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１２の６『教会教義学　神論�T／１　�~の認識』「五章　�~の認識　二十六節　�~の認識可能性」「二　人間の用意」（302-326頁）
再推敲・再整理版です。

「二　人間の用意」
　「一九三四年五月三一日のバルメン宗教会議の神学的宣言の第一条」――「『わたしは道であり、真理であり、命である。だれでもわたしによらないでは、父のみもとに行くことはできない』（ヨハネ一四・六）。『よくよくあなたがたに言っておく。羊の囲いにはいるのに、門からでなく、ほかの所からのりこえて来る者は、盗人であり、強盗である。……わたしは門である。わたしをとおってはいる者は救われるであろう』（ヨハネ一〇・一、九）。聖書においてわれわれに証しせられているイエス・キリストは、われわれが聞くべき、われわれが生と死において信頼し服従すべき神の唯一のみ言葉である」――すなわち、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書（その最初の直接的な第一の、「啓示ないし和解」の「概念の実在」、預言者および使徒たちのイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」）においてわれわれに証されているイエス・キリストは、「教会に宣教を義務づけている」その聖書を自らの思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者とした教会の成員である「われわれが聞くべき、われわれが生と死において信頼し服従すべき神の唯一のみ言葉である」。

　第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書を自らの思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者とした第三の形態の神の言葉である教会の＜客観的＞な信仰告白および教義の連続性に連帯した「宗教改革時代の神学と信仰告白書」も、「自然神学の問題」（自然的な信仰・神学・教会の宣教の問題）とそれに対する「信仰告白書の形で為すべき対決を不問のままに残した」のであるが、この「福音主義教会……の文書」（バルメン宣言）は、「自然神学の問題」（自然的な信仰・神学・教会の宣教の問題）を「問題視しそれに対決した重要な最初の文書である」。「一九三三年、自然神学の問題（≪自然的な信仰・神学・教会の宣教の問題≫）は、事実、はじめて尖鋭化された問題となった」――この年、「ドイツ福音主義教会」が、「はっきりとした形で、全線にわたって、自然神学（≪自然的な信仰・神学・教会の宣教≫）の特定の新しい形態、すなわち……政治的な出来事の中に、特に（≪キリストにあっての神としての神ではなく、人間的理性や人間的欲求によって対象化され客体化された「存在者レベルでの神」としての≫）神によって遣わされたアドルフ・ヒットラーなる人物の中に、（≪そのような水準の≫）神の特別な新しい啓示の源泉を認識するようにという不当な要求の前に立たされた時」、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）の問題は「焦眉の問題となった」（下記の【注】を参照）。すなわち、「その要求は、服従と信頼を要求しつつ、聖書に証しされた啓示（≪唯一回的な唯一無比の特別のイエス・キリストにおける神の自己啓示、特別的啓示≫）の傍らに入ってきたのであり、聖書に証しされた啓示と並んで拘束的義務的なものとしてキリスト教の宣教と神学によって承認されることを求めたのである。この要求と共に、また人々が至るところでこの要求に従ったという事実によって、周知のようにいわゆるドイツ教会闘争が始まった」のである。この要求は、最後的には、「第一の要求の背後」において、「聖書の主題であり、同時に哲学の要旨である」神と人間との無限の質的差異を固守するという＜方式＞（『ローマ書』）を後景へと退け排除して、「政治的運動の動力に対応しつつ」、生来的な自然的な人間的理性や人間的欲求によって対象化され客体化されたに過ぎない「存在者レベルでの神」（偶像）としての「神の特別な新しい啓示」（ただの人間「アドルフ・ヒットラー」、ナチズム、一般的啓示）を「唯一の啓示として宣言することを考えていた」のである。

【注】
　日本においても、先ず以て日本のキリスト教会の指導層はバルメン宣言の内在的な重要性（自然神学、自然的な信仰・神学・教会の宣教には何の力もないこと）を理解できず、それ故にその教会の指導層は、また一般の知識人やマス・メディア（朝日新聞やＮＨＫ等）は、「国家の政策を、……あらゆるこじつけを駆使して合理化し」、国家の政策に加担し、自国や他国の大多数の被支配としての一般大衆を戦争へと駆り立て、その一般大衆の具体的な彼を・彼の家族や親族を・彼の友人を死に追いやったのである。戦後過程において、このような主要マス・メディアを含めた知識人の敗北の構造――すなわち、「国家の政策を、知識人があらゆるこじつけを駆使して合理化し、それを大衆が知的に模倣し、行動では国家以上に国家を推進し、支配に直通していく大衆の存在様式を把握できなかった」ところの知識人の敗北の構造を明確に提起したのは吉本隆明であった。したがって、吉本は、様々な知識人の知識や様々なマス・メディアの情報を、「そのまま鵜呑みにしたり模倣したり」しないように注意喚起している。バルトも、次のように述べている――教会の宣教を「より危険なものにしてしまう」のは、第三の形態の神の言葉に属する教会が、徹頭徹尾第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書（その最初の直接的な第一の「啓示ないし和解」の「概念の実在」）を、その教会の宣教の、その一つの補助的機能としての神学の思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者としないで、「正しい注釈」を、「最終的に……教会の教職の判決に、……間違うことはありえないものとして振る舞う歴史的――批判的学問の判決に、依存させてしまう」ところにある（『教会教義学　神の言葉』）。

　このような人間の自主性・自己主張・自己表現・自己弁護・自己義認の欲求に基づいた人間によって「わがまま勝手に」恣意的独断的に曲解された「律法の悪用」という事態の中で、キリストの福音を内容とする福音の形式としての律法（ここで、神の「律法の目標」は、キリストの福音を目標とすることである）と共に、キリストの福音（神の福音）の内容――すなわち、徹頭徹尾神の側の真実としてある、それ故に「成就と執行」・「永遠的実在」としてある、主格的属格として理解されたローマ書3・22、ガラテヤ書2・16等のギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」（イエス・キリストが信ずる信仰）による「律法の成就」・完了そのもの、すなわち「神の義、神の子の義、神自身の義」（『ローマ書新解』）そのもの、それ故に成就・完了された個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済（この救済概念は、平和の概念も包括している）そのものも「破壊」されてしまうのである。ここにおいては、イエス・キリストは、「一種神話的な半身（付属物）」、「理念の人格化」、「偉大な貸方」となる。このような「偽りの姿における律法」は、あのキリストの福音を「律法の目標としない」のであるから、その「律法の目標」は、人間的な「自然法」や抽象的「理性」や「民族法」という形に転倒されてしまうのである。その時には、キリストの福音を内容とする福音の形式としての律法を守らないのであるから、キリストの福音の内容も喪失してしまうのである。したがって、その時には、人間の無神性・不信仰・真実の罪という人間の状態があるだけである。したがってまた、その時には、その人間は、徹頭徹尾「喪われた者」であり、「死と地獄に渡された者」であり、「何の助言も、何の慰めも、何の助けも存在しない」のである。人間論的な自然的人間であれ、教会論的なキリスト教的な人間であれ、誰であれ、われわれ人間は、「そのままでは恵みを受け取る状態にはない」し、また「自分でそのような状態にすることもできない」。したがって、「もし人がその恵みを受け取り得たとすれば、そのこと自体が恵みである」。すなわち、われわれの「召命・義認・聖化」は、われわれ人間の生来的な自然的な「理性や力」（知力、感性力、悟性力、意志力、想像力、自然を内面の原理とした身体的修行等）、自力を契機として、われわれの自身の中に「生起するのではなく、（≪神の側の真実としてある≫）イエス・キリストの御業として、われわれのために、われわれ自身の中に生起する」のである。われわれ人間の「更新を可能とするのは、今日に至るまで罪人の手に渡され・十字架につけられ・死んで甦られ給うたイエス・キリストにある復活の力だけである」。イエス・キリストは、われわれ人間のために・われわれ人間に代わって、われわれ人間の「神の恩寵への嫌悪と回避に対する神の答えである刑罰（死）」を、「唯一回なし遂げ給うた」（律法の成就）、「イエス・キリストは、人と成り、死んで甦り給うた」（『福音と律法』）。

　前述したように、「自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）に立脚した「人々は、（≪起源的な第一の形態の神の言葉であり、「啓示ないし和解の実在」そのものである≫）イエス・キリストにあっての啓示の証言（≪そのイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉、すなわちその最初の直接的な第一の「啓示ないし和解」の「概念の実在」」≫）」「と並んで」、「自然」、自然の一部である人間の生来的な自然的な「理性とか良心、感情」、それが良きものであれ悪しきものであれ自然史の一部である人類史の自然史的過程における自然史的成果やそこから疎外された観念的成果（観念諸形態）としての「歴史……や文化的業績や進歩といったものの中にも神の啓示を認識し、告知するように教会に要求したのである」。そして、「その時」、最後的にはキリストの啓示から独立した後者の「全体が意図され、要求されていたのである」、ちょうど「自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）に立脚したドイツの福音主義教会が「あの新しい啓示を唯一の啓示として宣言すること考えていた」ように。すなわち、その時、「自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）は、啓示神学的なキリストの特別的啓示だけでなく自然神学的な一般的啓示「もまた」という在り方の最後的形態、一般的啓示の「全面」化・「唯一」化・「のみ」化を「意味していた」のである。このような自然的な「宣教と神学の歴史」の中においても、「何と奇蹟的なことであろうか」、あの「ひそかな『のみ』を携えて侵入してきた自然神学の『もまた』に対して」、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である「聖書がその場に残っていたということ」によって、「教会は……救われたのである」。言い換えれば、「啓示ないし和解の実在」そのものであり起源的な第一の形態の神の言葉そのものである「イエス・キリストにあっての神の啓示」、そのイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書（その最初の直接的な第一の「啓示ないし和解」の「概念の実在」）を自らの思惟と語りと行動における原理・規準・法廷・審判者・支配者とした第三の形態の神の言葉である教会の「イエス・キリストに対する信仰と服従」が、その「聖書が舞台に残る」ことによって、「あの『もまた』によって事実上沈黙させられたり、忘れられたりすることがないということを戦いとったのである」、ちょうど「バルメン宗教会議の神学的宣言の第一条」のように。「事柄の論理に従うならば、自然神学に小指一本でも触れたら最後、われわれはイエス・キリストにあっての神の啓示を否定することにならざるを得ないであろう。……どんなに僅かでも自然神学に場所を与える者」は、「そのことを意識しなくても、終局地点にはあの独裁」が、すなわち全く特別なキリストにあっての啓示（≪具体的には聖書的啓示証言におけるキリストの啓示≫）以外の一般的な啓示の唯一化、全体化が、待ち構えている道におもむいているのである」。

　さて、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である「聖書の啓示の妥当性と価値をはなはだ忠実に弁護しようとしていた人々」も、そのような人々の「教会的に保守的な流れにおけるそのような素朴さ」も、「全線にわたって」、前述したことを見抜くことはできなかったのである、換言すれば自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）の問題を明確に提起することはできなかったのである。何故ならば、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）の問題を明確に提起することはできなかった人々は、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）の＜段階＞において、「『と』という繋詞によって啓示概念を理性の概念と結びつけ、歴史の概念と結びつけ、人間性の概念と結びつけた」からである、「あたかもそのことが当然であるかのように、『近代的』と『積極的』、あるいは『宗教的』と『社会的』、あるいは『ドイツ的』と『福音的』という言葉の間に、満足気に小さなハイフンを置いた」からである。そのような人々は、「一八世紀初頭、再び台頭したストア的ヒューマニズムが、その百年後に観念論が、それに続いて浪漫主義が、それから一九世紀の市民社会の実証主義と科学的実証主義が、同じ時代の国家主義が、やや遅れて社会主義が、教会に発言を申し出た時」、「はじめは完全に無防備に立ち向かい、ひとまずにべもなく屈服してしまわなければならなかった」のである（日本基督教団の戦責告白の「まさに国を愛する故にこそ」も、まさに「そのような人々」の仲間である。何故ならば、その「国」は、経済社会的には不平等や格差を必然的に生み出す資本主義国家であり、政治的には一方で市民社会的における個別的私的現実的な生活――すなわち「私利・私意」に基づく利己主義的な私的他者との対立・争いの生活および利害共同性との対立・争いの生活と、他方で国家共同性における法的政治的観念的な生活――すなわちあたかもそうした対立や争いのない法的に統一された公的共同性の一員としての生活との二重の生活を強いる政治的近代国家、自由主義国家、民族国家であるからである。経済の世界性と民族国家の一国性を単位として動いているこの現存する世界の中で、一部国家支配上層の意思によって動員できる巨大で強力な軍事組織を持った徹頭徹尾自国の利害を最優先する民族国家は、戦争の元凶である。したがって、民族国家が死滅しない限り、平和はあり得ないのである。したがってまた、教団の「戦責告白」や「戦後70年にあたって平和を求める祈り」における法的・政策的な国家の言語と同じ土俵上でなされた平和の標榜にはその最初から何の力もないことは自明なことなのである）。したがって、そのような人々は、常に人間的領域あるいは人間学的領域の「後追い」「後追い知識」に過ぎない自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）において、「人間精神の新しい方向転換と運動の代表者たちの理念と理想」を、「時宜に適った形式として、新しい歴史的背景として、『カカル状況ノモトデ』神ご自身によって与えられた『結合点』として、それ自身、そのほかの点では神聖にして侵すベからざる福音の宣教への『結合点』として、……考えた」のである・考えるのである。このような「明白な前歴の後では、……新しい民族国家主義に対して拒む理由は、原理的にあり得なかった」のである。したがって、「『ドイツ・キリスト者』たちが欲し、また為したこと」は、すなわち自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）の段階において「イエス・キリストにあっての神の認識可能性と自然や理性や歴史の中での神の認識可能性とを結びつける方法、つまり福音の宣教とあらゆる種類のそのほかの宣教とを結びつける方法が、……正統的な方法であるとする」ということは、「全世界の教会によって既に久しい間承認され、また実際になされてきていた啓蒙主義と敬虔主義の線の上で、つまりシュライエルマッヘルとリヒアルト・ローテとリッチュルの線の上で動いていたのであり、それに対する多くの並行的な事象は、英国にも、アメリカにも、オランダにも、スイスにも、またデンマークやスカンジナビア諸国にも存在していたのである」。したがってまた、啓示神学としての「キリスト教神学と自然神学との……新しい結合」、「民族的国家主義」との結合を為したドイツに対して、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）という「原理的に同じ」日本を含めた「どこの国も」、「石を投げつける権利は……ないのである」。すなわち、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）という内在的には全く同じ「どこの国も」、ヨハネ8・1−11と同じ場面に立たされていたのである。ドイツの「特に……ルター派にとっては」「この新しい結合」は、「いわば（≪＜非＞自然的な、啓示神学的な≫）キリスト教の神学や宣教」と自然的な「神学やその宣教との関係について、ルター派固有の、いやおそらくはそこでの究極的な解決として勧められるという利点を持っていた」、それ故に「それは、文化プロテスタント主義のキリスト信者にも、兄弟団のようなキリスト信者にも、彼らの最も深い願いが思いがけなくかなえられることを約束しているように思われた」のである。1933年においても、「問題はただ」、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする第二の形態の神の言葉である「聖書」（その最初の直接的な第一の「啓示ないし和解」の「概念の実在」）が、「それに加えて（≪その聖書を自らの思惟と語りと行動における原理・規準・法廷・審判者・支配者とした第三の形態の神の言葉である教会の≫）あらゆる関係者の不安や不徹底や怠慢」が、「必要な平衡を保つよう気を配り、とにかく事態を絶望的にまで発展させないでおいてくれるかどうかにあった」のである。

　このような訳であったので、「驚くべき事実」は、「バルメン宣言の第一条の意味なのであるが」、「ドイツのただ中で、この（≪自然神学、自然的な信仰・神学・教会の宣教における≫）新しい結合に対する抗議が持ち上がったということである。しかも、この結合そのものに対してだけでなく、根本的に、そもそも古くから慣れ親しんできた結合全体を、換言すればドイツおよび全世界で（≪意識的なあるいは無意識的な共同性として≫）正統的になっていたところのあの『と』を」、それ故に「教会の中における自然神学の共同統治を、指弾し・攻撃し・突いた抗議が持ち上がったということである」。それは、1934年5月31日のバルメンで、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である「聖書において（≪その聖書を自らの思惟と語りと行動における原理・規準・法廷・審判者・支配者とした第三の形態の神の言葉である教会の≫）われわれに証しされているイエス・キリストが、われわれが生と死において信頼し服従すべき神の唯一の言葉として示され」、それ故に「この神の唯一の言葉とは別な教会の宣教の源泉に関する教えは虚偽の教えとして否認され」、「そして（宣言全体の結語において）あの真理の承認とこの誤謬の否認こそが『ドイツ福音主義教会の不可欠な神学的基礎』として宣言された」ということであるが、「その時、そのことによって、人々はあわれむべき『ドイツ・キリスト者』の頭上をはるかに超えて、またドイツの教会のいっさいの現下の状勢をはるかに超えて、ひとつの確認を為した」ということである。このことが「真剣に為されたとすれば」、それは、「実にあらゆる自然神学からの教会の純化を包含するひとつの確認であった」、すなわちそれ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯することによってイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を目指すという「教会の純化」の確認であった。「人々は、バルメンにおいてこの提案を解説することになっていたハンス・アスムッセンによって腹蔵のない言葉で……『二〇〇年以上も前から既に教会の荒廃をおもむろに準備しつつあったところのこの（≪自然神学、自然的な信仰・神学・教会の宣教における≫）現象に対して』抗議した」、「明らかにシュライエルマッヘルとリッチュルに対して抗議し、また一八世紀および一九世紀全体の基本的傾向に対して、それと共にあらゆる他の教会の神聖視された伝統に対して抗議した」。しかし、「その際、人々は、この抗議を定式的に言い表すに当たって、宗教改革的な信仰告白を今の時代にふさわしい仕方で適用したが」、「この宗教改革的な信仰告白のはっきと言葉に出された定式的な言い方をそのまま引き合いに出して自説を裏付けることはできなかった」のである。

　いずれにしても、「この抗議のしるしの中で、そのところから、ドイツ教会闘争は進行したのである」。自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）に対する「教会闘争の個々の実際問題は、すべて直接間接」、「バルメン宣言の第一条と関連していたし、今もそうである」。すなわち、告白教会は、実体ではなく、「バルメン宣言の第一条」を「あらゆる面で真剣に受け取ったその程度に応じて『告白』教会となった」し、「告白」教会となることができたのである、換言すれば教会は終末論的限界の下で絶えず繰り返し、他律的服従と自律的服従との全体性において、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯することによってイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」となることができるし、そのことによってのみ教会であることができるのである。したがって、「バルメンで表明された洞察、換言すればイエス・キリストはわれわれが信頼し、かつ服従すべき神の唯一の言葉（≪それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性における起源的な第一の形態の神の言葉≫）であるという洞察」が「真剣に」聞き「受け取」るということが起こった教会では、「おのずから抵抗への意志と力が与えられた」が、「それが起こらなかったところでは、実際には、持続的な部分退却と妥協以外の態度をとることができなかった」のである。

　そのような訳で、「バルメン宣言の第一条」に立脚した「ドイツ告白教会は、……世界教会的な賜物と課題の力を持っている」のである。言い換えれば、ドイツ告白教会は、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書を、自らの思惟と語りと行動における原理・規準・法廷・審判者支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、他律的服従と自律的服従との全体性において、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、純粋な教えとしてのキリストにあっての神・キリストの福音を尋ね求める「神への愛」と、そのような「神への愛」を根拠とした「神の讃美」としての「隣人愛」（この隣人愛は、通俗的な意味での隣人愛ではなく、先に述べたようなキリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、神の命令・要求・要請のことである）という連関において、イエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を目指すという点で「世界教会的な賜物と課題の力を持っている」のである。このように、教会の「純化のために戦うか、さもなければ実際には全く戦っていないのである」。もしもそうでないならば、「バルメン宣言の第一条」に立脚した「ドイツ告白教会」の戦いは、「一九三三年のドイツの……誤謬のある宿命的な結果的現象を相手にした戦いに過ぎないもの」となり、「大いなる近代の無秩序の内部で起こったさまざまな反動以上でも以下でもない戦いとなってしまう」のである。何故ならば、「バルメン宣言の第一条」に立脚した「ドイツ告白教会」の戦いは、「教会そのものにとって、自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）の「拒否ということの中で、全体」が、前述したような仕方での「教会自身の根本的な純化」が、「問題だからである」。したがって、「これから事態がどのように変わろうとも」、「バルメン宣言の第一条」に立脚した「ドイツ告白教会のドイツ教会闘争」の出来事は、「最近の教会史の最も顕著な出来事のひとつと呼ぶことができるのである」。ここでバルトが、「これから事態がどのように変わろうとも」と述べているのであるが、それは、戦後に起こった次のような出来事を意味している――第一に、「六〇〇万人のユダヤ人が殺され……ありとあらゆる恐怖と困窮が人間を襲い、しかもすべてはちょうど風が……花の上を吹くように来て、また去って行った。……草や花はしばらく身を曲げる。しかし風が静まれば、また身を起こす。……ある近代劇（≪自然神学、自然的な信仰・神学・教会の宣教、その意識的なあるいは無意識的な指導層たち≫）」が『私たちはまた逃げおおせた』という言葉でこれを言い直しているように」（『バルト神学入門』）、第二に、「私は教会のなかに、破滅に急ぎつつあった一九三三年当時と同じ構造、党派、支配的傾向を見出した」、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）における「公然たる信条主義や教権主義、およびいろいろ賑やかな姿で現われている典礼主義への興味によってよびおこされた関心を見出した」、「私は、前よりももっと明瞭に人間――キリスト者もまた、そしてキリスト者こそ！――がもともと頑なであり、容易に悔改めに導かれえないということを認識したのである」（『バルト自伝』）、という出来事を意味している。このことは、日本のキリスト教会においても、そしておそらくはどこの国のキリスト教会においても妥当するであろう。

　「バルメン宣言の第一条」に立脚した「ドイツ告白教会のドイツ教会闘争」の出来事をひき起こさせたものは、全く人間的な「新しい政治的全体主義ではなかった」、「切迫した危機的状況でもなかった」、それ故に全く人間的なあれこれの運動を、「『カルヴァン主義』」を、「あれこれの神学教授の活動」等々を、その状況下で「働いた救いの力（ないしは誘惑の力！）としてあげようとするならば、それはまさに幼稚な理解の仕方」でしかない。「バルメン宣言の第一条」に立脚した「ドイツ告白教会のドイツ教会闘争」の出来事をひき起こさせたものは、教会に「何も残らなかった時にも、（≪起源的な第一の形態の≫）神のひとつの言葉、イエス・キリストが残っていたということ（≪具体的には、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書が残っていたということ≫）」にある。したがって、「教会は、……奈落に転落することはあり得ず、むしろ新しい地歩をつかむことができたし」、また「おのずから」「そうせざるを得なかった」。また、「他の分野では……どのようにしても制止しようがなかったことが」、「バルメン宣言の第一条」の「事柄の論理が、教会の中ではまさに原則的に制止にまできた」のである。したがって、それらのことは、「霊的に評価されることを欲している」のである、すなわち客観的なイエス・キリストにおける啓示の出来事中での主観的側面としての「聖霊の注ぎ」による信仰の出来事として評価されることを欲している」のである、換言すれば「全くただキリスト論的局面だけ」において評価されることを欲している」のである。何故ならば、「これまで実にしばしば否定され裏切られていた」ところの、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯することが、「バルメン宣言の第一条」に立脚した「ドイツ告白教会」に「現われた」からである、「人々は、……（≪第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である≫）聖書を再び読み、聖書が明らかに述べていることを信じ、そのようにしてバルメンの危急と喜びの叫び声をあげることができた」からである、聖書を自らの思惟と語りと行動における原理・規準・法廷・審判者・支配者とした第三の形態の神の言葉である「教会は、神のひとつの言葉」（「時の全くの厳格な相違性の中で、神の言葉は一つであり同時的である」――すなわち、「イエス・キリストは、きょうも、きのうも、いつまでも変わることがない」）である「イエス・キリスト（≪具体的には、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書≫）において神を慰めとした」からである。したがって、「あらゆる他の源泉は、カカル状況ノ下デハ、ただ神話に過ぎず、したがっていっさいの事物の終局、いずれにしても教会の終局となり得たに過ぎない……」のである。

　「バルメン宣言の第一条」に立脚した「ドイツ告白教会」は、「啓示自身が持っている啓示に固有な証明能力」、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動、「復活され高挙されたイエス・キリストから降下し注がれる霊である」聖霊の証しの力において「現に自らを証しする神の言葉によって、自分がそのような終局から引き戻され、守られているのを見たのである」、「ただこの（≪起源的な第一の形態の≫）神の言葉だけを信じ、告白した」のである。したがって、「バルメン宣言の発生を実際によく理解したいと思うならば、究極的には告白教会そのものにも、またその敵対者にも目をとめてはならない」のであって、その告白教会が、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯していたことに「目をとめ」なければならないのである、詳しく言えば神のその都度の自由な恵みの決断による「存在的な必然性」と「認識的な必然性」（「啓示と信仰の出来事」）を前提条件とした「存在的なラチオ性」と「認識的なラチ性」という総体的構造に「目をとめ」なければならないのである。告白教会は、そういう仕方で、その世紀の・その世代の「証人」として、その世紀の・その世代のキリスト教に固有な類の成果として、その類の成果を時間累積させたのである、「すなわち、サタンが稲妻のように天から落ち、主があらゆる神々の上に力強くいますということを書き記すことを許された」のである。「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯した告白教会が、「この機会に書きとめたものは、われわれに対して生と死を賭して語られた（≪起源的な第一の形態の≫）神の言葉たるイエス・キリストの唯一の妥当性についての命題である」。副次的な「自然神学の拒否」は、「決して独立的な意味を持っていない」のであり、それは、「この覚え書きの自明的な裏面に過ぎない」のである。「他のどんな者ももはや助けない時に助ける者は、ただ神のひとつの言葉（≪起源的な第一の形態の神の言葉≫）の奇跡と力と慰めだけである」、「三位相互内在性」における「失われない単一性」・神性・永遠性を内在的本質とする三位一体の神の、その「外に向かって」の外在的な「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方における第二の存在の仕方――すなわち「啓示ないし和解の実在」そのものであり、起源的な第一の形態の神の言葉そのものである「ナザレのイエスという人間の歴史的形態」、「ただイエス・キリストの名だけ」である。「この覚え書きを手がかりとして告白教会は生きはじめ、同じ手がかりによって今日まで生きているのである。この覚え書きは、告白教会がそれを受け取り、また今告白教会に委託されている証言として、他の諸教会に向かって提示しなければならないものである」、キリスト教に固有な類の成果として時間累積させて行かなければならないものである。したがって、そのことを為さないならば、「告白教会は失われてしまうであろう」。したがってまた、「この証言が、告白教会に対して、単に自分自身でそれを用いるだけでなく、同時に全教会、全世界の教会に向かって語られるべき使信としてそれが委ねられていることを理解せず、あくまでその立場に立たないならば、やはり告白教会は失われてしまうであろう」。したがってまた、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書を自らの思惟と語りと行動における原理・規準・法廷・審判者・支配者とした第三の形態の神の言葉である教会の連続性に連帯するイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を目指す「世界的教会としての存在にとって」、「バルメン宣言の第一条」に立脚した「ドイツ告白教会の使信」は、「決定的なこととしてある」のである。

　第三の形態の神の言葉である教会は、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書を自らの思惟と語りと行動における原理・規準・法廷・審判者・支配者とすることによって、「全くただ」、「道であり、真理であり、命であり、門であるイエス・キリストご自身を選び、……認識し、……生き、……通って行くことによって生きる」のである。その教会は、自分自身の「わがまま勝手な」恣意的独断的な「全権の力や安全保証計画の遂行」によってではなく、起源的な第一の形態の神の言葉である「イエス・キリストご自身が、誰も彼によらなければ父のみもとに行くことはできないし、またすべて彼を迂回し、通り過ぎることは盗みであり人殺しであると言われたその必然性に基づいて（ヨハネ14章と10章におけるイエス・キリストの言葉に基づいて）」、「排他独占性を実行に移す」のである。すなわち、その教会は、起源的な第一の形態の神の言葉である「イエス・キリストの他に道や真理や命や門を尋ね求める一切のものに対して」、換言すれば自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）に対して、「『否』を語るのである」。この「否」は、「ヨハネ14章と10章におけるイエス・キリストの言葉に対して然りが語られることによってだけ」、「語られるし、語らなければならない」。したがって、「単なる否」ではなく、「ヨハネ14章と10章におけるイエス・キリストの言葉に基づいた先行する積極的な命題に対する然りに続く否という批判的主張」は、「然りの裏返しとして、またその明確な解明としてだけ理解することができる」。

　第三の形態の神の言葉である教会は、「生きるにも死ぬにも、そのような信頼と服従の中で時間的にも永遠的にも助けられ、守られているという確信をもって信頼し服従することが許される」「神の言葉」を、すなわち第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書を自らの思惟と語りと行動における原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、他律的服従と自律的服従との全体性において、それに「聞くことによって生きる」のである、換言すればそれに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、純粋な教えとしてのキリストにあっての神・キリストの福音を尋ね求める「神への愛」（そのような「神への愛」を根拠とした「神の讃美」としての「隣人愛」という連関）においてイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を目指すことによって生きるのである。何故ならば、その教会に語られた「言葉は、唯一の」起源的な第一の形態の「神の言葉（≪具体的には、そのイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書≫）であって、それによって教会は拘束されており」、「まさにその唯一の神の言葉の中でこそ教会は自由にされているからであり、この言葉の福音と並んでそれと無縁な律法はないし、この言葉の律法と並んでそれと無縁な福音はないからであり（≪律法は、キリストの福音を内容とする福音の形式である。このように、福音と律法を二元論的に対立させたルターとは違って、「律法の成就」・完了そのものであるイエス・キリストにおいては、福音と律法は、二元論的に対立していないのである≫）、この言葉と並んであるいはその背後に、あるいはその上に、われわれは道、真理、生命、門として敬い、恐れるべき他の力をひとつも持っていない」からである。「この唯一の言葉」は、「初めて発見されなければならないものではなく、見出すことができるように自分を与えたのである」、換言すればそれは、三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事である、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）として「自分を与えたのである」。「この唯一の言葉」は、「永遠から永遠にわたって」起源的な第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）である。「この唯一の言葉」は、イエス・キリストによって直接的に唯一回的特別に召され任命された預言者および使徒たちのその人間性と共に神性を賦与され装備された最初の直接的な第一のイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」（「啓示ないし和解」の「概念の実在」）、すなわちイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である「旧約および新約聖書においてそのように証しされている」。「そのようにしてこの言葉は、（≪第三の形態の神の言葉である≫）教会を基礎づけた。そのようにしてそれは、教会を保持し、更新し、治め、繰り返し教会を救った。それは、生きるにも死ぬにも教会の慰めであり、道しるべである」、すなわちそれは、教会の宣教、その一つの補助的機能である神学の思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者である。それは、「そのようにであって、決してそれ以外の仕方でではない」――この「それ以外の仕方でではないという批判的な命題」は、「あのひとつの神の言葉と並ぶほかのもろもろの出来事、力、現象、真理の存在を拒否しない」し、それ故に「この世の偽り、通俗の偽りを偽りと呼び、世俗的真理をも正直に受け取る」し、自然哲学としての個体的自己としての全人間の身体と精神を介した普遍的で実践的な全自然（自然としての自己身体、性としての他者身体、宇宙を含めた外界としての天然自然）との相互規定的な対象的活動を否定しているわけではないし、「自然神学そのものの可能性を全く否定している訳ではない」のである。すなわち、その「批判的な命題」は、キリストの啓示から独立したそれら「一切が教会の宣教の源泉、すなわちあのひとつの神の言葉と並ぶ、あるいはそれ以外の第二の源泉となり得るという主張を否定し、そのような主張を虚偽の教説と呼ぶのである」。したがって、「自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）をそう呼ぶのは、「神の言葉と並んで、またその外で、何の意義も存在も持ち得ないという見解と意図をもってそう呼ぶ」のである。したがってまた、バルトは、『バルトとの対話』において、「われわれが哲学的用語をつかうという事実にもかかわらず、神学は哲学的試みが終わるところから始まる」、教会の宣教も、その一つの補助的機能としての神学も、人間の理性と言語を使用しての知的営為ではあるが、「神学は方法論的には、ほかの学問のもとで何も学ぶことはない」と述べたのである、『教会教義学　神の言葉』においては、「哲学、歴史学、心理学等は、この神学的問題領域のどれにおいても、事実上、教会の自己疎外の増大以外のなにものにも役立ちはしなかった」、「神についての教会の語りの堕落と荒廃以外の何ものにも役立ちはしなかった」、と述べたのである、ちょうど資本主義を経済的基盤とし自由を原理とした西欧近代を頂点とするヘーゲルの歴史哲学に依拠して神学的な三段階的進歩史観（「律法・父の国・奴隷状態の歴史」――世界史的段階で言えば狩猟採取を経済的基盤とし自然にまみれた原始未開の段階、「恩寵・子の国・神の子供状態」――世界史的段階で言えば農耕を経済的基盤とし自由を認識し自覚でき得ていない自然を原理としたアジア的な段階、「自由・霊の国・神の友の状態」――世界史的段階で言えば思惟に思惟を重ねて具体的普遍の頂へと高次化し自然から完全に超出した自由の精神を原理とする西欧近代の段階）を展開したモルトマンの神学が「神についての教会の語りの堕落と荒廃以外の何ものにも役立ちはしなかった」ように、またちょうどハイデッガー自身から客観的な正当性と妥当性とをもって、「それよりは『むしろ無神論という安っぽい非難を受け入れた方がよい』」と「揶揄」され、その人間的理性や人間的欲求やが対象化し客体化したに過ぎない「存在者レベルでの神への信仰」の企ては、「結局のところ（≪キリストにあっての神としての≫）神を見失うこと」であると「揶揄」されたところの、「新約聖書の釈義に役立つ新しい哲学的な鍵」を前期ハイデッガーの哲学原理に見出し、「本文と彼自身との対話だけでなく、ある特定の人間学、つまり一つの思惟の型を前提」とした「自己表現としての宣教」を企てたブルトマンの神学が、「神についての教会の語りの堕落と荒廃以外の何ものにも役立ちはしなかった」ように。