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１２の５『教会教義学　神論�T／１　�~の認識』「五章　�~の認識　二十六節　�~の認識可能性」「二　人間の用意」（302-326頁）
再推敲・再整理版です。

「二　人間の用意」
　われわれは、次のことを聞いた――すなわち、�~の側の真実としてある、先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意ができているところの、「人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一」（『ローマ書』）であり、「永遠の（神との人間の）和解」（神の側からする人間との架橋）であり、神との間の「平和」（ローマ五・一）であり、それ故に神の認識可能性であるご自身の中での神としての「三位相互内在性」における「失われない単一性」・神性・永遠性を内在的本質とする「一神」・「一人の同一なる神」・「三位一体の神」の、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的な「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方における第二の存在の仕方（働き・業・行為――子なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事、「啓示ないし和解の実在」、起源的な第一の形態の神の言葉そのもの）であるまことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて、「神の用意の中に含まれて、人間にとって、神に向かっての、したがって神認識に向かっての人間の用意が存在する」ということを、そのように先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意という「人間の局面」は「全くただキリスト論的局面だけである」ということを聞いた。したがって、神としての神だけでなく、人間の自主性・自己主張・自己義認の欲求、神との「混淆」・「共労」・「共働」・「協働」・「神人協力」を目指す「自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）は、人間学的な哲学原理・認識論・世界観等々の「人間学の後追い知識」としての人間学と神学との「混合神学」・「人間学的神学」を目指す「自然神学」は、「自分自身の中にも生命力を持とうとする」人間自身の「わがまま勝手な」恣意的独断的な「副次的な企てでしかないもの」である。「それであるから、自然神学は、その存在と権利を裏付けるために、（≪「幻想」に過ぎない、「空想」に過ぎない≫）常に新しい議論を勝利をもって持ち出してくる」のである、ちょうどＲ・ボーデンの「聖霊論的出発」という概念に依拠して、神学者の佐藤司郎と小泉健が、「幻想」、「空想」の中で、中世的思考に退行して、「聖霊論的出発」は、「人間的なるものと、（人間が）なしうることの新しい強調を可能とする」とか、また神学と人間学との混合神学（人間学神学）は結局は「人間学の後追い知識」にしか過ぎないにも拘らず、人間学的神学としての混合「神学の優位性を否定することなく」「人間学的局面にもその位置を正しく与える」（佐藤）とか、そのような「神学の優位性を確保しつつ、人間学を正当に評価する位置を与え得るもの」（小泉）とか述べているように。「それであるから、自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）は、「明白な、筋道の通ったすべての反対論に対して、耳を塞いでしまうことができる」のである。

　そのような「自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）対して、ご自身の中での神としての「三位相互内在性」における「失われない単一性」・神性・永遠性を内在的本質とする「三位一体の神」の、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的な「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方における第二の存在の仕方である先行する神の用意に後続する人間の用意ができているところの「イエス・キリストを度外視せず、まさにイエス・キリストをまともに注視する」時には、換言すれば神としての神の側の真実としてある主格的属格として理解されたギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」（イエス・キリストが信ずる信仰）による「律法の成就」・完了そのもの、すなわち「神の義、神の子の義、神自身の義」そのもの、それ故に成就・完了された内在的・外在的な不信、非知、非キリスト者を含めた個体的自己としての全人間・全世界・全人類の究極的包括的総体的永遠的な救済（この救済概念は、平和の概念を包括している）そのものである「イエス・キリストを度外視せず、まさにイエス・キリストをまともに注視する」時には、「自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）が「前提しているそれとしての人間自身の独立した現実存在は、幻想（≪「空想」≫）でしかない」ということを認識し自覚させられるのである――「人間の人間的存在がわれわれの人間的存在である限りは、われわれは一切の人間的存在の終極として、老衰・病院・戦場・墓場・腐敗ないし塵灰以外には、何も眼前に見ないのであるが、しかしそれと同時に、人間的存在がイエス・キリストの人間的存在である限りは、われわれがそれと同様に確実に、否、それよりもはるかに確実に、甦りと永遠の生命以外の何ものも眼前にみないということ――これが神の恩寵である」、「『私がいま肉にあって生きているのは、私を愛し、私のために御自身をささげられた神の御子の信じる信仰によって、生きているのである。（これを言葉通り理解すれば、＜私は決して神の子に対する私の信仰に由って生きるのではなく、神の子が信じ給うことに由って生きるのだ＞ということである）』（ガラテヤ二・一九以下）。（中略）自分が聖徒の交わりの中に居る……罪の赦しを受けた（中略）肉の甦りと永久の生命を目指しているということ――そのことを彼は信じてはいる。しかしそのことは、現実ではない。……部分的にも現実ではない。そのことが現実であるのは、ただ、われわれのために人として生まれ・われわれのために死に・われわれのために甦り給う主イエス・キリストが、彼にとってもその主であり、その避け所でありその城であり、その神であるということにおいてのみである」（『福音と律法』）。

　前述したことが、「イエス・キリストの中で明らかとなってくる真理」である。したがって、このイエス・キリストにあっての「真理に対していかなる反対の立場も形造ることはできない」のである。したがってまた、その「真理と反対の立場」は、「幻想（≪「空想」≫）である」と言うことができるのである。したがってまた、「すべてのこと」は、われわれが、「わがまま勝手に」恣意的独断的にただ単なる自己主張・自己表現として「イエス・キリストを口外し、そのように振舞う」ことを断念して、神の側の真実としてある「実際に」先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意ができているところのまことの神にしてまことの人間「イエス・キリストを、神に関する、まさにそれだからこそまた人間に関する、そこで明らかになってくる真理として」、「注視することにかかっている」のである。このような訳であるから、「もしもわれわれが、人間に関する真理を、イエス・キリストの現実存在から読み取るならば」、換言すればわれわれが、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書（その最初の直接的な第一の、「啓示ないし和解」の「概念の実在」、すなわち預言者および使徒たちのイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」）を、自らの思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者として、「人間に関する真理を、イエス・キリストの現実存在から読み取るならば」、「その時」、あの「自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）の「地盤」は、「常に幻想（≪「空想」≫）であり、実際には常に、倒れること、堕落することである」ということを認識し自覚することができるのである。「なぜならば、（≪前段で引用した『福音と律法』におけるように、≫）イエス・キリストにあっては、それとして独立した人間自身というようなものは存在しないからである」。言い換えれば、「イエス・キリストにあって、それとしての人間は、……恵みに逆らう敵意に対する恵みの勝利の中で、神によって取り上げられ受け入れられた人間、そのものの手から神が彼の問題を、神ご自身の問題とするために取り上げられた人間、そのもののために神ご自身が、時間と永遠の中で味方となって、執り成してくださった人間である」（「イエス・キリストにおける神の愛は、神自身の人間に対する神の愛と神に対する人間の愛の同一である」）、すなわちその「聖金曜日と復活日」、その「死と復活の出来事」、その「裁きと恵み」にあずかる人間である。したがって、「もしも人間が、ここでもう一度、ただ一瞬たりとも」、「自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）を目指すことにおいて、「人間の可能性と努力をそれとして真剣に受け取る」ならば、それ故に「神の恵みに逆らう……敵意が、もう一度特に、……興味あるものとなる」ならば、「聖金曜日と復活日の出来事は撤回されてしまわなければならない」のである、「父と子の間の永遠の出来事は、その永遠の出来事の時間的な形態としての聖霊の業は、阻まれてしまわなければならない」のである（言い換えれば、ご自身の中での神としての「三位相互内在性」における「失われない単一性」・神性・永遠性を内在的本質とする「三位一体の神」の、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的な「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方における第二の存在の仕方であるイエス・キリストにおける客観的な「啓示ないし和解の実在」の出来事は、その出来事の中での主観的側面としての「聖霊の注ぎ」による信仰の出来事の業は、三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事である、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性は、「阻まれてしまわなければならない」のである）、それ故に「聖霊の働きを通して造り出された」「関係としてのわれわれの信仰は、空しいものとされ」、「その同じ聖霊の働きを通して造られた信仰の一致としての教会は破壊されてしまわなければならない」のである（言い換えれば、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書を、自らの思惟と語りにおける原理・規準・上程・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、他律的服従と自律的服従との全体性において、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、イエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を目指す第三の形態の神の言葉である「教会は破壊されてしまわなければならない」のである）。しかし、神の側の真実としてある、イエス・キリストの死と復活の出来事における「裁きと恵み」の出来事においては、「自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）における「神の恵みに逆らう人間の敵意」は、その最初から「勝負に負けてしまっている」いるのである。したがって、「とりわけ人が、そのような人間の敵意に対して戦いをいどみ、損害を与えなければならないことはないのである」。ただ「自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）は、「幻想」（「空想」）における思惟と語り、「幻想（≪「空想」≫）の教説」と呼べばよいのである。

　そのような訳で、「自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）は、「裁きと恵み」の下で「不信仰」であり、「非教会」であることからして、その現にあるがままの現実的な人間存在における人間が「第一に、また最後的に必要としている唯一のもの」――すなわち、彼のその「存在における恵みに逆らう彼の敵意の『事柄』……の中で、事柄と共に、イエス・キリストからの……最も重い脅かしの下でも」、独立してあるいは神人協力的に「イエス・キリストに相対して立つことができ、持ちこたえてゆくことができるという確認こそ」は、決して「与えられてならないことなのである」。したがって、「信仰と教会は、それとしての人間自身に対して」、「この確認を与えるような仕方で、相対して立つ時、既に不信仰と非教会になってしまっているのではないかどうかよく吟味しなければならない」。したがってまた、人間が「その反抗を通して、実体を形造ることができるということは本当ではない。そのことは、イエス・キリストにあって、（たとえ人間がどう考えようと）確かに本当ではない。彼の現実存在の真理は全くただ……イエス・キリストが彼のために死なれ、彼のために甦られたということである」。したがって、「ただそのことだけが、彼に向かって彼の真理として宣べ伝えられなければならないことである」。「イエス・キリストの宣教が問題である時」、われわれ人間が、「あたかも……心配症的な真剣さでもって、あたかも（≪独立的にあるいは神人協力的に≫）イエス・キリストを助けにゆかなければならず、助けにゆくことができるし、助けにゆくことがゆるされるかのように」、「その中で人が人間を、それ自身の独立性の中で確認することでもって、真剣に受け取っていると主張する心配症的な真剣さ」は、「事実決して真剣なものではなく、むしろ全くの道化芝居なのである」。何故ならば、神の側の真実としてあるイエス・キリストにおける神の自己啓示は、その「啓示自身に固有な証明能力」を持っているからである、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動を持っているからである、換言すれば神のその都度の自由な恵みの決断による客観的な「存在的な必然性」（客観的なイエス・キリストにおける啓示の出来事）と主観的な「認識的な必然性」（その啓示の出来事の中での主観的側面としての「聖霊の注ぎ」による主観的な信仰の出来事）を前提条件とした客観的な「存在的なラチオ性」（客観的に可視的に存在している「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性）と主観的な「認識的なラチオ性」（徹頭徹尾聖霊と同一ではないが、聖霊によって更新された主観的な人間の理性性）という総体的構造を持っているからである。したがって、「信仰と教会の宣教」は、「それの対象の故にも、人間のまことの唯一の救いの故にも、全くの厳格さの中で、それとしての独立した人間自身は存在しないということから出発しなければならない。そこにはただ……そのもののためにイエス・キリストは死なれ、甦られ、そのものの事柄をイエス・キリストはご自分の手に引き受けられた人間がいるだけである」。「信仰と教会の宣教」が、「その時、人間に向かって語らなければならないすべてのことは、ただこの彼のまことの現実存在の説明であることができるだけである。……信仰が信仰であり、教会が教会であるところ」――そこでは、「信仰と教会の宣教」は、「恵みと裁き」、「福音と律法」、「イエス・キリストにあっての神の義と裁き」を、換言すれば第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書（その最初の直接的な第一の「啓示ないし和解」の「概念の実在」）を、自らの思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者として「宣べ伝える」ことができるだけである。「まさにこのことと共に、信仰と教会の宣教……自分を正しく理解している神の言葉の神学にとって、自然神学（≪自然的な信仰・神学・教会の宣教≫）の道全体が、自動的に、徹底的に、断ち切られる」のである。このように、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）の道は、「全く徹底的に断ち切られているので」、それと「対決するすべての議論は、根本においてはただ（≪先に述べたような仕方で≫）本来の主題を確認することの後に続く（≪副次的な≫）説明として成り立つことができるだけである」。したがって、「キリスト教の宣教は、自然神学の提供に対して（それがどのような提供であろうと）それを用いる余地は全然ないのである」。何故ならば、先に述べたような仕方で第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯することを正しく理解している「キリスト教の宣教」は、「人間自身の自己説明」・自己主張・自己表現を目指す「自然神学が……興味深くあり得るところの人間を、興味がないものと見做すべき根拠を持っているからである」、「それに固有な主題……イエス・キリストの中で語られた神の言葉（≪客観的に可視的に存在している第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性≫）によって、全く拘束されているからである」。そのような「キリスト教の宣教」は、「イエス・キリストにあっての人間のまことの現実存在を説明するという課題を果たすように完全に要求されているので」、総括的に言えば先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意という「人間の局面」は、「全くただキリスト論的局面だけである」ということを「説明するという課題を果たすように完全に要求されているので」、「それとしての人間自身の自己説明（≪・自己主張・自己表現≫）としての自然神学に対して徹頭徹尾何の場所も、何の時間も持っていないからである」。

　さて、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）は、神としての神だけでなく人間も先行させた「神人協力説」等を含めた「イエス・キリストにあっての神の啓示なしにも成り立っている人間が神と結ばれている状態についての教説である」。したがって、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）は、人間自身の「自主独立的な神との結びつきに基づいて可能であり」、それ故にそこにおける神は「人間的理性や人間的欲求によって規定された神」（「存在者レベルでの神」、偶像）であり、それ故にそこにおける「啓示の内容」はそのような「存在者レベルでの神」としての「神から発生した」「啓示の内容」であり、「神の意識」は「人間の自己意識」であり、「神の認識」は「人間の自己認識」であり、それ故に「神学」も「人間学」であり、「人間自身の領域」における自然「必然的な企てである」。したがってまた、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）は、最後的には「人間が（≪神としての神であるキリストにあっての≫）神に相対して自分自身で一人立ちし」、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯しないが故に、神としての神であるキリストにあっての神を「認識できない者となり、自分を、事実、神と等しい者とすることによって、発生し、また存続する」のである（自然神学は、起源的な第一の形態の神の言葉であるイエス・キリストにおける神の自己啓示が、その外在的な「失われない差異性」の中での三つの存在の仕方における第二の存在の仕方である「ナザレのイエスという人間の歴史的形態」、すなわち「イエス・キリストの名の」において、その「三位相互内在性」における「失われない単一性」・神性・永遠性を内在的本質とする三位一体の神の認識――啓示認識と信仰――啓示信仰を要求する啓示であるということを、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書から聞いていないのである）。したがってまた、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）の場合、その神は、その最初から、「（神の恵みから身をひいた）……彼自身が最高のものとして尋ね求め、選び、造り出したもの」（彼自身の自由な自己意識・理性・思惟の類的機能によって対象化され客体化されたもの）に過ぎない「存在者レベルでの神」（偶像）であり、そのような神への信仰であり、それ故にその啓示の内容もそのような神の業の「総内容となる」のである。この時、彼は、「自分自身とほかの者たちに対して」、「神ご自身に対しても」、「神の恵みに対しても」、独立してその「外に出ながらも」、「決して神を知らない不敬虔な者ではなく、それどころか……神を至極おそれ敬う者であり、……神に満ちていることを保証するために」、人間の自由な自己意識・理性・思惟の類的機能等「人間的諸能力を……用いるのである」。したがって、『啓示・教会・神学』において、次のように述べられている――「ドストエフスキーの書いたあの大審問官は、神と人間に対して、疑いもなく善意をいだいていたのであるが、彼が神と人間に仕えようと願ったのは、ただ彼の善意（≪「わがまま勝手な」恣意的独断的な彼の善意≫）によってに過ぎなかった。したがって、彼の奉仕は、（≪彼の人間的理性や人間的欲求やが対象化し客体化した「存在者レベルでの神」の名とその神の呼びかけによる≫）最も洗練された支配行為に過ぎなかったのである。神と人間についての独断的な観念に基づく独断的に考え出された救いの計画と救いの方法（≪平和の計画と平和の方法≫）が支配するところ、そのようなところでは、その意図がたとえどのように心から善いものであり、敬虔なものであっても、神に対しても人間に対しても、真に奉仕が行われることはないであろう。またそのようなところには、教会は存在しないのである」、と。そのような救いの計画と救いの方法（平和の計画と平和の方法）の「わがまま勝手な」恣意性独断性が、神としての神であるキリストにあっての「神に余りに僅かしか信頼せず、（≪神としての神であるキリストにあっての神から遠ざかり遠ざかり続けている・罪を新たな罪を犯し続けている罪と汚れに満ち満ちたところの、しかし人間的な意味では人間的な良き面と悪しき面との弁証法を生きるただの人間に過ぎないその現にあるがままの現実的な人間存在である≫）人間に余りに多く信頼するという点に現われるということは、疑いない」。そのような自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）の「立場が、現実の立場であると……空想の中で信じきっているということこそが」、その「わがまま勝手な」恣意的独断的な「立場を基礎づけている」のである。人間論的な自然的人間であれ、教会論的なキリスト教的人間であれ、誰であれ、「もしも人が、神の恵みに逆らう彼の敵意を撤回させてしまうことができないとすれば」、「彼にとって助けとなることができるもの、それはただ」、神のその都度の自由な恵みの決断によって、神の側の真実としてある、それ故に「成就と執行」、「永遠的実在」としてある、客観的な「その啓示の中でのイエス・キリストの恵みそのもの」が、その客観的な啓示の出来事の中での主観的側面としての「聖霊の注ぎ」による主観的な信仰の出来事に基づいて「勝利をもって彼のところに来て、彼をその幻想」、「空想」から、「それと共にまた自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）から、「解き放ってくれるということ」である。したがって、「決して、彼が自分で恵みに味方して決断するということ」、「それであるから……（≪自分で≫）自分を幻想（≪「空想」≫）から目覚めさせつつ、自分で自分を自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）から「解放する」ということではないのである。何故ならば、「われわれが自分で決断することができると考えているような恵みは、（≪あくまでも神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて与えられる≫）イエス・キリストにあっての恵みではない」からである。

　それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯することを正しく理解していない、それ故にそのことから逸脱して行く自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）に対して確信をもって言い切ることができる「ひとつのこと」は、その「宣教……の内容として、自然神学はただ、徹頭徹尾、脱落することができるだけであり」、その「宣教……の側からしては、ただ全く存在しないものとして取り扱われることができるだけである」ということである。言い換えれば、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯することを正しく理解した「宣教、自分を正しく理解している神の言葉の神学」は、「自然神学と何の関わりも持っておらず、自然神学を役立てようなどと欲することはできない」ということ、それ故に「自然神学を事実少しも用いないであろう」ということである。したがって、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）は、「この意味で、確かに情け容赦もなく切り捨てられなければならない」のである（下記の【注】を参照）。何故ならば、キリスト教に固有な「宣教と神学」は、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯することを正しく理解することにおいて「イエス・キリストと関わっているからである」。すなわち、キリスト教に固有な「宣教と神学」は、「イエス・キリストを真剣に受け取ると同時に」、「それとしての人間そのものを受け取るということはできず、……ただイエス・キリストだけを真剣に受け取ることができるのであって」、それ故に「人間をただイエス・キリストにあって真剣に受け取ることができるだけである」、それ故に「自然神学……に根ざしており、自然神学の中で絶頂に達する……人間の業を証しすることはできず、ただ」、「啓示されてあること」、すなわちそれ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）の連続性としてある「聖霊の業を証しすることができるだけである」。このように、キリスト教に固有な「宣教と神学」は、「二人の主に兼ね仕えることはできない」のである、「ただ一人のまことの主に仕えることができるだけである」。したがって、キリスト教に固有な「宣教と神学」が、「人間を取り上げ受入れるイエス・キリストの恵みを宣べ伝えるという自分の課題と並んで」、「さらにまたそれとしての人間の課題そのものに対しても気を配らなければならないなどというようなことについては、何ら語られ得ない」。

【注】バルトは、『教会教義学　神の言葉』および『バルトとの対話』では次のように述べている――「哲学、歴史学、心理学等は、この神学的（≪信仰的、宣教的≫）問題領域のどれにおいても、事実上、教会の自己疎外の増大以外のなにものにも役立ちはしなかった」、「神についての教会の語りの堕落と荒廃以外の何ものにも役立ちはしなかった」、またその時「哲学は哲学であることをやめ、歴史学は歴史学であることをやめる」、キリスト教哲学は、「それが哲学であったなら、それはキリスト教的ではなかった」し、「それがキリスト教的であったなら、それは哲学ではなかった」、それ故に「われわれが哲学的用語をつかうという事実にもかかわらず、神学は哲学的試みが終わるところから始まる」、すなわち神学も人間の理性と言語を使用しての知的営為ではあるが、「神学は方法論的には、ほかの学問のもとで何も学ぶことはない」、と。また、『教会教義学　神の言葉』で、次のように言われている――教会の宣教を「より危険なものにしてしまう」のは、第一に、その教会の宣教が、「正しい注釈」を、「最終的に……教会の教職の判決に、……間違うことはありえないものとして振る舞う歴史的――批判的学問の判決に、依存させてしまう」ところにある、第二に、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯することを正しく理解されて「福音が純粋ニ教エラレ、聖礼典が正シク執行サレルということがなされないままに」、またトータルな世界認識の方法や革命の過渡的課題と究極的課題等を明確に提起しないままに場当たり的に「特定の人種、民族、国民、国家の特性、利益と折り合おうとする」ところにある、「社会機構、あるいは経済機構の保持や廃止に貢献しようとする」ところにある、「礼拝改革とか、キリスト教教育とか、教会と国家および社会との関係とか、（≪社会的な政治的な実践とか、≫）国際間の教会的な相互理解というような領域で、何か真剣なことを企て遂行してゆくことができると考える」ところにある、第三に、宣教の規準を、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書と同時に、「最上の仕方で基礎づけられ、熟慮に熟慮を重ねられた人間的な判断あるいは哲学、道徳、政治等に置くところにある」、と。

　そのような訳で、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）を「肯定し養い育てることは、われわれのなす仕事ではあり得ない」。キリスト教に固有な「宣教と神学」が、「自然神学の企てを既に拒否されたものとして、そのことにあずかることができない時」、「そこでは宣教と神学の即事性が問題である。いやしくも厳格な即事性を要求する人間的な行為の対象があるとするならば、それは、（≪それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性の連続性における≫）キリスト教の宣教と神学の対象である」「イエス・キリストにあっての神の恵み」であり、それこそが、「まさにこの特定の即事性を要求し、人間についてのキリスト論的理解……を要求する」のである、ちょうど先行する神の用意に包摂された後続する人間の用意という「人間の局面」は、「全くただキリスト論的局面だけである」というように。キリストにあっての啓示の真理によれば、「それとしての人間そのもの」は、人間論的な自然的人間であれ、教会論的なキリスト教的人間であれ、誰であれ、神の恩寵を嫌悪し回避する存在であり、「神の恵みに逆らう……敵意を持った人間である」から、自然神学（自然的な信仰・神学・教会の宣教）における人間的理性や人間的欲求やによって対象化され客体化されたに過ぎない「存在者レベルでの神」（偶像）の「慰め」の「彼岸」的形態は、「ただ裁きであることができるだけである」。それに対して、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯することを正しく理解した＜非＞自然的な「キリスト教の宣教と神学」は、「イエス・キリストを、したがって神ご自身を、われわれの味方として持っており、イエス・キリストの中で救い出されるであろうということを知っているし、語るのである」、その時「キリスト教の宣教と神学は、……全くただ、われわれがイエス・キリストを自分たちの味方として、またイエス・キリストの中で神的な審き主を自分たちの味方として持つであろうということだけ」が、神の側の真実としてあるイエス・キリストにおける死と復活の出来事だけが、イエス・キリストにおける「裁きと恵み」だけが、イエス・キリストにおける「福音と律法」だけが、「われわれを救うであろうということを知っており、語るのである」。それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯することを正しく理解した第三の形態の神の言葉に属する教会は、「それ自身が世のただ中にあり、この世に対して連帯責任を持っている」のだが、「その責任」は、「イエス・キリストは世のために死に、甦られたということ、神は世をそれほどまでに愛されたので、神はそのひとり子を送られ、犠牲にされたということを世に向かって語るということから成り立っている」、あの主格的属格として理解されたギリシャ語原典「イエス・キリストの信仰」としてのイエス・キリストをのみ信ぜよ、そのキリストにのみ感謝をもって信頼し固執し固着せよ、すべての人々が現実的に所有することができるためにそのキリストの福音を告白し証しし宣べ伝えよということから成り立っている。その「教会は、世に向かって、神はわれわれにとってその恵みの中で（≪先行する「神の用意」に包摂された後続する「人間の用意」ができているところの、まことの神にしてまことの人間イエス・キリストの中で≫）認識可能であり、（その恵みの中で認識可能であるが故に）全くただその恵みの中でだけ（≪先行する「神の用意」に包摂された後続する「人間の用意」ができているところのまことの神にしてまことの人間イエス・キリストの中でだけ≫）、認識可能である」ということを語らなければならない。このような訳で、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に可視的に存在している第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）の連続性に連帯することを正しく理解した第三の形態の神の言葉に属する「教会は、別な種類の神の認識可能性についての教説を持った自然神学」（自然的な信仰・神学・教会の宣教）を、「何ら必要としていない」のである。