カール・バルト（その生涯と神学の総体像）

３の１『教会教義学　神論�T／１　�~の認識』「五章　�~の認識　二十五節　�~認識の実現」「一　神の前での人間」（２６−５４頁）
再推敲・再整理版です。

　「神認識は信仰の認識である」――この人間が人間的に所有する人間の信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰、人間的主観に実現された神の恵みの出来事）は、それがひとつの認識である限り、「そのほかの認識と同じようにひとつの対象を持っている……」。しかし、「神認識は信仰の認識としてすべてのほかの認識と、その対象が人間の生きた主であるという点で、最高に違っている」。すなわち、その対象が、「自己自身である神の自由」（ご自身の中での神の自由、「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」における内在的な三位一体の神の自由）としての「自存性の概念」（神の自由の概念の積極的側面）とわれわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における三つの存在の仕方、すなわちイエス・キリストの父――啓示者・言葉の語り手・創造主、子としてのイエス・キリスト自身――啓示・語り手の言葉・和解主、「父なる神と子なる神の愛の霊」である聖霊――啓示されてあること・「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）・救済主なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事全体においてわれわれと出会い給う「神とは異なるものによって為されるすべての条件づけからの神の自由」としての「独立性の概念」（神の自由の概念の消極的側面）」との全体性・総体性において、完全に自由であり給う神という点で「最高に違っている」、換言すれば「聖書の主題であり、同時に哲学（≪人間学≫）の要旨である」神と人間との無限の質的差異を固守するという＜方式＞において「最高に違っている」。したがって、前述したように、そこでの信仰の「認識対象は、人間が、その方を認識する以前に既に、（≪常に先行する≫）その方から由来している人間の創造主、イエス・キリストを通して聖霊の中でご自身についての認識を現実のものとし可能とする彼の和解主ご自身（≪言葉を与える主は、同時に信仰を与える主である≫）、その方についてのすべての現在的な認識の未来的な（≪啓示の≫）真理である救済主（≪�Tコリント１３・８以下≫）、であり給う」。「言葉を与える主は、同時に信仰を与える主である」信仰の「認識対象」自身が、すなわちキリストにあっての神ご自身が、イエス・キリストにおいて自己啓示された神ご自身が、その啓示自身が、啓示に固有な証明能力を、啓示者である父なる神の子としての「啓示ないし和解の実在」そのものである起源的な第一の形態の神の言葉自身の出来事の自己運動を、「復活され高挙されたイエス・キリストから降下し注がれる霊」である聖霊の証しの力を、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰、人間的主観に実現された神の恵みの出来事）を与えることができる授与能力を、三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事であるそれ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に存在している「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）を持っている。

　このような訳で、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書（預言者および使徒たちの最初の直接的な第一のイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」、「啓示ないし和解」の「概念の実在」）を、教会の宣教、その一つの機能としての神学、その思惟と語りと行動における原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、間接的媒介的反復的に、純粋なキリストにあって神・キリストの福音を尋ね求める、またイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を目指す「神への愛」と、そのような「神への愛」を根拠とした「神の讃美」としての「隣人愛」（この「隣人愛」は、キリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、神の命令・要求・要請である）という連関を時間累積させて行くことができるということは、「恵みの立場」なのである。「神認識は信仰の認識（≪信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰、人間的主観に実現された神の恵みの出来事≫）として、この立場の中で起こる」のである。したがって、「そうでないとしたら神認識は全く起こらないであろう」。このことは、第三の形態の神の言葉に属する全く人間的な教会は、「いかなる場合でも、いかなる意味においても、対象を」、すなわち起源的な第一の形態の�~の言葉であり「啓示ないし和解の実在」そのものであるイエス・キリスト自身を、それ故に具体的には第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉でありその最初の直接的な第一の「啓示ないし和解」の「概念の実在」である聖書を、「支配すること……はできないということを意味している」。言い換えれば、第三の形態の神の言葉である全く人間的な教会における信仰の認識としての神認識のその「対象」こそが、それ故に具体的には第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書的啓示証言は、教会の宣教、その一つの機能としての神学、その思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者であるということを意味している。われわれは、キリストにあっての神を、前述したように持つのであって、「そのほかの諸対象を持つように持っているのではない」。すなわち、マルクスの自然哲学における、身体と精神を介した個体的自己としての全人間の普遍的で実践的な全自然（自然としての自己身体、性としての他者身体、宇宙を含めた外界としての自然、また人間化された自然、人間的自然）との相互規定的な対象的活動における＜対象＞を持つように持っているのではないのである。そうでないならば、その思惟と語りにおける「対象」は、フォイエルバッハやマルクスやハイデッガーが、客観的な正当性と妥当性とをもって根本的包括的に原理的に批判（宗教批判）したキリスト教におけるそれでしかないからである。したがって、われわれは、信仰の認識としての神認識における「対象」を、それぞれの人間の恣意的独断的な人間的理性や人間的欲求やによって対象化された対象（物語世界、意味的世界）として、すなわち「存在者レベルでの神への信仰」の対象として、「抽象することはできない」のである。このことは、「主要な対象性の中での神」についても、「副次的な対象性の中での神についても妥当する」のである。したがって、「神認識は信仰の認識である」というその認識「対象」（客体）は、第三の形態の神の言葉に属する全く人間的な教会のその認識方法、その認識に対して、徹頭徹尾「自由」と「支配力」を持っているのであり、持ち続けるのである。何故ならば、「ただ神が、ご自身を対象として措定し給うことによってだけ、人間は神を認識することができるものとして措定されている」からである。

　このような訳で、「神が主要な、またその副次的な対象性の中で、われわれにとって対象であり給う時、そのことは神の自由な恵みであり、あくまで神の自由な恵みであり続ける」のである。「この行為の中で」、すなわち神のその都度の自由な恵みの決断による客観的な啓示の出来事とその啓示の出来事の主観的側面としての「聖霊の注ぎ」による信仰の出来事に基づいて初めて、終末論的限界の下で、「神はご自身を認識すべく与え給う」のである、神は信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰、人間的主観に実現された神の恵みの出来事を与え給うのである。内在的な三位一体の神の、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における第二の存在の仕方（性質、働き、業、行為、行動、活動）、すなわち起源的な第一の存在の仕方であり啓示者である父なる神の子としての「啓示ないし和解の実在」そのもの、起源的な第一の形態の神の言葉、「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおける神の自己啓示は、「ナザレのイエスという人間の歴史的形態」――すなわち「イエス・キリストの名」において、その存在の本質であるご自身の中での神としての「父なる名の内三位一体的特殊」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在性」における内在的な三位一体の神の認識と信仰を要求する啓示である。したがって、われわれが、「神の存在を、その都度の神の活動から切り離すことをするならば、われわれは、（≪全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体としての父、子、聖霊なる神の存在である≫）創造主、和解主、救済主なる神を認識することはできない」のである。そうでないならば、「どうして、そのようなものは生ける主であるだろうか」。したがって、啓示認識・啓示信仰としての「信仰は、人間が神の活動、生ける主としての神の存在の活動（≪われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における父、子、聖霊なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体≫）を通して方向づけられることと共に立ちもすれば倒れもする」のである。このような訳で、「信仰の神認識」、信仰の認識としての神認識（啓示認識・啓示信仰、人間的主観に実現された神の恵みの出来事）は、神の「活動する存在（≪われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における父、子、聖霊なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体≫）とだけ、……かかわりを持たなければならない」のである。「信仰の神認識」は、「顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間「イエス・キリストの名へと方向づけられている」のである。したがって、人は、「神がご自身を認識すべく与え給うように」、「必然的に、祈らなければならない……」のである。何故ならば、「信仰の神認識」は、「『主よ、私は信じます。私の不信仰を助けて下さい』というこの人間的態度に対し神が応じて下さるということに基づいて成立している」からである。このことは、「神認識の内容にとって……決定的な、実際的な意味を持っている。恵みの立場は、神の恵みが呼び求められ、祈り求められることによって、占められ、保持される……」。「恵みが（≪啓示の≫）真理であり、（≪啓示の≫）真理がただ恵みとしてだけ持つことができることが確かである限り、事情はどうしてもそうなのである」。したがって、「われわれは、再び聖書に戻ると共に」、そこで「われわれに対し神認識として記述されていること」は、「そのほかの認識の働きに対して、それらと区別されて、事実、常に（≪全き自由の�~のその都度の自由な恵み決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいた≫）神の何らかの行動と一致するということによって、ぬきんでていることを思い出すことにしよう」。

　信仰の認識としての神認識は、「神がご自身の中で神であり給うことによってではなく、むしろ神が（≪われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における第二の存在の仕方において≫）ご自身をそのようなものとして啓示し給うことによって」、また「ただ神の業（≪存在の仕方≫）がそこにあることによってではなく、むしろ神がそのみ業（≪存在の仕方≫）の中で働き給うことによって（≪神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事に基づいて、神のその都度の自由な恵の決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて≫）、神は認識され給う」。このように、信仰の認識としての神認識は、「常に」、先行する神の側からする、それ故に先行する神の「主導権」による、「人間と神との出会い」である。したがって「それは、人間にとって常に予見され得ない何ものか、驚くべき、新しい何ものかを持って」いる。したがって、それは、絶えず繰り返し為されるそれ「以前の出会いの継続」（キリスト教に固有な類と歴史性）、「その中で神認識が新しい決断の対象となるところの出会い」である。したがって、「例えば、アブラハム、モーセ、ダビデ」においても、常に先行する神の側からは「一度ですべてにわたって力を奮う仕方で彼らに関して決められたことが、その都度絶えず新たにされる更新の長い歴史の中で――彼らひとりびとりにとっては一生涯を通して――彼らの身に実現され、成就されなければならない」のである。すなわち、「その都度、（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で≫）この更新が生起し、効果を発揮することによって、彼らは、聖書が神認識と呼ぶところのことを持つのである」。イスラエルの民は、「神ご自身の偉大な対象化」（内在的な三位一体の神の、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における起源的な第一の存在の仕方、すなわち父なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事の顕現化、外在化、客体化）としての、「神の業およびしるし」としての「エジプトからの脱出」という、信仰の認識としての神認識を与えられ持ったのである。しかし、出エジプトの神は、「イスラエルの歴史のすべての時代にわたって」、「人がバアルを持つことができるが、ヤハウェを持つことができないような仕方で、……異なる神々への堕落の形をとって速やかにその本性をあらわす（≪堕落した形態の≫）ヤハウェ信仰が存在した」から、「そのみ業（≪父なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事≫）の中で認識され、再認識されるために、預言者たちに向かって、また預言者たちを通して、語り、繰り返し語り給わなければなら」なかったのである。このような訳で、「新しい恵みなしには、そのみ業の中で神が働き給うことなしには、イスラエルは、いつか、神から身を背け、それからまた内的にも自分の身に汚辱を招きつつ滅びてしまうであろう」。したがって、キリスト教に固有な類と歴史性は、「神がご自身を証し（≪自己証明≫）することをやめ給わないということによってもってかかっている」のである。この「旧約聖書的な線」は、新約聖書におけるイエス・キリストの復活から「昇天にいたるまで……続いている」。それと同じように、民も、「イエスに選ばれ、召された弟子たち」も、「イスラエルの民およびその神の人たちのように、常に新しい状況の中で、確信のないもの、疑うもの、誤謬と失敗を重ねるものとして」、神の側の真実としてある「イエスの忠実さ」による「支え」と「更新」によって、「常に新しい教え、叱責、励ましによって強められることを必要としており、また事実そのようなものにあずかっているものとして、描かれている」。

　しかし、「使徒たちと使徒職の担い手たちに関する限り、使徒行伝の……聖霊降誕日以降」、「彼らがアブラハム、モーセ、ダビデと同じように、旧約の民全体と同じように、堕落することができ、更新を必要としているということ」は、「もはや強調されていない」。それ以降は、その主調音が「変えられ」ている。「今や、ただこれらすべての人間たち……に対してイエス・キリストのみ名が宣べ伝えられなければならず、そのものたちに対してイエス・キリストのみ名が既に宣べ伝えられており、新しい恵み、新しい教え、慰め、叱責をあのように必要としている人間たち……が現れている」のだが、「使徒行伝以後登場してくる」第二の形態の神の言葉に属する「使徒たちと使徒職の担い手たち」は、その「神認識を確認し、強固なものにして行くために、事実、新しい恵みを必要としないのである」。「これらの人間は、今や確かに、キリストの甦えり（≪「成就された時間」≫）と昇天のこちら側では」、そのことは、「ただ、（≪内在的な三位一体の神の、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における第二の存在の仕方、子なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事である≫）イエス・キリストの中で起こった神の業の生ける構成要素としての彼らの役割の中でだけ、重要であり、興味深いものなのである」。何故ならば、彼らにとって、起源的な第一の形態の神の言葉である第二の存在の仕方における「神の業が今や彼らを通して起こるということが重要」だからである。そして、常に先行する神の側からする「神の業が彼らを通して起こる限り」、それ故に先行する神の側から「彼ら自身が恵みの道具である限り」、その時第二の形態の神の言葉である「彼らは……あの更新を必要としていないのであ」って、「あの更新の問題」は、その「彼らに相対して」いる第三の形態の全く人間的な教会を含めた「ほかの者たちにとってだけ立てられている」のである。今や、「使徒行伝以後登場してくる」「使徒たちと使徒職の担い手たち」にとっては、すべての人々がキリストの福音を現実的に所有することができるために、キリストの福音を内容とする福音の形式としての律法、「もろもろの誡命中の誡命、われわれの浄化・聖化・更新の原理、教会が（≪第三の形態の神の言葉である全く人間的な≫）教会自身と世に対して語らねばならぬ一切事中の唯一のこと」、キリストの福音の告白・告知・証し・宣べ伝えが最重要課題である。何故ならば、イエス・キリストこそが、われわれ人間のためにわれわれ人間に代わって、われわれ人間の「神の恩寵への嫌悪と回避に対する神の答えである刑罰（死）を（≪「全く端的に、信じ給う」て≫）唯一回なし遂げ給うた」のであり、すなわち「律法を成就」・完了されたのであり、それ故に「われわれ」人間の更新を可能とするのは「今日に至るまで罪人の手に渡され・十字架につけられ・死んで甦られ給うた」イエス・キリストにある「復活の力」のみであり、このイエス・キリスト（福音）こそが「律法の目標」であり、それゆえに律法はキリストの福音を内容とする福音の形式であるからである。このようにして、キリスト教に固有な類と歴史性は、常の先行する神の側の真実によって支えられ成立しているのである、換言すれば常に先行する神の側の真実によって支えられ成立している類と歴史性が、キリスト教に固有な類と歴史性である。まさにこの点で、マルクス／エンゲルスの『ドイツ・イデオロギー』における次のような類と歴史性とは異なっている――「歴史とは個々の世代（≪個体的自己の成果の世代的総和≫）の継起（≪ある類の時間、時代≫）にほかならず、これら世代のいずれもがこれに先行するすべての世代からゆずられた（≪経済学的範疇の≫）材料、資本、生産力（≪あるいは性・夫婦・その共同性としての家族、言語――科学・技術であれ、文学であれ、神学であれ、哲学であれ、家族論であれ、社会学であれ、政治学であれ、法的政策的な言語を持っている観念の共同性を本質とする国家であれ等々≫）を利用（≪媒介・反復≫）する（≪それぞれの類の時間の時間累積、歴史性≫）」。

　このような訳で、第三の形態に属する全く人間的な教会（そのすべての成員）の宣教が為すべきことは、教会が、具体的には第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書（預言者および使徒たちの最初の直接的な第一のイエス・キリストについての「言葉、証言、宣教、説教」、「啓示ないし和解」の「概念の実在」）を、自らの思惟と語りと行動における原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、キリストにあっての神・キリストの福音を尋ね求める「神への愛」と（「ピリピ三・一二以下によれば」、「パウロ自身も捕らえたとは考えず」、キリスト・イエスによって「捕らえられていることに基づいて、捕らえようとして追い求めている」から）、そのような「神への愛」を根拠とした「神の讃美」としての「隣人愛」という連関においてイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を目指していくという点にある。神のその都度の自由な恵みの決断による客観的なイエス・キリストにおける啓示の出来事とその啓示の出来事の主観的側面である「聖霊の中で神認識を現実にし、可能にするところの和解主」である「イエス・キリスト」は、ご自身の中での神としての「父なる名の内三位一体的特殊性」・「神の内三位一体的父の名」・「三位相互内在」における三位一体の神として、「いうまでもなく創造主であり、……また救済主、すなわちすべての神認識の未来的な真理であり給う」（�Tコリント１３・８以下）。「まさに本当に神ご自身が、聖霊にあって�~のみ子が……忠実であり、繰り返し初めから人間とことを始め、繰り返しそのみ業（≪神のその都度の自由な恵みの決断による客観的なイエス・キリストにおける啓示の出来事とその啓示の出来事の主観的側面としての「聖霊の注ぎ」による信仰の出来事≫）の中で働くことをやめ給わないということ、それが、神の前に立っており、神を認識する人間について、新約聖書が描いている絵の内容である」。

　最後に、神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で「信仰の中で自分を神から区別し」（徹頭徹尾神と人間との無限の質的差異を固守するという＜方式＞を認識し自覚し）、キリストにあっての神へとベクトル変容させられた信仰の認識としての神認識にまで来た時に、間接的媒介的反復的に「自分を神と結びつける」ことができるところの「認識する人間はそれからどうなる」のか。この出来事は、「神的な『以後』」の問いを意味している。この命題の「積極的な意味」は、信仰の認識としての「神認識（≪啓示認識・啓示信仰、人間的主観に実現された神の恵みの出来事≫）は、神に対する服従である」ということである。この「神に対する服従」は、三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事である、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に存在している「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）に対する「他律的服従」とその服従への決断と態度（「自律的服従」）との全体性・総体性のことである。したがって、「人は次のことに注意せよ」――「神認識」は、「服従である、あるいは……必然的に……服従を持っている、あるいはそれは、自分のところに服従を招きよせる」ということではないのであって、「神認識は、信仰の認識として、それ自身」、「必然的に服従であり、神的決断の行為に対応する人間的決断の行為であり、生ける主としての（≪内在的な三位一体の神の≫）神的存在のあの行為に対応し」、すなわちわれわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における第二の存在の仕方であるイエス・キリスト自身、すなわち起源的な第一の存在の仕方であり啓示者である父なる神の子としての「啓示ないし和解の実在」そのもの、起源的な第一の形態の神の言葉自身（子なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事）に対応し、「その中で神を信じる信仰が基礎づけられており、その都度新たに基礎づけられる」「恵み行為に対応する人間的決断の行為である」（イエス・キリストにおいて律法は、キリストの福音を内容とする福音の形式であるように、ここで認識と行為も、二元論的に対立してはいないのである）。「まさに、（≪内在的な三位一体の≫）神がご自身をこの行為（≪われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における第二の存在の仕方、すなわち働き・業・行為、子なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事≫）の中でわれわれの対象（≪間接的媒介的反復的な対象性における対象≫）として、またわれわれを（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で≫）神ご自身を認識するものとして措定し給うことによって」、「われわれの神認識はただ、われわれがこの行為に従い、われわれがこの行為の対応となり」、それ故に「われわれはその現実存在全体をもって」、「そのようにしてまたわれわれの直観と概念を用いて」信仰の認識としての神認識を目指すことでもって、「神的な行為に対応する人間的な行為（≪「他律的服従」と「自律的服従」との全体性・総体性≫）となるということについて決定が下されている」のである。われわれは、このような信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰、人間的主観に実現された神の恵みの出来事の中において、ご自身の中での神としての内在的な三位一体の神の、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における三つの存在の仕方、すなわちイエス・キリストの父――啓示者・言葉の語り手・創造主、父の子としてのイエス・キリスト自身――啓示・語り手の言葉・和解主、「父なる神と子なる神の愛の霊」としての聖霊――啓示されてあること・「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）・救済主なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体について終末論的限界の下で認識（信仰）することができるのである。このような「服従の行為としてだけ、神認識は信仰の認識であり、それと共に現実の神認識である」。何故ならば、ご自身の中での神としての内在的な三位一体の神は、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における第二の存在の仕方において「現にある方として認識されることを欲し給う」ということ、「現にある方として行動し給う」ということ、「この行動するものとして……認識されることを欲し給う」ということ、この「行動するものとして（≪キリストにあっての≫）神を認識することは、（≪キリストにあっての≫）神に服従すること（≪「他律的服従」と「自律的服従」の全体性・総体性≫）を意味している」からである。このような訳で、信仰の認識としての神認識は、「神の自由な恵みの認識」であり、「そのみ業（≪「まさに顕ワサレタ神こそが隠サレタ神である」まことの神にしてまことの人間イエス・キリストにおいて自己啓示されたところの、内在的な三位一体の神の、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における三つの存在の仕方、父、子、聖霊なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事全体≫）の中での神の働きを知る知識」である。

　このような訳で、「われわれは、（中略）神が、ご自身をわれわれの対象として、またわれわれに対して神ご自身を認識するものとして、措定してくださるようにとの祈り」を持たなければならない。「具体的に次のように祈らなければならない」――（ア）「わたしたちを……神の副次的および主要な対象性を、客観主義的に、参与も、服従もせずに、表向き保証された場所に留まりつつ考察しようとする誘惑に……陥らせないで下さい」、（イ）「わたしたち」を、「まるであなたが……（……認識する自由をわれわれが持っているほかの諸対象のような、ひとつの）対象（≪身体と精神を介した普遍的で実践的な全自然との相互規定的な対象的活動における諸対象としての対象≫）であるかのように思い違いをする誘惑に陥らせないで下さい」、（ウ）「わたしたち」を、あの「神の言葉の三形態」の関係と構造（秩序性）において神語り給う故に神語り給うことに「聴従しつつことを始めることなしに（≪具体的には第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書的啓示証言を自らの思惟と語りと行動における原理・規準・法廷・審判者・支配者として、それに聴従しつつことを始めることなしに≫）、あなたについてほんの少しでも知り、語り、聞くことができるかのように、……あなたを認識しようとする誘惑に陥らせないで下さい」。これらの「誘惑」は、「既に神の民および教会へと召された人間にとって特徴的な……誘惑」である。第三の形態に属する全く人間的な教会における牧師を含めて指導的立場の人間が、この誘惑に陥った場合、その成員の異議申し立てがない限りは、その「民の場のただ中において、教会の場のただ中において、神認識はおしまいになってしまう。しかも、単に部分的にだけでなく、完全におしまいになってしまうのである」。「われわれ自身からでていること」は、「選ばれ、召された人間、照らし出され、委任を受けた人間」においても、それは「常にこの誘惑であるだろう」。したがって、「教授でないものも、牧師でないものも、彼らの教授や牧師の神学が悪しき神学でなく、良き神学であるということに対して、共同の責任を負っている」（『啓示・教会・神学』）。このような訳で、そのような「誘惑が克服されるように、祈らなければならないのである」。「もしも彼が恵みの神を彼の神として、また神と区別され、それでいてまた神と結ばれている罪深い人間として自分自身のことを認識しているのでないとしたら、もしも彼が生ける主である神の行為を通して裁かれた人間でないとしたら」、それ故に「もしも彼が神へと方向づけられた姿の中で服従の中に立っていないとしたら」、あの「神への愛」と「神への愛」を根拠とした「神の讃美」としての「隣人愛」という連関における信仰の認識としての神認識は「全く遂行されていないことになるであろう」。何故ならば、キリストにあっての啓示の「真理はただ恵みとして（≪神のその都度の自由な恵の決断による客観的なイエス・キリストにおける啓示の出来事とその啓示の出来事の主観的側面としての「聖霊の注ぎ」による信仰の出来事に基づいて終末論的限界の下で与えられる信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰、人間的主観に実現された神の恵みの出来事として≫）受け取ることができるだけであることが確かであるように」、その「恵みを得ることは、服従の決断（≪「他律的服従」と「自律的服従」との全体性・総体性≫）から成り立っていなければならないであろう」からである。

　「信仰についてのカルヴァンの定義」――信仰は、「ワレワレニ対スル神ノ恵ミノ認識デアル」。カルヴァンは、「それに対応しつつ、『綱要』のはじめで、……神の認識について」、「ソレハ、モシモアダムガ堕落シナイママニトドマッテイタトシタナラバ、自然ノ本性ノ秩序ニ導カレテワレワレニソナワッテイタデアロウ。ナゼナラ、本来ノ意味デ言エバ、『宗教』モ『敬虔』モナイトコロニハ、神ヲ認識スルコトガアルトハ言ウベキデナイカラデアル」・「宗教の前提である敬虔」は、「神ヘノ愛が神ヘノ敬イト結ビツイタモノである」・「敬虔が生まれる純粋ニシテ現実性ヲモッタ宗教とは」、「神ヘノオゴソカナ恐レト結ビツイタ信仰のことであり、ソレハ恐レガ自発的ナウヤウヤシサヲウチニ含ムトトモニ、律法デ規定サレテイルヨウナ正シイ礼拝ヲトモナウ」、とカルヴァン述べている。「人は次のことによく注意せよ」――「それは……自発的ナウヤウヤシサと神の律法に対応する正しい礼拝は神を真剣に恐れることに基づいており、�~を恐れる真剣な恐れは信仰の属性であり、他方信仰そのものは神の恵ミヲ知ル知識に基づいている」ということに、「そのようなわけでわれわれが神を問う時、すべてのことは、神の力を感ジトルコトに、すなわち神がイッサイノ善ノ源泉として認識されるということに、よってもってかかっている」、「『神ハ何デアルカ』というのではなく、内在的な三位一体の神の、われわれのための神としての「外に向かって」の外在的なその「失われない差異性」における三つの存在の仕方、すなわち父、子、聖霊なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体を通して、『神ハドノヨウニアリ給ウカ』とわれわれは問わなければならない」。カルヴァンは、「世界の現実存在と動き全体」を、「ただ単に神ハ何デアルカという問いに対してだけでなく、また神ハドノヨウデアリ給ウカに対する答えであり、（≪「空虚ナ思弁ニ」よって「空想スルノデハナ」く、「知覚ニ……触レル」仕方で、すなわち「客観的に、また主観的に、内容を満たしつつ」「非常ニ生キ生キト」≫）神ヲ知ルヨウニトノ唯一の招きである」、と述べた。すなわち、カルヴァンは、ここでは、知識を、「人間ノ精神ノウチニ生マレナガラニシテ入レラレテイル神ニツイテノ知識」として理解した――このカルヴァンの一面・部分を拡大鏡にかけて全体化し、自分の自然神学を、「すこぶる宗教改革的」であり、「全くカルヴァンの思想に近い」、その神の像の形式的側面に関する思想と「『ほとんど全く』同じ」と述べたのがエーミル・ブルンナーである。しかし、カルヴァンのその思惟と語りは、「ただ、後で、聖書によって仲介され、イエス・キリストにあって実現された神認識として記述されることの先取り」でしかなかったのである。したがって、ブルンナーは、トータルなカルヴァン像の把握に失敗したのである。カルヴァンの根本的包括的な原理的な把握に失敗したのである（『ナイン！――エーミル・ブルンナーに対する答え』を参照）。いずれにしても、「現実の神認識の客観的根拠」は、「天地創造の中で啓示された神ノ力ガ、堕罪の故に、生まれながらの人間には事実隠されたままであり、その結果、自然的な神認識の形でのまことの神認識にまで到達することができないことが実際的問題としてある」時、換言すれば「天ト地トヲ洞察サセルコトニヨッテ、神ガスベテノ人ヲゴ自分ニ招カレテモ意味ガナイ時」、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である「聖書の中で証しされているイエス・キリストにあっての神の啓示こそがそれ」であり、それ故に具体的にはその第二の形態の神の言葉である聖書的啓示証言を自らの思惟と語りにおける原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、「客観的に……、今や神ガソノミワザ（≪あの父、子、聖霊なる神の存在としての全き自由の神の全き自由の愛の行為の出来事全体≫）ニオイテ正シク、生キ生キトワレワレニ描キ出サレル」ということであり、それ故に「ソコデハ、神ノミワザソノモノガ、ワレワレノ判断ノヨコシマニヨッテデハナク、永遠ノ真理ノ尺度ニヨッテ評価サレテイル」のである。最後的にカルヴァンが到達した信仰の認識としての「すべての現実の神認識の原則」――「イッサイノ正シイ神認識」は、第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書的啓示証言を第三の形態の神の言葉である教会の宣教、その一つの機能としての神学における原理・規準・法廷・審判者・支配者とする、「他律的」および「自律的」「服従カラ……生マレル」という点にある。「真実ナ知識ハ、（≪具体的には、あの祈りの中でそのような仕方において聖書的啓示証言を媒介・反復することを通して≫）神ノ御声ヲ聞コウトスル敏捷ナ積極的態度カラハジ」まる。この時、「ワタシタチガ神を知ルトスグ神ヲ愛スル（≪純粋なキリストにあっての神を尋ね求める≫）ヨウニナルノハ、タダ神ノ本性カラ由来スルダケデハナク、ワタシタチノ悟性ヲ照ラス聖霊自身ガ、ワタシタチノ心ノ中ニモ知識ト一致スル愛（≪終末論的限界の下で、純粋なキリストにあっての神を尋ね求める「神への愛」≫）ヲヨビ起コシテ下サルカラデアル」。「シカシ神ヲ知ルコトニヨリ、ワタシタチハオノズカラ神ヘノ恐レト愛トニ導カレル」。「ナゼナラバワタシタチハ、神ノ従順ナ子デアリ神ヘノ義務ヲ果タス僕デアルコトヲ示スコトナク、自分ノ側カラ神ヲ主トシテ、マタ父（神ゴ自身ガ言ッテイルヨウニ）トシテ認識スルコトハデキナイカラデアル」。神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて、終末論的限界の下で「ご自分をわれわれに対し認識するよう与え給い、われわれが神のこの意志に服従する（≪「他律的な服従」と「自律的な服従」との全体性・総体性において服従する≫）ことによって、神はわれわれによって認識され給う」という、カルヴァンにおける「現実の神認識の遂行の……循環」は、「明らかに……旧約聖書および新約聖書の中で神認識と呼ばれていることと正確に対応している」。「この循環の外では、聖書によれば、神認識は存在しない」。何故ならば、「すべてのこと」は、すべての神認識は、先ず以て、「この神が先立ち行き給うということ（≪イエス・キリストによって啓示され定められた道≫）によってもってかかっている」からである。「言葉を当たる主は、同時に信仰を与える主である」。「そのようなわけで、すべてのことは（≪すべての神認識は≫）同じように、（≪その後から後続して「他律的服従」と「自律的服従」との全体性・総体性において≫）人間が……（≪イエス・キリストによって啓示され定められた道を≫）共に進み行く（≪「神の言葉の三形態」の関係と構造・秩序性に時間累積させて行く≫）ということによってもってかかっている」。「イエスは、ヨハネ一四・六によれば、ご自分のことを何らの修飾語も伴わずに道と呼び、それから真理と生命、すなわち啓示と救いと呼び給う」、「復活され高挙されたキリストから降下し注がれる霊」である「聖霊降誕日の後、イエスの名の宣べ伝えとその名を信じる信仰は、明らかに広い範囲にわたって、……『この道』と言われている（使徒行伝九・二、二二・四、二四・一四。なお�Uペテロ二・二を参照せよ）」。

　このような訳で、三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事である、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に存在している「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）としての「�~の言葉に拘束された神認識」が問題である。神認識は、常に先行する�~の側からする、「�~が人間にとって対象となり給う」というそれに後続する信仰の認識である。したがって、その対象は、信仰の認識として神認識する人間を、「他から分かち、聖化する」「特別な対象」である。「それであるから、神認識は必然的に、そのほかの出来事との関連の中で、際立った出来事」である。「神のこの対象化は……神のみ業の形態（≪あの父、子、聖霊なる神の存在としての神の自由な愛の行為の出来事≫）の中で起こる」。したがって、イエス・キリストにおける神の自己啓示は、「ナザレのイエスという人間の歴史的形態」――すなわち「イエス・キリストの名」（第二の存在の仕方）において、その存在の本質の認識と信仰を要求する啓示である。したがってまた、それは、「間接的な神認識」（「神の自由な恵の賜物」）である。したがってまた、このような信仰の認識としての神認識は、常に先行する神の「自由な恵みの決断」――すなわち「神的決断の行為」に対して、それに後続する人間の「服従の決断」――すなわち「人間的決断の行為」において遂行されるのである。したがってまた、ここにおいては、「勝手気ままな」恣意的独断的な主観主義の立場に立脚することはできないのであり、また第三者的な客観主義の立場に立脚することもできないのである。

　これまでの論述は、常に先行する「神の前での（≪それに後続する≫）人間」、その「人間から見た場合の、�~の言葉に拘束された神認識の遂行である」。したがって、次には、そのような拘束された神認識の遂行について、「人間の前での神」、その「神から理解しなければならない……」。「当然のことながらこの（≪「他律的服従」と「自律的服従」との全体性・総体性における≫）拘束された神認識」も、「ひとつの人間的な立場」であり、「人間的な主張であり、実質的にひとつの人間的な命題である」。したがって、この立場、主張、命題は、ほかの人間的な立場、主張、命題に対して、「特別な優越性と保証」を「要求することはないのである」――「いや、（≪それは、≫）ほかの人間的な立場と比べて同等の権利を持つことさえ証明しようとしないで、自分自身をただそのままあれらの人間的立場……に置く点で……すべての人間的な立場と比べて、さらに要求するところの少ないものである」。したがって、この「�~の言葉に拘束された神認識」の立場は、先ず以ては「その実在と可能性を外から問わせない」ところの立場であり、「他律的な服従を強いる立場である」、換言すれば「本質的である」立場として、三位一体の唯一の啓示の類比としての神の言葉の実在の出来事である、それ自身が聖霊の業であり啓示の主観的可能性として客観的に存在している「神の言葉の三形態」（換言すれば、キリスト教に固有な類と歴史性）の関係と構造（秩序性）における起源的な第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身（「啓示ないし和解の実在」そのもの）を、それ故に具体的には第一の形態の神の言葉であるイエス・キリスト自身を起源とする第二の形態の神の言葉である聖書（最初の直接的な第一の「啓示ないし和解」の「概念の実在」）を第三の形態の神の言葉である全く人間的な教会の宣教、その一つの機能としての神学、その思惟と語りと行動における原理・規準・法廷・審判者・支配者として、終末論的限界の下で絶えず繰り返し、それに聞き教えられることを通して教えるという仕方で、純粋なキリストにあって神を尋ね求める「神への愛」と、そのような「神への愛」を根拠とした「神の讃美」としての「隣人愛」という連関において起源的な第一の形態の神の言葉であるイエス・キリストをのみ主・頭とするイエス・キリストの「ヒトツノ、聖ナル、公同ノ教会」を目指していくことを強いる「自律的な服従」を包括した「他律的な服従を強いる立場である」。したがって、「もしも何かそれと別なことが起こっている時には」、その「人間的な立場は既に解釈し曲げられており、裏切られ、結局、除去されてしまわなければならないであろう」。われわれは、この常に先行する「�~の言葉に拘束されている神認識」を、「徹頭徹尾人間によって規定されたのではなく、徹頭徹尾その対象としての神によって規定された出来事として理解しなければ」ならない、「神が、この出来事の中でご自分を人間から区別し給う（≪神のその都度の自由な恵みの決断による「啓示と信仰の出来事」に基づいて終末論的限界の下で人間が人間的に所有する人間の信仰の認識としての神認識、啓示認識・啓示信仰、人間的主観に実現された神の恵みの出来事を与え給う≫）」、「また神がこの出来事をほかのすべての出来事から区別し給う」。したがって、そうでないならば、その神認識は、「どんなに考え深い才知豊かな、また首尾一貫したもの」であっても、自然神学の系譜に属する「単なる知識」としてのそれなのである、ちょうどバルトのインマヌエル論やマルクスの自然哲学や自然を原理とした人類史のアジア的段階における山川草木悉皆仏性（草木国土悉皆成仏）論や未だ区別や分節化がされていない未分化のまま一切が包摂された総合状態であり、無規定の状態であり、形や色もない「無」性状態であり、一切の区別や規定性や分節化の源泉でもあるところの自然や宇宙の概念に依拠したと言える滝沢克己の「インマヌエルの事実」あるいは「根本的事実」の概念がそうであるように――「もはやいかなるキリスト者も、『聖書』や『イエス・キリスト』という名を記憶している人たちさえも、もはやこの地上のどこにも残っていないとしても、それでもなお、「神われらとともに」 という事実（Faktum）にわたしたちが堅く結びつけられているということそのことは、神において永遠に決定されていることなのだ」（『カール・バルト研究』）。