本当のカール・バルトへ、そして本当のイエス・キリストの教会と教会教義学へ向かって

カール・バルト『教会教義学　神論�T／２　六章　�~の現実（上）』吉永正義訳、新教出版社に基づく

『教会教義学　神論�T／２　六章　�~の現実（上）』「二十八節　自由の中で愛する方としての神の存在　二　愛する方としての神の存在」（その４−４）−２（６３−８０頁）

「二十八節　自由の中で愛する方としての神の存在　二　愛する方としての神の存在」（その４−４）−２
　自己運動する理念（起源、即自、普遍）――父、自然（否定、対自、特殊）――子、精神（否定の否定、即自かつ対自、高次の段階、個別、具体的普遍）――聖霊という「ヘーゲル的な三位一体論の……変形」において「神の人格性を否定した二人の古典的な否定論者（≪「シュトラウスとビーデルマン」≫）」の内の一人「シュトラウス」は、ビーデルマンを含めて自らの「立場の……首尾一貫性を損ないつつ」、それ故に「結局はある妥協に向かって傾き」つつ、「神は、永遠の人格者であることによって、永遠の自分自身の他者を、すなわち自然を、神自身から生ぜしめ、永遠に自己意識を持つ精神として自己の内に還らせしめるのである」と・また「神の人格性は個々の人格性としてではなく、『総人格性』として考えられねばならない」と・またわれわれは、「絶対者」を、「人格化する代わりに」、「無限なものの中へと自己自身を人格化していくものとして」把握しなければならないと、述べている。シュトラウスが、その立場の首尾一貫性を喪失し妥協へと向かった証左を、「一方で、（≪「聖書的な」≫）人格的な神の……概念」に疎遠であったというという点に見ることができる、さらに「いよいよもってそれを否定したという」点に見ることができる、また「他方では、『総人格性』」という概念でもって、自らが要請した「自らの自分の技術的な概念を破壊した（≪何故ならば、「彼は以前に、絶対者」を、それ自身が「人格性の概念を……撤回できない仕方で排除する」と「定義していた」からである≫）」という点に見ることができる。また、ビーデルマンは、絶対精神としての神と神の絶対人格性とにおける「一方が他方を必然的に排除する」関係性を示しつつ、「われわれは、神を正しく完全に絶対精神として考える時」、そして「そもそもただ神を心に思い浮かべる時、確かに神をただ絶対的な人格性として表象できるだけである」と述べている。言い換えれば、「神は絶対精神である」・「したがって、概念においては非人格的である」が、「われわれの表象の中では、神は絶対的な人格性である」（≪それ故に、絶対的な人格性は、絶対精神の表象的表現である≫）、と述べている。しかし、神と人間との無限の質的差異の下でイエス・キリストにおいて自己啓示された三位一体の神は、「概念によって客観的な真理の把握」が、また「表象によって主観的な真理の把握が言い表され、それからこれら両者」が統合され、そしてこれら両者は「同じ一つの認識のより高い段階（≪自由な自己意識の無限性の原理、区別を包括した同一性の原理、思惟と思惟されたものとの等価性の原理において、思惟に思惟を重ねて具体的普遍の頂へと高次化したところの、感覚的な要素を、自然を包括し止揚した自己運動する概念≫）とより低い段階（≪感覚的な要素を残した表象≫）として相互に秩序づけられる」というような神ではない、ちょうど「『神の痛み』は（≪直接的な≫）『神の愛』とは別の事実でなければならぬ。即ち『神の痛み』は『神の愛』に一旦既に背いた者への愛である。（≪この否定的に媒介された≫）『神の愛』（≪新約≫）は直接的な『神の愛』（≪旧約≫）をば否定的媒介契機として自己の中に止揚しているものであって、『神の愛』（≪旧約≫）より一段高次のものである」・「この『神の痛み』（≪「福音の心」≫）は……十字架における神の愛」のことである」（寺園喜基『バルト神学の射程』）と述べた「ヘーゲルの強力な痕跡を残した」、しかも人類史のアジア的段階における日本的なナショナルなもの（滅私奉公）に退行した北森嘉蔵におけのような神ではないように――何故ならば、聖書的啓示証言に信頼し固執し連帯したバルトの三位一体論において、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神は、「父なる名の内三位一体的特殊性」に基づいて、「失われない差異性」の中で三つの存在の仕方（性質、働き、業と行為、神の愛の行為の出来事としての神の存在――創造、啓示・和解、救済）において「三度別様」に、起源的な第一の存在の仕方である創造主としての父（啓示者）、父が子として「自分から自分を区別した」第二の存在の仕方である和解主としての子、すなわち「イエス・キリストの名」、愛に基づく父と子の交わりである救済主としての聖霊（啓示されてあること、換言すればそれ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」・キリスト教に固有な類・歴史性の関係と構造・秩序性）なる神であって、「失われない」単一性・神性・永遠性を本質とする「一神」・「一人同一なる神」であるから、「存在の仕方」の差異性はあっても、低次の神の愛と高次の神の愛という段階概念は、本質的に成立しないからである。「『絶対的な人格性』の概念」を、客観的な真理の把握としての「概念の段階においては不可能として」、主観的な真理の把握としての「表象の段階において」堅持しようとしたビーデルマンは、神と人間との無限の質的差異と、あの神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられるところの＜啓示＞認識・＜啓示＞信仰を後景へと退けたところで、「有限な人間的な精神生活の内部で……精神の形態の中で行われなければならない無限な精神と有限な精神の間で起こっている宗教の相互的交流の中」では、「神は絶対的な人格性である」、と述べている。ここでの不可避的必然的な「聖書的な神概念の棄損ないし除去」は、「近代的――人間学的な前提の上では（≪「聖書的な神概念」を≫）取り戻せないように」、ビーデルマンの要請する概念、すなわち「無限な精神と有限な精神の間で起こっている宗教の相互的交流」という「留保」概念によっても取り戻すことはできないのである。イエス・キリストにおける神の自己「啓示の中で語り、行動し、そのようにして存在される神」は、「ビーデルマンの『表象』の中」においては、それは「ただ表象であり、ただ主観的な真理を持つだけ」に過ぎないから、「たとえそれがどれほど聖書的に内容が満たされるとしても」、「聖書的な神概念」を「再認識」することはできないのである。すなわち、ビーデルマンの自己意識・理性・思惟が対象化した神は、「主観的な真理の中では人格」であり得ても、第三の形態に属する全く人間的な教会の宣教における、その思惟と語りにおける＜客観的＞な原理・規準・法廷・審判者・支配者としての、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉、啓示・和解、「イエス・キリストの名」、客観的な「啓示の実在」そのもの（具体的には、その第二の形態の聖書的啓示証言のそれ、客観的な啓示の「概念の実在」）――すなわち「客観的な真理の中」においては、「まさに人格ではなく、非人格的な絶対者である神」であって、それ故に「その神が何を意志しようと、いずれにしても」、イエス・キリストにおいて啓示された「聖書の啓示の神と等置」することは決してできない神、すなわち人間神でしかない神なのである。「＜概念＞と＜表象＞の間の区別は、結局せいぜいのところ、ただ明瞭さの区別（対象認識、対象了解の抽象の度合い、時間化の度合い、抽象度、時間化度の差異≫）であることができるだけである」。人間の自由な自己意識・理性・思惟の無限性を、「人間的な主体」を、「優越した競争相手（≪聖書的啓示証言における神の人格性≫）から守るという関心事のすべての力にもかかわらず」、すなわちそのような企てによっても、「少なくとも（≪聖書的啓示証言における≫）神の人格性の問題そのものは、事実、否定」することはできなかったのである。
　このように、「十八世紀および十九世紀の（≪近代主義的≫）新プロテスタント主義」は、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には、第二の形態の聖書的啓示証言のそれ）に信頼し固執し連帯するところのイエス・キリストをのみ主・頭とする「教会を、（≪近代的に≫）更新された古代の異教主義（≪「聖書の学校から抜け出て異教的な古代の学校に入学する」それのように、聖書的啓示証言でイエス・キリストにおいて啓示された三位一体論を「神論の重要な構成要素」、「啓示の認識原理」としないそれ、哲学、歴史学、心理学等との混合神学、人間学的神学を志向し目指すそれ≫）に連れ戻そうと試みた」が、すなわち「教会の中に異教的な教えを導入することによって妨害と破壊を惹き起こ」し「粉砕して」しまおうと試みたが、そのような「首尾一貫した反対論……反教会」を築き上げることはできなかった。この「新プロテスタント主義」は、「今日では……例えば、古代教会におけるマルキオン主義と比較」することのできる「幕間の演技」でしかなかったことを「見抜」くことができる。それらの企てから対象的になって距離を取ることができた人は、すなわちそれらの企ての問題点を認識し自覚した人は、「既に正統主義の神論の中で普通のことであった、神の本質を中立的な絶対者へと置きかえる転換」と、すなわちイエス・キリストにおける「神の啓示に対して応答しつつ……秘かに……働いていた人間中心主義」と共に歩むことはできないのである、それだけでなく「必然的に起こってくる首尾一貫性の欠如と難問」の「弁証法の中に捕えられている者たちに対して、あまり大きな憤懣の気持ちを持つこともない」のである。何故ならば、その時、人は、すでに、「正統主義の神論」を、その「人間中心主義」を、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には、その第二の形態の聖書的啓示証言のそれ）を、その信仰・神学・教会の宣教における、その思惟と語りにおける＜客観的＞な原理・規準・法廷・審判者・支配者として、絶えず繰り返し、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、そのような信仰・神学・教会の宣教における原理および認識方法と概念構成において、包括し止揚しているからである。
　神学上の専門用語について、「先ず第一」に、「われわれの文脈の中ではすべてが『神は愛する方である』（≪神は、愛する方として、神の愛の行為の出来事としての神の存在である≫）という命題によってもってかかっている」、しかし、それ自体は、「『神は人格である、あるいは神は人格性を持っている』という命題に、……決して依存してはいない」、と言わなければならない。後者の命題は、「聖書にとっても、古代教会と宗教改革の教義にとっても、未知のものである」。この後者の命題は、すでに述べたように、「一方の者たちによって否定され、他方の者たちによって代表されつつ、論争的命題として現れた」。この後者の命題は、「ただ、『神は愛する方である』という命題の脈絡の中でだけ、明瞭な説明および確証として語ることができる。すなわち、神は、何かある物、一つの物ではなく」、「ただ一人の方、語り、行動する主体、根源的本来的な＜われ＞であるということを語ることができる」、「神は、現にある方として」、それ故に「愛する方として、そのような方であり給う」。「われわれは、この（≪神の人格性の≫）概念を巡って為された近代の論争に対して、いかなる実質的な興味も感じない……」、ちょうど著作『イエス』で、「イエスは……『人の子』語句でもって人間存在の根底を語り続けた」「ただの人であり、ただの人として自らを自覚し、ただの人の真実のあり方を告げた」とイエスに本来的な人間存在の在り方・範型を見る人間学的神学者の八木誠一に対するのと同じように（このように一方通行的に上昇志向的な往相的言葉を述べる人間学的神学者の八木には、また『はじめての宗教論』で「究極的な救済をどう得るかという視座から宗教について考察」すると述べ、神学研究の本質と教会の責務は、「個々人の救済、具体的な人間の救済です。人類という抽象的なものの救済ではありません」と述べたところの、思想の往還を全く持たない形而上学一面的固定的抽象的な救済理解者の宗教屋・佐藤優には、宮沢賢治の『雨ニモマケズ』や『よだかの星』のような思想的営為の還りがけに認識し自覚することができる還相的な言葉がないのである）。何故ならば、第三の形態に属する全く人間的な教会の「宣教においては、この（≪神の人格性の≫）概念によっては、特に何も得られることはないし、失われることもない」からである。このような訳で、第三の形態に属する全く人間的なイエス・キリストをのみ主・頭とする教会の「宣教」は、「われわれ自身の無限性（≪われわれ人間の自由な自己意識・理性・思惟の無限性≫）としてではなく」、また「一つの一般的な、中立な真理および善についての言葉としてではなく」、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の「神の言葉が、実際に一人の方、愛する方の言葉として、（≪創造主としてのイエス・キリストの父、和解主としての子としてのイエス・キリスト自身、救済主としての父と子の霊である聖霊という三位一体の≫）神ご自身をその対象および内容として持っている言葉として……宣べ伝えられることによってもってかかっている」のである。言い換えれば、第三の形態に属する全く人間的な教会の宣教は、徹頭徹尾、＜先行＞するイエス・キリストにおける神の愛の下で、あくまでもそれに＜後続＞して、起源的な第一の形態の神の言葉、啓示・和解、「イエス・キリストの名」、客観的な「啓示の実在」そのもの（第二の形態の聖書的啓示証言のそれ、客観的な啓示の「概念の実在」）を、その宣教、その思惟と語りにおける＜客観的＞な原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、神の言葉に対する他律的な服従（神の言葉に対する不可避的必然的な服従）と自律的な服従（徹頭徹尾、神の言葉――「イエス・キリストの名」に対して感謝をもって信頼し固執する決断と態度）との同在性・同時性において、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、＜純粋＞なキリストの福音、＜純粋＞なキリストにあっての神を尋ね求める「神への愛」と、そのような「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」（＜純粋＞なキリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、神の命令・要求・要請）――すなわち「もろもろの誡命中の誡命、われわれの浄化・聖化・更新の原理、教会が教会自身と世に対して語らねばならぬ一切事中の唯一のこと」（『福音と律法』）、＜純粋＞なキリストの福音を、＜純粋＞なキリストにあっての神を、イエス・キリストにおいて完了・成就された個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和を、この神の愛の行為の出来事としての神の存在を、すべての人々が現実的に所有することができるために為すキリストの福音の告白・証し・宣べ伝えを志向し目指していくということに「よってもってかかっている」のである、「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を志向し目指していくということに「よってもってかかっている」のである。このような訳で、神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて、「神が人格であるということではなく」、「神が＜どのような特定の＞人格であるかということが宣べ伝えられ」る時、すなわち「愛する方」としての神の愛の行為の出来事の神の存在が「宣べ伝えられ」る時、「必要な一切のことが起こるのである」。第二に、「われわれは、神の人格性という概念を取り上げる時、……人が神の三位一体に関する教説の中ででも最近に至るまで（大多数の人たちによって！）神の人格（Personen）について語ってきたことから生じる不明瞭さを意識しなければならない」――すなわち、「神の人格（Personen）」という概念（複数形）から生じる「三つの神的我」、「三つの対象」、「三神」という概念像を喚起させる「不明瞭さを意識しなければならない」。したがって、「われわれは、三位一体論と取り組んだ際」、三位一体の「事柄を言い表す」時、この「『人格（Personen）』という概念」――すなわち「三つの神的我」という概念を「用いることをやめることに賛成する立場をとった」のである。何故ならば、この「『人格（Personen）』という概念」は、「古典的な神学全体」においては、「人が今日『人格（Person）』という概念（≪「他との関係なしにそれ自身で存在している」近代的な「個体」概念≫）によって理解するのを常としているような方向では決して理解されたり解釈されたりすることはなかったからである」、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には、第二の形態の聖書的啓示証言）に信頼し固執し連帯したイエス・キリストをのみ主・頭とした「キリスト教会は、神の中に三つの人格」、「三つの神的我」が、それ故に「三重のわれ、三重の主体」、「三神論」、「三重の対象」の「意味で三つの人格性が存在しているということを決して教えたことはなかった」からである。キリストにあっての神は、「父なる名の内三位一体的特殊性」において、「ご自身の中で父・子・聖霊であることによって、（≪本質として、本来性として≫）ご自身の中で生き給う方、愛し給う方」、それ故に「ただ一人の方であり」、「また常に、われわれは、（≪神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて≫）神を父・子・聖霊として認識することによって、神をわれわれを愛する方として」、換言すれば神の愛の行為の出来事としての神の存在として、それ故に「われわれに出会い、われわれに対して、汝と呼びかけ、働きかけ給う一人の方として、認識するのである」。先行する神が、それに後続するわれわれが、「人格性として言い表すことのできる者」とすれば、それは、キリストにあっての「神ご自身の中およびその業の中での父・子・聖霊の共存の中での三位一体性全体の中において」であって、「決して個々の存在様式それ自体の中」においてではない。「三重ではなく、三度」、「三位相互内在性の中で、一人の三位一体の神が、人格性であり給う」のである。「神の三つの顔があるのではなく、一つの神の顔が、神の三つの意志ではなく、ただ一つの神の意志が、神の三つの義があるのではなく、ただ一つの神の義が、神の三つの言葉と業があるのではなく、ただ一つの神の言葉と業があるのである」。「徹頭徹尾、一人の神が、われわれに対して、イエス・キリストの中で啓示されているのであり、徹頭徹尾、同じ一人の神が、ご自身の中でも神であり給う。まさに三位一体の神としてのこの一人の神が、（あくまでもそう言ってよいならばのことであるが）人格的な神であり給う」、聖書的啓示証言に即して的確に表現するとすれば、「失われない」単一性・神性・永遠性を本質とする、「三位相互内在性」における「失われない差異性」の中で三つの存在の仕方・存在の態様（性質、働き、業と行為、神の愛の行為の出来事としての神の存在――創造、啓示・和解、救済）において「三度別様」に、父・子・聖霊なる神であり給う。バルトは、『教会教義学　神の言葉�T／１・２』で、次のように述べている――「創造された世界」における「神の愛」と「われわれの世界」における「イエス・キリストの事実の中における神の愛」との間には差異がある。すなわち、後者の神の愛は、「まさしく神に対し罪を犯し、負い目を負うことになった人間の失われた世界に対する神の愛」である。したがって、「和解ないし啓示」は、「創造の継続」や「創造の完成」ではない。この意味は、「和解ないし啓示」は、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方（性質、働き、業と行為、神の愛の行為の出来事としての神の存在）、「まさに顕ワサレタ神こそ隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおける「新しい神の業」である、ということである。それは、「神的な愛の力」・「和解の力」である。このイエス・キリストは、和解主として、創造主のあとに続いて、神の第二の存在の仕方において「第二の神的行為を遂行」したのである。この神の存在の仕方の差異性における「創造（≪起源的な第一の存在の仕方である父の業と行為、神の愛の行為の出来事としての神の存在≫）と和解（≪父が自分を自分から区別したところの第二の存在の仕方である子の業と行為、神の愛の行為の出来事としての神の存在）のこの順序」に、「キリスト論的に、父と子の順序、父（≪啓示者≫）と言葉（≪啓示≫）の順序」が対応しており、第二の存在の仕方である「和解主としてのイエス・キリスト」は、起源的な第一の存在の仕方である創造主としての父に先行することはできないのである。しかし、父・子は共に単一性・神性・永遠性をその存在の本質としているから、この存在の仕方における従属的な関係は、その「存在の本質」の差異性を意味しているのではなく、その「存在の仕方」の差異性を意味しているだけなのである。