を問う」問いに対する「新約聖書の答え」は、「永遠なる神性」を存在の本質とする「まことの神」にして「まことの人間」である「イエス・キリストの名」だけである。三位一体の根本命題に即して理解すれば、イエス・キリストの存在は神性を本質としているが故に、「啓示の出来事においてはじめて神の子」、「神の言葉」となるのではなく、「父を啓示するもの」、そして「われわれを父と和解させるもの」として、「イエス・キリストは神の子」、起源的な第一の形態の神の言葉、神の第二の存在の仕方なのである。このキリストの神性は、「啓示および和解におけるキリストの行為（≪全き自由の神の愛の行為の出来事としての神の存在≫）の中で認識」することができる。すなわち、その第二の存在の仕方における啓示と和解が「キリストの神性」の根拠ではなくて、キリストの存在の本質である「キリストの神性」が「啓示と和解を生じさせる」のである。ここに一切合財があるのであって、「赦す神」はたとえその人がまことの人間であっても人間に内在することは決してないのである。イエス・キリストは、われわれ人間のために・われわれ人間に代わって、「『罪を犯した人間の本姓』と一つとなって、『罪の報いを受け』（ハイデルベルク教理問答、問い一六）ると同時に、『ご自分の神性の力によって、神の怒りの荷をご自分の人間性において耐える』（問い一七）ことがおできになった」。受肉、「神が人間となる」、「僕の姿」、「自分を空しくすること、受難、卑下」は、「神性の放棄」や「神性の減少」を意味していない、「神的姿の隠蔽」、「覆い隠し」を意味している。したがって、イエス・キリストは、「ご自分の神的な尊厳さを減じることなしに」、「ご自分の愛の神的尊厳さを実証しつつ、あの『罪の肉の様』に等しくなられ、そのようにして、同じ神的尊厳さの中で、滅びることなしに神的な怒りの裁きに耐え、まさに彼の自己卑下の中でこそ最高に神的尊厳さを保ち、またそのようなものとしてご自分を啓示することがおできになったのである。すなわち、ご自分が服された裁きの勝利者として、彼に従うすべての人間の初穂として、死人の中から甦ることがおできになったのである。また、彼は、ご自身神であられたが故に、神の苛酷さに屈伏してしまわなければならないことはなかったのである」。「神の怒りは、人間のすべての不敬虔と不義に対して啓示されなければならなかった。しかし、神だけが、そのことが万物の終わりを意味しないような仕方で、ご自分の義のこの必然的な啓示を遂行することがおできになったのである。ただ神ご自身だけが、神の怒りに耐えることがおできになったのである」。「ただ神のあわれみだけが、神に対する対立の中で存在する被造物が落ち込んだ苦しみを耐えることができた。ただ神のあわれみだけが、この苦しみをまことに心に受けとめ、自分自身の苦しみとすることができた。そして、ただ神のあわれみだけが、この苦しみの中で滅び失せてしまわないほど十分に力強かったのである。そして、まさに……ただ神のあわれみによってだけ起こることができたことこそ、ゴルゴタの十字架の上で起こったのである」。この「ゴルゴタの十字架の上で……起こった」ことは、「神ご自身がご自分の怒りに服することによって、他方で、神がご自分の怒りによって焼き滅ぼされてしまわないことによって」、「神がご自分の義を微塵もまげることなしに、しかもご自分の怒りに対して自ら立ち勝るものであることを証明された」ところの「二重の意味での全能の証明」である。「この神の全能のおかげで、神のあわれみ」は、「同時に最も誠実で最も深い同情であり、同時に神のあの不変で不動の力強さであることができたのであり」、「神はご自分を完全に捧げ尽くしながら、それでいてまさにこの捧げ尽くすことの中でこそ、完全にご自分を保持し守ることがおできになったのであり、神はわれわれすべての者の僕として、われわれが当然受けるべきであった死の裁きを身に受けた者としてご自分を啓示すると同時に、われわれすべての者の主として、死から力を奪い、死に対して永久に勝利を収め、死を取り除いた者として、ご自分を啓示することがおできになったのである」。「この二重の意味での神の義は、イエス・キリストの死の中で勝利を収めたのである」。神の本質の区別を包括した単一性において、イエス・キリストの死と復活の出来事における十字架の死は、『福音と律法』によれば、神の側の真実として、われわれ人間からは「何ら応答を期待せず・また実際に応答を見出さず」とも、「神であることを廃めず」に、「何ら価値や力や資格もない罪によって暗くなり・破れた姿」の「人間的存在を己の神的存在につけ加え、身内に取り入れ、それをご自分と分離出来ぬよう」に、「しかも（≪われわれ人間と≫）混淆（≪・混合・協働・共働≫）されぬように、統一し給うた」ということを内容としている。

（３）われわれ人間のために・われわれ人間に代わって、われわれ人間の「神の恩寵への嫌悪と回避」に対する神の答えである刑罰（永遠の死）を、イエス・キリストが「唯一回なし遂げ給うた」（「律法の成就」・完了）、換言すれば神の本質の区別を包括した単一性（イエス・キリストの死と復活の出来事における十字架の死）において、「神の永遠の御言葉が（肉となり給うことによって、肉において服従を確証し給うことによって、またこの服従において刑罰を受け、かくて死に給うことによって）引き受けた」、換言すれば「明らかに主格的属格として理解されるべき」、それ故に明らかに神の側の真実としてある「イエス・キリストが信ずる信仰」として理解されるべき、それ故に「イエス・キリストが信ずる信仰」による「神の義、神の子の義、神自身の義」そのものとして理解されるべき、「ローマ３・２２、ガラテヤ２・１６等の（≪ギリシャ語原典の≫）『イエス・キリスト＜の＞信仰』」――このようなわれわれのための神としての、全き自由の神の存在としての神の愛の行為の出来事としての、「ゴルゴタの十字架」・「十字架の死」・「聖金曜日において、われわれのために味方となって割って入られたのが（≪単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方として≫）神のみ子であり、神ご自身であられたが故に」、「そこで為された神に対する人間の不従順から生じる苦しみと死の帰結に対する解決は、……まさに唯一の合法的な解決であることができたのであり」、「その解決の事実」は、「神の忠実さと人間の不忠実さとの間の抗争の中で、ご自分に対する神の忠実さが防ぎ守られ、それ故に神の名誉が傷つけられなかった」という仕方で、「神の義が遂行されることであることができたのである」。「神が、実際にご自分の名誉を捨ててしまわれるとしたら、どうして人間はそのような神によって本当に助けられることができるであろうか」。神の本質の区別を包括した単一性において、イエス・キリストの死と復活の出来事における「イエス・キリストの死の中で、神は、ご自分に対しても、同時にまた人間に対しても忠実であり給うた」のである。「ディレンマ」――「一方において、（≪神の忠実さと人間の不忠実さとの間の≫）神との抗争の中で、人間の身に及ぶべきことが、人間の身に及ばないという場合」、「神の名誉は傷つけられ傷つけられたままである」、「神はもはや神ではないのである」、「人間にとって……神がご自分に対して不忠実になるような忠実さである」、その場合「神の忠実さは……何の助けになることもできない」、「他方において、（≪神の忠実さと人間の不忠実さとの間の神との抗争の中で、≫）「人間にとってふさわしいことが、人間の身に及ぶ場合」、「神の名誉は確かに防ぎ守られる」、「神は確かに神であり続ける」、「まさに抗争の相手が神であられるが故にこそ、深淵が口を開け、人間はただ底知れない深みに堕落し、滅びること（≪永遠の死≫）ができるだけである」、その場合「人間に対する神の忠実さ」は、「神のあわれみ」は、「どこに残っているであろうか」という「ディレンマ」、この「ディレンマの解決こそが、ゴルゴタにおいて（≪単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方であるまことの神にしてまことの人間イエス・キリスト≫）神のみ子（≪単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である父が、子として、自分を自分から区別した神の子、まことの神にしてまことの人間イエス・キリスト≫）が、それ故に神ご自身が、われわれの代わりに介入して下さることによって実現されたのである」。何故ならば、キリストにあっての「神が神であられ、そのような方として神であり続け給うことによって、あの抗争（≪神の忠実さと人間の不忠実さとの間の神との抗争≫）の中で、ただご自分にふさわしいことをすることがおできになるが故に、あの抗争においては、事実為された違反として必然的にふさわしい神の断罪と処罰なしには、事実、事は成りゆかない」からである、「人間が神に対して犯してきたし、繰り返し犯している果てしのない不従順の果てしのない帰結（≪永遠の死≫）は、人間によって担われなければならない」からである。「神は憐れみ深いお方でもあるのではないのですか。（≪神の本質の区別を包括した単一性において、≫）神は確かに憐れみ深い方でありますが、また正しいお方（≪義なる方≫）であります。それゆえに、神の義は、神の何ものよりも高き尊厳に対してもまた、最高、永遠な罰をもって、身と魂を罰することを、要求するのであります」（ハイデルベルク信仰問答書、問一一）。われわれ人間、それ故に「神の被造物、徹頭徹尾神によって存在し、神のみ手のうちにありながら、罪を犯してきたし今も罪を犯している神の被造物」、神の忠実さと人間の不忠実さとの間の神との「抗争の中での神の対向者であるということ」を、神とその被造物としての人間との関係において「人間は、＜神＞に対して、ただ神に対してだけ罪を犯してきたし、今も犯している」ということを、それ故に「この抗争の中で傷つけられた方（≪神≫）と彼を傷つける者（≪聖書的啓示証言によれば、「正しい者はいない、一人もいない」と規定された被造物としての人間≫）との間には、両者を超えた上位の主、裁き主はいない」ということを、「傷つけられたご自身」、「主」、「裁き主」は、「ただ単に判決が下され処罰される際の正しい規準であり給うだけでなく、また（≪全き自由さと完全さにおいて≫）正しく判決を下し処罰する裁き主でもあり給う」ということを、単一性・神性・永遠性を本質とする「その方が（≪そのような≫）標準であり給うが故に、その判決は、永劫の罰を下す判決でなければならず、その処罰は、永遠の死でなければならない」ということを、「人は……よく考えてみよ」。神の本質の区別を包括した単一性において、キリストにあっての「神が、ご自分のあわれみの中で義なる方であるべく自由であり給うことによって、換言すればご自分に対して忠実であられ、まさにそのことの中でこそ、またわれわれに対しても忠実であり続けるべく自由であり給うことによって、神は義なる神であり給う。そしてまさにこれこそが、ゴルゴタにおいて遂行された判決と裁きの中に示されている神の義であったのである」。したがって、『福音と律法』によれば、イエス・キリストの死と復活の出来事における十字架の死について、次のように述べられている――「神は、神なき者（≪われわれ人間≫）がその状態から立ち返って生きるために、ただそのためにのみ彼（≪われわれ人間の≫）の死を欲し給うのである……しかし誰がこのような答えを聞くであろうか。……承認するであろうか。……誰がこのような答えに屈服するであろうか。われわれのうち誰一人として、そのようなことはしない！　神の恩寵は、ここですでに、恩寵に対するわれわれの憎悪に出会う。しかるに、この救いの答えをわれわれに代わって答え・人間の自主性と無神性を放棄し・人間は喪われたものであると告白し・己に逆らって神を正しとし、かくして神の恩寵を受け入れるということを、神の永遠の御言葉が（肉となり給うことによって、肉において服従を確証し給うことによって、またこの服従において刑罰を受け、かくて死に給うことによって）引き受けたということ――これが恩寵本来の業である。これこそ、イエス・キリストがその地上における全生涯にわたって、ことにその最後に当たって、我々のためになし給うたことである。彼は全く端的に、信じ給うたのである（ローマ三・二二、ガラテヤ二・一六等の「イエス・キリスト＜ノ＞信仰」（≪ギリシャ語原典ピスティス イエスー クリストゥーの属格≫）は、明らかに主格的属格として理解されるべきものである）」、明らかに「神の義、神の子の義、神自身の義」そのものである「イエス・キリストが信ずる信仰」として理解されるべきものである。「まさに（≪神の本質の区別を包括した単一性における≫）このあわれみの中に覆い隠されている神の義こそが、われわれの代わりに味方となって割って入り給う神のみ子の代理行為の意味であり」、「それに基づいて、われわれは、われわれに下される判決と処罰を、神のみ子がわれわれに代わって負ってくださるが故に、負わなくて済む保証行為の意味である」。この事柄において、次のことを「よく理解せよ」――神の本質の区別を包括した単一性において、「神がご自分の義をあわれみの中に覆い隠さなければならない」という義務を、それ故に「ご自分の義を実現するために、ご自分のみ子をわれわれのために犠牲に供さなければならないという義務」を、「神が負う」ために、「そのようなことが起こらなければ『ならなかった』わけではない」。何故ならば、「神は、（≪ご自身の中での神として≫）ご自分の忠実さに対して、またわれわれに対しても忠実であるという定めを与えることなしにも、ご自分で忠実であることができた」からである、また「ご自分の義を全く別の仕方で、すなわちわれわれを滅ぼし尽くすという形で実現させるということが、神のみ心に適うということもあり得た」からである。したがって、われわれは、「神のみ心の満足が事実、（≪神の本質の区別を包括した単一性において≫）あわれみ深い義によるみ心の満足であったということに基づく以外には、（≪キリストにあっての≫）神に対して何の権利主張も持たなかったし、今も持っていない」のである。「神のみ心の満足は、事実そういうものであったのである」。何故ならば、「神がイエス・キリストにあって事実なさったこと、神がどのようにイエス・キリストの中で事実ご自分のみ心の満足を啓示なさったかに、われわれが（≪あの「啓示と信仰の出来事」の基づいて与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰に依拠して、それ故に単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、まことの神にしてまことの人間イエス・キリストの神性を信じて≫）目を向けるからである」。この「イエス・キリストに目を向けるならば、われわれは、確かに実際に起こったことは起こらなければならなかったと言わなければならない」のである。この時、「われわれは、ただ神のみ心に適う仕方で為された（≪全き自由のキリストにあっての神の≫）決断とその決断の必然性を承認しほめたたえることができるだけであって、この決断から離れたところで（≪恣意的独善的に≫）認識可能な何かある原理の必然性を承認しほめたたえるわけでなないのである」。したがって、われわれは、「その時には、まさに（≪神の本質の区別を包括した単一性を念頭に置いて、≫）神の愛、恵み、あわれみをこそほめたたえるのである」が、「しかし、まさに（≪神の本質の区別を包括した単一性を念頭に置いて、≫）神のあわれみがわれわれによってほめたたえられるためには」、われわれは、キリストにあっての神が、「ご自分のあわれみの中で、義を貫かせ給うたということ……を見損なってはならない」のである、看過してはならないのである、それ故にわれわれは、イエス・キリストの死と復活の出来事における十字架の死を念頭に置くことによって、神の本質の区別を包括した単一性における神の義とあわれみを「見損なってはならない」のである、看過してはならないのである、それ故にわれわれは、ご自身の中での神として「ご自分の自由なみ心からわわれわれに対してあれほど忠実であり給う方の中で事実（それ故に神の忠実さはあれほど助けに満ちたものなのであるが）、ご自分に対して全く忠実であり、忠実であり続け給う方と関わらなければならないということを見損なってはならない」のである、看過してはならないのである。何故ならば、キリストにあっての神は、「ご自分のみ子をわれわれのために犠牲に供し給うたことによって、ご自分に対して忠実であり、忠実であり続け給うた」からである。しかし、キリストにあっての神は、「まさにそのことでもって、ご自分と人間の間の抗争（≪神の忠実さと人間の不忠実さとの間の神との抗争≫）を、覆い隠し給わない」のである、「ましてや見過ごしにされたり、無視し給わない」のである。したがって、キリストにあっての神が、「この抗争を、ご自分の心の中で耐え抜き給うたということ」が、神のあわれみと義という神の本質の区別を包括した単一性における「神のあわれみである。それ故に、神がそこで耐え忍ばれたのは、まさに神とわれわれとの間の（≪神の忠実さと人間の不忠実さとの間の神との≫）抗争以外の何ものでもなかった」のである（この「抗争」は、『福音と律法』においては、神だけでなく人間の自主性・自己主張・自己義認の要求もというそれである、換言すれば不信仰・無神性・真実の罪のそれである。したがって、例えば自死や殺害も伴うことがある老人問題は、経済的問題という意味からは社会的問題であり、政治的問題という意味からは法的政策的問題であり、対幻想の共同性である家族という問題からは親孝行という観念が衰退しているあるいは現在的には家族ごっこはしていても逆の言い方の子孝行という観念も衰退している現代家族の内在的な問題でもあり、百人百様の老人個々人の内面の問題としては、子どもと一緒に暮らしたい、夫婦で暮らしたい、畳の上で死にたいという個々人の死の迎え方の問題でもある（『伝統と現代　33号』「吉本隆明・鮎川信夫対談　家族とは何か」）ように、人間存在の三様式（人間存在の総体的構造）としての、＜社会的な個人＞・自己として振る舞う世界における、また＜対・性としての個人＞・自己およびその共同性である＜家族の一員としての個人＞・自己として振舞う世界における、また＜個体的な個人＞・自己として振る舞う世界における人間自身が対象化した道徳、倫理、規律、風俗、習慣、規則、法律に対する遵守性・忠実性のそれではない）。単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方であるまことの神にしてまことの人間「イエス・キリストの中で、真中に割って入られた方が永遠の神であられたが故に」、「その方」は、「われわれに対する神の代理者および保証人以上の者であることができたのであり」、「同時に、神に対するわれわれの代理者および保証人であることができたのであり」、「神的な裁き主の全権を委ねられた代表者であると同様に、また裁かれた者の代表者、すなわち罪に堕ちたアダム、罪深い人類全体、存在と罪を犯す行為すべての中での罪人のひとりの代表者であることがおできになったのである」。『ローマ書』によれば、単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方であるまことの神にしてまことの人間「イエス・キリストにおける神への愛」は、「神ご自身の人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一である」。このイエス・キリストは「神のみ子（≪単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である父が、子として自分を自分から区別した神の子≫）であられたが故に」、彼は「あのように人間存在をとることができ、その人間存在の中で、われわれのもとで神を代理されると同時に、神のもとでわれわれすべてのものを代理されたのである」。すなわち、まことの神にしてまことの人間イエス・キリスト――「＜この＞人間が、すべての人間一人一人を代理し給うたのである」。「この贈り物は、われわれがこれを受け取ることを待っているのである」、承認し受け入れることを（『バルトの平和に関する書簡』）。したがって、第三の形態に属する全く人間的な教会は、このキリストの福音をすべての人々が現実的に所有することができるために、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性である「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には第二の形態の聖書的啓示証言のそれ）を、その宣教、その思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者として、絶えず繰り返しそれに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、＜純粋＞なキリストの福音、＜純粋＞なキリストにあっての神を尋ね求める「神への愛」と、そのような「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」（キリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、神の命令・要求・要請、すなわちすべての人々が現実的にキリストの福音を所有することができるために為すキリストの福音の告白・証し・宣べ伝え）を志向し目指していかなければならないのである、「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を志向し目指していかなければならないのである、このことが「もろもろの誡命中の誡命、われわれの浄化・聖化・更新の原理、 教会が教会自身と世に対して語らねばならぬ一切事中の唯一のこと」である（『福音と律法』）。「われわれすべての者のところで神を代理し、神のところでわれわれすべての者を代理される、この全権委任を与えられた代理行為の中で、イエス・キリストは、真中に割って入られ、あの抗争（≪神の忠実さと人間の不忠実さとの間の神との抗争≫）を、（≪神の本質の区別を包括した単一性における≫）神の義の中で、しかし神の＜あわれみ深い＞義の中で、最後の最後まで耐え抜かれたのである」。「この全権委任を与えられた代理行為の中で、イエス・キリストがまことにわれわれの困窮を、神ご自身の心を苦しめる困窮として耐え忍ばれることによって」、イエス・キリストはその死と復活の出来事における十字架の死において、「神的な怒りと裁きの対象となられ、われわれの罪と罰の担い手となられたのである」。ここでは、神のあわれみと義という神の本質の区別を包括した単一性からして、「抽象的な同情と大目に見ることに変化する神の抽象的な義が支配するのではない」、それ故にここでは、神のあわれみと義という神の本質の区別を包括した単一性からして、「現実の、恐るべき神の怒りが、神の自由なみ心の満足に従って」神の「義が厳格に遂行されることの中でこそ」、「神の永遠の変わることのない善き意志の自己表示である」ところの「初めからしてあわれみ深い義が遂行される中で」、「恐るべき神の怒りが支配するのである」、それ故にここでは、「被造物（≪被造物の側≫）からして神が動かされることに基づいて、それから神が、すべての人間に対し大赦を施す決心をする」というような「被造物（≪被造物の側≫）からして神が動かされるということが起こっているのではない」。「そうではなくて、（≪神の側の真実として、≫）神ご自身の心が、ご自分の自由なみ心の満足に基づいて、被造物のただ中を動いてくださるのであり」、「被造物が負わなければならないもの（≪「永劫の罰」の「判決」、「永遠の死」の「処罰」≫）であるが滅ぼされることなしに負うことができないことを、神ご自身の心」が、イエス・キリストにおける死と復活の出来事における十字架の死という「あの全権委任を受けた代理行為の中で負ってくだされるのであり」、「被造物の全能の主、創造主」にとっては（≪われわれのための神として≫）「ご自分のみ心に適うことであるが故に」、「ちょうどご自分を通して被造物を造られたように」、「ご自分の被造物を……ご自分を通して守り給う（ご自分の怒りからも守り給う）ことが……被造物の全能の主、創造主の心であるということによって負って下さるのである」。このような訳で、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて、「被造物が、この苦しみの代理行為を受け入れ、この代理行為に基づいて、自分自身の生を、被造物の主であり創造主である方の愛と恵みとあわれみの賜物として受け入れる時」、「被造物」は、「神の前から身を隠す」ことはできないのである。すなわち、その時には、「被造物は、自分の隠れ家から引き出され、徹頭徹尾」「その方の前では被造物は失われた者であり、……その方ご自身だけが、死からの救済者であり、被造物の生命であり給う神のみ顔の前に、置かれる」のである。このことは、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて、「まさに被造物が、今や完全に、ただひとり被造物の事柄をご自分の前で導かれ、永遠にわたって導こうと欲せられる神に頼らしめられ、神に結びつけられているということを意味している」のである。このことを、バルトは、『教会教義学　神の言葉�T／１・２』と『福音と律法』においては、次のことを念頭に置いて述べているのである――「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」（「三位相互内在性」）における、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である父は、子として「自分を自分から区別」するし自己啓示する神として自分自身が根源であり、その区別されたその第二の存在の仕方である子は父が根源であり、愛に基づく父と子の交わりであるその第三の存在の仕方である聖霊は父と子が根源である。このような訳で、このイエス・キリストにおいて自己啓示された神は、子の中で「創造主として、われわれの父」として自己啓示するのであるが、父だけが創造主なのではなく、子と霊も創造主であり、同様に父も創造主であるばかりでなく、子に関わる和解主であり、聖霊に関わる救済主でもあるのである。このようにイエス・キリストが父として啓示する神は、「われわれの生を、死を通して永遠の生命に導くために死を欲し給う」神なのである。したがって、われわれ人間を永遠の生命に導くために、「ゴルゴタにおいて、イエス・キリストにあって、イエス・キリストと共に、われわれすべてのものの生命が十字架につけられた」のである。したがってまた、われわれは、「人間の人間的存在がわれわれの人間的存在である限りは、われわれは一切の人間的存在の終極として、老衰・病院・戦場・墓場・腐敗ないし塵灰以外には、何も眼前に見ないのであるが、しかしそれと同時に、人間的存在がイエス・キリストの人間的存在である限りは、われわれがそれと同様に確実に、否、それよりもはるかに確実に、甦りと永遠の生命以外の何ものも眼前にみないということ――これが神の恩寵である」と告白し証しし宣べ伝えなければならないのである。