カール・バルト（その生涯と神学の総体像）

５の１『教会教義学　神論�T／１　�~の認識』「五章　�~の認識　二十五節　�~認識の実現」「二　人間の前での�~」（８７−１１４頁）
再推敲・再整理版です。

「二　人間の前での�~」
　キリストにあっての神は、「自己自身である神の自由」（ご自身の中での神の自由、「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」における内的・内在的な「一神」・「一人の同一なる神」・「三位一体の神」の自由）としての「自存性の概念」（神の自由の概念の積極的側面）と「神とは異なるものによって為されるすべての条件づけからの神の自由」としての「独立性の概念」（神の自由の概念の消極的側面）」との全体性・総体性において、完全に自由であり給う。聖書的啓示証言で、「自由・主権は、神ご自身においてのみ実在であり真理」である（『教会教義学　�~の言葉』）。「最高の、ひとつの、本来的な主権としての�~の主権、換言すればその方の告知と行為（≪客観的なイエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現≫）の中で啓示され、力を発揮する……主としてのその方の自己証明の内的な真理」は（啓示者である父なる神の子としての「啓示ないし和解の実在」そのもの、起源的な第一の形態の神の言葉そのもの、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリスト自身は）、「それと共にまた内的な力」は（その「真理」自身が持っているその「真理」に固有な証明能力、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動、「復活され高挙されたイエス・キリストから降下し注がれる霊」である聖霊の証しの力は）、「その方が（≪ご自身の中での神としての、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」における内在的な「一神」・「一人の同一なる神」・≫）三位一体の神であり、自分自身の中で、永遠から永遠にわたって、（≪「失われない単一性」を本質とする「三位相互内在性」における＜起源＞・＜根源＞としての≫）父（≪という内在的な存在の仕方、存在の様態≫）、（≪父が子として自分を自分から区別した「父を根源」とする≫）子（≪という内在的な存在の仕方、存在の様態≫）、（≪「父なる神と子なる神の愛の霊」である「父と子を根源」とする≫）聖霊なる�~（≪という内在的な存在の仕方、存在の様態≫）であるということ……である」。このように自己運動し自己証明するキリストにあっての神は、人間の証明を全く必要としないのである。何故ならば、このイエス・キリストにおける神の自己啓示は、すでに述べたように、その啓示に固有な証明能力を、起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動を、「復活され高挙されたイエス・キリストから降下し注がれる霊」である聖霊の証しの力を、神のその都度の自由な恵みの決断による客観的なイエス・キリストにおける啓示の出来事とその啓示の出来事の主観的側面としての「聖霊の注ぎ」による信仰の出来事（「啓示と信仰の出来事」）に基づいて終末論的限界の下で信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰、人間的主観に実現された神の恵みの出来事）を与えることができる授与能力を、三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事であるそれ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的の存在している「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）を持っているからである。もしもそうでないとしたら、その神は、その啓示は、「人間の想像能力・思惟能力・表象能力の本質が、現実化され対象化された……絶対的な本質（存在者）、……と考えられ表象されたもの以外の何物でもない」ものとなってしまう（『フォイエルバッハ全集第12巻』「宗教の本質にかんする講演　下」）し、「（中略）神の啓示の内容は、神としての神から発生したのではなくて、人間的理性や人間的欲求やによって規定された神から発生した……」ものとなってしまい、それ故にその「対象に即してもまた、『神学の秘密は人間学以外の何物でもない！』」ものとなってしまう（L・フォイエルバッハ『キリスト教の本質』）。この場合には、ハイデッカーから、ブルトマンに対してと同じように、「それよりは『むしろ無神論という安っぽい非難を受け入れた方がよい』、『いわゆる存在者レベルでの神への信仰は、結局のところ神を見失うことではなかろうか』」と客観的な正当性と妥当性とをもって根本的包括的に原理的に「揶揄」・批判されてしまうであろう（木田元『ハイデッガーの思想』）。

　このイエス・キリストにおける神の「自己啓示によれば、人間はすべてにおいて」、「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「三位相互内在性」における内在的な三位一体の神の＜起源＞・＜根源＞としての「父のおかげを受けており」、その「父にすべてを負うている」のであるから、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下でその啓示認識換・啓示信仰を与えられたとしたならば、その啓示認識・啓示信仰に依拠した信仰の類比・関係の類比を通して被造物としての「すべてのそのほかの父」は、「ただそれの模写およびたとえでしかあり得ない」という自己認識・自己理解・自己規定を得るのである。したがって、『教会教義学　�~の言葉』においては、「内被造世界での、……父という呼び名は確かに真実である」が、「非本来的なもの」であり、「神の内三位一体的父の名の力と威厳に依存しているものとして理解されなければならない」と述べられている。イエス・キリストが、内在的な「失われない単一性」を本質とする「神ご自身の中で、永遠にわたって、父の子であり」、「永遠にわたって彼は子（≪内在的な「失われない区別性」あるいは「失われない差異性」における「父を根源」とする子≫）であるにもかかわらず」、内在的な「失われない単一性」を本質とする「一神」・「一人の同一なる神」・「三位一体の神」の＜起源＞・＜根源＞としての「父の子（≪父が子として自分を自分から区別した「父を根源」とする子≫）であることによって」、「父と等しく、それゆえに永遠にわたって父によって愛され給うということ……に基づいて」、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における第二の存在の仕方において「人間のためにすべてを為し給う」たところの、このイエス・キリストにおける�~の自己啓示――すなわちこの神の「自己証明（≪神の自己認識・自己理解・自己規定≫）は、われわれを感謝と義務を負う在り方へと強いる」のである。何故ならば、「失われない単一性」を本質とする「三位相互内在性」における内在的な「一神」・「一人の同一なる神」・「三位一体の神」は、「永遠にわたって（≪その内在的な三位一体の神の＜起源＞・＜根源＞としての≫）父から生まれ、父とひとつであるみ子であり」、「ご自身の永遠のみ子の父であり給い、またこのみ子と共に聖霊の起源であり給うからである」。最後に、「失われない単一性」を本質とする「三位相互内在性」における内在的な三位一体の神「ご自身が永遠にわたって（≪父と子を起源・根源とする≫）聖霊であり給い、父と子より出で、父と子と同じ本質を持ち給うということ……に基づいて」、�~の「自己証明は、われわれを希望へと、そのようにして聖霊の認識に向かって強いる」のである。

　このことを『教会教義学　�~の言葉』に即して言えば、その自己証明は、第一に、「われわれが一人の主なる神をのみ主として持つ自由をわれわれに与えるがゆえに、聖霊は、そのように告白することを要求し強いる」、第二に、聖霊は、「われわれ人間の中にも、中からも、純粋なもの、聖いものは何も出て来ないと告白することを要求し強いる」、第三に、聖霊は、われわれ人間の生来的な自然的な「理性や力」（知力、感情力、悟性力、意志力、自然を内面の原理とする禅的修行等）によっては「イエス・キリストを主と信じることもできず、知ることもできないと告白することを要求し強いる」、第四に、聖霊は、「われわれ人間の究極的限界性の告白を要求し強いる」、すなわち聖性・秘義性・隠蔽性において存在する�~の不把握性の認識の告白を要求し強いる、終末論的限界の告白を要求し強いる、第五に、新約聖書によれば、神の恵みの賜物である「聖霊を受け」、「満たされた人」は、「召されていること、和解されていること、義とされ、聖とされ、救われていることについて語る時」、「すでに」と「いまだ」の啓示の弁証法において「終末論的に語る」、換言すればキリストの復活からキリストの再臨までの間の聖霊の時代において聖霊は、終末論的信仰を要求し強いるのである（ここで、「終末論的」とは、「われわれの経験と感性」、すなわち人間の感覚と知識を内容とする経験的普遍にとっての＜いまだ＞であり、神の側の真実としてある「成就と執行」、「永遠的実在」として＜すでに＞ということである。したがって、「救済」と救済概念に包括された「平和」をその「信仰の中で持つ」ことは、徹頭徹尾�~の側の真実としてある「約束として持つ」ことである、「われわれはわれわれの未来の存在を信じる。われわれは死の谷のさ中にあって、永遠の生命を信じる」、「この未来性の中で、われわれは永遠の生命を持ち所有する」――この神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰、人間的主観に実現された神の恵みの出来事）、この「信仰の確実性」は、徹頭徹尾�~の側の真実としてある「希望の確実性」である）、第六に、聖霊は、終末論的限界の下での啓示認識・啓示信仰（信仰の認識としての神認識、人間的主観に実現された神の恵みの出来事）の授与の出来事は、神のその都度の自由な恵みの決断による客観的なイエス・キリストにおける啓示の出来事とその啓示の出来事の主観的側面としての「聖霊の注ぎ」によると告白することを要求し強いるのである。このような訳で、日本基督教団立東京神学大学の実践神学者の小泉健が、ルドルフ・ボーレンの「神律的相互関係」の概念に依拠して、「聖霊が説教者に言葉を与え、語ることへと導く。説教者は聖霊の言葉を伝え、聖霊の言葉に導く」と聖霊や聖霊の言葉を、説教者（人間）自身の自由事項・決定事項として実体化させて述べていることは、全くの誤解であり全くの誤謬であり全くの曲解なのである。何故ならば、そのような小泉の思惟と語りにおける意識と認識は、まさに「（中略）神の意識は人間の自己意識であり、神の認識は人間の自己認識である」という水準ものに過ぎないからである（L・フォイエルバッハ『キリスト教の本質』）。したがって、バルトは、『説教の本質と実際』で、聖霊や聖霊の言葉は、説教者（人間）の自由事項・決定事項ではないから、すなわち説教者（人間）が「わがまま勝手に」恣意的独断的に実体化できないものであるから、「聖霊が（あるいは別の霊であっても）言葉を吹きこむこととか、あるいは一つの構想を持っていることなどあてにしてはならない」、「説教は語ることであるが、……（≪「聖書への絶対的信頼」に基づいて≫）一語一語準備し、書き記しておいたもののことである」と述べている、また『教会教義学　神の言葉』では、教会の宣教における思惟と語りと行動が、「キリスト教的語りの正しい内容の認識として祝福され、きよめられたものであるか、それとも怠惰な思弁でしかないかということは、神ご自身の決定事項であって、われわれ人間の決定事項ではない」、それ故に教会の宣教、その一つの補助的機能としての神学は、「『主よ、私は信じます。私の不信仰を助けて下さい』というこの人間的態度に対し神が応じて下さるということに基づいて成立している」。また、「神が応じて下さる」かどうかということも、神のその都度の自由な恵みの決断によるのである。

　キリストにあっての�~の自己啓示、自己証明は、すなわち「そのみ言葉を通して人間と結ばれた契約の中で、契約と共に為される神の告知と行動（≪われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における三つの存在の仕方、「創造、和解、救済のみ業」≫）」は、「失われない単一性」を本質とする「三位相互内在性」における内在的な「一神」・「一人の同一なる神」・三位一体の「神ご自身の中に基づいており、……力強く、有無を言わさず人を心服させるのである」。したがって、そのように自己還帰する対自的であって対他的な完全に自由な内在的な「神がご自身の中で三位一体の神であり給うがゆえに、われわれは……その（≪われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における第二の存在の仕方である起源的な第一の形態の神の≫）言葉の中ででも、また（≪外在的なその「失われない差異性」における三つの存在の仕方である≫）創造、和解、救済のみ業の中ででも、（≪「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「三位相互内在性」における内在的な三位一体の≫）神ご自身と取り組まなければ」ならないのである。

　このような訳で、「神が人間の前に立ち給い、ご自身を人間に対して認識すべく与え、人間によって認識されるということがまことであるとするならば、その時そのことは、神は三位一体の神、父、子、聖霊なる神であるということに基づいてまことであり、またそのことの中でまことである」。このような「われわれの神認識」の出来事は、「失われない単一性」を本質とする「三位相互内在性」における内在的な三位一体の「神ご自身の中で」、神ご自身が、「父、子、聖霊」として自己認識・自己理解・自己規定したところの出来事に基づいている。この「神ご自身の中」での出来事は、「われわれの神認識の本質であり力である」。この「神ご自身の中で」の出来事は、「われわれに知られていない出来事ではなく、その言葉（≪「失われない単一性」を本質とする「三位相互内在性」における内在的な三位一体の神の、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における第二の存在の仕方、すなわちまことの神にしてまことの人間「ナザレのイエスという人間の歴史的形態」――すなわち「イエス・キリストの名」≫）を通してわれわれに知らされた出来事である」。この出来事は、「まさに顕サレタ神こそが隠サレタ神である」という出来事である。したがって、「人間からは理解を絶した仕方であずかるようになる出来事である」。言い換えれば、信仰の認識としての神認識の出来事（啓示認識・啓示信仰の出来事、人間的主観に実現された神の恵みの出来事）は、「自明的な事柄」ではなく、神のその都度の自由な恵みの決断による客観的なイエス・キリストにおける啓示の出来事とその啓示の出来事の主観的側面としての「聖霊の注ぎ」による信仰の出来事に基づいて終末論的限界の下で与えられる出来事なのである。「われわれの神認識は事実真理をただ、あの内的な真理の外面として持つようになる。換言すれば神がご自分を認識し給う三位一体の神であるということの力で、真理を持つようになる」。したがって、われわれは、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「三位相互内在性」における内在的な三位一体の神の「隠れの中で」、「神を……ほめたたえ、讃美」しなければならないのである。何故ならば、その聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「三位相互内在性」における内在的な三位一体の神という神の自己認識・自己理解・自己規定は、「われわれなしに」、われわれの側からする三位一体という概念規定なしに、�~の側の真実として「それ自身で、……現実に起こっている」からである。したがって、「派生的な、副次的な仕方で、被造物世界の領域の中で起こる神認識」――すなわち人間が人間的に所有する人間の信仰の認識としての神認識は、「神の領域の中で」、「神ご自身の真理……の領域の中で……われわれなしに、（≪神の側の領域の神の自己運動として≫）現実に起こっているということに基づいて」、それ故に神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で「起こるのである」。その「三位一体的な生そのものの中」における、「神の主要な対象性」（「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「三位相互内在性」における三位一体の神の内在的な三様性、区別性、三つの存在の仕方、三つの様態、父、子、聖霊）と共にその「認識」（内在的な自己還帰する対自的で対他的な完全に自由な三位一体の神としての自己認識・自己理解・自己規定）は、「神ご自身の中で」の内在的な「対象性」と「認識」である。したがって、この内在的な「対象性」と「認識」は、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で「われわれに対して与え給う」「神の副次的な対象性」（父、子、聖霊なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事全体）とその「認識」とは区別されるのである。「神が主要な、またその副次的な対象性の中で、われわれにとって対象であり給う時、そのことは神の自由な恵みであり、あくまで神の自由な恵であり続ける」。「失われない単一性」を本質とする「三位相互内在性」における内在的な三位一体の神の、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における第二の存在の仕方、すなわち啓示者である父なる神の子としての「啓示ないし和解の実在」そのもの、起源的な第一の形態の神の言葉そのもの、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことのも神にしてまことの人間イエス・キリストの業と「行為の中で」、それ故に具体的には第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書的啓示証言におけるその業と「行為の中で」、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で、「神はご自身を認識すべく与え給う」のである。したがって、われわれが、「失われない単一性」を本質とする「三位相互内在性」における内在的な三位一体の「神の存在を、その都度の神の活動（≪われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における三つの存在の仕方、業と行為、父、子、聖霊なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事全体≫）から切り離す」ことをするならば、われわれは「創造主、和解主、救済主」なる神を認識することはできないのである。

　このような訳で、キリストにあっての神は、「われわれにとっては間接的に対象的」なのである。したがって、「われわれ」は、「�~を、その衣で覆われた対象性の中で、（≪認識し、≫）信じるのであって、決してその衣で覆われない対象性の中で、（≪認識し、≫）信じるのではない」。第三の形態に属する全く人間的な教会（そのすべての成員）は、終末論的限界の下で、具体的には第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書（「啓示ないし和解」の「概念の実在」、「しるし」、「証言」）における「対象」を、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で、「知覚し、直観と概念を用いて把握する」のである。信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）は、「被造物的な実在」が、具体的には第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書を教会の宣教における原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、「神的な対象性を証しするものに定められ、用いられることの中で為される神認識である」。したがって、第三の形態の神の言葉に属する全く人間的な教会（そのすべての成員）は、この信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰）に「感謝する」し、ただこの「神の業」に奉仕し得るだけなのである。「われわれはここで」、「神を愛することがゆるされるが故に、神をおそれなければならない必然性」の、イエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現において「神がご自身をわれわれに向かってあのようにあきらかに確実なものとなし給うたが故に、われわれはその秘義の中での（≪われわれに終末論的限界の認識と自覚を強いる聖性・秘義性・隠蔽性において存在する神の不把握性の中で≫）神をうやまわなければならない必然性」の「根の前に立つ」のである。「前に、神の対象性（自己「啓示される方の主要な対象性の真理」）なしには、いかなる神認識（その自己「啓示の中でのその方の副次的な対象性の真理」についての認識）もないということを見た」「われわれは、ここでまた神の対象性の問題の根の前に立つ」のである。ご自身の中での神としての「失われない単一性」を本質とする「三位相互内在性」における内在的な三位一体の「神ご自身の主要な対象性（≪三様性、区別性、差異性、存在の仕方、存在の様態≫）こそが、父、子、聖霊としてのその永遠的な存在の中での実在である」。「三位一体の神として神は、先ず第一に、とりわけ、ご自身に対して対象的であり給う」、内在的な自己還帰する対自的であって対他的な完全に自由な方であり給う。言い換えれば、内在的な自己還帰する対自的であって対他的な完全に自由な三位一体の神は、「神ご自身の中で」、ご自身を、「三位相互内在性」における三位一体の神として自己認識・自己理解・自己規定し給う。このような訳で、神と人間との無限の質的差異の下で、神が、「ご自身の領域の中で、自分自身に対して対象的であり給うということに基づいて」、「被造物的領域の中でまたわれわれに対しても対象的となり給う時、そのことは神的本質の否定や放棄を意味」しているのではなく、「それは、その神的本質の確認と実証」、自己証言を意味しているのである。したがって、イエス・キリストにおける神の自己啓示は、ナザレのイエスという「人間の歴史的形態」――すなわち「イエス・キリストの名」（外在的なその第二の存在の仕方、子なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事）において、聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「三位相互内在性」における内在的な三位一体の神の認識と信仰（啓示認識・啓示信仰）を要求する啓示なのである。

　このような訳で、「われわれは、このわれわれの領域の中での�~の啓示を（≪イエス・キリストにおける神の自己啓示・自己顕現≫）を（≪教会の宣教における原理・規準・法廷・審判者・支配者として≫）堅くとって離さないでいることができるし、離さないでいるべきである。われわれは�~をそのみ業としるしの中で認識することができるし、認識すべきである」。したがって、われわれは、具体的には第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書（預言者および使徒たちの最初の直接的な第一のイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」、「啓示ないし和解」の「概念の実在」）を第三の形態の神の言葉に属する全く人間的な教会（われわれすべての成員）の宣教における原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、純粋な教えとしてのキリストにあっての神・キリストの福音を尋ね求める「神への愛」と、そのような「神への愛」を根拠とした「神の讃美」としての「隣人愛」（ここで隣人愛は、通俗的なそれではなく、キリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、神の命令・要求・要請のことである）という連関の中でイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を目指すところで、純粋な教えとしてのキリストにあっての神・キリストの福音を「認識することができるし、認識すべきである」。何故ならば、われわれは、ご自身の中での神としての聖性・秘義性・隠蔽性において存在する「失われない単一性」・神性・永遠性を本質とする「三位相互内在性」における内在的な「一神」・「一人の同一なる神」・「三位一体の神」の、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における第二の存在の仕方（性質・働き・業・行為・行動、子なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事）、すなわちそれ自身に「固有な証明能力」と「復活され高挙されたイエス・キリストから降下し注がれる霊」である聖霊の証しの力を持つところの、啓示者である父なる神の子としての「啓示ないし和解の実在」そのもの、起源的な第一の形態の神の言葉そのもの、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストの中で、それ故に具体的には第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書の中で、神のその都度の自由な恵みの決断による客観的なイエス・キリストにおける啓示の出来事とその啓示の出来事の主観的側面としての「聖霊の注ぎ」による信仰の出来事（「啓示と信仰の出来事」）に基づいてのみ、終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰、人間的主観に実現された神の恵みの出来事を持つことがゆるされるからである。