本当のカール・バルトへ、そして本当のイエス・キリストの教会と教会教義学へ向かって

カール・バルト『教会教義学　神論�T／２　六章　�~の現実（上）』吉永正義訳、新教出版社に基づく

『教会教義学　神論�T／２　六章　�~の現実（上）』「二十九節　神の完全性」（その３−２）−２（１４６−１６５頁）

「二十九節　神の完全性」（その３−２）−２
（２）「神の完全性の多様性、個別性、相違性(≪「失われない差異性」≫)は、神の唯一の、したがって自分自身の中で分けられていない、一つのまとまった本質(≪「失われない単一性」≫)のそれである」。したがって、「多数性、個別性、相違性は、神の中では単一性と矛盾しない」。キリストにあっての三位一体の神は、その「失われない単一性」とその「失われない差異性」との総体性・全体性において存在し給う。すなわち、イエス・キリストにおいて自己啓示された三位一体の神は「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とするが故に、その「多数性、個別性、相違性」は、単一性・神性・永遠性を本質とする「神の(≪「失われない差異性」――≫)多数性、個別性、相違性として、いかなる解消も、……いかなる分離も、いかなる非同一化も」為すことはできないのであって、しかし「それでいて(≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする≫)神のそれ(≪「失われない差異性」≫)として、純粋の多数性、個別性、相違性であることができる」。このように、それは、徹頭徹尾、決して二元性でも多元性でも多重性でもないのである。したがって、キリストにあっての「神について語られるべき個々の個別的なことは(≪「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方、すなわち三度別様な父、子、聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在における個々の個別的なことは≫)、……一つのこと(≪三位一体の神の本質、すなわち「失われない単一性」・神性・永遠性≫)を語ること」なのである、換言すれば「神について語られるべき一つのこと(≪三位一体の神の本質、すなわち「失われない単一性」・神性・永遠性≫)は、……必然的にそれとして(≪「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方、すなわち三度別様な父、子、聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在における≫)個々の個別的なことを、またすべての個別的なこと全体を」語ることなのである。このような訳で、「父なる名の＜内＞三位一体的特殊」・「三位相互＜内在性＞」としての、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の完全さ・自由さは、「失われない差異性」の中でのその本質の性質としての父・子・聖霊という三つの存在の仕方の完全さ・自由さなのである。このような訳で、「人は、あたかも……ただ非本来的ニ、神ノ属性について語られるだけであるかのような、あたかも非弁証法的に(≪その一方だけを抽象して一面的固定的に、形而上学的に、その一方を拡大鏡にかけて全体化して≫)理解されるべき単純性が神の最も本来的な、最も内的な本質であるかのような、半唯名論的な留保を……消し去ってしまわなければならない……」のである。したがって、「もしも人が、そのことをしないならば」、「もしも人が、(≪二元論的あるいは多元論的に、≫)神の本質は単一性(≪三位一体の「神ノ本質」としての「失われない単一性」・神性・永遠性≫)と多元性(≪三位一体の「神ノ本質的ナ性質」としての「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方、その神の愛の行為の出来事としての神の存在≫)の上に立って」いると主張するならば、すなわちその一面だけを拡大鏡にかけて全体化するならば、「あらゆる面で空虚な(≪人間自身が対象化し客体化したに過ぎない≫)……神についての見方から免れることはでき」ないし、また「一人の実在の神の完全性としての神のさまざまな完全性について」も語ることはできないのである。したがってまた、「もしも神が、ご自身の中で富んだ神であり、またその外に向かっての働きの中ででも一人の実在の神でい給う」のであれば、「人は、その単一性にもその多元性にも、あたかも人が抽象的ニ見ラレタ一方のものの中で(≪部分に過ぎないその一方を抽象した、部分に過ぎないその一方を拡大鏡にかけて全体化した、部分的一面的固定的な形而上学的見方の中で≫)、あるいは抽象的ニ見ラレタ他方のものの中で(≪部分に過ぎないその他方を抽象した、部分に過ぎないその他方を拡大鏡にかけて全体化した、部分的一面的固定的な形而上学的見方の中で≫)、神の本質とかかわらなければならないかのように」、「そのうちの一方が他方を排除してしまって」はならないのである。

(３) 「神の完全性の多数性、個別性、相違性(≪三位一体の「神ノ本質的ナ性質」としての「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方、父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在≫)は、神ご自身の本質(≪三位一体の「神ノ本質」としての「失われない単一性」・神性・永遠性≫)の中に基礎づけられているのであって、決してほかの本質にあずかる参与の中に基礎づけられているのではない」。したがって、聖書的啓示証言におけるキリストにあっての神は、人間自身が対象化し客体化したに過ぎない「何らかの理念――その中に神が基礎づけられており、それに照らして神が測られる何らかの理念――の下に立ち給わない」のである。総括的に言えば、聖書的啓示証言におけるキリストにあっての神は、自然神学の下に、自然的な信仰・神学・教会の宣教「の下に立ち給わない」のである。「そうではなくて、神が現にあり、神の中にあるすべてのもの(≪聖、全能、永遠、力、善、あわれみ、義、遍在、知恵等≫)」は、「神とは違うすべてのもの、またそのほかの主辞の賓辞であり得るすべてのものの起源として」、「まず第一に、本来的に、……自由の中で愛する者(≪三位一体の「神ノ本質的ナ性質」としての「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方、父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在≫)としての神ご自身、ご自身の本質(≪三位一体の「神ノ本質」としての「失われない単一性」・神性・永遠性≫)の中での神ご自身である」。このような訳で、自存性としてのその完全さ・自由さにおいてキリストにあっての「神は、現にあるところのものを、外から、他者から、借りてくることを為し給わない」のである。したがって、「現にあるところのものは、ただ……神によって貸し与えられた真理および実在に基づいてだけ存在できるということが、神の外にあるすべてのそのほかのものの問題である」。すなわち、常に先行するキリストにあっての「神は、すべての存在の存在であり、すべての法則の法則……であり給う」。したがって、「昔の教義学」は、そのことを、「神の性質は、偶然的ナ形態アルイハ偶然的ナ出来事」ではないが故に、神は、「あたかも……存在あるいはわれわれの思惟の概念の下に陥ってしまわれるかのように理解されてはならないという主張でもって論理的に表現した」のである。自存性としての「神ノ中ニハゴ自身ヲ通シテ存在シ続ケルノデナイヨウナモノハ何モナイ」。したがって、その「神ノ中ニハ」、「一般的な可能性としての量、質、運動、受けること、場所、時間等を前提しているようなものは何もない」のであって、それ故に「すべてのそのような前提なしに神はご自身の中で(潜在可能性なしに純粋な行為として)すべてそのような前提の前提であり」、それ故にまた「ご自身の中でその本質において、無限で、善で、賢明で、あわれみ深くあり給う」のである。したがって、「本来的ニ語ルナラバ、結局ただ一人の神の性質があるだけである。すなわち、神の本質(≪「失われない単一性」≫)があるだけである」・「シカシ(≪認識主体である≫)ワレワレノコトヲ顧慮シナガラ、アタカモ多クノ性質ガアルカノヨウニ語ラレルノデアル(≪換言すれば、「失われない差異性」、多数性、個別性、相違性は、われわれ認識主体の側に属する問題であって、神の本質の性質、存在の仕方、父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在、生そのものではない≫)。ソレハ、(≪認識主体である≫)ワレワレノ中ニ多クノ性質がアルカラデアル。シカシ神ノ中デハソレラハ一ツノモノ(≪「失われない単一性」≫)ソノモノデアル」――このような「半唯名論」な「考察の……虚構」(一方で、非本来的に認識主体の「ワレワレノコトヲ顧慮シナガラ、ワレワレノ把握の仕方ニ合ワアセテ」と主張しながら、他方で、そうではない仕方で「神について本来的な仕方デ語ることができると信じ」主張する虚構)は、「いわば存在の(その中で人は神を認識すると考えた)プラトン的・アリストテレス的な概念に眩惑されて」、「多者の概念」に比して「一者の概念に……より高い威厳を帰すべきであると信じた」ために、「一者の概念を適用しながら、……(≪本来的な「失われない差異性」を後継へと退ける仕方で、「失われない単一性」を本質とする≫)神について本来的ナ仕方デ語ることができると信じた」という点にある。われわれは、キリストにあっての神の「隠れ(≪聖性・秘義性・隠蔽性――このことから規定される神の不把握性≫)を念頭に置いて、全線にわたって、われわれの概念」の中には「一者(≪「失われない単一性」≫)の概念も含めれている」のであるが、「それ自身」においては「神を把握するのに不適当で、不十分である」ということに対する認識と自覚を持っているのである。しかし、「半唯名論」はそのことに「気づいていない」のである、そのことに対する認識と自覚を欠いているのである。「半唯名論」は、一方で、キリストにあっての神の本質(≪「失われない単一性」≫)は、本来的には「単一性という理念の上」に、すなわち「単一性という理念」の＜彼岸・外＞に立っているにも拘わらず、「哲学的な偏見に基づいて」「非本来的ニ理解」し「語」ることによって、それ故に「単一性という理念の下」で「名目上は本来的ニ表示された……かのように、曲解しつつ定義した」のである。「半唯名論」は、他方で、「ただ非本来的ニだけ帰そうと欲した」「神的な性質(≪本来的な本質の性質、「失われない差異性」≫)の満ち溢れそのものを、人間的な知性の論証能力に、換言すれば造られた世界の多様性に依存させた」のである。総括的に言えば、「半唯名論」は、自然神学に、自然的な信仰・神学・教会の宣教に依拠したのである。

　このような訳で、ここで、われわれは、「どの程度まで」、「どのようにして」、神の本質の性質の「多数性、個別性、相違性」（「失われない差異性」）の「完全性そのものを認識し」、「独自ナ仕方で」、すなわちイエス・キリストにおいて自己啓示された三位一体の「神の啓示に基づき、この啓示に対して応答の責任をとりながら、それらの真理について留保なしに、それらの完全性そのものについて語ることができるようになるのか」という「基本的な問い」に向かわなければならない。言い換えれば、「唯名論あるいは半唯名論」的な「誘惑」に与した「神学的な伝統」中で努力されたのであるが、それ故に概念的な意味で「不適切」であった「神の性質の導き出しと区分の問題」に向かわねければならない。われわれは、「一体、神の本質とその完全性が問題であるところで、何を『導き出し』、何を『区分する』ことができる」のか？　このことは、「神の完全性についての言明は、すべてただ神の本質についての言明の繰り返しであることができるだけであるということ」から「問」うことができるし、「問われなければならない」。キリストにあっての「神は、すべての多(≪「失われない差異性」、多数性、個別性、相違性≫)の中で一者(≪「失われない単一性」・神性・永遠性≫)であり給い、すべての多は神の中では神ご自身、一者であり給う」。このことは、「われわれが……念頭に置かなければならない事柄の一つ側面である」。何故ならば、聖書的啓示証言でキリストにあっての「神は、全能、永遠、義、知恵に満ち、あわれみ深く、単に見えるというだけでなく、現にあり給う(≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の存在の仕方、父・子・聖霊なる神として、その神の愛の行為の出来事としての神の存在として、現にあり給う≫)、ただ単にわれわれにとってそのようであるだけでなく、(≪「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」、「三位相互＜内在性＞」として≫)ご自身の中でそのようであり給う」という事柄も念頭に置かなければならないからである。しかし、「これらすべての言葉」は、「あくまでもわれわれの言葉(≪人間の言語を介した直観と概念を用いての人間が人間的に所有する人間の言葉、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫)であり、そのようなものとして……神ご自身の言葉でない限り」、また「神は、われわれに対してそれらすべての中で隠れてい給うことによって(≪聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神に対して、われわれ人間は神の不把握性の下に立たされていることによって≫)」、「われわれが、絶えず繰り返し、神ご自身を」、すなわちそれ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉――「まさに顕ワサレタ神こそが隠された神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリスト（具体的には、第二の形態の聖書的啓示証言のそれ）を、その起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動・自己展開・時間累積、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて、われわれ「人間的言葉の注解者（≪原理・規準・法廷・審判者・支配者≫）たらしめる限り」、われわれは、「真理の中を運動しており、決して虚偽の中を運動しているわけではないという信頼の中で、神の名を呼ぶよう神の啓示によって召し出され、力を与えられている……」と言うことができる。「事情がそうであるとするならば」、われわれは、「神は誰であり、どのようであり給うのかということを語る課題から」、換言すればわれわれは、起源的な第一の形態の神の言葉(具体的には、聖書的啓示証言のそれ)を、われわれの宣教、その思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者として、絶えず繰り返しそれに聞き教えられるということを通して教えるという仕方で、＜純粋＞なキリストにあっての神を、＜純粋＞なキリストの福音を尋ね求める「神への愛」と、そのような「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」(＜純粋＞なキリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、神の命令・要請・要求)――すなわち＜純粋＞なキリストの福音の告白・証し・宣べ伝えを志向し目指していくことから、イエス・キリストをのみ主・頭とする「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を志向し目指していくことから、「身を引こうとは欲しないのである」。「もしも神認識が、まことの認識(≪あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫)であり、単なる漠然とした予感あるいは感情でないとしたら」、また「もしもそれが、言葉となって表現できないあるいは言葉となって表現するための努力を避けようとしている認識でないとした」、またもしもそれが、起源的な第一の形態の神の言葉(具体的には、聖書的啓示証言のそれ)を原理・規準・法廷・審判者・支配者としたものではなくて、「敬虔な沈黙や熱に浮かされたうわ言」であるとしたならば、また「われわれの神認識の謙遜さ」が、「自分の一タラントを取って地に埋めておいたあの僕の怠惰(マタイ二五・一八)」さにはなく、イエス・キリストにおける神の自己「啓示を通してそうするように(≪起源的な第一の形態の神の言葉を原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、＜純粋＞なキリストにあっての神を尋ね求める「神への愛」を志向し目指すように≫)と召され、力を与えられて、ふさわしい誉を……帰することから成り立っているとすれば」、「その時には、神が何であって何でないのか、神が現にあるところのものであり給う性質と在り方は何であるのか」、それ故に神の存在の本質と、その本質の性質としての存在の仕方(性質、働き、業、行為、行動、父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在)について、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、「人間的な言葉と概念を用いて」、問うことが「許されるだけでなく、むしろ是非とも問わなければならない」のである。このことが、「神の性質の導き出しと区分を問う問いである」。そのことを「拒むところの者は、……神認識を断念してしまおうと思っているのではないかどうか、あるいはその際、自分の恣意(≪あるいは独断、嗜好≫)や偶然に身を委ねたいと思っているのではないかどうか、よく注意せよ」、それ故に「勤勉さよりも怠惰を、正規の在り方よりも(≪軽薄で≫)いい加減な在り方を優先させようと欲する」者は、最後的にはわれわれ人間の側の恣意性・独断性・嗜好性を封じてしまうところの、またわれわれ人間の「無能力……という口実……を封じ」てしまうところの、神の側の真実としてある「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおける神の自己啓示、神の自己認識・自己理解・自己規定、客観的に存在している啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動・自己展開・時間累積、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識(啓示認識・啓示信仰)という「神の啓示の事実」に対して、「責任を取ろうとしているのか、よく注意せよ」。したがって、この課題を引き受けるわれわれは、何か「新しい、独創的な解決を見出してゆかなければならない必然性の前に立っている」のではなくて、「特別な機智に富んだ才能を必要としていない」ところの「われわれ自身その道の正しさについて確信することができる」ところの、「(≪啓示・和解そのもの、「イエス・キリストの名」、起源的な第一の形態の神の言葉、この≫)一つの事柄に仕えなければならないのであって、ひとつの党派(≪教派、学派、思想傾向、哲学原理、社会的政治的な言説や運動等≫)に仕えなければならないことはない……、一つの事柄に対して自分の立場を区別しなければならないのであって、別な一つの党派に対して自分の立場を区別しなければならないわけではない……」（『教会教義学　神の言葉�T／１・２』）というこの「一つの事柄」、この「一つの事柄」にのみ感謝をもって信頼し固執する立場において、「一連の誤謬」を否定的に媒介し、包括し止揚し克服して行こうとするのである、換言すれば第三の形態に属する全く人間的なイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの教会の「キリスト者」として、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には、聖書的啓示証言のそれ）に信頼し固執することによって、キリスト教に固有な類の時間累積(歴史性)に連帯して行こうとするのである。

　聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、「まされ顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおける神の自己「啓示の中でご自分を開き示し給う神ご自身の特別な本質であるところの」「神の完全性」を、すなわち「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の完全性はその本質の性質としての「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方、父・子・聖霊なる神の完全さであるという「神の完全性」を、「どれも一つ一つ」神の完全性であるところの「神の完全性」を、「一般的な本質のさまざまに異なった賓辞であるかのように定義し秩序づけようとする『属性論』の……すべての形」は、「近代の神学の中で初めて公に現れてきた」ところの「誤謬である」。「正しい道」は、それとは逆に、自存性としての「神の完全性をこの神の特別な本質そのもの(≪「失われない単一性」・神性・永遠性≫)の完全性として」、それ故に「神の生の、自由の中での神の愛の、完全性として」、「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方、全き自由の父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在、生の、「完全性として理解することから成り立っている」。「われわれはさし当たって、ここでこれまでの考察に基づいて距離を取らなければならないいろいろな試みの正体を明らかにする」、その「問題となってくる……三つの型」を明らかにする。
(一) 人は、「失われない差異性」の中で三つの存在の仕方において「三度別様」に父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在、その多様性、個別性、相違性としての「神の性質をいわば心理学的な図式の中に収めようと試みた」。この試みは、聖書でイエス・キリストにおいて自己啓示された神は、「失われない差異性」の中で三つの存在の仕方において「三度別様」に父、子、聖霊なる神であって、その存在の本質は「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「三位一体の神」であるということからして、前者に偏向した仕方でキリストにあっての「神を疑いもなく人格」、＜われ――存在＞として、それ故に「思惟する、あるいは知り、意志する主体として記述している」聖書に「その契機と相対的な正しさを持」たせている。したがって、「昔の教会の教義学」は、「神ノ知性および意志について語ることを……中止しなかったのであり」、また「われわれも、神を自由の中で愛する方(≪全き自由の父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在≫)として理解することによって、そのことを中止することはできない……」のである。「十九世紀および二十世紀の神学の中で人(≪例えば１９世紀の「ビーデルマン」、２０世紀の「ゼーベルク」≫)」は、「神の感情について語ることによって、さらにこの最も単純な心理学的図式を拡大すべきだと信じた」。「この試みに際して後退するように見える神の自由……絶対性……自存性という本質要素は、この試みの代表者たちによって、……心理学的な範疇を包括し特徴づける括弧として理解された」。「その際、ビーデルマンにおいては、本質要素」が、「心理学的な範疇」を「自分自身の中に吸い上げ、神概念の心理的形式を、……非人格的な絶対精神の(≪自己展開≫)過程の単なる……表象に合わせただけに過ぎない形式にしてしまうような仕方で意図され」た。「まさに、この論理的帰結の中で、……この試み全体の疑わしい点が暴露されている」。また、「唯名論的な留保の下」で、「神の心理学的な性質に対してその真理性を認めようとした正統主義は、それらの心理学的な性質と並んで……、神の別な性質(≪「神的な自由、絶対性、……自存性の性質」≫)」について、すなわち「それらは……一つの神的本質の性質であるが故に」、ビーデルマンらと同じように「心理学的な図式に還元され得ない神の別な性質(≪「神的な自由、絶対性、……自存性の性質」≫)について語った」。「心理学的図式は、神が自由の中で愛する方であり給うことが確かである限り、神の性質の導き出しおよび区分の原理として、その場所においてその正当性が認められ得るし、認められなければならない。しかし、属性論全体の上位に置かれた原理となるのには、この心理学的図式は適していない」のである。何故ならば、「神の自由は、ただ単に神の愛の形式ではない」からである、すなわち「それは、ちょうど神の愛がただ単に神の自由の形式ではないのと同様である」からである。したがって、そのような「心理学的な試みを生じさせることができるのは、ただ神の本質を決定的に人間の本質に対応させ、神の中に絶対化された人間を再発見しようとする(≪人間的理性や人間的欲求による≫)企ての悪しき恣意なのである」。何故ならば、近代的な人間は、人間の自由な内面、自己意識・理性・思惟の無限性を認識し自覚しているからである、「人間の内的生活は、自分の類・自分の本質に対する関係における生活である。人間は思惟する、すなわち人間は会話をする、人間は自分自身と話をする。動物は自分以外の他の個体がいなければ類の機能をひとつもはたすことはできない、しかし人間は他人がいなくとも考えるとか話すとかという類的機能……を果たすことができる」からである、人間は、身体と精神を介した、普遍的で実践的な全自然(自己身体、性としての他者身体、外界としての自然――天然自然・人間化された自然である非有機的身体)との相互規定的な対象的活動を行うことができるからである。したがって、その「悪しき恣意」は、「その空虚な形式主義の中で、その正体を暴露する」。何故ならば、例えば「一般的な意味での(≪それ故に「人間的な、……根本において中立的」な」≫)知、意志、感情という定義」によってはキリストにあっての神について語ることはできない」からである、またこのような試みの中には「神の性質においては、中立的な定義が問題ではあり得ず」、「神的な完全性が問題であり得るだけある」という前提がないからである、またこのような試みの中では「神の知恵はただ神の知の精密規定でしかなく、神の義、神聖性、あわれみははただ神の意志の精密規定でしかない」からである。

(二) 人は、「失われない差異性」の中で三つの存在の仕方において「三度別様」に父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在、その多様性、個別性、相違性としての「神的な性質の宗教発生的な導き出しと区分を提案した」。この典型は、「シュライエルマッヘルおよびその最も純粋な弟子であるアレキサンダー・シュヴァイツァー」に見ることができる。シュライエルマッヘルは、「神の性質を、敬虔な自己意識の個々の要素の対象化(≪対象化された人間の自己意識の類的本質≫)として理解しようと欲した……」。フォイエルバッハの『キリスト教の本質』は、次のように述べている――「もし君が無限者を思惟するならば、そのとき君は思惟能力の無限性を思惟し且つ確証しているのである。そして、もし君が無限者を情感するならば、そのとき君は感情能力の無限性を情感し且つ確証しているのである。理性の対象とは自己自身にとって対象的な理性であり、感情の対象とは自己自身にとって対象的な感情である」。したがって、シュライエルマッヘルは、「宗教意識あるいは感情の……時間的および事柄的な段階」において、神と人間との無限の質的差異を後継へと退けて、「罪と恵みの対立を度外視して」、人間自身の「敬虔な意識それ自身から」、「神の永遠性、遍在、全能、全知が生じてくる」、また人間自身の「敬虔な意識(罪の意識)から」、「神の神聖性と義が生じてくる」、また「対立が除去される中での(≪人間自身の≫)敬虔な意識(恵みの意識)から神の愛と知恵が生じてくる」と考えた。シュヴァイツァーは、「宗教意識あるいは感情の……時間的および事柄的な段階」において、人間の「敬虔な感情」は、「神を、自然界の中で全能、全知、永遠性、遍在として(≪自然界に対する全能、全知、永遠性、遍在という敬虔な感情において≫)」、「倫理的世界の中で善、神聖性、知恵、義として(≪倫理的世界に対する善、神聖性、知恵、義という敬虔な感情において≫)」、「最後に特にキリスト教的救いの生の中で、愛および恵みとして、全知なる父の知恵およびあわれみとして、見出す」と考えた。「人は、この試みに対してさし当たってまず」、「唯名論的な前提の限界の下で」であるが、「単なる形式的な神概念を超え出ようと試みている」ということを、また「それなりの仕方で神の現実存在の善と責任性を明らかにしようと試みているということを認めなければならない……」が、しかし、彼らは、キリストにあっての神の、自存性としてのその完全さ・自由さの中での、その存在の本質としての「失われない単一性」・神性・永遠性・全能・全知・善等は、その自由さ・完全さの中での、その存在の仕方としての「失われない差異性」、多数性・個別性・相違性へ「ばらばらに切り離されてしまうことはないという」認識と自覚を欠如させているのである。このような訳で、その「失われない差異性」、多数性・個別性・相違性は、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質としているのであって、それ故に決して「三神」、「三つの神性」、「三つの対象」、「三つの神的我」ではなく、「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方において三度別様に父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在ということ、そしてその存在は、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「一神」、「一人の同一なる神」、すなわち「三位一体の神であるということ――このような総体性・全体性において三位一体の神を認識し信仰することが肝要なことなのである。したがって、われわれは、キリストにあっての神を、この総体性・「全体性」において認識することによって、それ故に「その一つ一つの性質(≪「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方、全き自由の父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在≫)の中ですべてのそのほかの性質とその全体性(≪その存在の本質としての「失われない単一性」・神性・永遠性≫)を認識することによって」、「認識する」ことが肝要なことなのである。彼らの試みにおける「宗教的な主体に帰せられている欠かすことのできない本質的な役割は、特に明らかにこの試みにある自然神学の導入は、ここで神概念全体の……破滅的な解消と破壊の形で、力を奮っている……」のである。「この試みの中で、シュライエルマッヘルおよびシュヴァイツァーのところで、明るみに出た疑わしい点は、属性論を唯名論的に(≪総括的には、自然神学的に≫)取り扱う扱い方の疑わしい点全体である」。したがって、人が、そこで見出すものは、聖書的啓示証言におけるキリストにあっての神ではなく、「人間的な宗教的意識の巨大な反映あるいは投射」としての神だけである、それ故に「実際には、ただ自分自身の最も内的な自己へと通じる道でしかない……表向きだけ神へと通じる道の上にいる人間自身」である。言い換えれば、そこで見出すのは、人間自身が対象化した「存在者レベルでの神」だけである、そこでの神は「人間の想像能力・思惟能力・表象能力の本質が、現実化され対象化された……絶対的な本質(存在者)……と考えられ表象された以外の何物でもない」、そこでの「神の意識は人間の自己意識であり、神の認識は人間の自己認識」に過ぎない、それ故にそこでの「神の啓示の内容は、神としての神から発生したのではなくて、人間的理性や人間的欲求やによって規定された神から発生した」に過ぎない、それ故にまた「この対象に即しても『神学の秘密は人間学以外の何物でもない！』」のである。したがって、ここで、神は、「ヘーゲルの哲学的手法」と同じように、人間自身の「自己意識が捕らえた虜囚」でしかないのである。このような事情を、バルトは、『ヘーゲル』で、次のように述べている――「われわれは、シュライエルマッハー以外の他の人々の所でも、……ヘーゲルの強力な痕跡に遭遇するであろう」、「人間の自己運動(≪人間の自由な自己意識・理性・思惟の無限性、類的活動、人間の身体と精神を介した普遍的で実践的な全自然との相互規定的な対象的活動、類的な活動や生活≫)を神のそれと取り違えるという混淆」、存在的にも認識的に、内在的にも外在的にも、自存性としての「神の自由を認識していないという事態」に遭遇するであろう、と。

(三) 人(例えば、「ユリウス・カフタン」)は、「最も強く非難が向けられてしかるべきであろう」ところの、「神的な性質」の「歴史的――直観的」な「導き出しと区分」を試みた。この試みにおいては、「神的本質の自由として言い表してきたこと（『絶対的なこと』）は、結局ただ、昔の教会の敬虔性の隠遁的な形式と古代の哲学的な伝統を通してキリスト教の神学の中に入ってきたものであり、……それから」また「スコラ哲学に依存しているプロテスタントの正統主義によって、……(『奴隷的意志』の中で)ルターによって……保持されてきた」こととされた。したがって、このことに対して、「もう一度聖書の中で証しされており(≪しかし、実際的には自然神学的な、自然的な信仰・神学・教会の宣教において主張されており≫)、(≪そのような自然神学的な、自然的な信仰・神学・教会の宣教における≫)信仰の中で受け取られるべき……特に(≪聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の「失われない差異性」の中での第二の存在の仕方であるイエス・キリストではないところの、一面だけを拡大鏡にかけて全体化した≫)イエスの『個人的生活の最も内面』の中に根ざし」て「そこで現れ出る神の啓示に戻ることが大切である」とされた。「その際」、『絶対的なもの』は、ただすべての精神的な宗教における神認識の図式でしかないのであるが」、「啓示からして神は、超世界的な、人格的な精神であること、またこの精神の性質は、その愛、神聖性、全能であるということを受け取らなければならない」とされた、また「『超世界的』ということで、……神の存在と生は、世界(物質的世界)の存在と生と『もつれ合っていない』」とされた、また「神聖性は『愛』の賓辞として、……全能は『聖なる愛』の賓辞として理解されなければならない」とされた。ここでは、表面上は、「正統主義的伝統の新プラトン主義……それと共にまたその自由主義的――思弁的な後継者たちの恣意は、完全に振り落とされているように見える」し、「聖書の中に証しされている神の啓示が、今や発言してきているように見える」のであるが、しかし「結局」は、「今や『愛』として表示され、『聖なる愛』として抜きん出」、「最後に(≪「ヘーゲル学派の言う『精神』とは、その際立った道徳的な性格を通して区別された」≫)『全能』を賦与された『精神』」――すなわち「今や突然、イエスの『個人的生活』の秘義(≪出来事≫)を構成すべき精神が神的な本質として宣言され」、人間の側からする人間の神化あるいは神の人間化によって、聖書的啓示証言におけるキリストにあっての「神（下記【注】参照）が今やまさにこの形而上学とこの概念図式に服させられた」のである。したがって、その「精神は、まさしくもって神的な精神ではなく」、「人間的な精神の特定の解釈(≪起源的な第一の形態の神の言葉、第二の形態の聖書的啓示証言のそれを原理・規準・法廷・審判者・支配者としないところで、恣意的独断的に対象化された人間の自己意識・理性・思惟の無限性としてのそれ≫)である」。このことは、「神の実在」を「イエスの『個人的生活』から歴史的直観によって」認識するその「直接性が証明している」、換言すればここで「神の啓示の内容は、神としての神から発生したのではなくて、人間理性や人間的欲求やによって規定された神から発生した」ものに過ぎないのである、それ故に「この対象に即してもまた、『神学の秘密は人間学以外の何物でもない！』」(フォイエルバッハ)のである、すなわちこの時人は、キリストにあっての「神の自存性という問題」を後継に退け、「神の本質」を、イエス・キリストにおける神の自己「啓示なし」に、それから独立させて、人間自身の「頭ででっち上げた」のである。したがって、ここで語られている「愛、神聖性、全能はどの程度まで神的な愛、神聖性、全能」であるのかという問いは、「リッチュル学派の下で答えを得られないところの問い」である、ちょうど正統主義者たちとその自由主義的後継者たちの下で、『神』だと言われている無限な、単純な存在」が「どの程度まで神的な存在と呼ばれるのに値しているかという問いに対して答えを得られないのと同じように」。

【注】聖書的啓示証言の本来的テーマは、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方である「子なる神、キリストの神性」(「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする神)を問う問いの中に、起源的な第一の存在の仕方である「父を問う問い」と第三の存在の仕方である「父ト子ヨリ出ズル御霊」・聖霊を問う問いとが包括されている点にある。この神は、イエス・キリストにおいて、インマヌエル(「神われらと共にいます」)という存在の仕方で、自己顕現・自己啓示した。このことは、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「聖性」・「自己を覆い隠す」・隠蔽性・秘義性において存在する三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である父が、第二の存在の仕方である子として「自分を自分から区別」したことを意味する。したがって、この自己啓示は、「まさにアラワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間ナザレのイエスという「人間の歴史的形態」――すなわち「イエス・キリストの名」において、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で、その存在の本質である「失われない単一性」・神性・永遠性の認識と信仰(信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰)を要求する啓示なのである。何故ならば、「全く不信仰で罪に穢れた」ところの人間論的な自然的人間・教会論的なキリスト教人間――われわれは、「『自分の理性や力によっては』全く信じることができない」からである、「主よ、わたくしの不信仰を助けて下さい」と祈り願う以外にできないからである。したがって、われわれは、ただ素直に感謝をもって、次のように言う以外にないのである――「『私がいま肉にあって生きているのは、私を愛し、私のために御自身をささげられた神の御子の信じる信仰によって、生きているのである。（これを言葉通り理解すれば、＜私は決して神の子に対する私の信仰に由って生きるのではなく、神の子が信じ給うことに由って生きるのだ＞ということである）』（ガラテヤ二・一九以下）。（中略）自分が聖徒の交わりの中に居る……罪の赦しを受けた（中略）肉の甦りと永久の生命を目指しているということ――そのことを彼は信じてはいる。しかしそのことは、現実ではない。……部分的にも現実ではない。そのことが現実であるのは、ただ、われわれのために人として生まれ・われわれのために死に・われわれのために甦り給う主イエス・キリストが、彼にとってもその主であり、その避け所でありその城であり、その神であるということにおいてのみである」(『福音と律法』)。
　「神の存在」は「徹頭徹尾神の行為である」と理解することができる、すなわち「自分自身の、意識的な、意志され、実現された決断の中での存在」である「人格的存在」（われ――存在）としての「（≪不可視な神的な≫）精神と（≪可視的な神的な≫）自然(≪神性の受肉では決してなく、あくまでも言葉の受肉としてのそれ≫)の単一性の中でだけ出来事となって起こる」自己還帰する対自的であって対他的・他在であって自在・全き自由の「神の（≪愛の≫）行為（≪三位一体の神の第二の存在の仕方、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間「イエス・キリストの名」――ナザレのイエスという「人間の歴史的形態」、啓示・和解、起源的な第一の形態の神の言葉≫）の出来事」としての「神の存在」は、自存性として「それ自身を通して動かされた存在として」、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方（業と行為、働き、性質）であるイエス・キリストにおける神の自己「啓示の中で出来事として起こっており、啓示を通して惹き起こされた（≪可視的な神的な≫）自然と（≪不可視な神的な≫）精神の（≪出来事の自己≫）運動」として理解することができる、それ故にイエス・キリストにおける神の自己「啓示は、その権威と信頼に値する性質を、（≪神と人間との無限の質的差異の下で、徹頭徹尾、常に、≫）すべての人間的な基礎づけの彼岸（≪・外≫）において、（≪あくまでも神の側の真実として≫）それ自身の中に(≪「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」・「三位相互＜内在性＞」の中に≫)基礎づけられている」、それ故にまた「人間に対する神の権利と人間と結ばれた契約の中での神の真実は、それらを確証するためにはただ神ご自身を必要としているだけ」である、換言すればあくまでも起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動・自己展開・時間累積、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を必要としている、「神が何であり給うかについてのすべての言明、あるいは神はどのようであり給うかについてのすべての説明は、あらゆる事情の下で、神がその行為と決断(≪「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方、三度別様に父・子・聖霊なる神の愛の行為の出来事としての神の存在≫)の中で何であり、どのようであり給うかということを述べ説明しなければならない」。

　最後に、「あらゆる種類の変曲的な調べ」を持ってはいたが「根本主題は見紛うべくもない」「より良い道を……進んだ」「昔の神学」や「近代の者たちのうちの多くの者」（邦訳１６４・１６５頁を参照）が存在する。この「より良い道」は、「神は誰(≪三位一体の神の名≫)であり、また何(≪その神の本質≫)であるかという問い」と、「それの二つの構成要素の相違性(≪「失われない差異性」≫)に関しても、また単一性(≪「失われない単一性」≫)に関しても」、「真剣に取り組んでいるということ」を、それ故に「属性論が、厳格に事実それだけであり得るところのものとして、換言すれば神の本質についての教説の繰り返しおよび展開として、理解され述べられているということ」を、「特色」としている。したがって、「われわれは、……根本的に新しい解決を探し求めなければならない必要はなく、「もっと正確な説明や純化」が必要であるとしても、「原則的に」この「試みの地盤の上に身を置く以外に……選択の余地はないということは明らか」なことなのである、換言すればこの「試み」を否定的に媒介する以外に「選択の余地はないということは明らか」なことなのである、この「試み」を包括し止揚して次の段階へと移行していくこと以外に「選択の余地はないということは明らか」なことなのである、すなわち起源的な第一の形態の神の言葉を「まず第一義的に優位に立つ原理」として時間累積されているキリスト教に固有な類・歴史性に連帯していく以外に「選択の余地はないということは明らか」なことなのである。何故ならば、「一方において、神の自存性、絶対性、自由の本質要素が、換言すれば自分自身の中での、そしてまたご自身でないすべてのものに相対しての、ご自身に固有な偉大さの中での神が問題である」からである、すなわち聖性・隠蔽性・秘義性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする神が、「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」としての、「三位相互＜内在性＞」としての三位一体の神が問題であるからである、「他方において、神の愛の本質要素が、換言すれば神の人格性と存在が問題である」、すなわち「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方――起源的な第一の存在の仕方であるイエス・キリストの父（創造主・啓示者）、父が子として自分を自分から区別した第二の存在の仕方である「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリスト自身（和解主・啓示）、愛に基づく父と子の交わりとしての「父ト子ヨリ出ズル御霊」・聖霊（救済主・啓示されてあること）なる神の愛の行為の出来事としての神の存在が問題であるからである。