『教会教義学 神論Ⅰ／２ 六章 神の現実（上）』「二十八節 自由の中で愛する方としての神の存在 三 自由の中での神の存在」（その３－２）－１
カール・バルト『教会教義学 神論Ⅰ／２ 六章 神の現実（上）』吉永正義訳、新教出版社に基づく
『教会教義学 神論Ⅰ／２ 六章 神の現実（上）』「二十八節 自由の中で愛する方としての神の存在 三 自由の中での神の存在」（その３－２）－１（９６－１１０頁）
引用文中の（≪≫）書きは、私が加筆したものである。また、既出の引用については、その文献名を省略している場合がある。
（論述における様々な重複は、今後も含めまして、それは、あくまでも、理解し易くするためのものでもありますが、私自身のその存在・その思考・その実践において、私自身のものとするためでもありますし、また私自身のためでもありますので、ご了承ください。正直に言えば、もうひとつあって、それは、バルトを、単純にしかし根本的にそして包括的に理解することを目指した拙著だけで、バルトを、根本的包括的に理解することができるのかどうかという実証的実験を行うためでもありますので、ご了承ください。また、注意はしており、見つけた場合には速やかに訂正をしておりますが、引用上の不備、勘違いによる不備、誤字脱字等の不備について、もしそうしたことがありました場合にはご容赦ください）・（しかし、その論述内容については、少なくともカール・バルトに関しては、根本的包括的な原理的な誤謬は犯していないと考えます。したがって、そうした論述の積み重ねの中で、その内容についての表現の仕方の練り直しと的確化だけでなく、その内容の深化と豊富化が為されていると考えます。また、吉本隆明に関しても、まだ補充すべき点はいろいろあるとしても根本的包括的な原理的な誤謬は犯していないと考えます）・（最後に、indemについてだけは、２０１７年３月１２日以降、吉永正義訳の「……する間に」をすべて、井上良雄的に「……することによって」というように引用し直しています。なぜならば、その方がその文章内容をイメージし理解しやすいからです）
「六章 神の現実 二十八節 自由の中で愛する方としての神の存在」
「六章 神の現実 二十八節 自由の中で愛する方としての神の存在」について、バルトは、次のような定式化を行っている。
神はその啓示の中で、現にあるところの方であり給う。神はご自身とわれわれとの間の交わりを求め、造り出し、そのようにしてわれわれを愛し給う。しかし神はまた、われわれなしにも、ご自身からして自分の生命を持つ主の自由の中で、父、子、聖霊として、まさにこの愛する方であり給う。（３頁）
〔この定式の詳述〕
この定式の詳述については、『教会教義学 神論Ⅰ／２ 六章 神の現実（上）』「二十八節 自由の中で愛する方としての神の存在 一 行為の中での神の存在」（その３－１）で行っていますので、参照してください（２０１７年１１月１６日論述分）。
「二十八節 自由の中で愛する方としての神の存在 三 自由の中での神の存在」（その３－２）－１
「神が現にあるところのものであるために」、神は「ご自身の存在を『必要とされ』ないということ」は、単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方であるイエス・キリストにおいて自己啓示された神は、起源的な第一の存在の仕方である「父なる名の＜内＞三位一的特殊性」における、すなわち内在的な自存性における、換言すれば内在的な自己還帰する対自的であって対他的・他在であって自在・全き自由における、「そのような存在であり給うが故に」、その「行為における神の存在あるいは神の存在という行為」は、すなわちその全き自由の神の行為の出来事としての神の存在あるいは全き自由の神の存在としての神の行為の出来事は、「神が（≪その自存性において≫）存在し給う自由である」ということである。単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である「父なる名の内三位一的特殊性」において、神は、次のような「存在であり給う」――単一性・神性・永遠性を存在の本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である父は、「父なる名の内三位一体的特殊性」において、内在的に子として自分を自分から区別するし、そのように自己啓示する神として自分自身が根源である、それ故にその区別された子は父が根源であり、愛に基づく父と子の交わりである聖霊は父と子が根源である（「三位相互内在性」）。この聖書的啓示証言でイエス・キリストにおいて自己啓示（自己顕現、自己認識・自己理解・自己規定）された神は、「失われない差異性の中」で三つの存在の仕方（性質、働き、業と行為、愛の行為の出来事としての神の存在）において「三度別様」に父（創造主、啓示者、イエス・キリストの父）、子（和解主、啓示、イエス・キリスト自身）、聖霊（救済主、啓示されたあること、父と子の霊）なる神であって、その存在は「失われない」単一性・神性・永遠性を本質とする「一神」・「一人の同一なる神」である。すなわち、このようにイエス・キリストにおいて自己啓示された神は、「三神」、「三の対象」、「三つの神的我」ではなく、父、子、聖霊の三つの存在の仕方の、単一性・神性・永遠性を存在の本質とする「一人の同一なる神」、すなわち「三位一体」の神である。したがって、単一性・神性・永遠性を存在の本質とする神の完全さ・自由さは、父、子、聖霊の三つの存在の仕方の完全さ・自由さである。このような訳で、われわれが、「神は、自分自身カラ存在すると言う時」、換言すれば神的な存在の自由、神の自存性を言う時、われわれは、「神がご自身を創造し、生じさせ、引き起こすと言っているのではなく」、神は神的な存在の自由・その自存性において「自分自身カラ存在する」ということが、単一性・神性・永遠性を本質とする「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」における「父、子、聖霊の関係の中で……永遠にわたって現実であるように」、神は「神の存在」（神の愛の行為の出来事としての神の存在）として、「神が創造し・生じさせ・引き起こすことの対象でなければならないことすべて」を、すなわち三つの存在の仕方、創造・和解・救済、啓示者・啓示・啓示されてあることを、単一性・神性・永遠性を本質とする「父なる名の＜内＞三位一体的特殊性」において「既にご自身の中で持ち給い、また既にそのようなすべてであるところの方であり給うということを語っているのである」。したがって、「神が、創造し、生じさせ、引き起こし給うもの」、「存在するために発生と存続を必要としているもの、その存在を必要とすることができるもの」は、「神の実在ではなく、神とは異なる実在（≪神とは異なる、天然自然、自然の一部としての自己意識・理性・思惟を持つ自己身体および性としての他者身体、人間化された自然である人間的自然・非有機的身体≫）である」。われわれが、「神は存在すべく自由であるという時」、われわれは、「神はご自身を言わば非存在から存在へと高め、ご自身を存在へと解放するということを言っているのではなく」、ナザレのイエスという「人間の歴史的形態」・「イエス・キリストの名」において自己啓示された三位一体の神のあの「父なる名の内三位一体的特殊性」における神の存在は、存在的な、すべての「その非存在の可能性」による限界づけを、あるいは認識的な、その「非存在の思惟可能性」による限界づけを完膚なきまでに粉砕してしまうところの、「神にとって固有な神の存在であるということ……を言っているのである」、「神はご自身（≪あの「父なる名の内三位一体的特殊性」≫）の中で存在される方であり」、「その存在でもって……いかなる強制にも従われず」、「その存在（≪その全き自由の神の愛の行為の出来事としての神の存在≫）でもって再びただご自身を確証する方であるということを言っているのである」。この場合、「神が、ご自身を確証することを必要とされるというのではなく」、「神が現にあるところのものであり給うことによって、ご自身」を、すなわち「父なる名の内三位一体的特殊性」における神の存在を、それと共にご自身の現実存在を、すなわちイエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現、父（創造主・啓示者）、子（和解主・啓示）、聖霊（救済主・啓示されてあること）としての神の愛の行為の出来事としての神の現実存在を、自存性において「事実、確証される」ということを言っているのである。われわれが、「神はご自身で事を初め給うと言う時」、われわれは、「神ご自身が、ご自身の基礎づけであり」、それ故に「その基礎づけでもって」、「ご自身の存在」を「神でないもの」とされることを、換言すれば「ご自身の存在」を、対象化され客体化された人間の自己意識・理性・思惟の類的本質（「存在者レベルでの神」）としての神とされることを、神「ご自身の存在」を人間化されることをあるいは人間を神「ご自身の存在」とされることを、それ故に「神の存在」を「非存在」化されることを、また「神の非存在の思惟可能性」を志向し目指されることを、「限界づけ……給うということ」ということを言っているのである。キリストにあっての神は、「その存在という行為の中」で、すなわち神の存在としての全き自由の神の愛の行為の出来事の中で、「まさにこの基礎づけと限界づけを確証されるということを語っているのである」。このような訳で、「ここでも再び、そのような基礎づけと限界づけが確証を必要としているというのではなく」、その存在の本質の完全さ・自由さの中で、それ故にその存在の仕方の完全さ・自由さの中で、「すべての必要から自由な形で、神の存在という行為が事実この確証である」ということを語っているのである。これらのことが、「神ご自身においてのみ実在であり真理」である、自己還帰する対自的であって対他的・他在であって自在・全き「自由の中での、自存性の中での、神の存在である」、「父なる名の内三位一体的特殊性」における「三位相互内在性」としての神の存在であり、神の愛の行為の出来事としての神の存在である。
これらのこととの関連で、前回は次のようなことが論じられていた――イエス・キリストにおける「神の自己啓示によれば、神は、神とは異なる実在の内部で、神の現実存在を自ら証明する自由を持ち給う」。「よく注意せよ。それは、神の現実存在」を、それ故に神とは異なる「実在全体」（天然自然、自然の一部としての自己意識・理性・思惟を持った自己身体および他者身体、人間化された自然である人間的自然・非有機的身体）における「存在者レベルでの神」の現実存在をでは決してなくて、徹頭徹尾神「自ら証明する自由」における「存在者の存在」――すなわち「神の現実存在」（イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現された、神の愛の行為の出来事としての神の存在、父――創造主・啓示者、子――和解主・啓示、聖霊――救済主・啓示されてあること）を「自ら証明する自由を持ち給う」ということである。言い換えれば、「神ご自身においてのみ実在であり真理である」、自己還帰する対自的であって対他的・他在であって自在・全き自由の三位一体の神の、第二の存在の仕方であるイエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現は、それ自体に、その客観的な啓示自身に固有な証明能力を持っている、キリストの霊である聖霊自身による証しの力を持っている、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動を持っている、神のその都度の自由な恵みの決断による客観的な啓示の出来事とその出来事の中での主観的側面である聖霊の注ぎによる信仰の出来事（聖霊の注ぎによる人間的主観に実現された神の恵みの出来事）に基づいて信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を与える力を持っている、われわれ人間の宣教、その思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者としての、それ自身聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性――すなわち神に固有な自己証明能力による啓示されてあること・「存在者の存在」・「神の現実存在」。それ故に、神とは異なる「実在全体」における「存在者レベルでの神」の現実存在では決してない）の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には、第二の形態の聖書的啓示証言のそれ）を持っている。このことは、聖書的啓示証言に「絶対的」に信頼し固執し連帯した第三の形態に属する全く人間的なイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの教会のただ中では起こっている――ちょうど、近代主義を経由した現代のただ中に、西欧的危機のただ中に、ある社会構成・支配構成・文明的文化的構成のただ中に現存する第三の形態に属する全く人間的な教会の中に、起源的な第一の形態の神の言葉である「イエス・キリストの名」（具体的には、第二の形態の神の言葉である聖書的啓示証言のそれ）にのみ「絶対的」に信頼し固執し連帯して、イエス・キリストをのみ主・頭とする「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を志向し目指し、教会の宣教にとって最善・最良の神学を展開したバルト自身を持っているように。前述したように、キリストにあっての神が、「神の現実存在を自ら証明する自由を持ち給う」ということは、「神が〔人間の思惟の中で〕考えられることから独立した（≪人間の自由な自己意識・理性・思惟の類的活動の対象として考えられることから独立した≫）神の存在」を、「人間の思惟に先行し、その思惟を基礎づけている、徹頭徹尾対象的な神の存在」を「自ら証明する」ということである。すなわち、「神とは異なる実在（≪具体的には、自己意識・理性・思惟を持った自己身体および他者身体、換言すれば自然の一部である人間の身体を座とする自由な自己意識・理性・思惟の類的活動≫）の内部」で、「神の現実存在」を、前述したような仕方で、すなわちキリストにあっての神のその完全さ・自由さにおいて「自ら証明する」ということである、ちょうど先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意ができているところの、「人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一」（『ローマ書』）であり、「永遠の（神との人間の）和解」であり、神との間の「平和」（ローマ五・一）であり、それ故に神の認識可能性である聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、神の子、起源的な第一の形態の神の言葉、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて、「神の用意の中に含まれて、人間にとって、神に向かっての、したがって神認識（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰≫）に向かっての人間の用意が存在する」ように。「それであるから、神のこの現実存在」が、「人間も属している……実在（≪天然自然、自然の一部である人間の自己身体および他者身体――この身体は身体を座とする自己意識・理性・思惟を持っている、人間化された自然である人間的自然・非有機的身体≫）の中で、またその実在と異なるその全くの相違性の中で、（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で≫）人間によって認識されることができ」のである。また、「それであるから」、「神の自己証明」が、それ自身聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には、その第二の形態の聖書的啓示証言のそれ）を措定し、またそれを、われわれ人間の宣教、その思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者として措定し、またそれを、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて「人間によって認識……承認」させ、「人間の認識行為の枠内で繰り返させる（≪媒介・反復させる≫）」のである。これらすべてのことは、「明らかに、（≪イエス・キリストにおける≫）神の啓示が起こり、信仰を造り出し、見出すことによって、起こるのである」、すなわち啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）において起こるのである。したがって、キリストにあっての神は、「それらすべてに対して……自由を持ち給う」、「その（≪イエス・キリストにおける≫）啓示の中で、ご自身で（≪現にあるところの方として、すなわち聖性・秘義性・隠蔽において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三つの存在の仕方において「三度別様」に、イエス・キリストの父・創造主・啓示者、子としてのイエス・キリスト自身・和解主・啓示、愛に基づく父と子の交わりである聖霊・救済主・啓示されてあること、としての三位一体の神として≫）事を初める自由を確証し、実証し給う」。この「神の自由」は、そのような「ご自身の現実存在そのものによって」、「ご自身の現実存在そのものの中で」（内在的な「父なる名の三位一体的特殊性」に引き寄せて言えば、その「父なる名の三位一体的特殊性」における内在的な神の存在そのものの中で）、「神の現実存在を基礎づける自由である」、神の「自存性」である。神「ご自身」が、この「神の自由を確証し実証するということ」は、このようにして、神と人間との無限の質的差異の下で、「神と異なっている」「実在の存在」の「ただ中において……起こるのである」。神は、このことを「証明する自由をその（≪イエス・キリストにおける≫）啓示の中で確証（≪自己認識・自己理解・自己規定≫）し実証したもう」。このことが、「イスラエルの選びと支配の中であらかじめ示されたイエス・キリストにおける神の受肉（≪受肉は、決してその存在の本質としての神性の受肉ではなく、その第二の存在の仕方における言葉の受肉である≫）の自由、神の言葉の自由、神の霊の自由、神の恵みの自由である」。この神の「自由は、全線にわたって、（≪その自存性において≫）神が為し給う（≪先行する神の≫）存在証明……の自由である」。したがって、「すべての人間による神の存在証明」は、そしてそれが聖書的啓示証言におけるキリストにあっての「神の存在証明」であるとすれば、自己身体を座とする人間の自由な自己意識・理性・思惟の類的活動を先行させるだけでは「絶対的」に不可能であるし、それ故にそのような先行する人間自身が対象化し客体化した「存在者レベルでの神」（人間化された神、神の人間化あるいは人間の神化としての神、対象化され客体化された人間の自己意識・理性・思惟の類的本質）においては「絶対的」に不可能であるとすれば（何故ならば、単一性・神性・永遠性を本質とするキリストにあっての神は、聖性・秘義性・隠蔽性において存在しており不把握性を本質としているから）、「ただその（≪「神が為し給う存在証明」の≫）後に従って」為し得ることができるだけであり、その先行する「神が為し給う存在証明」に後続してはじめて、「（≪あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる≫）写し」、模写であることができるだけなのである（Ⅰコリント１３・１２）。したがって、それは、学業的学問的な「単なる知識」ではなく「認識」である――すなわち、信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰である。
このような訳で、聖書的啓示証言におけるキリストにあっての「神に関しては」、神は、「その存在という行為（≪神の存在としての愛の行為の出来事≫）の中で、＜事実＞、その確証であるということ」、それ故に「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」イエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現は、ナザレのイエスという「人間の歴史的形態」である「イエス・キリストの名」（単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、すなわちその神の起源的な第一の存在の仕方である父が子として「自分を自分から区別した」ところの神の子、その神の愛の行為の出来事としての神の存在）において、その存在の本質である単一性・神性・永遠性の認識と信仰を要求する啓示であるということ（信仰の認識としての神認識を、啓示認識・啓示信仰を要求する啓示であるということ）――このような「＜事実＞」的な「神の存在という行為の中で」、「神の非存在あるいは別種の存在は、存在的に・認識的に排除されてしまっており、……絶対的不可能性に……されてしまっている」のである。ここには、「神が存在しなければならないいかなる必要（≪「必然」性≫）も存在しない」。何故ならば、「神が存在（≪三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である「父なる名の内三位一体的特殊性」における神の存在が存在し、またイエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現されたその神の愛の行為の出来事としての神の存在が存在≫）し給う時、まさにこのことこそ」が、いかなる「困窮」にも・「不可避性」にも・「窮地」にも「追い込まれる」ことのないところの、キリストにあっての「神の……自由の業である」からである。したがって、結局は最後的には「窮地に追い込まれ」てしまうところの対象化され客体化された人間の自己意識・理性・思惟の類的本質に過ぎない「『純粋な実在』とか『第一存在』という概念」によって導き出される存在者レベルでの「神は＜必然的＞である、したがって神は必然的ナル存在」であり『神が存在しないとか、別様に存在するということは内的に不可能である』という命題（例えば「ディーカンプ」の「カトリック教義学」）」は、総括的に言えば自然神学的な、自然的な信仰・神学・教会の宣教的な誤謬に普遍性や組織性の後光をかぶせて語られたものなのである。したがって、まさにイエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現は、ナザレのイエスという「人間の歴史的形態」、「イエス・キリストの名」、三位一体の神の第二の存在の仕方において、その存在の本質である単一性・神性・永遠性の認識と信仰を、信仰の認識としての神認識を、啓示認識・啓示信仰を要求する啓示であるということ――このように「神が現にあり給う方としてのその事実的な存在の中で」、換言すれば三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事であるそれ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）における関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉、「イエス・キリストの名」、客観的に存在している「啓示の実在」そのもの（具体的には、第二の形態の聖書的啓示証言のそれ、客観的に存在している啓示の「概念の実在」。これは、「先ず第一義的に優位に立つ」イエス・キリスト共に、われわれの宣教、その思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者である）の中で、「神は、存在するということ」、それ故に「存在しない者」（非存在）として考えることは「決してできないということ……について決定が下されて」おり、「この事実としての決定に直面しつつ、この事実としての決定に対する服従の中で」、すなわち起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には、聖書的啓示証言のそれ）に対する奉仕としての他律的服従と自律的服従との同時性・同在性の中で、キリストにあっての「神が……尋ね求められ、崇拝されることによって」、「存在的に・認識的に」、神は非存在であったり別種の存在であったりすることはないということが「言われなければならない」、「神は存在し給わなかったり、違った仕方で存在し給うことはできないということが言われなければならない」、それ故に起源的な第一の形態の神の言葉であるイエス・キリストをのみ主・頭とする（具体的には、聖書的啓示証言に「絶対的」に信頼し固執し連帯する）「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を志向し目指すということが言われなければならない。したがって、「もしも人が、神は存在しないことも、違った仕方で存在することもできないという、この『内的不可能性』」を、それ故に「このような仕方での神の存在の『必然性』」を、起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には、第二の形態の神の言葉である聖書的啓示証言のそれ）を＜客観的＞な原理・規準・法廷・審判者・支配者としないで、恣意的独善的にスコラ的に「神のこの事実としての決定以外の場所で尋ね求めるならば、その時人」は、キリストにあっての神ではなく、「人間的理性や人間的欲求やによって規定された神」・「人間の想像能力・思惟能力・表象能力の本質が現実化され対象化された絶対的な本質（存在者）」（フォイエルバッハ）、人間自身が対象化し客体化した「存在者レベルでの神」（ハイデッガー）、「被造物としての存在の神格化であるような神」（「存在者レベルでの神」）を尋ね求めているのであり、そのような人間化された神を言おうとしているのである。人は、このことに、「よく注意せよ」。したがって、人は、次のように言わなければならない――このフォイエルバッハやハイデッガーからの根本的包括的な原理的な批判・「攻撃」に対して「持ち堪えることができる」神の存在の「必然性」は、神に先行しようとするあるいは神と協働・共働しようとする人間の自由な自己意識・理性・思惟の類的活動の中に、その類的本質の中にあるのではなく、「ただ……いかなる必然性も知らず、自分自身の存在を必要とされないで、ご自身の存在を事実持ち給い、まさにそのことによって、しかしまたそのことを必要とすることのなしに、ただ事実、ご自身を存在するものとして確証される（≪全き自由としての、自存性としての≫）神ご自身の中に、あることができるだけである」、と。
われわれは、このキリストにあっての「神はご自身の中で自由であり給うという第一の命題が確実であるならば」、「その時、……神の自存性」（神の自由）を、「神は外からの、他者からの、一切の基礎づけ、条件づけ、規定から自由であり給う（≪「神は、一切の外的な被制約性から自由である給う」≫）という第二の命題の中でも語ることができる」。「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」イエス・キリストにおける神は、存在的に・認識的に、人間との無限の質的差異において、また「神ご自身においてのみ実在であり真理である」自由・主権において、また単一性・神性・永遠性において、三位一体の神として自己啓示した――このような「神に固有な自由の中で存在することによって、ご自身で存在し、根拠づけ、限界づけを持ち、またご自身そのような方であり給うならば」、「その時、神は、他の存在を必要」とはしないし、「他の存在（≪自己身体を座として持つ人間の自己意識・理性・思惟の類的活動≫）による基礎づけと限界づけ」も「必要」とはしないのである。「神は、『絶対的』であり給う」。すなわち、神は、「神でない一切のものから解き放たれてい給う」、「他の一切のものが存在しようが存在しまいが、……存在し給う」。神とは異なる「他の一切のもの」は、「神に先んずることはできないし、神をそのものに依存した状態に置くことはできない」、「神を制限することはできないし、神を変えることはできない」、人間を神化し・神を人間化することはできない、すなわち「ただ神によって、神に基づいて（≪神のその都度の自由な恵みの意志的決断に基いて≫）、……ただそのように存在できるだけである」、「ただ神の下で（≪先行するキリストにあっての神の愛の下で≫）存在できるだけであり、ただ神に仕えることができるだけである」、ただ徹頭徹尾その先行する神の愛の行為の出来事（神の存在）に対する他律的服従と自律的服従（その神の存在にのみ感謝をもって信頼し固執する決断と態度）との同時性・同在性において、起源的な第一の形態の神の言葉、「イエス・キリストの名」（具体的には、第二の形態の神の言葉である聖書的啓示証言のそれ）に奉仕することができるだけである。これらのことを、われわれは、父――創造主・啓示者、子――和解主・啓示、聖霊――救済主・啓示されてあること、この神の存在としての神の愛の行為の出来事において、常に、われわれに先行する神は、「ご自身の中で自由であり給うということ」を、「先ず第一に」、「われわれ自身に向かって語らしめた後で、……語ることができるし、語らなければならないのである」。何故ならば、われわれは、「神はご自身の中で自由であり給うということ」を、「神の事実的な現実存在の中で下された決断によって、先ず第一にわれわれ自身に向かって語らせなければならない」からであり、その語りの「対象は、いかなる概念でもあり得ず」、「まさにただその存在証明の中での神ご自身であり給うだけである認識の内容として先行しなければならないからである」、換言すれば起源的な第一の形態の神の言葉、「イエス・キリストの名」、客観的に存在している「啓示の実在」そのもの（具体的には、第二の形態の神の言葉である聖書的啓示証言のそれ、客観的に存在している啓示の「概念の実在」）に信頼し固執し連帯したあの「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を「内容として先行しなければならないからである」。もしもそうでないならば、「神は一切の外的被制約性から自由であるという第二の命題」は、「われわれ自身の理想についての命題」と「区別」することができないことになる。言い換えれば、もしもそうでないならば、第二の命題の神は、キリストにあっての神ではないところの、われわれが思惟し語る「絶対的な、一切の外的被制約性から純化された」「純粋実在」としての存在、「われわれ自身……を言い表した」存在、「われわれ自身の理想」、すなわち「人間的理性や人間的欲求やによって規定された神」、対象化され客体化された人間の自己意識・理性・思惟の類的本質としての「存在者レベルでの神」ということになる。このような訳で、われわれは、第一の命題も第二の命題も、自由は、「神ご自身に」おいてのみ実在であり真理である」という認識と承認と自覚を必要とするのである。すなわち、イエス・キリストにおいて自己啓示・自己顕現された三位一体の「神ご自身の存在証明」によって、「神の存在（≪神の愛の行為の出来事としての神の存在≫）の事実としての確証」によって、われわれが「神と同等であろうとすること（≪「聖書の主題であり、同時に哲学の要旨である」神と人間との無限の質的を後景へと退けて、神を人間化することあるいは人間を神化すること、キリストにあっての神を自己身体を座として持つ人間の自己意識・理性・思惟の類的活動の延長線上で尋ね求めること、対象化され客体化された人間の自己意識・理性・思惟の類的本質において尋ね求めること≫）はわれわれに対して、……防ぎ守られ禁じられている」のであるから、われわれは、存在的にも・認識的にも、自覚的に、「神ご自身の存在証明」を、「神の存在（≪神の愛の行為の出来事としての神の存在≫）の事実としての確証」を、「それとして尊重すること」を、また「そのようにして、神を、（≪われわれの思惟と語りにおける≫）絶対性」の「彼岸（≪外≫）においても絶対的である方として考慮すること」（自覚すること）を必要とするのである。ここで、われわれは、「直ちに、神を、ただその方だけが絶対的である唯一の方として言い換えることができる」のである。したがって、ここで絶対性は、「神ご自身においてのみ実在であり真理」と言い換えることができるのである。この時、この認識と自覚において、われわれは、「容易にしのびこんでくる一切の自己神格化からわれわれ自身を守ることができれる」のである。
前述したことを前提として認識し自覚するならば、「神とは異なった実在の現実存在と他者の存在」は、常に、人間の自己認識・自己理解・自己規定の彼岸（外）にある「絶対的な神にとって」は、「いかなる困惑をも意味する」ことはないのである。しかし、対象化され客体化された人間の自己意識・理性・思惟の類的本質としての、「人間の鏡としての自分の絶対性」にとっては、すなわちその「絶対的なもの」に対して、神とは異なった他者が「何らかの自立的な実在として対置」しただけの絶対的なものにとっては、ただ神の外的被制約性からの自由の「否定の中でだけ持っている絶対的なものにとっては」、「困惑を意味しなければならない」のである。何故ならば、その時には、「首尾一貫性」を喪失するからである、神と人間との無限の質的差異を後景へと退ければ退けるほどキリストにあっての神を喪失するからである、「われわれ人間の失われた非本来的な古い時間」・古い世は、完了・「成就された時間」であるキリストの復活における「神の勝利」による「本来的な実在としてのイエス・キリストの新しい時間」・新しい世によって包括され止揚され克服されて「そこにある」と首尾一貫して認識することはできなくなるからである（それ故にまた、この勝利の行為は、終末、キリストの再臨、完成までは、現存する人間論的な自然的人間、教会論的なキリスト教的人間、われわれ人間、「敗北者もまた依然としてそこにいるところの勝利の行為である」と認識することはできなくなるからである）、それ故に神とは異なった「この他者の存在と現実存在は問題化され、最終的には解消され、現実の世界は非存在者のくすんだ光の中に移される」からである。われわれ人間の、その類・歴史性と個・現存性の生誕から死までのすべてを見渡せ、それ故に「この世の偽り、通俗の偽りを偽りと呼び、世俗的真理をも正直に受け取ることができ」、それ故にまた自然的な信仰・神学・教会の宣教における福音が、「理念へと、有神論的形而上学へと、われわれに管理されるプログラムへと」、「鋭さをなくした」「十字架象徴論へと」、「イエス・キリストはたかだか＜暗号＞にすぎ」ない「神秘主義へと変わって行く」ことが見渡せる場所は、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方である、神の子、起源的な第一の形態の神の言葉、啓示・和解、客観的に存在している「啓示の実在」そのもの、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間、イエス・キリスト（具体的には第二の形態の神の言葉である聖書的啓示証言のそれ、客観的に存在している啓示の「概念の実在」）における神の自己啓示の場所だけなのである。起源的な第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト（啓示・和解）が、われわれ人間に対して、聖書（神の言葉の第二の形態）および聖書に信頼し固執し連帯した教会の宣教（全く人間的な神の言葉の第三の形態）を通して「同時的となる時と所」、「『神われらと共に』が神ご自身によってわれわれに語られるところ」において、「われわれは、神の支配のもとに入る」ということを、それ故に「世、歴史、社会」は、「その中でキリストが生まれ、死に、甦られたところの世、歴史、社会」であるということを、それ故にまた「自然の光の中でではなく、恵みの光の中で、それ自身で閉じられ、かくまわれた世俗性は存在せず、ただ神の言葉、福音、神の要求、判定（≪審判、裁き≫）、祝福によって問いに付され、ただ暫時的にだけ、ただ限界の中でだけ、それ自身の法則性とそれ自身の神々に委ねられた世俗性があるだけである」ということを、あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて認識し承認し確認するのである。このように、「神の絶対性の力によって措定された世界があり得るのである。そして、その世界は、まさに神の概念（≪あの「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる人間が人間的に所有する人間の信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰、人間の言語を介した直観と概念を用いたそれ≫）に基づいてこそいかなる恥ズベキモノでもなく、神に対する反抗としてではなく」、「神の確証として、また神の栄光をあらわすための機会として理解されるべきものなのである」。したがって、「絶対的な神の（あるいはこの名の偶像を拝する神秘主義の）一切のこの世との疎遠さ、……この世に対する敵意」は、「世界が自存性（≪神の自由≫）ノ相ノモトデ、すなわち神の主要な、積極的な自由の光の中で眺められることが許され、眺められなければならないとしたら、過ぎ去ってしまうであろう」。この時には、「神は、神の絶対性を、決定的にご自身の内に持ち給う。……それ故にこそ、……神的な絶対性との競合を意味しそれを承認することは、神の自由の制限を、またその依存関係の（ただ部分的な仕方でだけでも）逆転（≪転倒≫）を招くであろうあの他者の存在と現実存在は全く問題となり得ない」のである。このような神とは異なる「他者の存在と現実存在の＜相対性＞」は、その時には、「神の絶対性によって、……解消できない仕方で必然的なものにされるのである」、「また一切の世界の神格化に対しても、この他者の一切の魔神化に対しても、（≪神の側の真実においては、それ故に客観的現実性においては、「永遠的実在」としては≫）終止符が打たれる」のである。「言い換えるならば、神の自由が主要な仕方で先ず神に固有な神の自由（≪「神ご自身においてのみ実在であり真理である」自由≫）として理解されるならば、その時、神の自由は、副次的な意味」で、「神によって、神の下に、（≪神とは異なって≫）存在しているもの」と「神の関係の中」で、「神のまことの超越性としてと同様に神のまことの内在性として（≪聖性・秘義性・隠蔽性において存在している単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である「父なる名の内三位一的的特殊性」におけるそれとして≫）理解されることができるし、理解されなければならない」。われわれは、「副次的な神の絶対性を基礎づける……すべての純然たる概念的な基礎づけの危険性に注意しなければならない」。したがって、われわれは、「存在それ自体あるいは純粋な実在は何びとにも依存しないし、また存在し活動するために他者を必要としない。そして、何ものからも何らかの存在の補充を得ることはあり得ない」（「ディーカンプ」）ということを、キリストにあっての「神について語ることはできない」。何故ならば、「『純粋な実在』それ自体は神ではなく」、「ただ（≪キリストにあっての≫）神が実在であり給うことによって、（≪キリストにあっての≫）神は（現にあるところのものとして）確かにまた純粋な実在のごとき何ものかであり給うからである」。「『純粋な実在』それ自体は、われわれ自身の現実存在の映像であり得るであろう」、すなわち対象化され客体化された人間の自己意識・理性・思惟の類的本質と言うができる。それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉、「イエス・キリストの名」、客観的に存在している「啓示の実在」そのもの（具体的には、第二の形態の聖書的啓示証言のそれ、客観的に存在している啓示の「概念の実在」）を、徹頭徹尾その宣教、その思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者としないところの、このような神と人間との混淆化・混合化による神の概念化の試みは、結局最後的には「神と違ったものであること」を自己暴露することになる。