『教会教義学 神論Ⅰ／２ 六章 神の現実（上）』「二十八節 自由の中で愛する方としての神の存在 二 愛する方としての神の存在」（その４－３）
カール・バルト『教会教義学 神論Ⅰ／２ 六章 神の現実（上）』吉永正義訳、新教出版社に基づく
『教会教義学 神論Ⅰ／２ 六章 神の現実（上）』「二十八節 自由の中で愛する方としての神の存在 二 愛する方としての神の存在」（その４－３）（５５－６３頁）
引用文中の（≪≫）書きは、私が加筆したものである。また、既出の引用については、その文献名を省略している場合がある。
（論述における様々な重複は、今後も含めまして、それは、あくまでも、理解し易くするためのものでもありますが、私自身のその存在・その思考・その実践において、私自身のものとするためでもありますし、また私自身のためでもありますので、ご了承ください。正直に言えば、もうひとつあって、それは、バルトを、単純にしかし根本的にそして包括的に理解することを目指した拙著だけで、バルトを、根本的包括的に理解することができるのかどうかという実証的実験を行うためでもありますので、ご了承ください。また、注意はしており、見つけた場合には速やかに訂正をしておりますが、引用上の不備、勘違いによる不備、誤字脱字等の不備について、もしそうしたことがありました場合にはご容赦ください）・（しかし、その論述内容については、少なくともカール・バルトに関しては、根本的包括的な原理的な誤謬は犯していないと考えます。したがって、そうした論述の積み重ねの中で、その内容についての表現の仕方の練り直しと的確化だけでなく、その内容の深化と豊富化が為されていると考えます。また、吉本隆明に関しても、まだ補充すべき点はいろいろあるとしても根本的包括的な原理的な誤謬は犯していないと考えます）・（最後に、indemについてだけは、２０１７年３月１２日以降、吉永正義訳の「……する間に」をすべて、井上良雄的に「……することによって」というように引用し直しています。なぜならば、その方がその文章内容をイメージし理解しやすいからです）
「六章 神の現実 二十八節 自由の中で愛する方としての神の存在」
「六章 神の現実 二十八節 自由の中で愛する方としての神の存在」について、バルトは、次のような定式化を行っている。
神はその啓示の中で、現にあるところの方であり給う。神はご自身とわれわれとの間の交わりを求め、造り出し、そのようにしてわれわれを愛し給う。しかし神はまた、われわれなしにも、ご自身からして自分の生命を持つ主の自由の中で、父、子、聖霊として、まさにこの愛する方であり給う。（３頁）
〔この定式の詳述〕
この定式の詳述については、『教会教義学 神論Ⅰ／２ 六章 神の現実（上）』「二十八節 自由の中で愛する方としての神の存在 一 行為の中での神の存在」（その３－１）で行っていますので、参照してください（２０１７年１１月１６日論述分）。
「二十八節 自由の中で愛する方としての神の存在 二 愛する方としての神の存在」（その４－３）
＜その４－２＞の論述においては、神は、「われわれをご自身のみ子の中で愛されたし、また現に愛し給い、愛されるであろうということ」、「神は、われわれを愛する時、ご自身をわれわれに贈り与えられたし、贈り与え給うということ、しかもまさにこの愛することが、神の最も固有な存在（≪固有な神の愛の行為の出来事としての神の存在≫）と本質であることによって（≪「父なる名の内三位一体的特殊性」において、「父ト子ヨリ出ズル御霊」・聖霊は、「父なる神と子なる神の愛の霊である」、それゆえにこの聖霊において、父と子は、愛に基づく完全な共存的関係・交わり・神的な共同性において存在している。ここに、本質的に本性的に神は愛である・愛は神であるということ、神は愛し給うということの根拠があることによって≫）、完全にご自身を贈り与え給うということ」――このことは、「いくらはっきりと見、また強調しても十分過ぎることはない」、と述べられていた。われわれが「神の愛」について語ろうとするならば、「われわれに対する神の愛の中での神の存在の完全性」は、すなわち神の愛の行為の出来事としての神の存在の完全性は、その神の「愛に固有」な自己「運動」（内在的な、神は愛である・愛は神である、神は愛し給うという神の存在、本質、本性における神の愛に固有な自己運動）であるということについて語らなければならないということである。「その際、あくまで事情は次のようであり続けなければならない」――すなわち、それは、「神は、すべての人々に命と息とその他すべてのものとを与え」、それ故に神は「神であるために、人の手によって仕えられる必要のない方（使徒行伝一七・二五）であり、あらゆる良い贈り物、あらゆる完全な賜物が上から下ってくる光の父（ヤコブ一・一七）であり、また祝福に満ちたただひとりの力ある方（Ⅰテモテ六・一五）であり、その方の言葉はそれ故に『祝福に満ちた神の栄光の福音』として理解されることを欲しているということである」。このような訳で、「昔の神学」は、「まさにこれらの聖書の言葉を念頭に置いて」、「ただ単に愛についてだけでなく、……それを超えて、神の祝福に満ちた姿」、すなわち「神が何モ乏シイモノガナク、スベテノヨキモノノ充実デ楽シミ、ゴ自身ノ中デ安ラギ給ウ祝福サレタ姿」について「強調しつつ語ったのである」、「ナゼナラバ、ゴ自身ヲ通シテ、ソノモトモトノ性質カラシテ、常ニスベテノ悪カラ自由デ、常ニスベテノヨキモノヲアフレ出サセ、常ニコノゴ自身ノ幸福ヲ完全ニ知り、常ニ自足シ、ゴ自身で満チ足リ、常ニ満足シ、ワレワレノ何モノヲモ欲シ求メ給ワズ（ここで好んで詩篇五〇・七以下が思い出された）ゴ自身以外ノ何モノモ熱望サレナイカラデアル」（ポラーヌス）。「既にアウグスティヌス」は、「神の愛」が「神とは違ったほかのものを対象として持っている限り」、「（受身的に）享受スル」「われわれの愛」と「（積極的に）喜ぶ」「神の愛」（「タダ神ノ善意ト関連シテイル」「ワレワレニ関シテ神ガ喜ビ給ウト言ワレルアノ喜ブコトハ、神ゴ自身ノ益ノタメデハナク、タダワレワレノ益ノタメデアル」ところの神の愛）とを区別している。「『至福は行為ノ中ニアル』（ポラーヌス）。しかし、「その神の行為（≪神の行為の出来事としての神の存在≫）は神の愛である。そのことがわれわれなしでも神の（≪内在的な≫）本質である限り、すなわち至福を「神がただご自身のためだけでなく、神がそれをご自身のために持たれることによって、またわれわれとの交わりの中ででも持とうと欲し給う同じ」神の（≪内在的な≫）本質である限り、「それが神の至福である」。この「神の愛の至福」は、神の愛の行為の出来事としての神の存在の中にある。この内在的な「神の本質」の、それゆえに「神の愛の完全性」の「満ち溢れの中でこそ」、神は、「われわれに対して身を向けつつ、神の愛の中で、神の愛と共に」、「またこの至福をわれわれに贈り与えようと欲し給うのである」。この「神の愛の至福」は、「神が父・子・聖霊であり、そのような方としてわれわれを愛し給うということ、すなわちわれわれの創造者、和解者、救済者（≪「三位一体の神の名」、イエス・キリストの父、子としてのイエス・キリスト自身、「父ト子ヨリ出ズル御霊」としての聖霊≫）として、……まさにそのような方として愛そのものであり、永遠に愛し給う方であるということ」に基づいている。このことが、われわれ人間に対して、われわれ人間の「すべての考えを越えた神の愛の秘義」（神の愛の行為の出来事）、「その他のすべての愛から区別された」神の愛、それゆえにその他の「すべての愛を限りなく凌駕する神の神性」を想起させるのである。聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第三の存在の仕方である聖霊は、起源的な第一の存在の仕方である「父なる神」と第二の存在の仕方である「子なる神」の「愛の霊」であって、ここに聖霊の「起源」がある――この聖霊において、父と子（神的な対）は、愛に基づく完全な共存的な関係・「交わり」（神的な共同性）において存在するのであるが、そのような愛に基づく完全な共存的な関係・「交わり」の中で聖霊は、「父は子の父」、「言葉の語り手」（啓示者）であり、「子は父の子」、「語り手の言葉」（啓示）であるところの業と「行為」・性質（「啓示されてあること」）、すなわち三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事であり、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）でありその関係と構造・秩序性である、ここに神は愛である・愛は神である、神は愛し給うということの根拠がある。言い換えれば、われわれが、神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいてイエス・キリストにおける「神の啓示の中での神の存在と関わるようになる時」、すなわちイエス・キリストにおける神の自己啓示の中での神の愛の行為の出来事としての神の存在と関わるようになる時、われわれは、あの「ひとつの真実な愛」について「その他のすべての愛はただ証しすることができるだけであり、しかもその証は自分からするのではなく」、すなわち教会論的なキリスト教的人間を含めて人間論的な自然的な人間に内在する「証明能力によってするのではなく」、また自然的な人間に内在する相互扶助意識や愛の奉仕の意識によってするのではなく、われわれ人間の「被造物的な愛」が、イエス・キリストにおける神の自己啓示の中で、神の言葉自身の出来事に自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて、あの「ひとつの真実な愛と直面させられ、われわれ被造物として愛する者」が、あの「神的なひとつの真実な愛の対象として要求されることに基づいて証しすることができるだけである真実な愛と関わるようになるということ」を想起することができるのである。このような訳で、われわれ人間の「被造物的な愛」は、先行するイエス・キリストにおける神の愛の下で、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には、その第二の形態の聖書的啓示証言のそれ）を、その存在、その思惟、その実践における原理・規準・法廷・審判者・支配者として、絶えず繰り返し、それに聞き教えられるということを通して教えるという仕方で、＜純粋＞なキリストの福音、＜純粋＞なキリストにあっての神を尋ね求めるという後続する「神への愛」と、そのような「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」――すなわち、すべての人々が＜純粋＞なキリストの福音を現実的に所有することができるために為すキリストの福音の告白・証し・宣べ伝えを志向し目指していくところにあるのである、イエス・キリストをのみ主・頭とする「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を志向し目指していくところにあるのである。したがって、このような聖書的啓示証言によるわれわれ人間の「被造物的な愛」とは区別されたところの、それ故にそれとは独立的に二元論的にあるいは二元主義的に考え出されたところの宣教論や、また革命論の課題を明確に提起できないままに、それ故にその課題を明確に提起しないままに為されるところの即事的場当たり的な社会的政治的な言説や実践にあるのでは決してないのである。このような宣教論、社会的政治的な言説や実践は、ちょうど「哲学、歴史学、心理学等」が、教会の「神学的問題領域のどれにおいても、事実上、教会の自己疎外の増大以外のなにものにも役立ちはしなかった」ように、また「神についての教会の語りの堕落と荒廃以外の何ものにも役立ちはしなかった」ように、役立ちはしないのである（『教会教義学 神の言葉Ⅰ／１・２』）。このことは、事実的に、そのような宣教論や社会的政治的な言説や実践を主張する第三の形態に属する全く人間的な教会の生と生活、社会的政治的な言説と実践――これと、イザベラ・バードの『日本奥地紀行』におけるアイヌの生と生活、思考と実践の在り方を比較考量してみればすぐに分かることである。
このような訳で、聖書的啓示証言におけるわれわれ人間の「被造物的な愛」は、さらに詳しく言えば、あくまでも先行する神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいてイエス・キリストにおける「神の啓示の中での神の存在（≪神の愛の行為の出来事としての神の存在≫）と関わるようになる時」、第三の形態に属する全く人間的な教会（その個体的自己としての全成員）は、あの「神的なひとつの真実な愛の対象として要求されること」、すなわち先行するイエス・キリストにおける神の愛の下で、起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には第二の形態の聖書的啓示証言のそれ）を、その宣教・その思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者として、神の言葉に対する奉仕としての他律的な服従と自律的な服従との同在性・同時性において、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、＜純粋＞なキリストの福音・＜純粋＞なキリストにあっての神を尋ね求める「神への愛」と、そのような「神への愛」に根拠づけられた「神の賛美」としての「隣人愛」――キリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、神の命令・要求・要請、すなわちすべての人々が＜純粋＞なキリストにあっての「神の愛の至福」・＜純粋＞なキリストの福音を現実的に所有することができるために為すキリストの福音の告白・証し・宣べ伝えを志向し目指していくところにあるのである、換言すればイエス・キリストをのみ主・頭とする「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を志向し目指していくところにあるのである。神は愛である・愛は神である、「神は愛し給う」――これが、「神の存在の特別な現実性」、「神の行為あるいは神の生……の内容である」、神の愛の行為の出来事としての神の存在の内容である、イエス・キリストの父（創造主）、子としてのイエス・キリスト自身（和解主）、父と子の霊である聖霊（救済主）という三位一体の「神の名の啓示の中で明らか」にされている神の「本性」、「神の本質である」。
聖書的啓示証言によれば、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストは、イエス・キリストの父（創造主としての神、永遠なる父）、子としてのイエス・キリスト自身（和解主としての神、永遠なる子）、父と子の霊である聖霊（救済主としての神、永遠なる霊）として、「三位一体の名」を啓示している。したがって、「神の存在の特別の現実性」、神の行為の出来事としての「神の存在の特別の現実性」、換言すれば神の愛の行為の出来事としての、イエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現、すなわち神の自己認識・自己理解・自己規定、その＜生誕・死と復活＞総体における啓示・和解、完了・成就された個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済・平和そのもの、起源的な第一の形態の神の言葉、客観的な「啓示の実在」そのものとしての「神の存在の特別の現実性」、すなわちこの「神の存在であるところの神の行為」・「神の生……の内容」――このことが、「三位一体」の「神の名の啓示の中で明らかである神の本質」であり、「それは……神は愛し給うということである」。それは、神ご自身の自己認識・意志・行為（行動）である、神の愛の行為の出来事の自己運動である、神の存在である。イエス・キリストによって自己啓示された三位一体の神は、「ただ神だけが愛することができるような仕方で」、「ただ神だけが愛し給う」――この「愛するということ」、すなわちこの神の愛するという行為の出来事が、「神の存在である」、還元すれば「『神が存在する』ということは、『神は愛する』ということである」、神は愛である・愛は神であるということである、神の愛の行為の出来事であるということである。言い換えれば、「自由・主権」がそうであったように、「愛」は「神ご自身においてのみ実在であり真理である」ということである。「われわれが引き続き、神の存在に関して認識し告白しなければならないであろうこと」は、「あらゆる事情のもとで、愛する者としてのこの神の存在の規定でなければならない」ということ、すなわち神の存在は神の愛の行為の出来事としての神の存在であるということ、「神は誰であり、何であるかに関しての……すべての命題は、……神の愛の秘義（≪神の愛の行為の出来事≫）のまわりを巡らなければならないであろう」ということ、それ故に「それらすべての命題は、ある意味でただこの『神は愛し給う』という一つの命題（≪神の愛の行為の出来事としての神の存在という命題、あるいは神の存在は神の愛の行為の出来事であるという命題≫）の反復、言い換えであり得るだけ」であるということである。したがって、「神の性質に関する教説の中で、神の愛そのものの個々の説明が問題である時も、その神的自由の個々の説明が問題である時にも、われわれはこの中心へと向かうこの同じ集中の中で考え、語らなければならないであろう」。したがって、「すべては、……神は＜愛する方＞であるという根本規定が、われわれからもはや失われず、さらに引き続いてのことが、事実、この根本規定の内容展開であるであろうということによってもってかかっている」のである。
すでに論じたように、「神の存在」は「徹頭徹尾神の行為である」と理解することができる、すなわち「自分自身の、意識的な、意志され、実現された決断の中での存在」である「人格的存在」としての「（≪不可視な神的な≫）精神と（≪可視的な神的な≫）自然の単一性の中でだけ出来事となって起こる」自己還帰する対自的であって対他的・他在であって自在・全き自由の「神の行為（≪第二の存在の仕方≫）の出来事」としての「神の存在」は、「それ自身を通して動かされた存在として」、神の第二の存在の仕方（業と行為、働き、性質）である「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおける神の自己「啓示の中で出来事として起こっており、啓示を通して惹き起こされた（≪可視的な神的な≫）自然と（≪不可視な神的な≫）精神の（≪出来事の自己≫）運動」として理解することができる、それ故にイエス・キリストにおける神の自己「啓示は、その権威と信頼に値する性質を、（≪神と人間との無限の質的差異の下で、徹頭徹尾、常に、≫）すべての人間的な基礎づけの彼岸（≪・外≫）において、（≪あくまでも神の側の真実として≫）それ自身の中に基礎づけられている」、それ故にまた「人間に対する神の権利と人間と結ばれた契約の中での神の真実は、それらを確証するためにはただ神ご自身を必要としているだけ」である、換言すればあくまでも神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）を必要としている、「神が何であり給うかについてのすべての言明、あるいは神はどのようであり給うかについてのすべての説明は、あらゆる事情の下で、神がその行為と決断の中で何であり、どのようであり給うかということを述べ説明しなければならない」ということである。このように、われわれは、神の行為の出来事としての神の存在という規定を念頭に置いて、「認識し、意志し、行為するわれ（Ich）である」「人格（神格）」（神の存在の仕方）として神を論じたのであるが、内在的な本性、本質として神は愛である・愛は神である、「神は愛し給う」が故に、先行して「われわれを（その方の仕方で）愛し給う方、（その方の仕方で）ご自身とわれわれとの交わりを求め、造り出す方」（徹頭徹尾、神と人間との無限の質的差異の下で、「ご自身とわれわれと」を架橋される方）――「その方は、そのことによって何が人格であるかについて決定的なことをわれわれに知らせ給う」のである――すなわち、この先行するイエス・キリストにおける神の愛の下で、起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には、第二の形態の聖書的啓示証言のそれ）を、われわれのその存在、その思考、その実践における原理・規準・法廷・審判者・支配者として、絶えず繰り返し、それに教えられることを通して教えるという仕方で、＜純粋＞なキリストの福音、＜純粋＞なキリストにあっての神を尋ね求める「神への愛」と、そのような「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」（＜純粋＞なキリストの福音を内容とする福音の形式としての律法）、すなわち＜純粋＞なキリストの福音をすべての人々が現実的に所有することができるために為すキリストの福音の告白・証し・宣べ伝えを志向し目指すところのわれわれの人格の在り方について「知らせ給う」のである、イエス・キリストをのみ主・頭とする「ヒトツノ、聖ナル、公同の教会」を志向し目指すわれわれの人格の在り方について「知らせ給う」のである。このように、聖書的啓示証言における「認識し、意志し、行為するわれ（Ich）である」「人格の定義」は、イエス・キリストにおける神の自己「啓示の中で明らかとなる神の人格、すなわちそのような（その方の仕方で愛する者である）方として人格そのものである愛する方に対する告白という意味を持つことができるだけ」なのである。このような訳で、その現にあるがままの「人間は、人格であるのではない」のである。このことは、この世の事柄に、世俗的な事柄に引き寄せて考えてみた場合も、現実的にそうなのである。個人概念、個体概念、個体的自己の概念は、政治的近代国家において法制的中枢としてある権力の意志表現としての憲法の内部でだけ分離され成立しているそれであって、換言すれば自己身体を座とする自己還帰する自己幻想・自己思想とは逆立するところの、すなわち自己身体を座としないところのそれ自体の自体的展開過程と自己増殖過程を持つ権力の意志表現としての共同幻想の内部でだけ分離され成立しているそれであって、それ故にそれは、社会的に、現実的に、究極的総体的永続的に解放されたところのそれでは全くないのである。したがって、観念の共同性を本質とする国家だけが自由主義国家であり得るのであって、それ故に現実的な市民社会内部では自由は恣意的であり、それ故にまた他者を現実的に侵害しないという点に個人主義の原則があるにもかかわらず、この原則は現実的な社会においては通用しないのである、また権力の意志表現としての観念の共同性を本質とする法の内部においては、すなわち共同幻想の内部においては平等であるにもかかわらず、現実的な市民社会内部においては、その社会生活においては、社会的格差や社会的不平等や対立や争い等々があるのである。このような訳であるから、われわれの現実性は、天上の観念的非日常性（あたかも格差や不平等や対立や争いのない法的政治的共同的観念によって統一された公的共同性の一員・公民としての生活）と地上の現実的日常性（私人として、「私利・私意」に基づく利己主義的な私的他者との対立・争いの生活、利害共同性との対立・争いの 生活という市民社会生活・個別的私的現実的生活）との二重の生活が強いられるところにあるのである。論述を元に戻せば、その現にあるがままの「人間は、彼が（≪先行する≫）神によって愛され、（≪その先行する≫）神を（≪神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられる啓示認識・啓示信仰の下で後続して≫）愛し返すことが許されるということに基づいて、人格となるのである」。この「愛し返す」は、あの、先行するイエス・キリストにおける神の愛の下で、＜純粋＞なキリストの福音・＜純粋＞なキリストにあっての神を尋ね求める「神への愛」と、そのような「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」（＜純粋＞なキリストの福音を内容とする福音の形式としての律法――すなわち、すべての人々が＜純粋＞なキリストの福音を現実的に所有することができるために為すキリストの福音の告白・証し・宣べ伝え）の連環と循環を志向し目指すということを意味している。「人間は、神の人格の中で、何が人格的存在であるかということを見出す時に、また神ご自身によって人間に与えられる交わりの賜物の中で自分自身の人格を見出す時に、人格とは何かを見出すのである」。あくまでも「＜われわれ＞が＜われ＞ではなく、＜神＞が＜われ＞であり給う。何故ならば、ただ神だけが、他の善なしに、他の根拠なしに、他の目的なしに、またご自身のうちに持ち給う以外のほかの至福なしに、愛し給い、それと共に自分自身であり、そのような方として、（≪他者の「存在根拠」として、他者への「条件」づけ・「限界」づけとして≫）他者に、汝に出会うことができる方として、＜われ＞であり給うからである」、「われ――存在」であり給うからである。したがって、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の起源的な第一の存在の仕方である「父なる名の内三位一体的特殊性」において「ご自身の力と行為に基づいて交わりを造り出して行く力を持ち」、「ご自身の中で、交わりを造り出してゆく力を持ち、交わりを実現する方……であり給う」、「まさにそのようにして」、人間という「他者を必要とすることなしに」、「今や……（≪人間という≫）他者に相対しても、交わりを造り出してゆく力を持ち、交わりを実現する方であり給う」。言い換えれば、自己還帰する対自的であって対他的、他在であって自在、全き自由の「神だけが＜われ＞であり給う」、「われ――存在」であり給う。このことが、「起源的な、本来的な、われ――存在、であるということの意味である」。この「神の存在」が、すなわち「神が愛し給うということ」が、換言すれば神の存在は神の愛の行為の出来事であるという「ただそのことだけが、このわれ――存在の性格を持っているのである」。「なぜならば、『そのような自己規定は、……最も完全な自己肯定であり、このような確認が、完全な自己確認であり、……その中で主体が、すなわち自分自身の存在と生命が、他者のための定めおよび活動と一致し、それ故生命から生命が出て来、生命が生命を働き出し・造り出す完全な生命……である（Cremer）』からである」。このことから、三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事である、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性としての「神の言葉の三形態」（キリスト教に固有な類・歴史性）の関係と構造・秩序性、客観的な啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、神の言葉自身の出来事との自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による客観的な啓示の出来事（起源的な第一の形態の神の言葉・客観的な「啓示の実在」そのもの、具体的には第二の形態の聖書的啓示証言のそれ・客観的な啓示の「概念の実在」）とその啓示の主観的側面である聖霊の注ぎによる信仰の出来事に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）――この先行するイエス・キリストにおける神の愛の下で、キリストにあっての神にとって「汝」であり「他者」であるわれわれは、起源的な第一の形態の神の言葉（具体的には、第二の形態の聖書的啓示証言のそれ）を、その存在、その思惟、その実践における原理・規準・法廷・審判者・支配者として、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、＜純粋＞なキリストの福音・＜純粋＞なキリストにあっての神を尋ね求める「神への愛」と、そのような「神への愛」を根拠とした「神の賛美」としての「隣人愛」という連環と循環を志向し目指していく、換言すれば起源的な第一の形態の神の言葉であるイエス・キリストをのみ主・頭とする「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を志向し目指していく、という生と生活を喚起させられるのである。
このような訳で、「われ」を、「われ」の愛の行為の出来事としての「われ」の存在を、すなわち「われ――存在」を、「単なる」「行為」の「出来事」から「区別するところの、起源的な、本来的な認識すること、意志すること、行動することは、人間の存在の性質や特権ではなく」、「愛する者としての神の存在の性質および特権である」、愛する者としての神の愛の行為の出来事としての神の存在の性質および特権である。何故ならば、その神の「愛の中では、認識し、意志し、行動する主体、その対象、その対象との交わりを求め造り出すことは、一つであるからである」、自己還帰する対自的で対他的・他在であって自在・全き自由の神の愛の行為の出来事だからである。「確かにただ神の愛だけが、まことに認識し、まことに意志し、まことのに行動する」。したがって、バルトは、『教会教義学 神の言葉Ⅰ／１・２』で、「単なる知識」と「認識」とを厳密に区別して、その差異性について次のように述べている――「全く特定の領域」で、「ある特定の状況において」、「ある特定の人間」が、イエス・キリストにおける神の自己啓示を通して、すなわち神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて「神の言葉」を聞き・認識し・信仰し・語る責任ある証人となる場合、その「出来事」・「確証」は、「単なる知識」ではなくその啓示に感謝をもって信頼し固執する「認識」・信仰（啓示認識・啓示信仰）である、その時初めて神の言葉は、われわれ人間に対して「実在」となり、またわれわれ人間も人間的にそれを「実在として理解」することができる、人間の言語を介した直観と概念を用いて現実的に所有することができる。言い換えれば、「神が愛する者としてご自身の中で、また被造物との神関係の中で、神がなし給うような仕方で認識し、意志し、行動するということ」が、「神のわれ――存在を確証しつつ」（先行する神のわれ――存在を、後続して媒介・反復しつつ）存在するということが、われわれの「人格――存在ということである」。キリストにあっての神こそが、「認識し、意志し、行為するわれ（Ich）」「人格」である、「われ――存在」である。このように、神は、「ただ単に理念的ではなく、現実的な人格であり、人格化されたというのではなく」、「人格を造り出して行く人格である」。したがって、われわれは、このキリストにあっての神の「われ――存在」に基づいて「初めて（仮説的に！）また他の神とは異なる人格についても語」ることができる。このように、このキリストにあっての神は、「われわれにその啓示の中で愛する方として出会われる時、神は無比なる一人の方としてわれわれに出会い給う」。このような訳で、われわれは、「神がわれわれに（≪父、子、聖霊という≫）神の名を知らせ、またわれわれをわれわれの名で呼ばわる以前に」は、「われわれ自身がわれであることについて」、本来的な意味で何も知ることはできないのである。神語り給う故に神語り給うことを聞く以前には、本来的な意味で「聞くということは何を意味している」のか何も知ることはできないのである。三位一体の神が、われわれのためにその第二の存在の仕方であるイエス・キリストにおいて自己啓示する方として、すなわち「われわれために行動する方として、われわれに明らかとなる以前に」は、本来的な意味で「行動するということは何を意味している」のか何も知ることはできないのである。言い換えれば、イエス・キリストが、われわれ人間に対して、「同時的となる時と所」、「『神われらと共に』が＜神ご自身によって＞われわれに語られるところ」において初めて、「われわれは神の支配のもとに入る」ことを認識し承認し確認することができるのである、「世、歴史、社会を、その中でキリストが生まれ、死に、甦られたところの世、歴史、社会」として認識し承認し確認することができるのである、「自然の光の中でではなく、恵みの光の中で、それ自身で閉じられ、かくまわれた世俗性は存在せず、ただ神の言葉、福音、神の要求、判定、祝福によって問いに付され、ただ暫時的にだけ、ただ限界の中でだけ、それ自身の法則性とそれ自身の神々に委ねられた世俗性があるだけである」ことを認識し承認し確認することができるのである（『教会教義学 神の言葉Ⅰ／１・２』）――このような、「神のみ言葉の中でのその力と支配を知る認識なしに」は、本来的な意味で「力と支配とは何を意味している」のか何も知ることはできないのである。したがって、われわれは、「人間を人格として、一人の者として」、個人として、個体性として、個体的自己として思惟し語る時、「神の人格の全くぼんやりした模写および反響の中」で、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおける神の「み言葉によって明らかにされた」模写の中で、神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる人間が人間的に所有する人間の「神の映像」（模写）の中で、「考え語っているのである」。このような訳で、「われわれが、人間をそのような者として記述することができる時、意識的にあるいは無意識的に負うているのは」、イエス・キリストにおける神の自己「啓示の中での神の愛である」、神の愛の行為の出来事としての神の存在である。
さて、実際に、われわれが、「人間的な人格として知っているところの一人の方、人格」は、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の第二の存在の仕方、「まさに顕サレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間、「イエス・キリストの名」、「イエス・キリストの人格である」。このイエス・キリストこそが、「み子なる神の人格である」――その神性の受肉ではなく言葉の受肉である「人間性が、それ自身で人格であることなしに、あるいは人格を持つことなしに、神の人格との交わりの中へと受け入れられたみ子なる神の人格である」。したがって、ナザレのイエスという「人間の歴史的形態」、すなわち「イエス・キリストの名」――「まさにこの一人の人間が、われわれに対してご自身を明らかにする、愛する者としての神の存在である」、愛する者としての神の愛の行為の出来事としての神の存在である。「イエス・キリストにおける神の愛」は、神自身の「人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一である」（『ローマ書』）。このような訳で、「聖書の人格的な語り方」は、われわれが、「聖書の語り方に従いつつ、神について、抽象的な概念を用いて、『最高善』とか『絶対者』、『全能』、『全知』等々について語るのではなく、認識し、意志し、行動する＜われ＞としてそれらすべてのものである一人の方について語」ればよいというような、また「Ⅰヨハネ四章の『神は愛である』という等置を人格的に神は愛する方であると理解」すればよいというような、「子供っぽい、ナイーブな擬人的なものではない」のである、すなわちイエス・キリストにおける「神の自己啓示に基づき、神の啓示に服従しつつ、信仰と宣教の務めに役立てるすべての概念とすべての直観と比べて、特にそれ以上に、子供っぽい、ナイーブな擬人的なもの」ではないのである。言い換えれば、「聖書の人格的な語り方こそ」が、「神は何物かであるのではなく」、「徹頭徹尾、ただひたすら」、一人の「イエス・キリストの名」（神の人格）にのみ「対応している」のである。したがって、「聖書の人格的な語り」は、「擬人」法という「われわれの表象的用語法の彼岸において」、神が、われわれに、「結局一人の者ではなく」、「一つの物」、それ故に「例えば非人格的な絶対者、最高善、世界精神、世界根拠等々であるという……留保」性を「許」し「命じ」ているという「具合でもないのである」。もちろん、このことは、「われわれは、（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「（≪客観的な≫）啓示と（≪その啓示の主観的側面としての聖霊の注ぎによる≫）信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で、あの「神の言葉の三形態」の起源的な第一の形態の神の言葉、具体的には第二の形態の聖書的啓示証言の中において「現にある方として」≫）神を認識する時」、あくまでも人間の言語を介した直観と概念を用いて啓示認識・啓示信仰するのであって、換言すれば「決して神がご自身を認識し給うようには認識しない」のであって、またわれわれは徹頭徹尾、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の不把握性の下にあるのであって、それ故に「神を〔完全には〕理解することはないということ」――「このような留保とは何の関係もない」のである。キリストにあっての神は、「愛についての（≪非本来的な≫）われわれのすべての直観と概念を凌駕しつつ」、「まさにそのような仕方で真に愛する方であり、まさにそのようにして一人の方、人格であり給う」。このような「一人の方として」、本来的な「人格（≪神の人格≫）として、神は」、非本来的な「われわれの人格に関するすべての直観と概念を凌駕し給う」。まさにそのような仕方で、神は、本来的な「一人の者、一つの人格とは何であるかを啓示し給う」。このような訳で、われわれに対して「次のことが許され、命じられている」――すなわち、それは、「われわれが、神について人格的に語ることによって」、すなわち起源的な第一の形態の神の言葉（啓示・和解、客観的な「啓示の実在」そのもの）である「イエス・キリストの名」にのみ感謝をもって信頼し固執して語ることによって（具体的には、第二の形態の「聖書への絶対的信頼」によって、すなわち客観的な啓示の「概念の実在」である聖書的啓示証言に信頼し固執し連帯することによって）、「人間的なものの制限の中で（≪限界づけの中で≫）、真理を語るということである。しかもその真理は、その背後にそれよりもっと高いいかなる真理も存在しない真理である。何故ならば、神は、われわれにとって解消させてしまうことのできない神の本質の隠れの中ででも、神がご自身」を、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおける神の自己「啓示の中で（≪その啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力、キリストの霊である聖霊の証しの力、神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて≫）われわれにとって直観と概念を用いて把握できるものとされたところの一人の方以外の方であり給わないからである」。さらに「聖書の人格的な語り方」は、「一方では神を非人格的な絶対者として」、「同時に他方では（あのもともとの論理的矛盾の中で）神を人格として理解しなければならないが故に」、「人格的な語り方を神に適用することは、神の本質の中でのわれわれには解き難い背理の承認を意味しているという具合でもない」のである。この時、われわれは、「われわれには解き難い神の本質の背理は、決してわれわれにとってそのようなものとして洞察でき、自由に処理できる二つの概念の間の論理的な緊張の背理ではない」ということに「注意を払わ」なければならない、換言すれば「両者を互いに結びつけること」が、両者を「神の現実」として「この困難」（二つの概念の間の論理的な緊張の背理）を「克服」することが、われわれの自由事項・裁量事項であるかのように思惟し語ることをしないように「注意を払わ」なければならない。何故ならば、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて自己啓示された神は、「失われない差異性」の中で三つの存在の仕方（性質、業、働き、行為、行動）において「三度別様」に父、子、聖霊なる神であって、その存在は「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「一神」・「一人の同一なる神」であり、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神であるからである。したがって、われわれは、次のように思惟し語らなければならない――すなわち、「まず第一に、本来的に」、先行するイエス・キリストにおける神の愛の下で、キリストにあっての神は、後続するわれわれがあくまでもあの「啓示と信仰の出来事」に基づて「われわれの概念」で「言おうとして」いる方であるのであるが、「しかし結局」は、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する単一性・神性・永遠性を本質とする三位一体の神の不把握性の下にあるわれわれ「自分自身からしては言い表すことができない」ところの方で「あり給うということ」、またキリストにあっての神は、「その起源的な、本来的な存在の中でご自身をわれわれに啓示された（≪顕わされた神≫）ということ、しかしそれでも矢張り依然としてその啓示の中でも把握できないまま（≪隠された神≫）であり続け給うのであるが、それでいてわれわれの概念を、（≪神の言葉自身の出来事の自己運動、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で≫）神を認識することに奉仕させ、役立たせることを許し、命じ、われわれの服従を祝福し、われわれの限界の内部で、まことに認識され得るものとなり給うということ、それらのことが、神の本質の、われわれには解き難い背理である」というように、思惟し語らなければならない。このことは、「神の恵みが、われわれの失われた姿と共にある共存の背理であって、われわれにとって論理的に結びつけることのできない二つの概念の共存という背理ではない」、ということを意味している。したがって、キリストにあっての神が、「われわれにご自身を現にあるところのものとして、すなわち愛する者として」、それ故に「一人の者」、「イエス・キリストの名」、神の「人格として啓示されたということ」を、われわれは「堅くとって離さないであろう」。また、われわれは、「それと並んでいかなる他のものをも（それがそのものと論理的に結びつけられ得るか得ないかは別にして）語るべきではなく」、「独一無比な特性にすべての注意を払いつつ」、「ただそのことだけを、そのすべての帰結と共に、この（神は一人の方であるという）一つのことを語らなければならないということを堅くとって離さないであろう」。「それであるから、神ご自身がわれわれに対してそのみ言葉の中でそのことに関しあらかじめ語り給うたことにそれが対応して」いる際には、「『絶対者』という言葉で言われることのできるであろうこともまた尊重されるであろう……」。しかし、キリストにあっての神は、「『絶対』であるということによって、弁証法的に限界づけられ補充され」るのでは決してない。すなわち、キリストにあっての神は、「神の人格性と神の絶対性」という「対立を弁証法的に克服する中で初めて真実に、現実に神である」のでは決してないのである。キリストにあっての神は、「一人の者」、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間「イエス・キリストの名」、起源的な本来的な「人格」（神の人格）であることによって、「現にあるところのすべてのものであり給う」。